装備強化とステータス確認
何かの仕掛けが施されているのか、外からみた大きさと内部の広さは比例していなかった。
外観は一階建ての中型ログハウスのような、お世辞にも大きいとは言い難かったものの、店内はゆうに50畳程あるように思える。
「言いたい事はわかるぜ。この不思議な構造は王都の技術でな、部屋を拡張させる機械が導入されているらしい。ま、その分高くつくんだけどな」
「ほえー」
謎のメカニズムに思わず間抜けな声が出た。ゲームだからと片付けてしまえばそれまでだが、魔法がある世界――それに、機械の人間が普通に生活する王都の技術ともなれば、可能なのかもしれないと、納得もできる。
図書館のように陳列された武器や防具の数々の横にパネルが設置されており、タップすると在庫として存在する装備がずらりと並んでいる。
露店のシステムから察するに、陳列された装備は偽物で、本物はパネルから購入する仕組みになってる可能性があるな。画面には【お試し装備】と【購入】の欄がある。
「片手剣から両手剣、斧、盾……膨大な種類がありますね。全部パネルの中で取引できるんですか?」
「そうだ。例えばこのバックラーだが――」
オルさんは少し得意げに、棚にディスプレイされたバックラーの前に立ち、横にあるパネルを操作した。
「飾られてるバックラーは見本な。利用するにはパネルタップして……こんな風に、店の在庫として存在する片手盾が全て表示され、性能から値段から残り数まで全て見る事ができるわけだ」
「一箇所にまとめないのは、混雑時の客の分散を図ってるわけですね」
「それもあるが……一箇所にちょこんとパネルだけあっても、装備屋っぽくないだろ」
レイアウトにもオルさんのロマンが溢れてるわけか。
ともあれ、このシステムなら盗むこともできないし、オルさんが離席していても購入が可能だな。
「もうちょい金が貯まったら、助手としてドワーフ族のNPCと、看板娘として獣人族のNPCを店に置きたいと思ってるんだが……世界的にも種族間で差別や何かがあるみたいでよ、なかなか難しいよな」
頭を掻きながら、苦笑いを浮かべるオルさん。
火の町にいたドワーフ族の店員が言っていたように、種族……特に獣人族は差別的な立場にあるという。
全年齢対象のゲームだから過激なシーンは規制されているとは思うが、クエストやイベントを進めたら差別が無くなるとか、救いがあればいいのだが。
カウンターに立つオルさんがトレード画面に、生まれ変わった俺の装備たちを並べていく。見ると全身くまなく強化されているようで、見栄えも少しだけ変化しているのがわかる。
【炎のハイメタル・ブレード(筋)】製作者:オル
鉄よりも硬度の高い『ラビリンス・メタル』によって作られた両刃の剣に、亜竜人王の鱗で更なる強化が施された一振り。筋力値にボーナスが振られている。
必要筋力:70
筋力+63(53+10)
耐久+13
火属性攻撃付属
火属性耐性アップ
分類:片手剣
【亜竜人王と火偽竜の杖(魔)】製作者:オル
亜竜人の王の毛と獰猛な火偽竜の素材を使用した杖。魔力値にボーナスが振られている。
必要魔力:73
筋力+6
魔力+64(54+10)
火属性魔法威力アップ
火属性耐性アップ
※カラーリング:ダークレッド
分類:片手杖
【亜竜人王と光の霊玉の魔爪(魔)】製作者:オル
亜竜人の王の爪と美しい光の霊の素材を使用した、魔力の篭った爪。魔力値にボーナスが振られている。
必要魔力:70
魔力+60(50+10)
回復魔法威力アップ
火属性魔法威力アップ
火属性耐性アップ
※獣族・獣人族専用武器
※カラーリング:透明
分類:両手爪
【雷獣と亜竜人王のサークレット(器)】製作者:オル
凶暴な雷獣と亜竜人の王の素材を使用したサークレット。器用値にボーナスが振られている。
必要器用:56
筋力+10
耐久+31
器用+31(21+10)
敏捷+3
火属性耐性アップ
雷属性魔法耐性アップ
分類:頭装備
【雷獣と亜竜人王の鎧(器)】製作者:オル
