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194 ハルアキラの嫁 ①

今日は朝食を食べてから出かける事にしているので皆に声を掛けてから外へと向かって行った。

しかし門を潜ると何故かそこでハルアキラと出会い、軽く朝の挨拶を交わして足を止める。


「朝からどうしたんだ?今は実家に戻って暮らしてるだろ。」

「ああ、だから荷物を取りに来たんだ。それに長い間お世話になったからその挨拶にな。」


とは言ってもハルアキラもここで何もしていなかった訳ではない。

この広い屋敷を周って結界の解れが無いかを確認したり、要に使われている呪具に問題があれば直したり取り換えたりしていた。

予備の要も作ったりしていたそうなので専門職でないと出来ない事やそれ自体が買えば高額な物も多いと言う事で天皇家の逼迫している経済状況を助けてもいる。


「そうか。それで結婚相手に関してはどうなんだ?」

「昨日の内に文は出している。今日の昼には迎えに行く予定だから一緒に来ないか。」


そう言えば特別な力を持った女性という話なので贄の女性でないかの確認はしておいた方が良いだろう。

北海道でウシュラも特殊な能力を持っていたので候補としては上位にランク付けしておくべきだ。


「分かった。それなら一緒に行かせてもらおうか。あっちの父親も癖がありそうだから俺だけで訪ねたら門前払いをされそうだ」

「そう言ってもらえると助かるよ。土蜘蛛を台車で運ぶのも一苦労だからな。」


どうやら荷物運びの意味でも俺の手伝いが欲しかったみたいだけど、以前と違って少し強かになっている気がする。

男は嫁を取ると変わるって言うけど本当なのかもしれない。


その後しばらく待っているとハルアキラは挨拶を終えて屋敷から姿を現した。

そして次に向かうのはハルアキラの実家なので到着して奥に入るとそのまま昨日の離れまで向かい、そこに置かれている土蜘蛛を回収する。

ただ、ちょっと体液が垂れて床を汚していたので浄化で綺麗にしておいた。


「それにしても凄い術だな。巫術か仙術の類か?この場は土蜘蛛の放つ瘴気で俺か母上以外は誰も近づけなくなっていたんだが。」

「俺にもスキルの細かい所は知らないんだよな。ただ神が作った術だろうと言う事くらいだ。もしかするとハルアキラも魔物を倒してレベルを上げていけばもっと色々な事が出来る様になるかもな。」

