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187 黄泉の女王 ①

爺さんの傍に行くと小声で聞き忘れていた事を問いかける。

それはこの町に居る筈の贄の女性の所在だ。

半日ほど遅れてしまったけどそれくらいは誤差の範囲だろう。


「それで、ここに居るっていう贄の女性は何処に居るんだ?」

「それがのう。さっきは言うのを忘れておったが今は探しているところなのじゃ。」

「もしかして死んでたのか?」


俺は小声ながらも少し強めの声で爺さんへと問いかけた。

すると爺さんの表情が歪み、ゆっくりと首を縦に振って返して来る。


「本部の地下で衰弱死しておった。おそらくは餓死で間違いなかろう。」

「誰も世話をしていなかったのか?」


ある意味では本部で肥え太っていた奴等よりも重要な存在だ。

必ず誰かが護り世話をしていなければ彼女達は生きて行けないのに餓死させるほどに放置するとは在り得ない事だ。


「少し前に大きな人の移動があった様じゃ。その時に担当が居なくなってしまったようでな。それに彼女の居た隔離場所は本部の地下深くにあり、助けを求める声も届かんかったようじゃ。」


ここでまさかのヒューマンエラーが原因とはな。

もしかすると本部があるのにここだけ魔物が少ないのかもしれない。

死んで力が他の女性に移ってもすぐには不幸になったり魔物を惹き付けたりはしない。

次第に力が発現していくので死んだ時期は分からないけど対象を見つけにくい時期なのは確かだ。


「それでどうする。遺体は儂の方で確保しておるぞ。」

「それなら早速やってしまおう。きっと飯に飢えてるだろうからな。」


彼女は魔物に食われた訳では無いので魂は無事なはずなので、それなら蘇生薬で生き返らせる事が出来る。


「部屋と誰か世話の出来る女性を確保してくれ。」

「すぐに手配しよう。」


そして女中に案内されて貸してもらった部屋へと向かった。

ただし女中の人には刺激が強いので外で待機してもらい俺達だけで中に入る。


「毛布は俺が持ってるからそれを使おう。この上に出してくれ。」

「うむ。」


そして出て来た死体はまるでミイラの様に骨と皮だけになっていた。

手には噛み跡が付いているので空腹に耐えかねて何度か自分の手に噛みついたのだろう。

しかし死んでもここまで腐らずにミイラ化するのは珍しいと思う。

地下ならある程度の湿度があるだろうからもっと酷い状態でもおかしくない。

恐らくは普段からあまり食べさせて貰っていなかったのだろう。


「これを見る度に奴等への罰が生温かったと思えてくるわい。」

「それでも今はこちらを優先しよう。どうするかは彼女に聞いてからそっちで好きにしてくれ。」


そして俺は中級蘇生薬を試してみる。

これで効果が無ければ後は上級を使うしかない。


「変化がない様じゃな。」

「これは死後1ヶ月以上経過しているからだな。上級を使えば生き返るはずだ。」


この人は邪神に関わって死んだ訳ではないけど、これは他のとは少し違う特別な奴だ。

熊を倒した時に手に入れた物でそちらの上級蘇生薬を使うと無事に肉体は修復され息を吹き返した。

俺は毛布で包まる女性に声を掛けて意識の覚醒を促してみる。


「・・・起きないな。」

「そうじゃな。呼吸と心の臓は正常に動いておる。なぜ意識が戻らんのじゃ?」


するとゴーグルに着信が入りここは任せて通話に出ることにした。

どうやら相手はクオナの様で何か気付いた事があるのかもしれない。


「どうした?」

『その者は魂が体に戻って来ていません。もしかすると何処かを彷徨っているのかもしれませんね。ソウルラインは繋がっているみたいなので、それを追えば回収できるはずです。』


