ストーリークエスト:病の沼地④
視点が暗転から明転し、
気付けば周りには人が増えていた。
ストーリークエスト特有の場面切り替えか。
増えたのは5名の魔法使いらしきNPC。
近くにはアリル、マッカスさん、サンダーさんの姿もある。
「驚きましたね……この沼にここまでの穴があるなんて」
魔法使いの一人が驚愕の表情でそう言った。
「こちらのアリルくんの力で発見に至りました。維持がかなり大変とのことで、早いところお願いします」
魔法使い達はそれに同意し、杖を振った。
大穴の上にボコボコと鼠色の土塊が集まってゆき、それらが穴の中へと流し込まれていく。そして穴から溢れ出した沼の泥はアリルの浄化によって押し戻されてゆき、ほどなくして染み出てくることもなくなっていった。
どうやら穴の発見後に、穴を塞ぐための救援を要請した後――という場面らしい。
「これは水分と混ざるほど強固になる特殊な土です。この上に蓋をしたら施工は終わりです」
魔法使いの一人がそう言った。
穴からはみ出た土塊も何かの力で押し込まれ、それを何度か繰り返した後、上に大きな岩が乗った。
流し込まれた土塊の量を鑑みても、いかにこの穴が深かったのかが伺える。
「ではこれから残りの沼部分の埋め立ても行います。過去に何度か同じ施工を行いましたが、今回限りだと思うとホッとしますね」
魔法使い達は手分けして広いこのエリアの埋め立てを行なってゆく。岩を基点として、毒沼を踏みつけないよう土塊を撒いている。
「もう、いいんですかね?」
と、肩で息をするアリル。
それだけ浄化の維持は大変らしい。
もう毒沼を踏む心配はないからいいだろう。
「お疲れ様。とりあえずは大丈夫なんじゃないかな」
俺の言葉に安心した様子のアリル。
ほどなくして、埋め立てが半分近く終わる頃、マッカスさんとサンダーさんが俺達の方へと歩み寄ってきた。
「いやぁこれで無事解決だな」
「長年沼地の根絶を願っていた身としては、本当に感謝してもしきれないよ」
アリルへの惜しみない賞賛が贈られる。
照れ臭そうに笑みを浮かべるアリル。
「俺達はこのまま彼等の仕事を見届けるよ」
「皆は先に戻って休んでから帰るといい」
と言い、二人は魔法使い達のいる方へ戻っていった。
今回は俺達の出番がほぼなかったな。
とんとん拍子に進んだのも、海竜神様との一件があったからこそなのかもしれない。
「戻ろうか。アリルも休みたいだろうし」
土でふかふかになった地面を踏みしめながら、草の町へと戻っていく俺達。
帰りの道中、なぜかアリルは青吉にばかり話しかけているように見えた。
「不思議ですね。海竜神様と近しい雰囲気を感じます」とか、「お名前を聞いてもいいですか?」とか――どうやら抱き止めた際、青吉に海竜神様の面影を感じたようだ。
『青吉は人気者だなぁ』と喜ぶアルデと、『手なんか繋いじゃって……』と嫉妬するベリルの対比がまた面白かった。
*****
草の町――ギルド。
俺達がギルドに戻るや否や、職員全員が出てくるような勢いで、沼地の件を感謝された。どうやらアリルの力で解決に導いた話が既に通っていたらしい。
「なんと感謝したらいいか」「貴女はこの町の英雄様です」「我々の故郷を守ってくださりありがとうございます」
方々からの感謝の言葉を受けて、アリルは「海竜神様に選ばれし者として当然の行いです」などと答えてみせていた。
俺達は完全に便乗だが、感謝の印として大量の特産品をいただき、高級な宿も手配してもらった――どうやらこれで一件落着のようだ。
ギルドを出てすぐ、アリルがポツリと呟いた。
「私、人に感謝されるのは初めてで、ああいう時どう答えたらいいのか分かりません……」
そう言って両手を頬に添え悶えるアリル。
自分に課せられた偉大な役職に誇りを持つと同時に、理想の自分を演じて振る舞う。
しかし本当の彼女は純粋かつ単純。背伸びしている子供そのものだ。
短い付き合いだが、アリルの性格がちょっとだけ掴めてきたように思う。
「誇っていいと思うよ。彼等にとってアリルは恩人なんだから」
それを聞いてアリルは更に顔を赤らめた。
王都の資料とやらを参考にせず完了したことだけ気がかりだが、なんにせよ無事に終わってひと安心だな。
「それじゃあ私は先に休みます。色々ありがとう。おやすみなさい」
そう言って宿屋へと駆けていくアリル。
その顔はとても晴れやかだった。
【ストーリークエスト:病の沼地】推奨Lv.43
海竜神の巫女アリルはギルド員と共に厄災の一つ〝病の沼地〟の調査に向かうことになった。年々弱まる英雄エリローゼの結界、広がる毒沼。冒険の町ギルドの調査員と合流したアリルは、草の町へと旅立っていく。
アリルと話をする[達成済み]
草の町へ入る [達成済み]
ギルド員と合流する[2/2]
沼地の問題を解決する[達成済み]
経験値[245,080]
なんともアッサリとした幕引きだったが、そもそも推奨レベルが今の俺達(平均レベル63ほど)よりかなり低いので、こんなもんかという印象だ。
なんにせよ、やはりストーリークエストの経験値効率は抜群にいい。有難いことに今回のクエストで部長、アルデ、青吉、ベリルのレベルがひとつずつあがっている。
いままでの傾向から、次のストーリークエストもすぐに受注できるようになるはずなので、この調子で進めていこうと思う。
「さて次は――」
そう呟いた瞬間、再び視界が暗転した。
次に場面が切り替わった時、
草の町は炎に包まれていた。




