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147 残酷な真実

俺は食事をしながら爺さんにステータス関係の事を聞いてみた。

すると意味は理解できなくても予想通り既に覚醒者として力を持っていたみたいだ。

それにレベルが既に35と高く、明らかに今まで倒して来た魔物の経験値が加算されている。

スキルも膨大で、称号も幾つか獲得しているので今の時点でかなり強い。

いつから持っていたかは分からないけど今までは存在を知らなかったみたいだ。

きっとアケとユウのテストが進み有用であると考えて信頼の出来る人間にこうして力を与えたのだろう。

今の日本に何人そういった人物が居るか分からないけど、きっとそんなには多くないはずだ。

なにせ支部とは言ってもそこのトップが3人も咎人になっている程なので大きな期待は出来ない。


そして、さっき捕まえた海賊から聞いた話では因島の一派だけでなく来島の一派もおかしくなっているそうだ。

あちらは反対側の大阪方面へと向かい、そちらで暴れ回っているらしい。

ただし、あちら側は組織の本部も近く支部にも囲まれる形になっているので放っておいてもいずれは鎮圧されるだろう。

なので俺達が向かうとすれば本拠地の島々が在る辺りだ。

3つ目の派閥である能島の一派は今のところおかしな行動は見せていないという事なのでそこも確認をする必要がある。

まあ、その辺は面倒なのでアンドウさんに丸投げすれば良いだろう。


そして食事を終えて部屋に戻ると、そこには布団が3つに枕が4つ準備されていた。

ただ1つの布団は他の2つと違い明らかにサイズが大きいので俺はその理由を考えて答えを出した。


「どうやら宿の連中は俺がアケとユウと一緒に寝られるように気を使ってくれたんだな。もし違ったらいけないからこうして予備も準備してくれたって事か。」


そう結論付けて納得していると後頭部に打撃音が響いた。

どうやら気付かない内にミズメも付いて来ていたようだ。


「何を馬鹿な事言ってるのよ。私もこの部屋なんだから4人でしょ。さっきゲンさんが言ってた事を聞いてなかったの!?」

「いや、全然聞いてなかった。」


どうやら後頭部を殴ったのはミズメで間違いなさそうだけど、なんだかさっきの風呂から遠慮が無くなって来た。

そしてミズメは大きく溜息を吐いて肩を落とすと背を向けて歩き始めた。


「は~、仕方ないわね。もう1つ借りて来るわよ。」

「その必要はないだろ。」

「え!?」


すると俺の言葉にミズメは勢いよく振り向き、次第に顔を赤く染め始めた。

それに顔へ手を当てたり髪を指でクルクル巻いたりと挙動不審な事をしているので少し面白く見える。


「そ、そんな。いくら何でも早すぎるわよ。さっきの今で同衾なんて・・・。私にだって心の準備ってものが。それにアケとユウだって居るのに。」

「そうだな。だから2人が俺と寝てお前が普通の布団で寝れば解決だろ。」


いったい何を勘違いしているのか、別に布団を全部使う必要な無い。

しかしミズメは何故かその場でガックリと項垂れ、何やら独り言を言い出した。


「・・・そうよね。分かってたわよ。ハハハハハ・・・。」


