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モテすぎる悪友が鬱陶しいので、彼女を作らせて黙らせたい  作者: 梨本 和広
3章下 期末試験と勉強合宿

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11話 体調不良

翌日、父さんとの会話と豪華すぎる夕食によって回復した僕は、大きな目標を持って学校へ向かっている。


言わずもがな、桐田朱里と御園出雲への謝罪である。


彼女たちを傷つけた僕は、誠心誠意を込めて謝罪をする義務がある。明日から期末試験が開始されるし、清算するのならこのタイミングしかないだろう。僕はともかく、勉強合宿の件を引きずって成績に影響されたら申し訳ない。


大丈夫だ廣瀬雪矢、自分と父さんを信じろ。

空は真っ青の快晴、お天道様まで応援してくれている。逃げずに立ち向かえば、きっと道は開けてくる。


4年前のことを思い出す。あの時も、僕は今のように気分良く前を歩いていた。やるべきことが決まっていたからだ。周りを遠ざけるという否定的な内容ではあったが、僕はブレずに動き出すことができた。


今回も一緒、その上内容は前向き。迷うことはない、後は僕が行動に移すだけだ。


そんな思いを胸に抱きながら、僕は少し早足気味で進むのだった。



―*―



「おっす、おはようさん」


教室に着くと、いつ街角スナップに掲載されていてもおかしくない容姿とスタイルを持った男、青八木雨竜に声を掛けられた。座って軽く手を上げる仕草まで完璧である。


「おはよう、随分早いな」


僕だって御園出雲に謝ろうと結構早く登校したのにそれより早い。クラスメートだって数人しか来ていないというのに、月曜日から随分とやる気満々だ。


「そりゃお前が心配だったからな、昨日あんな別れ方したら」

「……」


僕は思わず、言葉に詰まってしまう。雨竜が早く登校したのは僕が心配だったからという事実を聞いて、面食らってしまった。


そうだった。コイツは他の奴らより馬鹿野郎で融通が効かなくて、優しい奴だった。昨日だって梅雨と一緒に必要以上に心配してくれて、正直感謝の言葉もない。


「すまん、昨日は迷惑かけた。もう大丈夫だ、ありがとう」


シンプルに伝えたかったことを口にすると、雨竜は怪訝な表情を浮かべた。


「……どうした雪矢、朝変なものでも食べたか?」

「ああ? お前は父さんの素晴らしき朝食を変なものと称すか?」

「いや、朝食の方をツッコミたいんじゃなくて。素直にお礼なんか言うからどうしたのかと思って」

「……」


どうやら僕は、素直にお礼を言うタイプではないらしい。雨竜が顔面偏差値を5程下げた顔をしたのだからきっとそうなのだろう。


これが父さんの言う『いつも通りでいい』ってことなのだろうか。感謝くらい伝えた方がいいと思うが、ここまでヘンテコな顔をされたらな。まだまだ模索する必要がありそうだ。


「まあいいや。お前の顔見る限り、ホントに大丈夫そうだからな」

「そんなの分かるのか?」

「雪矢はすぐ顔に出るからな、分かりやすい方だ」

「うそ……」


ちょっとショックだった。じゃあ僕が少しシリアスな気分だったら、『あああの子今日はシリアスな感じなのね』とか近所のオバさんに思われるのだろうか。めちゃめちゃ恥ずかしいじゃないか。


「そして今、ショックを受けた顔をしてる」

「や、やめろ! これ以上僕の心を読み取るな!」


雨竜との会話のせいで、変に気落ちしてしまう僕。これから2人に謝罪しなきゃいけないのに、出鼻を挫かれた気分だ。まったく、朝からなんてことをしてくれるんだ。


「とりあえず、梅雨にライン入れとくか。雪矢は大丈夫そうだって」

「そうか、梅雨にも迷惑掛けてたな」

「迷惑だなんて思ってないぞ、心配してるだけで」

「そういうもんか?」

「そういうものだ。強いて言うならいちいち俺が連絡しなきゃいけないのが面倒だから、いい加減スマホでも買ってくれ」

「そうだな、父さんに打診するか」


これから友人と連絡を取り合うなら、スマホの1つは必要になる。父さんも検討してくれていたし、家に帰ったら早速相談しよう。


「ん、どうした雨竜?」


ふと雨竜に目をやると、意表でも突かれたかのように目をパチクリさせている。餌を食べる金魚のモノマネだろうか。


「いや、随分あっさり納得するもんだと思って。スマホなんて要らないってずっと言ってただろ?」

「今みたいに連絡に不自由すると分かったからな。くく、僕もとうとうIT社会の仲間入りだ」

「IT社会に進出できる人間の発言じゃないな」


よく分からんが、馬鹿にされたことだけ理解した。僕のポジティブアクションに毎回いちゃもん付けやがって、称賛して崇めやがれ。


「おっ、すぐ返信きた」

「なんだって?」

「『嘘だったらお兄ちゃん恨むから』だとよ」

「お前、妹君に信用されてないのか……」

「違う。誰かさんのことが好きすぎるから過剰に心配してるだけだ。念押しすれば勝手に落ち着く」

「そ、そうか」


好き嫌いはともかく、昨日の僕の状況を見て今も心配してくれてるのは分かった。梅雨にもそのうち、お礼をしなくてはならないな。


そして、雨竜だ。お礼というのとは違うが、コイツにも話したいことはある。考えを改めるに辺り、宣言したいことがあるんだ。


だがそれは今じゃない。御園出雲と桐田朱里の件を解決して、落ち着いてから話す。それができなくて、雨竜の件を消化することはできない。僕がそう決めたのだ。


しかし、御園出雲の奴遅いな。もうすぐ朝礼が始まるというのに、まだ教室の中に姿を見せていない。彼女の登校はそれほど遅くない、この時間なら来ていてもおかしくないはずなんだが。


「おーす、みんなおはようさん」


朝礼が始まる少し前、いつもより早く姿を現したのは、白衣を身につけた担任の長谷川先生である。


「今日は楽できないからなー、ちょっと早めに朝礼始めるぞー」


怠そうな声が教室の中に広がっていく。


まだ来ない御園出雲、いつもより早く来た長谷川先生。そして、『楽できない』というフレーズ。


これだけでなんとなく察することができた。でも、なんとなく信じられなかった。


だって彼女は、いつだって教室で指揮を取っていたから。



「あー、ちなみに御園は風邪で休みだ。試験前だし、みんなも十分気を付けろよ」

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[良い点] 御園出雲の家に行きますか
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