するとゴーグルを通して体から白い糸が伸びているのが見える。

恐らくは体が生き返っているので幽体離脱みたいな状態になっているのだろう。

そうなるとこの糸が魂の尾という代物なのかもしれない。

邪神との繋がりにも似てるけど奴のは黒いので明らかに違う。

そろそろ日も沈んで暗くなり始めているので早く連れ戻してやろう。


「ちょっと魂が迷子になってるみたいだから連れて来る。爺さんは女中の子に服を着させて貰ってからここで待機しててくれ。」

「分かった。変なモノが入らんようにここで見ておるよ。」

「そんな事があるのか?」

「魂が抜けた体は悪霊、怨霊にとっては喉から手が出るほどに求めている物じゃ。ここはそういうのが入って来れんように陰陽師共が結界を張っておるが念の為じゃ。」

「それならなるべく早く帰って来る。」


俺はそう言って屋敷を飛び出すとソウルラインとやらが伸びて行く先へと向かって行った。

するとそれは町の外れにある寺へと続いており、他の多くの寺と同様に幾つかの建物が燃えていて人気が全くない。

そんな中で無事な建物も幾つかあり、糸はその1つへと延びていた。

どうやらその中に彼女の魂が居るみたいだけどなんで戻って来れないのだろうか。


「それにしても蜘蛛の巣が多いな。」


俺は敷地内に降りると至る所にある蜘蛛の糸を払いながら目的の建物へと近づいて行く。

それに糸はまだ新しい物の様で埃は付着しておらず、粘性も損なわれていないみたいだ。

その証拠に境内の数カ所から鳥の声が聞こえ、そちらを見ると糸に体を絡め捕られて動けなくなっている。

そんなに多くなさそうだから女性の魂を見つけたら適当に助けてやることいした。


そして問題の建物の前まで来るとそこは全面を糸が覆い、まるで薄いカーテンに包まれているようになっている。

魔法で燃やせば簡単だろうけどせっかく無事な建物に燃え移ったら大変だ。

それに魔法の炎が魂にどんな影響を与えるか分からないので今迄と同じ様に手で掻き分けながら進んで行く。

すると正面の扉が開き、そこから大きな蜘蛛が姿を現した。

どうやらこの寺は奴の巣となっていたらしく、ここから見える室内には餌食となった人の骨が散乱している。


ただ、コイツは邪神の配下ではなく、この世界の妖怪という存在みたいだ。

魂は黒ではなく黄土色みたいな色をしているので見分けは付き易い。


(それにしても妖怪って本当に居たんだな。)