ハッキリ言わせてもらえば灯りの無い暗い廊下で髪を前に垂らして項垂れる姿はホラー感が半端ない。

しかもなんだか暗いオーラを放っているから猶更だ。

爺さんに見つかったら魔物と間違われて退治されるんじゃないかと心配になってくる

そして、そうならない為にも俺はミズメの手を取ると部屋へと引きずり込んだ。


「そんな事よりも部屋に入るぞ。せっかく遊び・・・下見に来たんだ。今日は簡単には寝かさないからな。」

「ちょっと引っ張らないでよ。ハルっていつも強引なんだから!」

「お前はそうしないと動かないだろ。」


そして部屋に入るとやはりこの時代の灯りはとても暗い。

あるのは蛍光灯やLEDライトではなく行燈や蝋燭だ。

これだと遊ぶには暗すぎてテンションが上がらないどころか、まるで怪談話をする雰囲気と言える。

なので俺は部屋の中央にテーブルを出すと天井からランタンを2つ吊るして部屋を明るくする。

ホワイトガソリンを使ったかなり明るいタイプなのでこれで十分だろう。


「時々思うんだけどそんなの何処から手に入れて来るの?」

「フフフ。これは21世紀の秘密道具なのだよ。」

「21世紀?何を言ってるの?」


しまった。

ついウッカリいつもの調子でネタが出てしまった。

しかし、うっかりとは言え全く知らない言葉は翻訳されないみたいだ。

それなら未来とか言っても大丈夫かもしれないけど次回からはなるべく気を付ける事にする。


「まあ、意味のない言葉だから気にしないでくれ。それじゃあ今夜はこれで遊ぼうじゃないか。」


そして取り出したのは現代では殆どの人が一度は遊んだ事のあるトランプだ。

これなら簡単なルールで子供でも遊ぶ事が出来る。


「それは何なの?花札とは違うみたいだけど。」

「まあ似た様な物だな。まずはババ抜きを教えるけど、ここに数字が書いてあるだろ。」

「これって数字だったの?初めて見るわね。」


するとミズメを含めアケとユウも書いてある数字を見て首を傾げる。

そう言えばこの時代の人は漢字で数字を書くんだった。

多分だけどこのアラビア数字が日本で使われる様になるのはもっと先の事なのだろう。

きっと外の文化を積極的に取り入れ始めた明治以降辺りからかもしれない。

そんな事はどうでも良いとして俺はカードを広げて説明を続ける。

そして一応は読み方と、どういったルールかを説明してカードを配って行った。


「それじゃあ始めるぞ。」

「望むところよ!」

「絶対負けないよ。」

「勝負に勝つのは私です。」

「ケッ!ガキ共が俺に挑むなんざあ1000年早えぜ!」

「フフフ、あなたはそれでいつも負けているでしょ。勝つのはこの私です!」


あれ・・・さっきよりも人数増えてね?

うっかり人数分を気にせず配っちゃったけど明らかに2人増えてるよね。

そして声のした方向へと顔を向けると、そこにはツクヨミとスサノオがいつの間にか参戦していた。


「おい、別にゲームに参加するのは良いけどお前らって暇なのか?もしかして邪神がこっちにちょっかい掛けて来るのはそうやって遊んでるからじゃないだろうな?」


先日も邪神と有意義な会話をしたばかりだ。

もしかして、俺が思っているよりも神々の戦いとは温い感じなのか?


