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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
6章上 学園祭と決断

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14話 一石二鳥作戦

今日の目的は若者たちの流行を把握するために街の探索を行うというものだが、僕1人で進めても主観的な感想に寄ってしまうかもしれない。


そもそも今回は、デート相手である朱里と梅雨を楽しませれば良いのだから、彼女たちに寄ったコメントを得られれば良い。


とはいえ本人たちに直接聞く訳にも行かないので、スポンサーの方々にお越しいただいた次第である。公にされていない朱里の気持ちも、雨竜と出雲相手には隠す必要がないからな。


「事前に伝えた通り、2人には僕と探索を続けながら朱里や梅雨が気に入りそうな場所を教えてもらう。それに基づき僕はデートプランを組ませてもらう」


ワンコロの横に立ち、目の前に立つ雨竜と出雲に今日の目的を伝えたが、シャッターのフラッシュが終始チカチカしていて集中できない。


どうやら異国の観光客たちがワンコロを撮影したいようで明らかに僕は邪魔だった。いや、あまりに堂々と腕を組んでいたせいで、ワンコロの飼い主と誤認された気さえする。


調子に乗ってワンコロの腰辺りを撫でてみたら、外国人の「オオ!!」という声が聞こえた。僕は一体何のサービスをしてるんだろう。


「というわけで一旦僕の好きに探索させてもらうが、質問はあるか?」


気を取り直し、ワンコロから少し距離を取って作戦会議を再開。駅近くということもあり人通りも多いのでさっさと移動したかったが、出雲が軽く手を挙げた。


「なんだ?」

「さっきも言ってたけど、今日を踏まえて朱里や梅雨ちゃんとデートするのよね?」

「そうなるな」

「えっと、ここまで踏み込んでいいのか分からないけど、そのデートで良かった方と付き合うってこと?」

「そう単純にはいかないと思うけどな、そうなれればいいとは思う」

「そ、そうなんだ」


僕があっさり恋人を作る意思を見せたのが意外だったのか、出雲はあからさまに狼狽えていた。よく考えたら、そういう決意は雨竜にしか見せてなかった気がする。


「朱里の応援しておきながらアレだけど、付き合うなんてもっと先のことだと思ってた」

「なんでだよ」

「だって、付き合うってことは雪矢が2人のどちらかを好きになるってことでしょ? 正直まだイメージが沸かないっていうか」

「いや、好きっていうだけなら現段階でそうだ。でも、それじゃ足りないのは理解してるからな」


恋愛感情云々はともかく、僕を友人として扱ってくれる連中は好意的に捉えている。一緒にいたって楽しいことだろう。


それを恋愛感情として昇華させられるかは経験してみないと分からない。だから彼女たちとデートをする。デートをして、気付きを得て、恋愛相手として選びたい。1度でダメなら2度、2度でダメなら3度、彼女たちが付き合ってくれる限り行動に移す。どう最終決断を下すにせよ、あまり時間を引っ張りたくないからな。


「……なんか急に雪矢が大人になったみたい」


僕の真剣な態度が伝わったのか、出雲の表情が少ししおらしくなった。


「私なんか、結局勉強しかできてないわけだし」

「あのな、なんでこの会合にお前を呼んだと思ってるんだ?」


表情が暗くなる出雲の腕を引き、雨竜と距離を取ってから話す。


「なんでって、朱里の好みを私に聞きたいからでしょ?」

「それだけの為に呼ぶ訳ないだろ。せっかく勉強以外で雨竜と会う機会を作ったんだ、ちゃんと活かしてくれよ?」

「……へっ!?」


出雲の顔が紅潮するが、今日の裏テーマはまさにこれである。


出雲は勉強面やクラスという点で他のメンツより優遇されているが、そのせいで僕もあまり介入しないでいた。とはいえ蘭童殿や真宵のフォローばかりしているのも公平性に欠けるというものだ。


だから今回、朱里と梅雨のスポンサーという形で2人を呼び、一緒に出かける算段なわけだ。元々出雲は僕を介さなきゃ雨竜と絡めないくらい臆病だったのだ、これくらいのフォローはしてあげるべきだろう。


「ちょっと! そんなこと言われたら緊張するじゃない!? 話題なんて何もないわよ!?」

「探索するんだから建物見ながら話題作れるだろ」

「言っとくけどね、誰も彼もあなたみたいに頭の回転早くないの! 予習しないで頭が回るわけないじゃない……!」


我らが委員長さまは涙目でお怒りだった。ネタバラシには早すぎただろうか、でも言わないと沈んでいきそうだったからな。別ベクトルとはいえテンションが高い方がマシなはず。


「2人とも、どうかした?」

「ぐっ!」


作戦会議が長すぎたか、雨竜が心配そうに声をかけてくる。


「すまんすまん。お花を摘みたい出雲の為に化粧室を探してて」

「はあ!? あなた何を勝手に!」

「いいから頭冷やしてこい! このまま開始していいのか?」

「……行ってきます!」


半ば強引に出雲を放出し、クールダウンの時間を作ってあげる優しさの化身僕。出雲にはキリキリ働いてもらわないといけないのだ、ずっとウジウジされていては困る。


「何の話をしてたんだよ」


そして雨竜は、当然の如く質問をぶつけてくる。


「別に、お前が気にするようなことじゃないぞ」

「ホントか? お前の恋愛話の後のコソコソ話、桐田さん関連じゃないだろうな?」


勘の鋭さにも定評のある雨竜だが、今回ばかりは大きく的から外れていた。


「なんで朱里の話なんだよ」

「いやいや、今日の趣旨がそれだろ。出かける前に桐田さんの情報を先行して与えられたのかと思ったんだが」


成る程。朱里のデートが良くなるよう出雲が先制パンチをかましたのかと思ったわけだ。確かに梅雨スポンサーの雨竜からすれば穏やかな話ではないが。


「桐田さんにも御園さんにも悪いが、雪矢には梅雨のことだけ知って帰ってもらわないとな」


いや、それは僕の望むところではないんだが。朱里も梅雨もどっちの情報も欲しいの、分かってる?


よくよく考えたら、梅雨が絡むと雨竜はアホになってしまうんだった。もしかして僕、人選間違えたか。



「最初の情報だが、梅雨は渋谷が好きだぞ、そこそこ」



あかん、前途多難なスタートだ……

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