「そうか。それなら俺も名に恥じない様にしないとな。」


そう言えばハルアキラは晴明の当て字を貰っていると最初の頃に話していたらしい。

当時はそれがコンプレックスだったらしいけど12神将と契約が出来てからはそう感じていないようだ。

きっと届かない目標ではなく、目指すべき目標に変わったのだろう。

気の持ちようだけど小さな変化が大きな変化をもたらす事もあるからハルアキラにとってはそれが良い方向に向いたようだ。


「それで昨日の2人はどうしてるんだ?」

「父上とカズタカは・・・母上から地獄の特訓を受けてる最中だ。」

「お前は受けなくても良いのか?」

「俺の術の師は元々が母上だからな。既に今日の分は終えているから大丈夫だ。」


その後、時間があると言うので話を聞くと何でもハルアキラはあの母親に鍛えられ、カズタカは父親が鍛えたそうだ。

ただ、そのせいで周囲からの虐めにあってしまい家を飛び出してしまった。

それだけが理由ではないらしく家の中の腐敗を目の辺りにしたのも原因の1つらしい。

それで各地を巡って魔物や妖怪と戦って人々を救おうとしたらしいけど、全てを助けられた訳では無いらしく失った命の方が多かったそうだ。

元々半人前の段階で飛び出したので仕方がないのかもしれない。

今でこそ母親の教えを自力でモノにしているけど現代でいう所の現場の叩き上げと言ったところで苦労も多かったのだろう。


「話が長くなったな。そろそろ行こうか。」

「そうだな。太陽も頂上だしそろそろ時間だろうな。」


そして廊下を歩いて外に向かっていると何処からともなく悲鳴のような声が聞こえてくるので、どうやらあの2人が鍛え直されていると言うのは本当の事らしい。

ちょっと覗いてみると父親の手足は元に戻っているようだけど体中を痣だらけにして倒れている。

あれでは治った事が良かったのか悪かったのか分からない状態だなので、あのまま死んでいた方があの男にとっては幸福だったのかもしれない。


「アレは大丈夫なのか?」

「ハハハハ。」


聞いても笑って答えようとしないのでどうやら大丈夫では無いらしい。

ただ手足が切り取られていても前回みたいに食べられて無くなっている訳ではないのでポーションを催促されたとしても下級で十分だ。

既に前金は受け取って・・・拾っているので要求されれば譲っておこう。

それにしても爺さんと知り合いらしいので鍛錬と言っても手加減が無く、あれでは熊と喧嘩した方がマシではないだろうかと思える。


そして外に出てしばらく歩くとそこには大きさの屋敷が建っており、ハルアキラはその扉を叩き声を掛けた。


「御免!文を出した安倍ハルアキラだ!」


するとすぐに扉が開いたかと思うとそこから不機嫌そうな男が姿を現した。

しかも現れてすぐに男は腕を振ると白い粒を投げつけて来る。


「これは塩か。」


鑑定して見ると毒やヤバイ薬ではなく、何でもない普通の塩だった。

だが、どうやら俺達はこの家に歓迎されていないのはすぐに理解できる。

しかし、ハルアキラは何の反応も見せずに男へと声を掛けた。


「約束だ。彼女を迎えに来た。」

「約束だと?そんな事は知らん!とっとと帰りやがれ!娘は既にテメーの所以上に良い所から声が掛かってんだよ!」


そう言って取り付く島もなく男は扉を乱暴に閉めると裏から鍵を掛けた。

何とも横暴な発言だけど相手がこちらよりも上の家柄なら普通は諦めるしかない。

しかし、ここに居るのは普通でない奴等だけなので、こんな横暴を許すような人間は誰一人として存在していないのだ。

それが分かっていないようなので、ここは懇切丁寧に教えてやらなければならない。


「ハルアキラ。お前はまずは心を落ち着かせて家に戻っていろ。」

「どうするつもりだ?」


ハルアキラは今にも12神将を纏って目の前の扉を粉砕しそうな雰囲気を放っている。

しかし、この時代の女性は親の言う嫁ぎ先を拒めない。

だからここで暴れても、それは初めて会う女性の印象を悪くするだけだ。


「俺に考えがある。なんたって俺達には瘴気を放つ土蜘蛛の死体があるんだからな。」


土蜘蛛の死体からは今も限られた者しか近寄れない程の瘴気を放ている・・・らしい。

俺は気にならない程度というか気付きすらしなかったけど、そんな物が家に有れば家主はどうするだろうか。

