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131 初依頼

ハルヤが町に到着する前の事。

ハナの住む屋敷に複数の男達が押しかけていた。


「そろそろ答えを聞かせてもらおうか。」

「それは何度もお断りしています。それに私はもう子供を産めない体なのです。商家の主となった方の妻にはなれません。」


ハナは去年の春に魔物に腹部を貫かれてしまい子宮に大きな傷を受けた。

そのため町に住む医者からは二度と子供は産めないだろうと言い渡されている。

そんな中でヒルコは自身の全てを捨てハナと共にある事を誓った。

なので店の全ては弟が引き継ぐ事となり両親ともほぼ絶縁状態となっている。


「そんな事はどうでも良いんだよ。子供が欲しければ他の女に産ませれば良いんだからな。その為にこの町も遊郭にゃあ旦那のお気に入りが何人もいんだよ。お前はあの人の前で股を開いてヒィヒィ言ってりゃそれで良いんだ。」


男達はハナを取り囲むと正面の男がその顔を掴んで無理やり自分と視線を合わせさせる。

そして互いに息が掛かりそうな距離にまで顔を寄せると厭らしい笑みを浮かべた。

しかし、ここで負けてしまえば愛する相手を裏切ってしまう。

ハナは強気な視線で睨み返すと相手の手を振り払って距離を取った。


「それが人としての生き方だとは私には思えません!それに私は既に愛する人と一生を終えると誓ったのです!どんな事があったとしてもこれだけは絶対に変える気はありません!」

「ふ~ん・・・一生か。」

「何ですか!?」

「その相手が一生傍に居ればの話だろ。そう言えば旦那が3人ばかり手練れを連れて外に出てるんだ。何でも子供を売りたいって家があったらしくてな。時期的に帰る頃合いが一緒なんだが生きて戻ってくれば良いけどな。」


するとハナの顔から血の気が引いて行き古傷に激しい痛みが巻き起こる。

それはまるで愛する者の危機を傷を通して知らせてきているようである。


「私が・・・ヒルコと別れれば彼は無事で居られるのね。」

「なに条件を勝手に変えてやがる!お前は旦那と結婚して使い物にならなくなるまで所有物として生きてくんだよ。もちろんそれをアイツに伝えるなよ。そうすればせっかく無事なアイツの家族まであの世に行くかも知れねえぜ。」

