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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
2章 球技大会と青八木家

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8話 恋愛相談

イケメン1人とポンコツ2人と昼食を摂ったその日の放課後、部活をサボって図書室で時間でも潰そうかと思っていると、後ろから声を掛けられた。


「ひ、廣瀬君!」

「ん?」


振り返れば、見たことのない男が立っていた。髪の毛はワックスを使用して整えており、表情もなんだか明るい感じ。雨竜ほどではないが女子に人気が出そうな出で立ちだ。


というかコイツもカーディガン装着してるんだが、キャミソールが透けるのを恐れているんだろうか。僕はキャミソールを身につけたことがないからよく分からんが。


「誰だ?」

「えっ……」


僕が質問すると、目の前の男はみるからにショックを受けたように表情を沈ませた。

あれ、この自信なさげな顔、どこかで見たことあるような……


「冗談だよね、去年同じクラスだったんだけど」

「すまん、なんか出掛かってるんだが思い出せん」

「えっ、ホントに思い出せない? 何度か絡んでるよ僕たち?」


何度かって、同じクラスで数えられそうな回数ってそりゃ絡んでないのと同じようなものだろ。ただでさえ去年はインパクトある奴らばっかり同じクラスにいたっていうのに。


「とりあえず名乗れ、話はそれからだ」

「堀本翔輝(しょうき)だよ、思い出した?」

「よく考えたら僕、顔と名前が全然一致しないんだった」

「なんで名前聞いたのさ!?」

「あっ」


今のツッコミを聞いて、霧がかっていた記憶がようやく開けてきた。堀本翔輝、そういえばそういう男子生徒が同じクラスにいた気がする。


だがしかし、僕は1点腑に落ちないところがあった。


「お前、そんな感じだったか?」


僕の知ってる堀本翔輝という男は、眼鏡をかけていてその上に髪がかかるほど前髪が長く、どちらかと言わなくとも冴えない印象しかなかった。性格も内気でうじうじしていたはずだし、目の前の男とは似ても似つかない。


「あはは、実は春休みにいろいろ勉強してみて頑張ったんだ」


少し照れ臭そうに後頭部を搔く堀本翔輝。成る程、学年が変わると同時にイメージチェンジをしたのか。こっちの方が清潔感もあるし爽やかさもあっていいんじゃなかろうか。


「見違えたな」

「そう? 廣瀬君に言ってもらえると自信がつくよ」

「よかったよかった、じゃあさいなら」

「えっ!? ちょっと待って!」


感想を述べて去ろうとすると、物凄い勢いで引き留められた。


「何だ、なんちゃらコロシアムの成果を見せたかったんじゃないのか?」

「違うよ! 実は廣瀬君に相談があって……」

「そういうのは友達にしろ」

「えっ、僕と廣瀬君って友達じゃないの?」

「クラス変わって2ヶ月も音沙汰ない奴がお前の中で友達なのか?」

「うっ……」


分かりやすく痛いところを突いてやると、案の定堀本翔輝は怯んで何も言えなくなった。

別に音沙汰があろうがなかろうが去年のクラスメートという位置づけは変わらないのだが。


「……ゴメン。その、クラスの男子と仲良くならなきゃって思ってたから」

「いいことじゃないか、相談もそいつらにすればいいだろ」

「いやその、それができない理由がありまして……」


堀本翔輝は声のボリュームを落としながら目線を逸らして両手の人差し指をツンツンさせる。見た目は随分変わったが、うじうじしてる中身はまったく変わってないな。


「できない理由って何だよ」

「そ、それなんだけどね」


わざわざ訊いてやったのに、なかなか言い出さない堀本翔輝。なんで男の相談事に協力しなければならんのだ、協力して雨竜に彼女ができるなら喜んで手伝ってやるんだが。



「その……実は相談っていうのは恋愛絡みでして」

「……」

「廣瀬君、そのあからさまに嫌そうな表情はやめてほしいんだけど……」



恋愛絡みと聞いて、僕はそのまま顔に感情を出してしまっていたようだ。言うまでもなく、早くこの相談に関わるのをやめたい。コイツと女子をくっつけて僕に何のメリットがあるのだろうか。



「僕さ、最近ようやく自分に自信を持てるようになってきたんだ……」



しかしながら僕の考えも空しく、窓の外へ視線を移した堀本翔輝の回想語りが始まっていく。何だかオシャレなBGMが流れ出しそうな雰囲気だ。



「廣瀬君のおかげで何事もやってやれないことはないって分かって、勉強や運動も頑張って成果が出た。イメチェンも上手くいって新しいクラスでは友達もできた。格好いいって言ってくれる女子もいて、自分で言うのもなんだけど、順風満帆なんだと思う」



僕が彼に何をしたか記憶にないが、そのおかげで彼は自分を見つめ直すように努力を重ね、今の日々楽しい生活を維持できているという。良い話じゃないか、相談に乗る必要なんてないだろ。



「だから今度はその、恋愛方面で頑張ろうと思うんだけど、どうすべきか初っ端から躓いていて」

「好きな奴がいるのか?」

「う、うん。1年の時からずっと気になってはいたんだけど」

「誰だ、僕も知ってる奴か?」

「廣瀬君、相談に乗ってくれるの?」

「やっぱ聞くのやめる」

「ゴメンゴメン! 話の腰折るつもりじゃなくて! なんだかんだいつも話聞いてくれるなと思って!」

「うるさい、本題に入らないならもう帰るぞ」

「言うから言うから! まだ帰らないで!」



そう言うと、堀本翔輝は一度深呼吸してから僕に告げた。




「その、同じクラスの神代さんなんだけど……」



彼氏持ちきちゃったよ。


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