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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
5章 生徒会選挙と己が過去

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0話 孤高

お待たせしました。

残り3章(多分)、最後までお付き合いください。


『よう、君らが呼ばれた理由、分かってるよな?』


少年は人気のない空き教室に2人を呼び出し、そう伝えた。


『は、はあ? 意味分かんねえんだけど?』

『テメエで呼び出しといて何なんだよ』


しかしながら2人は、呼び出しには応じながらも、少年の問いにはさも理解を示していないように振る舞う。


『まったく、思った以上に低脳だな。夏休み前のこととはいえ、君たちが言い出したことだぞ』

『だ、だから何のことだって言ってんだよ!?』


呆れ返った少年に対し、1人はどこか焦ったように語尾を荒げる。


2人とも、少年の問いに心当たりはあった。心当たりがあるからこそ、肯定的な主張をすることはできなかった。


それを肯定してしまえば、自分のオモチャに手を出すことが叶わなくなってしまうのだから。


『はあ、しょうがない。君たちが忘れっぽい馬鹿共なのは理解していたからな、しっかり準備は整えている』

『い、いったい何を……!』


そう言って少年が取り出したのは小さな機械。それを操作すると、その機械から音声が流れ始めた。



≪じゃあテストで青八木超えたら堀本とのじゃれ合い止めてやるか? うるさくて困ってるんだろコイツ?≫

≪いいなそうするか! じゃあご褒美やるんだからちゃんとやってくれよ廣瀬君!≫

≪ギャハハハ!≫



『な、なんでこれが……!』



それはかつて、2人が少年を侮って言い放った言葉だった。強がりを言っているようにしか思えない少年へ向けた『勝手な約束』だった。



『馬鹿は勝手に口を滑らせるからな、安全対策として録音してたんだ』

『っ……!』

『まさかこれを聞いてまで記憶にございませんなんて言うつもりじゃないよな?』



少年の語気が強くなる。逃げ場のなくなった2人に対して、容赦なく攻め込んでいく。



『……俺たちのこと、脅すつもりか?』

『はっ? 何見当違いなこと言ってやがる、そのつもりならこれを録った段階で君たちに持ちかけてるに決まってるだろ。僕はただ、自分で言ったことくらい守れって言ってるんだよ』



そう言って、少年は狼狽える2人にゆっくり近付いた。



『今後一切あの馬鹿に手を出すな、出した瞬間今までの悪事を全て教師と生徒に公表する。暇つぶしに録ってた面白い音声が山ほどあるからな』

『くっ……!』



少年の言葉で、2人は完全にオモチャを失った。身から出た錆ではあるものの、自分たちの発言が現実になると誰が予想できたか。それほどまでに、少年の成績は皆の想定を超えるものだった。



『……なんでだ』

『あっ?』



だが2人とて、すぐに納得することはできなかった。少年の性格を理解しているからこそ、現状のおかしさを問い正したくなった。



『お前は、あいつと仲良いわけじゃねえだろ。なんでこんなことにこだわ――――』

『――――何度も言わせるなよ低脳』



驚くほど冷たい目をした少年は、身体を震わせる1人の額を軽く突いた。



『僕を嗤って定めた約束を易々と見逃すわけないだろ。馬鹿は馬鹿らしく自分の愚かしさでも悔いてやがれ』



少年は満足したのか、呼び出した2人を置いて教室の外へ出ようとする。



『……今に見てろ』

『ぜってーただじゃ済まさねえからな!』



負け犬の遠吠えながらに低めの声で唸る2人に、少年ははっきり言ってのける。



『アホか。馬鹿が束になっても僕は負けねえよ』



少年には怖いものなどなかった。恨み言には慣れていたこともあり、自衛を怠らない性分も相まって、2人の言葉など戯れ言以下でしかなかった。



だが、この時少年はまだ知らなかった。



少年が強いのは恨み言に慣れているからではなかった。自衛をする術を持っていたからではなかった。



自分以外に守るものがない。その1点が大きく占めていることに、少年はまだ気付いていなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 次回、豪林寺先輩、動く
[気になる点] このクズ共が女子達の誰か(朱里)に手を出すとかはマジでやめてほしいなぁ……。
[良い点] 今回の章も楽しみ [気になる点] 残り3章… きれいに終わって欲しいけど終わって欲しくない…(苦悩)
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