異世界サバイバルは突然に
「どこ? ここ」
神社に向かって森の中を歩いていたはずが、見たことのない種類の木々に囲まれていた。
「何の木なんだろ」
『鑑定を始めます』
聞いたことのない声が頭の中に響いた。
『鑑定完了。モーランド王国シェンネルの森に群生しているサカメの木です。秋になると美味しい実がなります』
「まさか、異世界?」
キョロキョロと辺りを見渡す。
「やば。森しかないじゃん」
服装も荷物もそのままに、異世界転移してしまったようだ。
「よりによってなんで森の中なのよ! シェンネルの森って何よ!」
『検索を始めます。検索完了。シェンネルの森はモーランド王国にある広大な森で、果物の木が多く、それを目当てに人も魔獣も集まります』
「はあ? 魔獣って何よ!」
『検索を始めます。検索完了。魔獣とは、この世界固有の生き物で、邪悪なものが多いです。魔法での討伐推奨です』
「魔法? どうやって?」
『検索を始めます。検索完了。呪文を用います』
「私が使えるやつあるの?」
『検索を始めます。検索完了。炎、ぬいぐるみ化が使えます』
「ぬい? 使い方を教えて」
『使い方を検索します。検索完了。言葉を唱えます』
「ヤバ。これからどうしたらいいのよ!」
『TODOリストを確認します。確認完了。特に予定はありません』
「そんなこと分かってるよ! この状況をどうサバイバルするのかって聞いてんの!」
『状況を分析します。分析完了。ここはシェンネルの森です』
「それは分かったってば。面倒だなぁ。あ、もしかしてアレ? よし。『ステータス、オープン』」
『ステータスを開きます。開示完了。小宮山由美、Lv36。職業、渡り人。家族、なし。HP1500、MP6000、使用済魔法、鑑定、検索、分析』
「文字で読みたいなぁ。画面とか出せる?」
『PAD形態に変わります』
空中に四角くて薄い機械が現れた。落ちる! 咄嗟に掴んだ。
「危なかった。急に変わるんだもん」
慣れた手つきで操作をする由美。
「見知ったアレな感じね。地図もあったけど、えー、森のど真ん中にいるよ。一番近い街は、と。あれ? この見知った歯車、設定じゃない? 言語設定、え、もしかして通じない感じ? やば」
突然背後に気配を感じた由美は走り出した。距離を取ってから素早く振り返る。
「怖っ」
大きな魔獣が由美に興味を持ったようだ。
「ぬいぐるみになれ!」
ポンッ。
「え。可愛い」
ニヤリ。
出会った魔獣は全てぬいぐるみにして、辿り着いた街で販売。由美は大金持ちになった。
完