例えば

「今日はカードバトルで勝負するぜ。」

とか

「ま、待て!そこの駒は取らないでくれ!」

「仕方ないな。待ったは今回限りだぞ。」

みたいなノリか。


俺はてっきり

「俺のこの手が真っ赤に燃えるぜ!ゴオッーート・クラッシャーーー!!」

とか

「ケッケッケ!汚物は消毒してやりますよ!神の裁きを受けるが良い!!ゴオッーーート・ブレーーース!!」

「ギャアーーー!!!」

みたいなノリかと思てたのに。


「いや、お前の頭の中で俺達をどう見てようと良いけどな。俺の手に出たり消えたりする入れ墨はないぞ。」

「アナタは私を何だと思っているのですか。私の口や目から光線なんて出ませんよ。そういうのはアマテラスの担当です!」


何気にアイツは目や口からビームが出せるんだな。

まあ、太陽神だからそんな気はしてたけど・・・。


「やったーーー終わったよ。」

「私も無くなりました。」


すると並行して行っていたババ抜きでアケとユウが上がってしまった。


「私もこれで終わりです!」


そして続いてミズメも上がり残るは神2人と俺だけだ。


「フフフ、ちょっと油断しましたがこれからが本気の戦いです。」

「俺も負けてられねーな!」


とは言ってもビリでないだけで既に3人には負けている。

そして2人が本気になった所で目が怪しく光り、相手のカードをじっと見つめ始める。

なんだか凄い不正のニオイがプンプンするんだけどな。

絶対に透視とかそんな感じの能力を使ってるよね。


そして最大の問題は最初からずっと俺の手札に紛れ込んでいるババの存在だ。

俺のカードはミズメが取っていたんだけど毎回このカードを見事に回避している。

運の悪さではこの中で1番のはずが驚異的な引きを見せていた。

そして俺が予想した通りコイツ等は的確にカードを揃えて枚数を減らし始めた。


「お前ら大人気なくないか?」

「何を言ってるか分からないわね。」

「勝負は勝ってなんぼだぜ!」


そういう事なら俺もそろそろ本気を出すべきだろう。

皆で楽しむためにスキルも称号も全てをOFFにしていたけど、これからは何でも有で行かせてもらう。

するとツクヨミは口元を三日月形に吊り上げ、俺のカードに手を伸ばしてくる。

しかし手がカードを掴む瞬間にアイテムボックス経由で一瞬でカードをすり替えてやる。

そしてツクヨミは見事に俺が持っていたババを手元へと持って行くと、吊り上がっていた三日月は呆気なく垂れ下がった。


「ククク!どうしたんだツクヨミ様。ババでも引いたのかな~?」

「ふ、ふん。何でもないわ。」


そう言って顔を僅かに引き攣らせながらカードをシャフルするとスサノオに突き出した。


「クックック!表情が崩れてるぜ。テメーはそれだからまだまだ・・・。」


そして今度はスサノオが引いたカードに表情を引き攣らせ言葉が途中で止まる。

どうやら今度は彼がババを引いたようだ。


「フフフ!私がまだまだ何かしら~?」

「テメー幻影を使いやがったな!」

「何の事かしら。それとも図柄が見えないはずなのにそれが見えていたって言うの?」

「グヌヌヌヌーーー!!」


流石に不正を自白するまではいかないみたいだ。

凄い白熱してるけどこれで楽しいのはカードが残っている者だけだ。

ここは素早く終わらせて次からはルールを変えて再開しよう。

次回からは勝者を1人にするべきだな。

そして5分程バトルをしていると勝負か着いて敗者が決定された。


「フッ!今回は初心者に華を持たせただけだからな。次回から容赦なく叩き潰す!」

「ゲハハハハ!負け犬の遠吠えが聞こえるぜ。」

「さあ、敗者には何をしてもらおうかしら?」


すると4位と5位が敗者である俺に容赦のない言葉を投げつけて来る。

ただし言っておくけど俺はわざと負けたのであって勝とうと思えば勝てたんだ。

俺が負けないとババが永遠に3人の間を周るだけだっただろう・・・ホントだよ。


そしてツクヨミの要らない一言が他の3人に火を点けてしまった。


「それなら1番のアケのお願いを聞いて~!」

「ガハハハ!そうだな。今回の勝者はオメーだからな!」

「そうね。私は次に1位を取ってお願いをする事にしましょう。」

「それなら次は私が1位になるもん!」

「わ、私だって負けませんよ!神がなんぼの物ですか!」


なんだか俺が敗者になるのが前提で話が進んでいる。

何がどうしてこうなってしまったんだろうか・・・

皆で楽しく行うゲームのはずが、危険なデスゲームに思えてくる。

それにアケとユウのお願いなら何でも聞いてやりたいけど他の奴らは俺に何を言うつもりだ?