「・・・この人で無し!」

「ハハハ!その通り俺は人で無しさ。今日の夕方には旦那を連れて来るからな。お前はそれまでにあの野郎を追い出しておけよ。もし、約束が守られない時は分かってるよな。」

「・・・。」


そして、男達は去り、そこには痛みと悲しみに蹲るハナだけが残された。

その後ヒルコは一度戻るがすぐに飛び出してしまい、その時には話す機会を逸してしまい大きく擦違ってしまった。

そして時間の迫る中でヒルコはハルヤたちを連れて戻り、時間のない事もあって準備していた別れの言葉よりも厳しく言い放つ結果を招いてしまう。

そして家の中に戻ったハナはそのまま崩れ落ち、大粒の涙を流しながら声を殺して泣き続けた。

そのすぐ後にその場は大量の男達に占拠され、旦那と呼ばれていた男が現れる。

しかし、それは恐怖と不幸の始まりでしかなかった。




この道をさっき通った時にはもう少し人が居た気がするけど時間帯が悪いのだろうか。

太陽は山の向こうへと沈み、空は暗くなり始めているのでちょうど黄昏時と言う奴だろう。

この時間帯は逢魔時とも言われて魔物と遭遇したり何か災いが起き易い時刻だと言われている。

もしかすると魔物が現実で暴れ回るこの時代では人は家の中で静かにやり過ごすのかもしれない。

しかし、そんな中でハナと言う女の屋敷の前だけは人が溢れ、まるでここだけは別の町のようだ。

もしかして招待客限定でパーティーでも開いているのだろうか。

それにしては全員が武装していて殺気立っており、まるでこれから戦か討ち入りにでも行くかの様だ。

そんな中でちょうど近くに人が来たので聞いてみる事にした。


「ちょっと聞きたい事があるんだけど。」

「なんだ・・・。来たーーー!敵襲だーーー!」


すると男は大声を上げると敵が来た事を周りへと伝えながら走り出した。

あの慌てようからして相手が人間でないのは間違いなさそうなので逢魔時に魔物が現れるのは本当の事みたいだ。


「仕方ない。イベントの邪魔になるといけないから俺の方で始末しておくか。」


そう言って俺は来た方向へと振り向いて剣を構えた。

その間にも人が集まり始め、俺の後ろには人垣が出来上がる。

しかし、おかしな事に魔物は何処にも見当たらず、気配は別の方向から伝わってくる。


「どうやら魔物は気付かない間に俺の上か横を擦り抜けて屋敷に入ってしまったみたいだな。これは早く行かないとハナって女を連れて行けなくなってしまう。」

「貴様!やっぱりあの女を取り戻しに来やがったな!」

「それに他人には話すなって言ったのにやっぱり話しやがたみたいだな!」


ん?取り戻す?相手に話すな?コイツ等はいったい何を言ってるのだろうか?

それだと、あるであの女が脅されていたみたいな言い方なので、もしかするとハナの心変わりには理由があるのかもしれない。

まあ、それに関する事は爺さんから受けた依頼には含まれていないので後回しでも良いだろう。

俺にとって興味のない事なので事情聴取は当人同士でしてもらえば良いと思う。


「お前らそこをどけ。俺はハナを連れて行かないといけないんだ。」

「やっぱりコイツ俺達がアイツを脅してた事を知ってやすぜ!」

「このままだと旦那とあの女との初夜が台無しになっちまう。」

「まあ、お前ら落ち着け。命令はここに近づく部外者を全員始末する事だ。それに玄武の支部にも既に手練れが向かっている。今頃は全員の始末が終わっているころだろう。」


あそこには真実を掴みかけているヒルコが居るからもしかしてと思ってたけど、予想通り手が回ってたようだ。

しかし、コイツ等は何も知らないようだけど、どれだけの被害が出ることか想像も出来ない。




そして、ハルヤが出て行って少しした頃に玄武の支部は他の支部のメンバーから包囲されていた。


「テメー等!とっとと出て来やがれ!もう何処にも逃げ場はねえぞ!」


すると亀の書かれた暖簾を潜り1人の老人が姿を現した。

しかし今は目が閉じられ先程ハルヤに浴びせた威圧は微塵も発していない。

そして周囲を見回し状況を確認すると困った様に軽く首を傾げた。


「何の騒ぎかな?」

「爺ー!テメーには用はねーんだよ!他の奴らを出しやがれ!」


しかし老人は周囲から向けられる威圧や殺気をまるでそよ風でも受けている様に受け流し、とても楽しそうな声で笑った。


「ホッホッホ。最近の若い者はゆとりが無くていかんな。良いかお前達。技とは体だけで放つものではない。心技体の全てを極限まで高めてこそ真の威力を発揮する。それから言えばあの者は心の比重が極限ではなく異常と言えるが、まあ奴には奴の強さがあるのじゃろう。」