俺はニヤリと笑みを浮かべるとハルアキラも分かってくれたのかニヤリと笑みを浮かべる。

そしてハルアキラは懐から一枚の札を取り出すとすぐさま玄武を呼び出した。


「今からハルに付いて指定した女性を護れ。」

「儂は構わんよ。なんだか面白そうな気配を感じるのでな。」

「お前も分かって来たじゃないか。」

「「「フフフフフ!」」」


その後ハルアキラは一旦母親にこの事を報告するために自分の家へと戻って行った。

ただ、あの人の性格は過激そうなので呪い殺されないかが心配だ。。

そして屋敷へと侵入すると誰にも見つからない場所から男の行動を目で追い掛けた。

すると庭に蔵があり、男はその前で足を止めると扉に付いている南京錠を開けて中へと入って行く。

俺はそこに駆け寄ると玄武へと声を掛けた。


「この中に恐らくその女性がいるはずだ。お前は彼女を守れ。」

「任せておけ。」


蔵の中には花嫁衣装に身を包んだ女性が大人しく床に座っており、その様子から安倍家からの文を見てすぐに動き出していた事が分かる。

それにハルアキラの言う通り顔立ちは凛々しくてとても美しい女性のようで、この状況においても慌てた様子もない。

女性は男が自分の前に立つと目を開き、穏やかと言うよりは感情を感じさせない平坦な声で話しかけた。


「やはり私の夫を追い返してしまったのですね。」

「黙れスミレ!何が未来が見えるだバカバカしい。私にとってはそんな事はどうでも良いのだ。明日になればお前は別の男の所へと嫁に出す。諦めて私の言う通りにしておけ!」

「私の言う通りに動かないといけないのは父上です。このままでは双方の家に大きな厄災が降り掛かりますよ。」

「そんな物が怖くて家の復興が出来るか!お前の事は既に決定しているのだから明日になって迎えが来るまでここで大人しくしていろ!」


そして男は不機嫌そうな顔で叫びながた蔵から出て行った。

どうやら既にハルアキラの事は知っていながら自分の為に娘を他の家に嫁がせようとしている様だ。

すると不意にスミレの視線は壁越しに俺へと向けられた。

ただ視線を向けているけど正確とは言えないので見えている訳では無いみたいだ。

しかし、その口からは確信を持って、俺に向けて言葉を掛けて来た。


「最後の忠告は無駄に終わりました。私は既に覚悟も出来ていますので、どうぞお好きになさってください。」


この声量なら普通は蔵の外に居ては聞き取る事は出来ないだろうに、あちらは俺が聞こえている事を疑ってはいないようだ。

そして彼女が言葉を言い終わった直後に蔵は玄武のシールドに覆われ周囲と隔離された。

これなら土蜘蛛の瘴気が周囲に充満しても問題はなさそうだ。


「さてと。何処に置けば良いのかな。」


確かこういう不吉な物は丑寅の方角が良いと聞いた事があり、方位磁石によれば蔵の正反対がそうなので場所としても良さそうだ。


俺は土蜘蛛の体を庭のド真ん中に放置するとその場を後にした。

後は家主が何処まで耐えられるかだけど、あんな態度をしておいて助けを求めに来るだろうか?


そして安倍の屋敷に帰ると玄関で仁王立ちしている彼女の姿がある。

そう言えばいまだに名前も聞いていないのでそろそろ聞いた方が良さそうだ。


「今更だけど名前を聞いても良いか?」

「そう言えば名乗っていませんでしたね。夫が彦干ヒコボシ、私は折姫オリヒメです。字で書けばこうですので七夕とは違う事を先に言っておきます。」


きっと今まで何度も間違われているのだろうけど名前は体を表すとはよく言った物だ。

夫は現在干されている真っ最中だし、奥さんの方は心を折っている真っ最中だ。

名前を先に知っていればあまり関わりになりたくない人物なのは言うまでもない。


「それで当主(仮)であるオリヒメさんがこんな所で何をやっているんだ?」

「誰が当主(仮)ですか!それよりも首尾ははどうなのです!?まさか手心など加えてはいないでしょうね。」

「鬼門の方向にあった庭の中央に土蜘蛛の胴体を捨てて来た。そういえばこの時代に不法投棄を咎める法はあるのか?」

「そのような法はありませんね。それに今の京では死体が転がっているのも日常茶飯事です。それが瘴気を放つ妖の死体なら必ず陰陽寮へと何らかの打診があるでしょう。置いた場所も最適を通り越してやり過ぎですが今日には良い連絡が入りそうです。」