そして、その後の勝負は結果を言えば俺の惨敗だった。

皆が俺を仕留めに来ていると言うか、ともかく完全に狙って来ている。

なので俺は作戦を変えて俺が勝つのではなく、勝ったとしても大丈夫そうなアケとユウに勝たせる事を優先させた

所謂、試合に負けて勝負に勝つと言う奴だけど、手札の関係で2度ほど仕方なくミズメを勝たせる事になってしまった。

なので後日になってどんな事をお願いされるやら。

簡単に肩叩きとか荷物持ちとか、そういった肉体労働系で終わってくれないかな。


そして夜も遅くなり3人がウトウトとし始めた。

俺は仕方なく立ち上がると大きな布団を敷いて3人へと手招きをする。


「そろそろ寝る時間だな。俺は話があるから先に寝てろ。」

「「「は~い。」」」


そしてミズメを挟んでアケとユウの3人は一つの布団で幸せそうな表情を浮かべ眠りについた。

今回のゲームでかなり仲良くなった様で一緒に寝ても全く違和感が無いようだ。

これからは時々こうして皆で遊ぶ時間を作れば良いだろう。

頭の発達にもつながるだろうし次回は爺さんたちも交えれば人数も確保できて顔ぶれも変わって良いかもしれない。

そして最後に掛け布団を肩まで掛けてやると再び神の待つテーブルへと戻って行った。


「それで今回は遊びに来ただけじゃないんだろ。」

「俺は遊びに来ただけみたいなもんだけどな。こっちはちゃんと用件があるみたいだぜ。」


そうは言っても恐らくスサノオはツクヨミの護衛だろう。

すなわち俺が怒るかもしれない事を言いに来た可能性がある。

そしてツクヨミはようやくここへ来た目的を話し始めた


「まず、最近あなた達の活躍で魔物の被害が減り始めています。特にアンドウと言う者の働きが大きいですね。」

「まあ、アンドウさんも未来から来た俺の仲間だからな。」

「知っています。ただ、こちらで把握していない咎人も多く、黄泉も苦労していますよ。アナタのくれた剣が。」

「貸した。」

「ゴホン!貸りた剣が無ければ母も大激怒していたでしょう。」

「なら、その時点で貸し2つだな。」

「アナタは容赦がないですね。」


するとツクヨミは溜息を零しスサノオはゲラゲラと笑っている。

しかし、あれを貸したのは似た効果を持つ代わりのアイテムが欲しいからだ。

そっちはどうなっているんだろうか?


「その件に関しては今ここに持って来ております。」


そう言って取り出されたのは一本の日本刀だ。

俺はそれを受け取り鞘から抜こうと力を込めた。


「抜けないな。もしかしてこれは揶揄われてるのか?」


幾ら力を入れても鞘から一向に抜ける気配はない。

鞘の中にはちゃんと刀身もあり、引っ掛かっている所は無さそうなのにどういう事だ。


「その刀の名前は正宗マサムネと言います。とても強力な武器ですが斬るモノを選び、我々ですら自由に抜く事が出来ません。鞘に入っている状態でも浄化の力はありますが、封印されている様な状態なのでアナタから借りた剣に比べると微々たるものです。」


