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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
2章 球技大会と青八木家

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41話 乙女たちの語らい4

「えっ……?」


球技大会、男子決勝戦。バスケ部のエースである青八木雨竜が率いるBクラスが劣勢で折り返した前半戦。


あまりに組織的に固めたCクラスのディフェンスに会場から不満が生まれていた。「このままこれ続くの?」やら「Cクラスダサくない?」やらあからさまな会話が流れる中、月影美晴はBクラスのベンチを見て驚愕していた。


廣瀬雪矢が、準備運動をしているのだ。何度も試合には出ないと言い続けていた彼が、念入りに身体を動かしている。まさに、後半から出場すると言わんばかりに。


「あれ……廣瀬君出るの?」

「……ホントだ、準備運動してる」


一緒に決勝を観戦していた桐田朱里と御園出雲が少し遅れてその事実を認識する。美晴と同じように、その光景に唖然としていた。


「廣瀬君って、運動神経いいの?」


雪矢とクラスが異なる朱里は、1年の時に同じクラスだった美晴と出雲へ質問する。


「いや、そんな印象はまったくないけど」

「そもそも雪矢君、体育祭の100メートル走とか真面目にやるタイプじゃないからなぁ。体力測定の結果はさすがに知らないし」

「でも、ここで出るってことは……」

「……」


朱里の言葉に、美晴も出雲も返答することができなかった。

決勝まで危なげなく進んだとはいえ、1度も試合に出場していない雪矢。その彼が、8点差で負けているという状況で出場するという展開。

それは言うまでもなく、彼が出ればBクラスが逆転できると信じている人間がいるからに違いない。


そしてその人間は間違いなく――――


「勝つよ、Bクラスが」


美晴は無意識に、そう口にしていた。自分でも少し驚くほどに喉から自然と言葉が出て行った。


「でも、バスケ部4人相手に」

「だね、私もそう思う。ここから勝つなんて簡単なことじゃないって分かるよ。でもさ、1年一緒にいたらなんとなく思うことがあるんだ」


そう言って美晴は、雪矢だけでなく、チームメイトへ声をかけ続ける雨竜を見た。



「――――雪矢君と雨竜君が組んで、負ける姿が想像つかないよ」



雪矢の運動能力がどれほどか知らない。バスケの実力がどれほどか知らない。どうしてこの場で出場するのかも分かったものではない。分からないことだらけの現状だ。


ただ、そんな中でも1つ言えるのは、廣瀬雪矢が何もしないまま負けることはないという確信があること。わざわざ試合に出て敗戦処理をするような器ではないこと。それは美晴だけでなく、朱里や出雲も分かっていた。


そんな存在が青八木雨竜と組んで試合に出るのだ、劣勢などあっさり吹き飛ばしてしまうと彼を知る者はそう思う他なかった。


「確かに、廣瀬雪矢はともかく、青八木君がこのまま終わるとは思えないわね」


出雲も美晴に同調する。バスケの実力差というものを明確に理解できていない彼女だが、何でもそつなくこなす雨竜が前半のまま終わるとは思えなかった。


「廣瀬君、頑張れ……!」


朱里は2人には聞こえないほどの小さな声で雪矢を応援した。もはや彼がバスケが上手か下手かなどどうでもいい。試合に出る以上、純粋な気持ちで雪矢を応援したかった。



そして、雪矢を知る者にとっては確実に波乱が巻き起こると思われる後半戦が、まもなく始まろうとしていた。

いつも閲覧ありがとうございます。

本日、もう1話更新する予定です。


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