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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
3.5章 僕と夏休み

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45話 夏休み、青八木家7

コメント増えてきましたね、ありがとうございます。やる気でまくります。

そこから追加で3戦、僕は毎回キャラを変更して対戦したが、1度も敗北することはなかった。ほとんど使用してなかったとはいえ、バトファミに打ち込んでいる期間の差がありすぎた。恐竜キャラ使用時の全能感はなかったが、それでも青八木ブラザーズに遅れを取らずに済ますことができた。さすがにチーム戦だと負けていただろうな、まあその場合僕はキャラ変更を受け入れていなかったわけだが。


「ああああああああ!! これじゃあ私たちが完全にピエロじゃない!!」


僕の残機を奪いつつも最終的に敗北を喫す青八木家長女は、両手で頭部を押さえながら苦悶していた。この人、ゲームに関してはいつも見通しが甘いんだよな。まあ僕もここまで実力を発揮できると思わなかったけど。


「一旦中断! 雨竜、作戦会議よ!」

「へいへい」


このまま続けるのはまずいと判断したのか、氷雨さんはコントローラを置いて立ち上がった。雨竜を呼んで食事室の外へ出て行く。


ちょっとお姉さん? 愛しの妹君を忘れてますよ?


頭に血が上って梅雨の存在を忘れてしまう氷雨さん。ぼんやり扉の方を見ていると、雨竜が一瞬こちらを見てから氷雨さんの後を追う。食事室の扉が閉められ、キャラ選択画面の音楽が響き続ける。


……雨竜の奴、口元にやけてなかったか? 作戦会議と評した僕への盤外攻撃を企んでるじゃなかろうな、戻ってきたら警戒せねばなるまいて。


「雪矢さん、ホントにバトファミお上手ですね!」


姉と兄の退出などなかったかのように笑顔を振りまく梅雨。とりあえず安堵、氷雨さんに呼ばれなかったことは気にしていないらしい。


「まあ年季が違うからな、恐竜以外でもここまでやれるとは思わなかったが」

「年季って、わたしたちだって小さい頃からやってますよ?」

「一緒にするな、どうせリメイク版やら別のゲームやら浮気してただろ?」

「それはそうですけど、雪矢さんだってカートのゲームとかやってるじゃないですか」

「バトファミに比べたら瑣末な時間だ。バトファミ初代こそ僕の原点」


全ては憎き母親へ勝つ為に取り組んでいるわけだが、未だかつて達成できないというのはどういうことなのか。アラフォーのくせして僕らと変わらない反射神経見せつけやがって。まあ衰えた母さんを倒すより全盛期の母さんを倒さねば意味がないからな、今に見てろよこん畜生。


「そうだ! 雪矢さん、わたしにバトファミ教えてくださいよ!」


梅雨は名案と言わんばかりに両手を合わせて提案した。


「雪矢さん、ネズミキャラも上手に使ってたじゃないですか。わたしに教えるくらいわけないですよね?」

「うーん、どうだろうな」


確かに先ほど梅雨がよく使うネズミキャラを使って勝利したが、技術を教えられるかはまた別の話である。そもそもバトファミを誰かに教示したことがないし。


「……お願いします。わたし、お姉ちゃんとお兄ちゃんを驚かせたいんです。わたしが2人に勝ったら、すごくびっくりすると思うから」

「……」


梅雨の切実な思いを聞いて、返す言葉がなくなる僕。2人に勝つことを強調していたが、本心は2人の足を引っ張りたくないのだろう。僕と戦う時は真っ先に狙われているからな、逆にそこで粘られるとさすがの僕も楽勝とは言いがたい。


はあ、青八木ブラザーズに塩を送ってどうするのやら。まあ僕もさらに強くなれるからいいか。


「分かった。すぐに上達できるとは思えんが、やるだけやってやる」


そう言うと、梅雨は一気に表情を綻ばせた。


「えへへ、雪矢さんならそう言ってくれると思ってました」

「生意気なやつめ」

「いたっ」


梅雨の頭に軽くチョップを落とすと、梅雨は頭を押さえながらも嬉しそうだった。大丈夫かなこの子、変な性癖に目覚めてないかな。


「使用キャラはネズミでいいのか?」

「はい! もちろんです!」

「よし、じゃあ選べ」


僕と梅雨はネズミキャラを選んで、丸ピンクキャラのステージで向かい合う。


「先に伝えるが、梅雨の使うネズミキャラはバトファミだと強キャラの一角だ。慣れれば負けることはそうない」

「そうなんですか? わたし、全然勝てないんですけど」

「それはお前がポンコツだからだ。まずは僕の真似して動かしてみろ」

「はい!」


僕はスマッシュからジャンプまで、その場でネズミの技を全て行わせた。押すだけの基本技はともかく、スマッシュも問題なく実践できている。


「なんだ、できてるじゃないか」

「止まってたらできるんですけど、動きながらだとすぐテンパっちゃって」

「成る程、だから電光石火を毎回失敗するのか」


ネズミの電光石火はかなり強力。360度自在に動かせる上に使っている間は無敵、移動中に進行を邪魔されることはない。これを習得するだけでも僕からの追い打ちは躱せるようになる。


「とりあえずその場で小ジャンプしてからやってみろ」


僕の指示通り、梅雨は軽く飛んでから電光石火をする。しかし押すタイミングが悪いのか、敵の圧力もないのに2回に1回失敗する。


自分がバトファミを始めてた頃を思い出す。できないことが悔しくて、できるようになるまで何度も繰り返したものだ。あの時はどうやって克服したのだろうか、昔のことすぎてさすがに覚えてないな。


「……ふふ」


できないことで卑屈になっていないか心配したが、梅雨は意外にも笑っていた。それはそれで心配になるリアクションな気もする、失敗繰り返して何笑てんねん。


「あっ、別にふざけてるわけじゃないですからね?」

「じゃあなんで笑ってるんだよ?」

「なんか懐かしいなあと思いまして」

「懐かしい?」


僕が聞き返すと、梅雨は軽く頷いた。



「はい。雪矢さんと初めて会ったときのこと、思い出してました」



それは、僕が初めて雨竜の家に連行された日のことだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 氷雨さんが壊れて行く様はツボを刺激されます(笑) [気になる点] 愛しの妹君を忘れてるピエロか、想い人と二人きりにしてあげる優しい姉どちらだろう? [一言] 二人の馴れ初めと何故雨竜に連…
[一言] 雪矢君と梅雨ちゃんの今までの会合を ちょうど知りたかったとこでした! 運がいいです!
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