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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
2章 球技大会と青八木家

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20話 いつの間にやら

真っ先に僕へと笑みを見せた梅雨だったが、隣にいる姉を見て不服そうに頬を膨らませた。


「ちょっとお姉ちゃん、なんですぐに呼んでくれなかったの?」

「なんでって、宿題済ませるから声かけないでって言ったのあなたでしょう?」

「そんなの雪矢さんの方が優先に決まってるじゃない!」

「はいはい、お姉ちゃんが悪かったです。それより梅雨、早く帰ってきたのにまだ着替えてなかったのね」

「えへへ、夏服に替えたし雪矢さんに見てもらおうと思って。どうですか雪矢さん」


そう言って梅雨は、手を広げてその場で軽く1回転し始めた。セミロングほどの長さの髪と膝より少し高いスカートが花のように舞う。


僕はその様子を凝視しながら、思ったことを口にする。



「似合ってると思うが、冬服とあまり変わらなくないか?」



初めて会ったときに梅雨の冬服姿を見たことがあるが、見た目だけだと袖の長さが変わっただけで大きな変化は見られなかった。涼しそうではあると思うが。


「よく覚えてますね、確かに見た目ほとんど変わらないんですよ」

「まあデザイン費が浮いていいんじゃないか?」

「あはは、雪矢さん誰視点なんですか」

「勿論経営者だ、女子の制服を自分で決められるなんて最高の職位だな」

「えっ、雪矢さん着せたい制服があるんですか? 言ってくれればわたし、発注して着替えますよ?」

「いやいや、そこまでしてもらう必要はない」

「そうなんですか? 遠慮しないで言ってくださいね?」


一切の迷いなく男心を惑わすようなことを言ってのける梅雨。本当に天然爆弾だな、年下の女子に制服で着せ替え人形させてたらそれはもう救いようのない変態だろ。


この子が中高一貫の女子校に通ってて良かったと思う。共学にいたら氷雨さんとは別のベクトルで男子を虜にしまくりそうだ。本人に自覚がまったくないまま。



「あれ、そういえばお兄ちゃんは?」



僕とのやり取り後に気になったのか、兄の所在を確かめる梅雨。彼女からすれば、僕だけが先に来ているという認識はないのだろう。実際雨竜は僕が氷雨さんの試練を受けるまで玄関で待機中である。



「あっ、忘れてたわ。ユキ君、雨竜のこと呼んでくれない?」

「……了解です」



まだそれほど暑くなって来ていないとはいえ、存在を忘れられ外で待機している雨竜がさすがに不憫に思えてくる僕。兄想いの妹とは本当に対照的な姉である。



「……あれ?」



可哀想な雨竜のためにすぐさま黒くコーティングされた玄関の扉を開けたが、すぐ側に雨竜は居なかった。ここで僕が氷雨さんに苛められるのを待っていたはずだがどうしたのだろうか。



癒やし空間である前庭にも居る気配がなかったので、僕は2人に言ってから1度門を出ることにした。コンビニで買い物でもしに行ったのかと思ったのだが、雨竜は門を出たすぐ脇で佇んでいた。



――――何故か制服を着た女子と一緒に。



「あ、あの! 唐突ですが一目惚れしました! 一緒にお茶でも行きませんか!?」

「ごめんなさい。そういうの全て受けてたらキリがないので」



そしてすぐ後、雨竜はその女子から告白されていた。


おいおい、この10分程度で一体何があったんですかね。

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