以前にも死んだ子供が餓鬼化したのを見たけどあれとは大きく異なる。

こちらはもっと野性的で肉食の獣に近いかもしれない。


「それでソウルラインはっと・・・。」


そして糸を辿って視線を動かすと丸い繭玉へと続いている。

どうやらこの糸は魂さえも絡め捕る事が出来るらしく、きっとあの中に女性の魂が閉じ込められているのだろう。


「それにしてもコイツをどうするかだな。このまま放置しても被害が増えるだけだし、ちょっと試しに倒してみるか。」


妖怪と戦うのは初めての経験なのでちょっと楽しみだ。

もしかすると何か良い物をドロップするかもしれない。


「さあ掛かって来い。」

「キシャー!」


すうると奴は口から大量の糸を吐き出して、その波で俺を捕えようとしてきた。

しかし、この手の攻撃は現代のダンジョン内で何度も経験している。

あそこにはコイツの倍はあるジャイアントスパイダーが居るのでモーションも似ていて躱し易い。

もしかするとコイツの糸も良い素材になるかもしれないので可能なら後で回収しておこう。


そして一気に距離を詰めるとまずは左側の足を切り取る。

虫系は痛覚が鈍くてこの程度では倒す事は出来ないけど動きを制限してやらないと動き回って面倒臭い。


そして後ろから回り込んで今度は右側の足を飛ばす。

これで動く事が出来なくなり正面に戻ると蜘蛛は破れかぶれで糸の乱れ打ちをしてくる。

俺はそれを全て躱していき糸が出なくなるのを待ち続ける。

そして糸が尽きた所で首を飛ばして止めを刺し勝負を決めた


しかし蜘蛛は確実に死んだにも関わらず、魔物と違って消える様子はない。

どうやら邪神の作り出した魔物とは根本的に違うみたいで、食べようとは思わないけどこんな大きな蜘蛛を放置していると迷惑になりそうだ。

俺は蜘蛛を全て収納し、副産物として手に入った大量の糸もホクホク顔で回収しておく。

もしかすると後で何かに使えるかもしれないから残すつもりはない。


犠牲者に関しては俺とは何の関わりの無い奴らだ。

それに破損も酷くて残っている骨も残骸と言っても良いだろう。

流石に蘇生薬があっても戻る保証は・・・まあ、実験だけはしておくか。


俺は骨を回収すると敷地内の鳥たちを解放してやってから魂を繭ごと手にしてその場を離れた。

そして屋敷に戻ると爺さんの許に向かい声を掛ける。


「戻ったけど魂はこの中みたいだ。」

「うむ、どうやら妖に捕らえられていた様じゃな。食われてなくて良かったわい。」

「それじゃあ後は任せる。俺は別の用事をするから。」


俺は爺さんに繭玉を渡すと部屋の前に腰を下ろして足元にさっき回収した大量の骨を取り出した。

いちおう硬い頭蓋骨は残っているけどそれ以外はバラバラで見当もつかない。

これは現代の技術でも簡単に復元は出来ないだろう。

それをするなら専門の知識としっかりとした施設が必要になるけど、この時代ではどちらも揃える事が出来る筈がない。


「なんじゃ。お前にしては珍しいのう。」

「ちょっとした気まぐれと実験だ。この状態で蘇生薬の効果があるのか試してみたい。中級までで生き返れば運が良かったって事だろ。」

「そうか。まあ、儂はこの魂をあの娘に戻してみるわい。」


そう言って爺さんは部屋へと入って行ったので中をちらりと見るとそこには布団が敷かれ1人の女性が眠っている。

どうやら連れて来た女中はしっかりと仕事をしてくれたみたいだな。


そして俺は少し考えてゴーグルさんに頼ってみる事にした。

もしかすると何かスペシャルな機能があるかもしれない。


「ゴーグルさん、ゴーグルさん。何か良い案はありませんか?」

『仕方ないな~ハル田くんは~。』


すると意外な事に良い感じの切り返しが音声付きで発せられた。

前回までは文章だけだったのにいつの間にか機能がバージョンアップしている。


「ゴーグルもん。何かあるのかな?」

『こちらでスキャンすればそれを表示できるよ。その先は手作業だけど頑張ってね~。』

「そこまでやってくれるなら後は任せてよ。」

『お役に立てて良かったです。』


しかし流石のゴーグルさんも最後には普通に戻ってしまった。

まあ、この調子ならネタを振れば普通に返してくれそうだ。

そう言えばネットで色々と調べて既に大量のデータを取り込んでいると言っていたので今のはその内の一つだろう。


そしてゴーグルがスキャンしてくれて尚且つ並べ方まで表示してくれた。

ただ、並べて分かったのはそれなりに欠損が多いと言う事だ。

頭蓋骨の数も全て揃ってなくて数体は頭が無い。

それ以外にも手足が無かったり胴体が無かったりと色々だ。

もしかすると町の何処かには落ちているのかもしれないけど、この広い町で見つけ出す事は不可能に近い。

