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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
2章 球技大会と青八木家

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9話 体育館へGO

神代晴華の人気というのは1年の時から凄まじいものがあった。ルックスや性格を考えれば当然だし、学年一だと言われる理由も充分理解できる。

だがそれは、彼氏ができたという情報を以て頭打ちになっていると思っていた。いくらあいつが勘違いさせるような行動を取ったとしても、その事実を知ってしまえば、誰も彼も前には進めず、憧れるだけで終わってしまうのだと。


だから僕は、こうしてはっきり神代晴華に好意があると言われたことに少し驚いていた。


「……やっぱ無理があるよね」


僕の沈黙を否定的に捉えたのか、堀本翔輝は少し自虐混じりにそう言った。


「何が?」

「いやだって、僕みたいなのが神代さんと付き合えるわけないって」

「なんで?」

「えっ……だって僕とじゃ全然釣り合ってないと思うし」

「どこが?」

「どこ、どこ…………見た目とか?」

「それは誰が思うんだ?」

「誰って言われればそりゃ周りの人が」

「なんで周りの人が見た目が釣り合ってないって思ったら付き合えないんだ?」

「そ、それは……」

「ほらこの通り。返答もできないお前の悩みなんて大したことないんだよ」


僕はそう言って、堀本翔輝の頭にチョップを入れた。


「いたっ!」

「グダグダ悩む前に行動しろ、周りがどう思うかなんて知ったことか。当人同士が納得してればそれでいいだろが」

「でも……」

「デモも戦争もあるか、だいたい付き合う前から何に悩んでるんだ。相手は彼氏持ちの女だぞ?」

「……だよね、それなのに付き合えるわけが」

「それは違うだろ。好きなら彼氏がいても奪ってやればいいんだから。まったく諦める理由にはならん」

「う、奪う?」

「当たり前だろ、そういうつもりで僕に話したんじゃないのか?」


僕の言葉を受けて、今度は堀本翔輝が少し沈黙した。

同じ学校に相手がいるならともかく、卒業している相手に何を躊躇う必要がある。別に婚姻届を出して法律的に結ばれているわけでもないんだ、奪おうがどうしようが問題はない。そんなものは奪われた側の怠慢に過ぎないのだから。



「そうか、そうだよね」



堀本翔輝は、自分に言い聞かせるように言葉を紡ぐ。


「クラスの友達が言ってた。彼氏がいるから諦めなきゃいけないって、神代さんに迷惑掛けるだけだって。でもさ、本当に付き合いたいって思うなら、本気で迷惑がられるまで諦めちゃいけないんだ」


そして目の前の恋する少年は、覚悟を決めたように僕を見た。



「うん、僕やっぱり神代さんを追いかけたい。彼女の恋人になりたいよ」

「そうか」



そこには以前までのなよなよした様子はなく、容姿に見合った男の心意気を見せていた。うん、なかなかいい顔をするじゃないか。


「それでさ、少し考えてることがあるんだけど」

「なんだ?」

「今回の球技大会なんだけど、男女ともにバスケに決まったでしょ。そしたら神代さん、部活の後でよかったら練習付き合う的なことをクラスで言ってたんだ。だから、部活終わった後に第一体育館に向かおうと思ってて」

「成る程、いいんじゃないか?」


球技大会を名目に自然に近づけるし、神代晴華からすれば球技大会を頑張ろうとする堀本翔輝に好感を覚えるだろう。悪くない作戦だ。


「それで、相談ってのはここからなんだけど」

「部活後に一緒に体育館行けばいいんだろ?」

「えっ、なんで分かったの?」

「なんでって、どう考えてもそういう流れだっただろ」

「いやまあそうなんだけど」

「神代晴華が練習に付き合ってくれるとはいえ、1人では声を掛けづらい。しかしながら、神代晴華に好意を抱いているクラスの友人とは一緒に行きたくない。なら神代晴華と面識もあって好意もない僕が一緒に行くのに最適ってわけだ」

「う、うん。神代さんと仲が良い廣瀬君なら警戒されないかなと思ったんだけど、付き合ってくれるの?」

「別にあいつと仲良くはないが、乗りかかった船だ。今日くらいは相手してやるよ」

「あ、ありがとう廣瀬君!」


僕の手を取って思い切り上下に振り始める堀本翔輝。先程まで決まっていた顔立ちが再びなよなよし始めた。こればっかりはそう簡単に直らないらしい。


「言っとくが今日だけの気まぐれ大サービスだ。明日以降は自分で勝手にやれ」

「うん、ありがとう!」

「分かったらさっさと部活行け」

「じゃあ部活終了5分前くらいに第一体育館前で良いかな、今日は早めに部活を切り上げるから!」

「了解」


そう返答すると、堀本翔輝は笑みを浮かべてから振り返り、廊下を進んでいった。


やれやれ、どうしてこんなことに付き合うことにしたのやら。僕に一切メリットなんてないのに、神様が僕の善行を見ていることでも祈ろうか。



そんなことを考えながら、僕は改めて図書室へ向かうことにするのだった。


いつもありがとうございます。

登場人物が増えてきたので、簡易的にクラスごとで以下に整理します。

ルビ振りたかったのですが後書きは振れないっぽいです。申し訳ありません。


・名取 真宵、2年A組、旧1年B組、不良

・廣瀬 雪矢、2年B組、旧1年B組、主人公

・青八木雨竜、2年B組、旧1年B組、イケメン

・御園 出雲、2年B組、旧1年B組、委員長

・長谷川先生、2年B組、おっさん

・神代 晴華、2年C組、旧1年B組、ポンコツ

・堀本 翔輝、2年C組、旧1年B組、なよなよ

・桐田 朱里、2年D組、旧1年D組、苦労人

・月影 美晴、2年D組、旧1年B組、ポンコツ

・蘭童  空、1年A組、活発ガール      

・あいちゃん、1年A組、あいちゃん 


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