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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
1章 桐田朱里と蘭童殿

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20話 救世主

雨竜と会話する気が失せた僕は、図鑑を鞄にしまって机に突っ伏した。

何が蟻だ、たかが昆虫じゃないか。ちょっと詳しいからって調子に乗るんじゃないぞ、そんな知識現代社会には役に立たないんだからな。


「あれ? アリ談義は終わりか?」

「うるさい。壁に向かって話してろ」

「ええ……」


素っ気なく対応すると、雨竜は分かりやすく表情が暗くなった。

一応言っとくがあれは決して談義ではない、ただのお前のトークショーだ。


「そういやさ、昨日は桐田さんと話したのか?」

「なんだ、藪から棒に」


蟻への思いを胸の奥底に閉まった雨竜は、唐突にそんなことを言い出した。


「いや、先週は毎日何かしら話してただろ?」

「お前のことがあったからだ。お前に告白する気がないんじゃ話しててもしょうがないだろ」

「ホントお前は淡泊だな」

「何を今更、ずっとそうだっただろ」


雨竜の件で僕を頼ってきた女子たちは、1人を除いてその後ほとんど接触はしていない。

当然といえば当然、雨竜にフラれた女子は僕と話す理由がないし、それで雨竜を諦めた女子と僕も話す理由はない。


「そういうお前はどうなんだよ」

「どうって?」

「桐田朱里のこと、会ってもいいって思えたんだろ?」


アプローチを受けることが多い雨竜が、自分から会ってもいいと思ったのは僕としても衝撃だった。

だからこそ桐田朱里には期待していたが、日曜日のデートしない宣言で振り出しに戻ってしまっている。

こうなれば雨竜を動かした方が早いと思い話を振ったが、本人は腕を組みながらうんうん唸っている。


「でもなあ、俺とデートする気がないってことはそこまでの好意でもないってことだろ?」

「なんだその甘ったれた発言は、相手が自分を好いてなきゃ立ち回れないってか? そんな根性無しが女にモテると思ってるのか!?」

「多分モテてると思うが」

「畜生め、全国の男子学生に土下座しやがれ」


そうでした。遺憾ながらこの男は非常にモテるのです。神から愛を頂戴しまくったあげく、女子からも愛を頂戴しまくっているのです。世の中って不平等ですよね。


正直どうでもいいが。僕を巻き込みさえしなければ。


「まあ彼氏彼女ってのは置いとくとして、桐田さんとは仲良くなりたいと思うけどな」

「置いとくな、1番大事なところじゃないか」

「いやまあ、経緯を考えると今はそこを追求できないというか」


出たよ、僕の分からない話だ。

桐田朱里が雨竜とのデートをやめた理由を理解しているコイツは、どういうわけか桐田朱里に深く関わっていこうとしない。

何に遠慮しているか分からないが、自分が仲良くなりたいと思うなら進むだけだろ。そこを悩む意味が分からない。

待てよ、何に遠慮、遠慮、遠慮?


「まさかお前、誰かに遠慮してるのか?」


動いた。確かに今、雨竜の瞳が僅かに動いた。


そういうことか、つまり誰かが桐田朱里のことを想っていて、それをコイツが知っているから仲良くできないってことだな。くくく、ようやく僕にも理解できたぞ。


「誰かっていうか、桐田さ」

「成る程な、確かに他人の想いを知ればなかなか踏み出せないものはある。どうしてもそこに争いが生まれるからな」

「あっこれ話聞いてないパターンだ」

「だがな! それは仕方のないことなんだよ! 恋愛は戦争、勝たなければ幸せは手に入らない! 遠慮なんかしてたらあっと言う間に死んでしまうぞ!?」

「恋愛も戦争も経験してないお前が言っても説得力ないけどな」

「ぐぬぬ……!」

「おっ、ぐぬぬった」

「ぐぬぬってないわ!」


この野郎、誰のためにここまで言ってやってると思ってるんだ。好きなものがあれば宿敵がいようと奪い取る、それが男の生き様じゃないのか。

あとぐぬぬるってなんだ、変な動詞つくるな。僕はぐぬぬっていない。


「まあ話逸れたけどそういうことだから」

「そういうことって何だ?」

「桐田さんとは友達になりたいってこと、急いではないけどな」

「友達じゃ意味がないんだよアホンダラ……」

「アホンダラて」


ったく、コイツ本当に枯れてるんじゃないだろうな? 仲良くできれば満足って、とても男の発言とは思えないが。


くそ、これからどうしたものか。桐田朱里亡き今、新たな恋人候補にエントリーしてもらわねばならない。今いる候補者は恋人になる気があるのか分からないほどポンコツだしとても期待できない。

頼む、現れてくれ。隣で窓の外を見て黄昏れる精神年齢60代の男を落とせる救世主よ!!



「おはようございまーす、青八木先輩いますかー?」



きたああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

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