そんな事をしていると他の死体を次々に発見してしまうのは間違いない。

それと今回はちょっとした気まぐれなのでそれらまで助けるつもりは一切なく、ここに回収して来た骨も無理なら素直に諦めるつもりだ。


そして並べ終えると一番状態の良い骨に蘇生薬を振り掛けてみる。

コイツでダメなら全員がダメだろう。

しかし無理かもしれないと言う予想に反して蘇生薬は効果を発揮し見事に生き返った。

半分以上は諦めていたので何も準備をしておらず、俺は間に合わせで毛布に包んでやる。

生き返ったのは若い女性で十代後半ぐらいで見た目はそれなりに綺麗だと言っても良いだろう。


まあ、それは置いておくとして次々に試していくと、足が無くても胴体が無くても問題は無いみたいだ。

そして7人が蘇生に成功しているけど全員がそれなりに美人な顔立ちをしている。

もしかするとあの妖怪は蜘蛛のクセに面食いだったのかもしれない。

美人じゃないと食べたくないとか、そんな偏食家な妖怪がいたとしてもおかしくはないだろう。

そう考えると次のターゲットにミズメが選ばれた可能性は十分にあるのでこの機会に始末出来て良かった。


ただ問題は残った3つの死体で、コイツ等には頭が無くて首から下しかない。

逆に頭以外は殆ど揃っているので、もしこれでダメなら蘇生に一番重要なのは頭か頭の一部と言う事になる。

現代でもこればっかりは検証していないのでデータとしては良い物が取れたけど何だか勿体ない気がしてくる。

別に今までの前例から美人だからと言う事ではなく、頭一つで生き返れないのが勿体なく思うだけだ。

この3人を蘇らせられればパーフェクトなのでゲーム好きとしては残念でならない。


そして、それぞれに蘇生薬を振り掛けて見るとやっぱり生き返らなかった。

どうやら蘇生に重要なのは魂と頭部で間違いないだろう。

しかし、ここで初めて見る意外な現象が目に飛び込んで来た。


地面に穴が開いたかと思うとそこから3つの白い炎が浮かび上がり、周囲へと漂い始めた。

もしかするとこれはこの3人の魂なのかもしれないと思ったけど体は骨のままで戻る器は存在しない。

そして、しばらく眺めていると地面に再び穴が開きそこへと次第に吸い込まれ始めたので、どうやら再び黄泉へと戻っていくようだ。

俺にはあの3人を助ける手段が無いのでしょうがないだろう。


『ビキッ!』

「ん?」


すると何処からか何かに罅が入る様な音が聞こえた。

しかし次の瞬間には地面の穴から黒い煙が噴き出し、大きく広げて何かが這い上がって来る。

しかもそこから感じる気配は尋常ではなく、俺の10倍・・・いや100倍は強い力を感じる。


そして穴から最初に這い出したのは腐って爛れた手だ。

続いて次第に体が持ち上がり頭が見えて顔が覗くとこちらに視線を向けて来る。

その全ての肉が腐り膿を吹き出し、恐怖を感じないはずの俺でも体の震えが止まらない。


そして、腐って爛れた肉と膿に包まれた存在は穴から完全に這い出すとこちらへゆっくりと歩み寄って来た。


「お前がその子達を呼んだ人間ですね。」


すると見た目に反して心に染みる様な穏やかな声で話しかけて来た。

そして俺の思考はここで以前にツクヨミから聞いた話を思い出し、その名前を口にしてみる。


「もしかして黄泉の女王・・・イザナミ様。」


邪神すらワンパンで倒すとツクヨミが断言する日本最強の女神。

黄泉に引き籠って出て来ないって話だったはずだけど、このプレッシャーはそれしか思いつかない。

もはや邪神ではなく破壊神と言っても良いくらいだ。


「私を見て声を出せるとは大したものです。しかも私の瘴気を浴びて生きているとは人間とは思えません?・・・ああ、そう言う事ですか。」

「何かありましたか?」

「いえ、大した事ではありません。」


何か1人で納得しているけどスキルの事にでも気付いたのだろう。

それよりももっと気になる事を言ってたな。


「それよりも不穏な事を言ってましたね。近くに他の人も居るのですが大丈夫ですか?」


特にアケとかユウとかミズメとか。

爺さんは殺しても死なないだろうけど他にもさっき生き返らせた7人も居るので早々にお帰り願いたい。

それに俺でこれならだから寝てても気付かない内に心臓くらい止まってしまいそうだ。

しかし返された返答は予想の遥か上をいくものだった。


「その心配はありません。今は私の力でこの周辺、アナタの言葉なら太陽系の時間を止めています。私の影響もあなた以外には及ばない様にしてあるので大丈夫です。」


それだと俺は無効スキルを持ってなかったら確実に即死してたという事になる。

それともこの神は俺を殺しに来たのだろうか?