オリヒメさんは無表情を貫いていても顔の筋肉が微妙に震えている。

他人の前で笑わないのがこの人のスタイルみたいだけど、どうやら少しは溜飲が下がったようだ。


「それで花嫁を掻っ攫おうとしている馬鹿は何処の誰か分かったのか?」

「既に調べは付いています。」

「早いんだな。もう、相手が判明しているのか。」

「あれでもと思い安倍家から数人ほど密かに護衛を付けていたのです。その過程で偶然ですが相手の事も判明しています。」

「でも護る対象はスミレだろ。」

「それはそれです。元々あそこの父親が碌で無しな事は分かっていましたので。」


すなわち信用が出来ないから監視のついでに護衛していたって事か。

対応が少し温いなと思っていたけど今回の事は想定の範囲内と言う事だな。


「それなら相手の方には土蜘蛛の頭を投げ込んでおくか。残しておいたから役立ちそうで良かった。」

「それは気が利いていますね。案内を付けますから適当に投げ込んできてください。」


そう言ってオリヒメさんは背中で笑いながら家の奥へと消えて行った。

代わりに奥から現れたのは弟のカズタカで別れて1日も経過していないのにかなりやつれてしまっている。

一体どんな恐ろしい訓練を受けているのやら。

それでも手足と指は揃っているようだから今のところ問題は無さそうだ。


「ここは優しさをもって回復しておいてやろう。」

「何の冗談だ?」


俺が回復魔法を掛けてやるとカズタカはまるで悪人を見る様な目を向けて来た。

それでも痛みが消えた事で体が軽くなり、動かして調子を確認している。

だが、もちろん俺に善意なんてあるはずがない。


「それなら明日は今日よりもっと辛い訓練が受けられるだろ。そうすれば1日でも早く拷問・・ゴホン。訓練が終わるかもしれないぞ。」

「今サラッと本音が出てたぞ。」


しかし家の奥からは機嫌の良さそうなオリヒメさんの笑い声と、ヒコボシの悲鳴が聞こえてくる。

きっと夫婦で激しい愛の何かが行われているんだろう。

何か鞭を打つような音も聞こえて来るけど、きっと植物系の式神を呼び出して蔓で攻撃でもしているに違いない。


「あちらは放置して案内を任せたぞ。」

「・・・ああ。任せろ。」


流石に両親の愛の営みに介入する気はないらしく、カズタカは一瞬だけ家の奥に視線を向けると、とても素直に頷いてくれた。

きっとこれも教育の賜物に違いない。


そして屋敷を出るとカズタカの案内で問題の男が住まう屋敷へと向かって行った。

その間を使って丁寧にその男の事を説明してくれる。

どうやら既に情報も握っているようで薄い1冊の本が取り出すと読み始めた。


「もしかして同人誌か!」

「何を訳の分からない事を言っているんだ?これには各家が陰陽寮に依頼した仕事内容が書かれているんだよ。どうやら兄貴から婚約者を奪おうとしている男は色々と問題がありそうだな。」


しかし、そう言って内容を確認をするカズタカに変わった様子はない。

昨日までならもう少し棘のある言い方をするはずなんだけど互いで上手く折り合いをつけたのだろうか?


「兄弟で和解でもしたのか?」

「そんなんじゃねーよ。でも・・その・・なんだ。俺だって兄貴は嫌いじゃねーんだ。いきなりいなくなって腹が立ったっていうか、帰って来て興奮しちまったっていうか・・・。」