老人は髭を擦りながらゆっくりと語ると包囲している男達へと歩み寄って行った。

そして、その距離を半分ほど詰めた位置で完全に包囲されると老人の雰囲気が突如として変化した。


「じゃが今回に関しては儂もあの小僧に賛成じゃ。心の高まりは時にどんな身体的な不利や技さえも覆す。貴様ら儂の孫に手を出して生きて帰れると思うなよ!」


その直後に老人からはまるで爆弾でも破裂したのかと言う程の気が周囲へと広がり、それは物理的な力となって男達を飲み込んで行く。


「な、なんだこの爺さんは!?」

「どうなってやがる!コイツが現役を退いたのは10年以上昔の話じゃなかったのか!」

「お前ら程度のガキどもに引退しておろうと最高位まで上り詰めたこのゲンか負けると思うなよ!その勘違いを命を持って償うが良い!」


そして正面に向かい震脚を踏み出したゲンは間合いに誰も居ないのにも関わらず握った拳で正拳突きを放つ。

すると前に居た男は上半身が木っ端みじんに砕け散り血の霧が周囲へと広がった。

それを見て1人の男が思い出したように声を上げる。


「まさかこれは幻殺拳か!気を自在に扱い相手を粉砕する殺人拳!過去に魔物になった城主を倒すためにたった一人で数百の兵を皆殺しにしたという伝説の!」

「そ、そんな奴に勝てるはずがねー!」

「支部長の奴、何がガキ共を殺すだけの簡単な仕事だ!」

「こんな化物に勝てる訳ねーだろう!」

「お、俺は抜けさせてもらうぜ!」

「逃げるなら早い者勝ちだ!殿は任せたからな!」


そしてゲンの正体を知った男達は我先にと逃げ始めた。

如何に強かろうとその老いた体では若い自分達の体力には敵わず、追っては来られないだろうと判断したのだ。

それにどんな技にも必ず有効距離があり、味方という盾が多い内に逃げれば生き残れるチャンスがあると考えた。

しかし、それは相手がこの老人一人であった場合に限られる。

今のこの場に慈悲を掛ける者は誰も居らず、目に見えない攻撃が別の角度からも放たれた。


「「「ぎゃーーー!」」」

「あ、足がーーー!」

「腕がー!」

「まさか鎌鼬の術か!」


そして逃げるタイミングを逸した所へ3匹のクマが突撃して行く。

その攻撃は容赦の欠片も無く母熊の一撃はまるで稲を刈る様な軽さで相手を幾つにも分断し、子熊の攻撃はまるで小型爆弾で叩きつけているかのように攻撃が当たった部分を爆ぜさせる。