凶暴な雷獣と亜竜人の王の素材を使用した鎧。器用値にボーナスが振られている。
必要器用:58
筋力+10
耐久+41
器用+33(23+10)
火属性耐性アップ
雷属性魔法耐性アップ
分類:胴装備
【雷獣と亜竜人王の小手(器)】製作者:オル
凶暴な雷獣と亜竜人の王の素材を使用した小手。器用値にボーナスが振られている。
必要器用:55
筋力+8
耐久+31
器用+26(16+10)
火属性耐性アップ
雷属性魔法耐性アップ
分類:腕装備
【雷獣と亜竜人王の腰当(器)】#製作者:オル
凶暴な雷獣と亜竜人の王の素材を使用した腰当。器用値にボーナスが振られている。
必要器用:53
筋力+10
耐久+30
器用+26(16+10)
火属性耐性アップ
雷属性魔法耐性アップ
分類:腰装備
【雷獣と亜竜人王の靴(器)】製作者:オル
凶暴な雷獣と亜竜人の王の素材を使用した足装備。器用値にボーナスが振られている。
必要器用:54
筋力+9
耐久+34
器用+31(21+10)
火属性耐性アップ
雷属性魔法耐性アップ
分類:足装備
複雑な模様が刻まれたダリアの杖は、彼女のカラーであるダークレッドに染色された。
部長の初の武器となる魔爪は、シルエットを見ると非常に攻撃的なデザインだとわかる。説明の部分には、獣族と獣人族専用と書いてあった。
俺の装備だが、まず剣が淡い幻想的な赤色の光を発している。刀身が熱を帯びているらしく、刃付近の空気が歪んでいるのがわかる。
防具の方は火偽竜の鱗からキングリザードの鱗へと取り替えられ、つるりとした質感と光沢が追加された。
そして何より、その全ての能力アップ量が目覚ましい。フィールドボスの素材を使った影響か、相当な強化が施されている。
一度ステータス確認をしてみるか。
名前 ダイキ
Lv 35
種族 人族
職業 存在愛の召喚士
筋力__80 (125)【205】
耐久__44 (258)【302】
敏捷__44 (3)【47】
器用__74 (179)【253】
魔力__48
※【 】内が総合計値
※( )内が装備の強化値
名前 ダリア
Lv 32
種族 中級魔族
状態 野生解放
筋力__51[27](6)【84】
耐久__51[27](14)【92】
敏捷__51[27]【78】
器用__51[27]【78】
魔力__142[40](142)【324】
召喚者 ダイキ
親密度 71/200
※【 】内が総合計値
※[ ]内が技能強化値
※( )内が装備の強化値
※小数点第一位を切り上げ
名前 部長
Lv 28
種族 魔鼠族
状態 野生解放
筋力__30[24]【54】
耐久__44[26](20)【90】
敏捷__30[24]【54】
器用__44[26]【70】
魔力__81[31](85)【197】
召喚者 ダイキ
親密度 42/200
※【 】内が総合計値
※[ ]内が技能強化値
※( )内が装備の強化値
※小数点第一位を切り上げ
「おう。見た目だけでも強さ二割り増しに見えるな。こだわった甲斐があったぜ」
全ての装備に身を包むと、オルさんは満足気な顔で鼻の下を指で擦った。
ダリアと部長も、自分のステータスが上がったのを実感しているのか、どこかソワソワしているように見える。
「渡された素材の料金、一からの作製じゃなく強化という部分で差し引いて……こんなもんか?」
「ありがとうございます。万全の状態でトーナメントに臨めそうですよ」
「おう。しっかり俺の店の宣伝になってくれよ!」
その後、しばらくオルさんと雑談を交わし、お祝いの品として酒を渡す。
二人で駄弁りながら酒を飲んだ後、ちらほら店内にプレイヤーの姿が見えるようになったタイミングで心命を後にした。
オルさんとの雑談の中で出た会話に、王都には移動用の小型ポータルがいくつか存在するという内容があった。
途方もなく広い王都の全てをわざわざ徒歩移動する必要も無いらしい。
それの存在を裏付ける世界設定のクエストも王都のどこかで受けられるらしいが……まあ、それはおいおいだな。