どうやらコイツはかなりのツンデレさんみたいだ。

男のツンデレなんて見ても俺には一文の価値も無いけど、このままオリヒメにしっかりと教育を受ければ真面になる?・・・かもしれない。

まあ、最低限の分別くらいは出来る様になるだろう。


「そうか。意外と仲は良好みたいだな。」

「そんなんじゃねえって言ってるだろう!」

「ムキになってる所がまた・・フッフッフ。」

「何がフッフッフだ!気持ち悪いんだよ!それよりもうじき到着するぞ!」


カズタカは顔を赤くしながら声を荒げ必死に否定しているけどまったく説得力がない。

しかし、せっかくこのネタで揶揄ってやろうと思っていたのに、もう目的地に到着してしまったようだ。

この続きは帰りながらのんびりと再開する事にしよう。


「そう言えばお前も陰陽師の端くれだろ。どの辺に首を置いておけば効果的だと思う?」

「端くれじゃねえ。立派な陰陽師だ!クソッ、少し待ってろ。」


そう言ってカズタカは占い師が使う様な文字がたくさん書いてある板を取り出した。

確か式盤という道具だったような気がするけど、印を結んで目を閉じると意識を集中し始めた。


「我に方角を示せ。・・・こっちだな。」


そう言って屋敷の前まで来ると壁沿いに歩いて行くので、こうやって見ていると本当に陰陽師みたいだ。

ただ現代で知られている陰陽師の仕事は魔物退治ではなくこういった占いなどがメインのはずなのでこの姿が普通なのだろう。

そして、しばらく進んで家の裏手に回るとカズタカはそこで足を止めた。


「この辺が良いみたいだな。適当に投げ込んで退散するぞ。」

「少し待て。それだと目立たないじゃないか。」

「おい待て!何をするつもりだ!」


俺は屋敷の壁を超えるとそこにあった木の幹に土蜘蛛の頭を固定する。

ただ、頭は胴体と違って小さいので50センチも無い。

適当に括り付けると目立たないのでお面の様にしっかりと前を向かせ、屋敷を睨むように角度を調整しておく。


「こんな感じかな。」


それに病は気からという様にこの首の存在を知っていれば体調が悪くなってもその理由に直結してくれる。

きっと知らなかったら体が怠いな程度だろうけど、これを見ればコイツのせいだと考えるだろう。

そうすれば陰陽寮へと直ぐに連絡が来るので後はオリヒメさんがどうにかするはずだ。


俺はしっかり固定された事を確認すると壁を飛び越えてカズタカの許へと戻った。


「お待たせ。」

「お前はこの家を呪い殺すつもりなのか?」

「何を言ってるんだ?」


この屋敷は使用人も多くてさっき設置したばかりなのに、もう気が付いたみたいだ。

それになんだかこの屋敷の空に雲も集まってきた気がするので集中豪雨でも起きるのかもしれない。

俺はともかく、カズタカが濡れると乾きにくそうな服を着ているのでそろそろ帰る事にする。

そして帰りながらついでにあの屋敷の男について聞いてみる事にした。


「そう言えばさっきあの屋敷の奴に付いて説明が途中だったな。」

「お前が変に話を進めたからだ!」


このツンデレ弟はまだそんな過去の事を根に持っているのか。

それなら時間が残れば存分に揶揄ってやろう。

しかしカズタカも再び揶揄われると感じ取ったのか、すぐに話を切り替えた。


「あの屋敷の男の名前は惡道アクドウと言うらしい。何でも父親が京一番の商人で大金持ちだそうだ。有力者との繋がりも多い代わりに色々とやらかしてるらしいな。」

「親の七光りって奴か。」

「ああ、だから色々な家の女を何人も手籠めにして飽きたら適当な理由を付けて家に送り返しているらしい。その恨みで女から呪われる事も多いみたいだな。どうやら殆どの相手がかなり乱暴な扱いを受けている様だ。」

「お前と一緒か。」

「俺とは違う・・・。」

「何か言ったか?」

「う・・・その通りです。」


叱ってくれたミズメを切り殺そうとしたコイツも似た様なものだ。

あえて違う所を言えば身分に差があったと言う事だろう。

しかし、それを言えば天皇の屋敷に客として住んでいるミズメに手を出す事も大問題だ。

あそこで毛ほどの傷での付けていれば確実に足先から磨り潰していただろうけどな。


「まあ、そいつもクズならどうなっても構わないな。お前はそいつの末路を見て反省すると良い。俺はそいつみたいな奴が一番嫌いなんだ。」

「お、覚えておく。」


その後、屋敷に到着するとカズタカは家の奥へと消えて行った。

これだけ脅し・・言って聞かない様なら本当に磨り潰さないといけないかもしれない。

そして帰ろうとすると屋敷から今度はハルアキラが姿を現し、その真剣な顔から何か話があるみたいだ。


「ちょっと上がって行かないか。」

「そんな顔で言われたら流石に断れないだろ。爺さんも来てるみたいだから少しだけお邪魔するよ。」


俺はそう言って靴を脱ぐとハルアキラに連れられて屋敷の奥へと向かって行った。

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