「それで今日は何が目的でこちらまで?」


ただ引き籠りが姿を現すのだから余程の事だろう。

おそらく俺が死んでも不可抗力くらいだろうから、ここに来たのには別の理由があるはずだ。


「幾つかありますが貴方が貸し出しているあの剣のおかげでとても助かっています。今は草薙の剣をスサノオが持っているので浄化が遅れて困っていたのです。」

「それは良かったです。でもそれが本題ではないですよね。」

「その通りです。私がこうしてここに現れた本当の目的はこれから話します。そこにあなたが生き返らせようとした3つの魂がありますね。」


そう言ってイザナミは先程から1カ所に集まって待機している3つの魂に視線を向けた。

どうやら問題は蘇生に失敗して魂を呼び出してしまった件についてのようだ。


「その者達は邪神の影響で復活してしまった妖によって殺された者達です。本来は死ぬ運命には無く、生きなければならない者達です。アナタには運命の歪みを修正するために、その者達の蘇生を命じます。」

「拒否権は?」

「拒否?」


すると次の瞬間にはイザナミから瘴気と殺気が噴き出して周囲を覆い尽くした。

きっと山の上から見れば京の都を含めこの周辺の盆地を黒い霧が覆い尽くしているのが見られるだろう。

そしてイザナミの口からは穏やかながら容赦のない言葉が呟かれた。


「拒否しても構いませんよ。その時はこの都の人間を連れて黄泉に帰るだけです。あなたは死なないでしょうが他の者はどうでしょうか。きっと黄泉の底で苦しみながら家族で感動の再会が果たせるでしょうね。」


どうやら俺がこの時代の父親を殺した事も既に知ってるようだ。

そのこと自体はどうでも良いけどコイツが言っているのは俺の大事な人を殺すと言っているのと同義だ。

そうなれば俺はこの時代で護る者と生きて行く目的の両方を失ってしまう。

すなわち遠回しな脅しを含めて拒否権は無いと言う事だ。


「仕方ないからどうにかしますよ。それで何かヒントは貰えるのですか?」

「魂は肉体と引かれ合うものです。彼女たちの魂を連れて町を周れば問題となっている原因も見つかるでしょう。ちゃんと後で報酬も渡すので完遂して見せなさい。」


それならこちらで報酬の内容を指定できるか聞いてみよう。

上手くいけば良い物が手に入るかもしれない。


「それなら質の良いリボンを探しているのですが、それを3つ頼めますか?」

「リボンですか・・・。ならばアナタの持っている蜘蛛の糸を私に渡しなさい。それと良い物を持っていますね。その真珠を私に渡せばあなたの望む物を作っておきましょう。」


それならどちらも偶然手に入れた物なので真珠と蜘蛛の糸を出すとイザナミに差し出した。

すると真珠は一つ取り蜘蛛の糸は全てを持って行くようだ。

糸は凄い量があるのにそんなに使うのだろうか?


「この蜘蛛の糸はとても貴重なのです。残ったら私の服を作る予定なのですよ。」

「なんだかアンタがアマテラスの母親である事に納得できた気がする。」

「きっとアナタは今日の事を未来で感謝するはずです。」


まるで未来に何があるのか知っている様な口ぶりをしている。

でもそんな体で服を着てもすぐに体液と膿で汚れてしまうだろう。


「ならこれくらいは俺からサービスしておきます。未来に対する投資って事で。」

「あら?今回のは今までになく話が分かるみたいですね。これは有難く頂いておきましょう。」


俺は中級ポーションを100本ほど取り出して袋に入れるとイザナミに渡しておいた。

何か変な事も言っているけどイザナミとは確実に初対面なのは間違いない。

それに流石の俺でもこんなインパクトのある女性に会えば忘れる筈はないので、きっと誰かと勘違いしているのだろう。


「それでは任せましたよ。」

「はい。」


そう言ってイザナミが穴に飛び込むと周囲の黒い瘴気が穴へと吸い込まれて行く。

そして周囲から瘴気が消えると穴も塞がり時間が動き始めた。

魂に関しては周りを浮遊しているので、まるで俺が幽霊みたいだけど普通の人には見えないので大丈夫だろう。

ただこの状態がいつまで続くか分からないし放置すると催促に現れそうだ。

ハルアキラの件も心配だけどこちらも今夜中に片付けてしまわないと何が起きるか予想も出来ない。

今日はアンドウさんも居るのでここには実力者が揃っており、安心してこの場所を離れられる。

それに早くリボンをプレゼントしたいので今夜中に終わらせてしまいたい。


既に魂たちも動いていて同じ方向へと移動を開始している。

ゴーグルも個別のマーカーを付けているようで位置は把握できるので見失う事も無いだろう。

俺は足元に並ぶ骨を回収すると魂たちを追って移動を開始した。

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