表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
4章 体育祭と願い事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

259/378

21話 独白2

「……疲れた」


自宅の湯船に浸かりながら、晴華は誰に伝えるでもなくボソリと呟いた。いつものポニーテールは解き、湯船に入らないようタオルでまとめている。友だちはおろか、今や家族にさえ髪を下ろしている姿はほとんど見せていない。それが彼女にとっての"普通"であり、周りにとっての"普通"であると思っていた。


「……」


入浴剤の入った水面をぼんやり見つめながら、晴華は思考する。



……今泉先輩が、あの場に現れるとは思わなかった。



公園自体には一緒に来たことがある。彼が自分を送ってくれる際、兄の件もあって家に来てもらうわけには行かないため、折衷案であの場所まで送ってもらっていたのだ。今日は大学の友人と近くで遊んでいた為寄ったそうだが、こちらの返答無しに実行するとは思わなかった。彼はいつも、自分の意見を最優先してくれていたから。


実際今日も話してみて、少しだけ様子が違っていたように思う。理由は分かっている、自分が彼氏でもない相手と2人きりで居たからだろう。実際、先程まで一緒に居た相手――――廣瀬雪矢についてずっと訊かれていた。


訊かれたといってもフランクにだ。今泉も雪矢の噂は聞いていたので、仲良くしていて問題ないのか気になっていたのだろう。ただの友人である旨を伝えれば彼もあっさり引き下がり、別の話題に移っている。紛らわしい行動を取っているのは自分なのに、この人は本当に優しく接してくれている。


そんな風に接してくれる度、どうして自分なのだろうと晴華は思う。恋愛に前向きになれない自分でさえなければ、今頃彼はもっと華やかな生活を送れているはずだ。


ただ、夏休みに誕生日プレゼントを渡した時の彼は、本当に嬉しそうにしてくれていた。自分あいてだからこそここまで喜んでくれているのだと思うと、晴華の中にも準備して良かったとポジティブな気持ちは生まれていた。今はまだ考えられなくても、これから恋愛について考えられるようになると思っていた。


だが、今晴華の中で引っかかっていたことは別のことだった。



『神代さんとも早めに練習しておきたいってなりました』



雪矢が言った言葉。いつもの呼び方ではなく名字にさん付けされたことが気になってしょうがなかった。


分かっている。今泉にあらぬ疑いを掛けられないよう配慮したことなんて分かり切っている。頭の回転の速い雪矢ならそういう風に気を遣ってくれてもおかしくない。


だからこそ嫌だった。自由奔放な姿が魅力的な彼に、言動を制限させているという事実が気持ち悪かった。


特に雪矢の名前呼びは友人としての証である。ずっとフルネームで呼ばれ続けていた晴華にとって、何より変えて欲しくないところだった。



「……あたし、欲張りなのかな」



お湯でふやけた両手で自分の顔を覆う。恋愛を頑張りたいと思う自分と、友人関係を崩したくない自分がせめぎ合っている。



少なくとも、恋愛のせいで友人が気を遣ってしまうことに晴華は懐疑的だった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして! 新年初読みです。 これからも応援しています! [気になる点] 段落のスペースはしないのですか? それをするだけで、読んでくれる人も増えて、結果モチベーションに繋がると思います…
[気になる点] 他人と一定の距離を保とうとする"普通"って自然体とはいえないよね? 距離なしと見せ掛けその実距離あり 外面に反して人間関係に臆病な印象
[良い点] やっと雪矢の固いガードが破れたから、恋愛のせいで前に戻ったら嫌だもんね。 [気になる点] 普通を体現してくれる特別か。 周りから長い間特別扱いされてこじらせてますね。 だから普通の雨竜に勝…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