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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
1章 桐田朱里と蘭童殿

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30話 力比べ

あの青八木雨竜を組み伏すというのは、並大抵のことでは不可能である。

前の身体測定では身長183センチ、体重72キロという結果を出しており、それに劣る僕では不意打ちをしてもやり返されてしまうのがオチだ。

その上4月に行ったスポーツテストの結果でも9点から10点だけを取りまくる化け物である。僕が唯一対抗できたのは反復横跳びくらいだった、これが神の犯した罪である。


というわけで早速蘭童殿に無理であることをお伝えしたいが、これがどんな作戦なのか気になるのも事実だ。内容を全て聞いてから改良できる余地がないか検討するのが良いだろう。


「あっ、でもいきなり組み伏すなんて青八木先輩に不審がられますかね?」

「どういうことですか?」


まず僕が周りの生徒に不審がられると思うのだが、その辺りの配慮はどうなっているんだろうか。


「だって廣瀬先輩、青八木先輩と仲良いんですよね? それなのにいきなり組み伏したら裏があるって思われませんか?」

「ああ大丈夫、僕と雨竜は仲良くないですし。週に3回くらいは組み伏すどころか永久に伏して欲しいと思ってるのでそこに不自然さはないですよ」

「えっ、あっ、そうなんですか……」


あれ? 飛びっきりの笑顔で答えたのに蘭童殿が困惑しているように見えるな。雨竜に好意を抱いている相手に永久に伏して欲しいはまずかったか、反省反省。


「ならば問題は解決ですね。廣瀬先輩が青八木先輩を組み伏しているところに私が登場! 廣瀬先輩を倒して青八木先輩を救出です! どうですか!?」


両手を胸の前で軽く握って今か今かと僕の反応を窺う蘭童殿。チラッと先程から聞き手に回っているあいちゃんに目を向けたが、頬を綻ばせながら何度も頷いていた。あかん、このコンビはあきまへん。


確かに絵面のインパクトは凄まじい。僕が雨竜を組み伏してる状況がまずおかしいし、それを救うのが女子であるというのも周りからすれば衝撃的であろう。成功すれば吊り橋効果のようなものは狙えるかもしれない、成功すれば。


だが大きな問題が1つある。それについて認識があるか遠回しに聞いてみることにした。


「ちなみに蘭童殿、これは余談なんですが、雨竜と柔道して勝てると思いますか?」

「勝てるわけないじゃないですか。青八木先輩の運動神経がすごいのは廣瀬先輩だってご存じですよね?」


さも当然のように、何なら先輩何言ってるんですかと煽られるように返答されてしまう僕。

よかった、蘭童殿は常識人だった。今の発言で矛盾が生じていることに気付いてほしかったが。


そもそもの話、パワーバランスを一切無視した配役である。

不等号で表すなら、雨竜<僕<蘭童殿、が成立していないとこの物語は始まらない。

だが今蘭童殿から、蘭童殿<雨竜、であると明言されており、不等式が成り立たなくなってしまう。とてもじゃないが蘭童殿のシナリオを完結させるのは不可能だ。


しかしこんなに楽しそうに語る蘭童殿へ何と言えばいいか、これがポンコツたちであれば容赦なくばっさり斬るのだが、蘭童殿のやる気を削ぐような真似はしたくない。


「でも、廣瀬先輩相手なら勝てそうな気がするんですよね」


良い言い回しを思い付かないで沈黙していると、何やら聞き逃せないことを宣う蘭童殿。僕が相手なら勝てそうな気がする……?


「廣瀬先輩小柄だし、見た目も中性的というか可愛らしいですし」


蘭童殿よ、あなたは今言ってはいけないことを的確に同時抜きされましたね。

例え尊敬する蘭童殿といえど、この言葉を何事もなく流すわけにはいかない。

ちょっとだけ、ちょーっとだけ痛い目見てもらいましょうかね、社会勉強として。


「それじゃあ試してみますか?」


そう言って僕は蘭童殿に右手を差し出した。


「試す?」

「握力です、思い切り握ってみてください」

「あっいいですね、私結構強いですよ?」


快く反応した蘭童殿が、僕の右手を取って力を入れる。小さな手から向けられる力はそれほど強くなかった、これなら神代晴華の方が強いな。


「あれ、あんまり強くないですか?」


僕の反応が鈍かったのが悔しかったのか、さらに力を入れようと気合いを入れる蘭童殿。目を瞑って力を込めているようだが、流石に僕には敵わないようだ。


さてさて、楽しい握力測定の時間は終わりである。これからは懺悔の握力測定の時間です。


「うーん、おかしいな。クラスの中では強い方なんですが」

「そうですか、じゃあ参考までに僕も力入れときますね」

「えっ……っていたた!!! 先輩無理ですギブです!!」


苦悶の表情を浮かべる蘭童殿に、僕は優しい笑顔で対応する。


「僕は小柄じゃありません。四捨五入したら170センチです」

「分かりました分かりました! 先輩は小柄じゃないです! 巨人族です!」

「僕は可愛らしくないです。僕の父さんは精悍な顔立ちです」

「それ先輩関係なくないですか!?」

「はい? 何か言いました?」

「言ってません言ってないです!! 先輩は可愛らしくないです!!」


よしよし、ご納得いただけたようで何よりです。

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