言われた通り鑑定してみると鞘に入った状態でも浄化の力があり、効果はアマテラスから貰った天羽々斬の剣レプリカと同じくらいだ。

封印されていてこれなら刀身自体の効果も強力なのが分かる。

使い勝手は悪いのかもしれないけど俺にとってはこれで十分だ。

もしかするとコイツもいつか気が向いて俺にその姿を見せてくれるかもしれない。


「それなら、これは俺にとっては十分な物だ。いざとなればこれでも相手を殴り殺せるからな。」

「普通の人間は浄化の効果を持つ武器で相手を積極的に撲殺しないと思いますが・・・。」


何を言っているんだ。

現代では金棒を持った天使が相手を撲殺して改心、成仏させるアニメが人気を出していたぞ。

まあ、俺としては魔法少女が肉体言語で相手を屈服させて従えるアニメの方が好きだったけどな。


「アニメと言うのがあまり分かりませんがアナタの時代は酷いお話が人気が出るのですね。」

「ギャハハハ!こりゃあこの先の未来が楽しみだぜ!」


そう言って2人はそれぞれに俺の考えている事を覗き見て感想を口にする。

ただツクヨミはこう言っているけど、先程ゲームで不正していた時は同じように邪悪な笑みを浮かべてましたよ。


「ギャハハハ!違いねえ!」

「そ、そんな事はありません!私はそんな顔で笑ってはいませんよ!」

「笑ってたな。」

「笑ってたぜ!」

「ムウ~!」


するとツクヨミは頬を膨らませそっぽを向いてしまった。

しかし、あまり揶揄うと話が進まないし、うるさくし過ぎると3人が起きてしまうのでそろそろ本題に入ってもらおう。

俺は表情を真剣なものに変えて脱線していた話を本筋へと戻す。


「それで、これだけが目的じゃないんだろ。これだけならスサノオは一緒に来てないよな。」

「はい。・・・実は先日の作戦会議である事が決定しました。」


若干ながら言い淀んでいると言う事は言いにくい事なのだろう。

表情も先程までと違い曇ってしまったので全ての神が作戦に賛成と言う訳ではなさそうだ。


「怒らないから言ってみろ。」

「分かりました。実は現在、複数に分けている役割を1人に纏め邪神を誘き寄せる為の囮にしようという事になりました。それで・・・その。」


するとその視線が横で寝ているミズメへと向けられているので、状況から考えて既に答えを言っている様な物だ。


「選ばれたのがミズメか。」

「はい。」

「でもそれでどうして俺が怒るんだ?」


アケとユウならともかくミズメなら・・・怒るかもしれないな。

何故か分からないけど、なんだかそんな気がしてくる。

これはもしかしてハルに入っている影響だろうか?

しかし、それは俺の勘違いであるとツクヨミが真実を教えてくれる。


「これはアナタに話す必要のない事です。しかし、作戦を完遂させるために敢えて言います。ハル、いいえハルヤ。ミズメの来世はアナタの愛しているアズサなのです。もし今回の作戦が失敗しまうと、最悪の場合は彼女の魂が邪神に奪われ未来の彼女が消えてしまいます。」


俺はその突然の真実に布団で眠るミズメに顔を向けた。

でも前世と言っても肉体が違う。

今まで生きてきた環境も違えば性格だって違う。

でも俺がどうして他人であるアイツを気にかけているのか、何故普通に接する事が出来ているのかが理解できた。

そして俺の中に意識を向けると前世と言えども同じ魂を持つ相手だ。

アズサから貰った勇者の称号が反応しミズメを守れと言っている様に反応を示した。


「一応確認だが、それは決定事項なのか?」

「そうです。ただしもう1つ言う事があります。」

「言ってみろ。」

「アナタが未来から持ち込んだ正史ではこの試みは旅の中半で失敗しています。回収した力が大きくなるにつれて各地の魔物を呼び寄せてしまい人からも狙われるようになります。その結果、最後は人の手によってその地の災害を鎮める為の生贄にされ命を落とすのです。」


そうか・・・最後は邪神ではなく人の手によって殺されるのなら、これから俺に向かって来る敵に容赦する必要はないな。


「それだけ教えてもらえれば問題ない。それで、どうすれば力が回収できる?」

「既に彼女を上位の役目に付けました。相手に触れるだけで回収は可能です。」

「分かった。・・・悪いけど今日は帰ってくれ。」

「はい。彼女には後日にでも。」

「俺から伝えておく。これから死人が増えるかもしれないから忙しくなるとだけ言っておいてくれ。クレームは受け付けないともな。」

「分かりました・・・。」


すると2人は消えて行ったので俺は3人の傍に行くと、その寝顔を見下ろして歯を噛み締める。


「俺は何時も何時も何時も間に合わないのか!」


あと3年!いや2年早くこの時代に来ていればアケとユウにつらい思いをさせずに済んだ。

2年早ければミズメに今の様な思いと記憶を与えずに助けられた。

現代でもアズサは攫われアケミは殺されユウナも両親を殺され攫われる寸前だった。

どうして俺は何時もこんなに間が悪いんだ!


俺は泣きそうな程の悔しさと怒りが胸で渦を巻き、強く握った拳から血が流れる程に握り締めた。

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