そして攻撃を開始してから男達が物を言わない躯となるのに3分と掛からなかった。

ゲンはそんな中で戦闘を正確に分析すると戦いが終わるとすぐに支部の中から魔法を放っていたアケとユウの許へと向かい提案を持ち掛ける。


「熊たちの実力にも驚かされるがお嬢ちゃんたちの実力には度肝を抜かれたわい。どうじゃ、この町に居る間に儂の教えを受けてみんか?」

「お兄ちゃんが良いって言ったら良いよ。」

「私もです。でも字を書いたりも出来る様になりたいです。」

「うむ。ならばその辺も儂が教えてやろう。なに、あの者ならお前達が頼めば首を縦に振るじゃろ。ここを片付けたら少し見てやろうかの。」


そう言って真赤な地面を背にすると死体の処理道具を取りに支部の裏へと向かって行った。




そして、現在のハルヤは。


「なんだかさっきの女にも事情がありそうだな。」


俺は両手に刀を持つと襲って来る者、武器を持っている者は容赦なく斬り殺しながら進んでいる。

それにコイツ等は明確に敵対し、あまつさえアケとユウを狙った一味の仲間だ。

肩には青龍、朱雀、白虎の刺繍があるけど、やっぱり仲が悪いと言うのはデマだったみたいだ。

こうして1カ所に集まって警備員の真似事なんてしてるのだから逆に仲が良さそうに見える。


そして既に屋敷の正面の道は血で舗装され、俺の通った後には生者は誰も残って居ない。

空は濁った血の様に赤黒く染まり、血の道に沿って次第に闇が迫ってくる。

そして死んだ仲間の数に比例して相手の士気はゼロからマイナスまで減少し、今では自ら向かって来る者も皆無となった。

まあ今後の事を考えれば魔物の件もあるので皆殺しと言う訳にはいかないだろう。

俺はこの時代では不釣り合いなゴーグルを取り出すとそれを顔へと装着する。

最初の夜に確認したところ俺が身に付けていた物は全てアイテムボックスに保管されていた。

他はどうでも良いけど指輪だけは無くす訳にはいかないので、最初に付けていないのに気付いた時には凄く焦った。


そしてゴーグルを通して魂を確認すると少し濁ってはいるけど黒く染まっている奴はいないのでこれくらいならすぐに叩き直せるだろう。

そして俺は得物から血を滴らせながら最初で最後の警告を行う事にする。


「死にたい奴は向かって来い。生きたい奴は武器を捨てろ。」

「わ、分かった!俺達は支部長に言われて集まっただけなんだ!だから殺さないでくれ!」

「除名になっても死んだらもともこもねえよ!」


『ガチャ!ガチャ!ガチャ!』


男達は揃って武器を捨てると俺の前から通りの端へと移動して道を開けてくれる。

その横を通って先へと進むと門を潜って屋敷へと入って行って行くと奥から激しい言い争いが聞こえてくる。

どうやら中に居るのはハナだけではなくお客さんも何人か居るようだ。

俺は声のする方へと歩きながら耳を澄ませ何を話しているのかを聞いてみる事にした。


「お前達が私のお父さんとお母さんを!」

「ガハハハハハ!あの夜は楽しかったぜ。」

「しかし子を産めなくすればあの男も諦めると踏んでいたのだがな。」

「それにしても桜の木の下で告白とはな。そんな迷信を信じている馬鹿が居るとは思わなかったぞ。」

「お前達、何を悠長に話している!早くハナを押さえつけろ!俺はこの時をずっと待っていたんだぞ!」

「ハイハイ。まあ、俺達にとっちゃ人間を捕獲するなんざあ簡単な事だけどな。」

「きゃあーーー!助けて・・・助けてヒルコーーー!」

「ギャハハハハ!アイツなら俺達の部下がとっくに始末してるさ。諦めるんだな。」


どうやら面白そうな会話はこの部屋から聞こえて来るみたいだ。

それにしても桜の木の下で告白する事の何が悪いって言うんだ。

迷信や伝説と言われようと、そういった事に頼らないと勇気が出せない奴(俺)も居るんだよ!

本当にここに居る奴らは分かってないな!

俺は閉じられた襖に手を掛けると勢い良く開いて姿を現した。

するとハナは青、赤、白の羽織を着た奴らに床へと押さえ付けられ、それを1人の男が立ったまま眺めている。

現代なら明らかに警察のお世話になる光景だけど、この状況に俺の中にある情報が一つに繋がった。


「あ、そう言う事か。」

「誰だテメーは!」

「昼間に世話になったんだけど他の奴から聞いてないのか?」


昼間にはあんなに世話になったと言うのに上司にちゃんと報告が届いてないとは悲しい事だ。

今時・・・は少し違うけど、学生ですら報連相くらいは知っているぞ。


そして部屋の中を見回せば見知った顔が2人に知らない顔が3人。

いや、3人の方は鬼の様な魔物なので3匹と言った方が正しいかもしれないけどコイツ等は背中に各支部のマークを背負っている。

たしか、玄武の支部に居た老人も似たような物を着ていて、もっと古ぼけていたけどあそこには他に誰もいなかったので支部長的な存在なのかもしれない。

そうなるとコイツ等が各支部の支部長である可能性がある。


ただ、この3人には俺が倒したフルメルト国王の様に体から鎖が伸びている。

まだ糸は伸びていない様だけど、このまま放置すればアイツの様に周囲に邪神の影響を広げて次々に人を魔物へと変えてしまうかもしれない。

偶然とは言えこの時点で発見できたのは運が良かった。


そして知っている方は目的のハナと、俺達を置き去りにして何処かに行っていたゼンだ。

雇用主を置き去りにしてこんな所で油を売っているとは思わなかったけど、これはお仕置が必要なレベルだろう。

それにしても、まさかこんな再会をするとは思っていなかったのか2人の顔には驚きが見える。

しかしゼンの表情はすぐに邪悪に歪み鬼たちへと声を荒げた。


「奴を殺した者には依頼料の倍払うぞ!何が何でもあの小僧を殺せ!」

「ハッハッハ!がめついお前にしては気前が良いじゃねえか。コイツは俺が貰っても良いよな。」


すると赤い羽織を着た鬼が立ち上がり、横に居る2匹へと視線を向けた。

その背中には力強く羽ばたく朱雀の刺繍が金色の糸で編みこまれており、一目で高価な物であることが分かる。


(・・・売ったらお金になりそうだな。)


