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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
2章 球技大会と青八木家

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40話 球技大会14

猛省のもう1話です。

「出るわけねえだろ、何言ってんだ?」


僕は雨竜の言葉を一蹴した。負けが濃厚のこの状況で僕が出る? 寝言は寝て言ってもらいたいものだ。


「そうだぜ青八木! なんで廣瀬を出すんだ!?」


当然味方からも不満が出る。今までベンチにふんぞり返っていた奴が試合に出て活躍できるとは誰も思わない。文句を言わない方が間違っている。


「雪矢は確かにスポーツが得意なわけじゃないが、1つだけ皆じゃ勝てないところがある」


しかし雨竜は、皆を説き伏せようと僕を試合に出す有用性を語り始めた。


「雪矢は自分と相手の実力を誰よりも冷静に判断できる。だから経験者のあからさまなプレッシャーにも臆さないし、普通にプレイできる。その場その場で最適な選択をできる奴だ」


僕を不要と切り捨てるチームメイトたちの表情が変わる。雨竜がここまで評価している廣瀬雪矢という男へ期待を持ち始めたのだろう。



だが雨竜、その言葉じゃ僕を説得することはできないぞ?



「なあ雨竜、お前は何をそんなに熱くなってるんだ? 言ってたよな前、自分のチームがそのレベルなら勝てないのも仕方ないって。まさに今がその状況だろ、負けを認めていい試合でもすればいいんじゃないのか?」


僕は煽るように面白おかしく雨竜に言った。青八木家に向かう際、ドライに言った雨竜の言葉をこの場で返してやった。どれだけ取り繕うが、これがお前の本心だろう?



「……そうだ。そのチームのレベルが分かって、それで勝てない相手と戦うなら負けても仕方ない。俺はそういう風に思う人間だ」



雨竜は僕の言葉をそのまま認めた。勝てる可能性があると言いながら、負けても仕方ないとはっきり言った。ではこの話は終わり、いい試合をして勝手に終わってくれればいい。そう思っていたのだが……




「でもまだ、お前を試合に出してない」




雨竜は再度真っ直ぐ、僕に期待を込めた視線を送った。



「お前が出ていない状況で負けを認めるわけにはいかない。お前が出て、こちらの全戦力で戦って負けたんならそれは仕方ない。その時はきっぱり負けを認めるさ」



まったくこの男は、本当に嫌な奴だ。

初めてまともに話したときから、何かと僕を巻き込んでばかり。そのせいで僕の平穏がどれだけ崩されたことか。この男と一緒に居ていいことなんてホントにないぞ。


雨竜への説得は失敗した。チームメイトが僕へ期待の視線を送る。いかにも僕が試合に出なければいけない状況。そういう雰囲気が醸し出されている。



「で? それで僕が絆されると思ったのか?」



当然僕は揺らがない。何を言われようが期待されようが出ないものは出ない。メリットなく試合に出るなんて馬鹿のやることだ。



「はは、分かってるって。そんなお情けでお前が出るとは思ってねえよ」



雨竜は僕の返答を予想していたように爽やかに笑った。そして分かりやすく口角を上げて、右手の人差し指を1本立てた。



「抹茶の1週間奢り、試合に出たら無しにしてやっても――――」

「アホが、最初っからそれを言え」



僕は即座にその場で屈伸を始めた。後半開始まで時間がない、すぐに身体を温めなくては。



「お前な、そんなあっさり」

「馬鹿か、たった7分試合に出るだけでお金が節約できるんだぞ? 出るに決まってんだろ」

「身から出た錆だけどな、お前の場合」

「黙れ。言っとくが僕が出る以上負けは許さん、死ぬ気で働いてもらうぞ」

「当然だろ」


そうして残りのハーフタイム、準備運動をしながら簡単に攻守について皆に話した。前半で相手の攻守の形は頭に刻み込んだ、こちらからもいくらでもやりようはある。上手くいけば4ゴール差なんてすぐに追いつける。



見てろよCチーム、ここから怒濤の追い上げをしてみせるからな!

僕じゃなく雨竜が!

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