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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
2章 球技大会と青八木家

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26話 球技大会

梅雨と電車の中で会話をしたちょうど1週間後の朝、陽嶺高校2年生は体操服に身を包み第一体育館に集まっていた。

運動大好き勢が待ちに待った球技大会の日である。

先程までは体育教師による激励やら注意事項の説明やら行われていたが、真剣に話を聞いている人がどれだけいるのやら。各クラス40名計240名の生徒が集結しているが、内容を全部理解している人間は半分もいない気がする。


最後に全体でラジオ体操を終えてから、球技大会の開会式は終了した。男子はステージ横に貼り出されているタイムスケジュールを見に行き、女子は渡り廊下を通じて第二体育館へと向かっていく。開放されている渡り廊下の扉の前には、大きな足拭きマットが設置されていた。


というのも、今週はずっと雨続きで、小さな屋根しかない渡り廊下を歩くだけで上履きが濡れてしまうのである。今日も例に漏れず天気は悪く、スポーツ日和というにはジメジメしすぎていた。今思ったんだが、僕が奮闘しなくてもサッカーだったら中止になってたんじゃないだろうか。


さて、これからどうしようか。

体育教師を除く2年教師陣にとっては今日は休みのようなもの、生徒の応援をするかドライに期末テストの作成に勤しむか、いずれにせよガードは緩いはず。試合中の審判もバスケ部の有志が対応するようで、サボるのはそこまで大変じゃなさそうだ。



「雪矢君」



とりあえず一番口うるさいであろう雨竜から隠れようかと考えていると、眠気を誘ってきそうな穏やか口調で声を掛けられる。


振り向くと、そこにはニコニコ微笑む月影美晴の姿があった。彼女も当然体操服を身につけているが、僕とは違い短パンと同色の藍色の上着を装着していた。冬に着る体操服の長袖バージョンである。


「それ、暑くないのか?」

「暑くないよ、今日は雨降ってて気温も高くないし」

「見てるこっちが暑くなるんだが」

「あはは、それは悪いけど我慢してね」


周りを見渡すが、月影美晴のように上着を身につけている女子はほとんどいない。彼女が特別寒がりなんだとなんとなく思った。



「それで、どうしよっか?」



月影美晴が僕に声を掛けてきたのは、いつかの約束があったからであろう。

暇人同士、球技大会を一緒に過ごす。

僕としても異論はないため承諾したが、いざサボるとしたらどうすればいいのだろうか。


「とりあえず第二体育館行く? 雪矢君はそっちにいた方がサボりやすいと思うけど」

「えっ、逆じゃないのか?」


月影美晴の提案はあまり良いとは思えなかった。

女子が利用する第二体育館に居れば雨竜や口うるさい体育教師の目からは逃れられそうだが、女子の中に僕がいたらどう考えたって目立つ。それなら男子の中に紛れた方がうまくサボれるんじゃないのか、木を隠すなら森の中だろう。


そこまで考えて思い直す。バカか、僕がこっちに居るということは月影美晴もこっちに居るってことじゃないか。コイツを男子の巣窟に置いたらアホみたいに目立ってしまう、第一体育館は却下だ。


となると月影美晴の案しかないわけだが、それで本当にいけるんだろうか。僕の圧倒的男前オーラを考慮に入れると、僕のことなど容易に見つかってしまうに違いない。ああ罪深き僕の存在。


「私がこっちにいるよりはよっぽどいいと思うんだけど」

「ん? もしもし月影さん? それはどういう意味かな?」


まさかこの方、僕が女子の群れにいても馴染むだなんて言い出すんじゃあるまいな。男性フェロモン放散してやろうかニコニコガールめ。


「違う違う、もっと現実的な話」

「現実的な話?」

「そうそう。第二体育館なら空調設備があるよ」

「さっさと行くぞ、お花畑が僕を待ってる」


まったくそういうことなら早く言ってもらいたいものだ、どこへ行くべきか一生懸命考えていたのが馬鹿みたいじゃないか。

夏は涼しいところに行く、人間として正しい行動をしなくてはな。僕の男前すぎて目立つ問題が解決していないが、しばらく目を瞑るしかあるまい。適温こそ正義である。


「ふふ、雪矢君のそういう素直なところは魅力だよ」

「馬鹿いえ、僕は全身魅力人間だ」

「海に嫌われて泳げなさそうだね」

「誰が海賊女帝だ、石化させるぞコラ」

「それ、魅力じゃなくて魅了じゃないかな?」

「……どっちでもいいし……大した問題じゃないし」

「ああゴメン、話の腰折っちゃったね」

「慰めるな! 余計惨めになるだろ!?」

「だって雪矢君、あからさまにふて腐れたし」

「もう知らん! 僕は全身魅力人間! 話終わり!」

「そうだね、石化されちゃうね」


酷いよこの人、終わりって言ったのになんですぐいじるん……?



いつも閲覧ありがとうございます。

ホントしょうもないこだわりですが、総文字数を5の倍数にするようにしています。

それを意識することで、なんと誤字脱字を事前に見つけ出すことができます。人類の工夫です。


――――と、誤字脱字を訂正しながら書いてます。

いつも誤字脱字の指摘をしてくださってる皆さまありがとうございます。


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