そして服の値段の事を考えていると、視線を向けられている2匹が返事を返していた。


「好きにしろ。ガキの悲鳴など聞いていてもつまらん。」

「代わりに後で酒を奢れよ。」

「何を言っているんだ!3人で掛かれ!アイツは本当に化物なんだぞ!」


しかし俺の見た目が子供だからか鬼は赤い羽織を着た1匹しか動かない。

他のはハナを拘束したまま傍観するらしく怒鳴り散らすゼンの指示を完全に無視している。

それに上下関係がある訳ではなさそうで3匹には個性とも言える人格が残っているようだ。


しかし見た目が幼気な子供に化物とは失礼極まりない奴だ。

しかも目の前に居る奴らは誰が見ても本物の化物なはずなのに、どうして俺の方が化物にされているのか?

でもここで戦うと家を壊してしまうかもしれず、大丈夫だと思いたいけど弁償代を請求されたら今はハッキリ言って余裕が無い。

過去に来てから3日目にして借金塗れになるのは御免被りたいのが本音のところだ。

しかし鬼はお構いなしと床を蹴って一気に距離を詰めると腰の刀を抜いて切り掛かって来た。

もちろんコイツの足の爪は鋭く尖っているので畳が切り裂かれ数枚は交換が必要な程に傷んでしまった。


「おい!その畳はお前が弁償しろよ!」

「畳の心配よりも自分の心配をするんだな!」


そして大きく刀が横薙ぎに振られ、首に向かって襲い掛かってくる。

このままだと横の襖まで斬られてしまいそうなので俺は一歩踏み出して刀身を素手で掴み取る。

更に相手に軽く当て身をして停止させるとそのまま位置を反転させて外に向かって蹴り飛ばした。


「なんだと!」

「良し、これで修理するのは畳が3枚くらいだな。」


現代の知識で言えば畳は1枚が2万円くらいはするはずなので、これなら小判1枚あれば補えるだろう。

すると背後から迫る気配を2つ感じ取ったので素早く向きを変えて体勢を整える。

ハナを拘束しながら傍観するのかと思ってたけどこちらの動きを見て考えを変えた様だ。

ならばと俺は素早くナイフを取り出すと相手の足へ向けて数本を投げ付けた。


「先程はどう攻撃を受け止めたのかと思えば暗器使いだったか!」

「しかし、その程度の攻撃を食らう我らではないわ!」


どうやら赤い鬼の攻撃を受け止められたのは俺が手元に隠し持っていた道具を使用したからだと判断したみたいだ。

そして言葉の通りに青い鬼と白い鬼は俺の投げたナイフを回避し、それは奴らの走り出した位置へと突き立った。


それにしてもこれで畳が7枚は取り換えなければならなくなった。

この時代の相場は分からないけど小判1枚で補えるだろうか・・・。


「お前ら人の家をあまり壊すな!後で誰が直すと思ってるんだ。」

「そんな物はあそこの男なら容易い事よ。」

「奴はそこの女から財産を奪い、たらふく肥え太ってるからな。」

「・・・確かに。」


腹は出てないけど金は蓄えていそうな服装をしている。

そう言えばハナは自分の店を何処かの男に奪われたとかヒルコが話してたのでそれがゼンならコイツの金を今度は俺が奪ったとしても文句は言われないだろう。


「お前ら頭が良いな。」


俺は振り下ろされた刀をスルリと躱し相手の背後に回ると背中を蹴り飛ばした。

それでさっき護った襖が4つほど粉々に砕けたけど、今は金の当てがあるので問題ない。


(やっぱり力をセーブして戦うのは難しいな。)


そして3匹を外に追い出す事に成功したので俺も外に出るとアイテムボックスから鬼を倒すには欠かせない必殺のアイテムを取り出した。

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