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植物公園


 草の町に戻った俺たちは、掲示板の情報を頼りに、三つある内の二つの狩り場に目を付けた。

 一つは虫系のモンスターが多く生息する《虫の住処》と、もう一つは植物系のモンスターが多く湧く《植物公園》。

 前者は単体の経験値が多く、後者は湧くスピードが非常に魅力的だという。

 ともあれ、これは狩り場の混み具合を見て決めようと考えている。


 ――さて、最後の追い込みと行こうじゃないか。


 俺は新しい盾となったカブト・シールドを装備した左腕を見やる。

 カブトムシをデフォルメすればこうなるだろうな、という可愛らしいデザインとは裏腹に、その黒塗りの装甲に秘められた耐久値は驚異の36。


 前のバックラーが20だった事を考えても、相当な性能アップだと言えるだろう。


 火属性耐性-5というのがどの程度のものかは不明だが、これにより俺のステータスもだいぶ変動している。



名前 ダイキ

Lv 17

種族 人族

職業 召喚士

筋力__50 (+26)

耐久__26 (+71)

敏捷__26

器用__46 (+8)

魔力__30



 筋力値もる事ながら、耐久値は三桁の大台まで残り三ポイントだ。

 弾き(パリィ)主体の身軽な盾役を志望とする俺ではあるが、相変わらず器用値の伸びは悪い。

 それこそPS(プレイヤースキル)を伸ばして弓使いの使うような防具やアクセサリーで器用値に大きくステータスを偏らせるしか、今の所方法がないようだ。


 現状、耐久値か器用値かという二択の中で、未だ器用値に踏み切れない自分もいる。結果、半端な盾役としてのなんとも言えないステータスになってきている訳だが……。


 先のフィールドボス戦でレベルも一つ上がり、ケンヤ達の平均値程度にまでは育った。 やはり低レベル帯は上がるのも早い。このまま目標は20って所だが、明日のイベントに支障が出ない程々適度なプレイ時間を心掛けようと思っている。


 そして同時に、プレイヤーのレベルと共に育っているのが技術(スキル)だ。



技能(スキル)


【召喚魔法 Lv.13】【火属性魔法 Lv.4】【魔石生成 Lv.4】【採掘術 Lv.6】【錬成術 Lv.5】【片手剣術 Lv.20】【片手盾術 Lv.15】【鼓舞術 Lv.10】【技術者の心得 Lv.14】【野生解放 Lv.7】


控え【調教術 Lv.1】



 最近サボり気味の魔石生成・採掘術・錬成術はどこかのタイミングでじっくりやるとして、主要スキルの片手剣術がレベル20になり、片手盾術も15と成長スピードは早い。


 ――しかし、敵の強さがステータス的にも、AI的にも増してきた事により、弾き(パリィ)の成功率が低くなっている。そもそも弾き(パリィ)をする暇もなく戦闘が終わる事もあり、片手剣術と片手盾術のレベルの差が開いてしまっている。


 はじめの頃は剣二本で剣弾き(ソードパリィ)をしながら攻防一体の〜と謳ってはいたものの、現実はそんなに甘くないようだ。勿論、PSや器用値が上がれば実現可能だと思っているが。


 追加された(アーツ)は全部で四つ。



【片手剣術 Lv.20】#追加(アーツ)

隼斬り / 幻の閃剣(ミラージュ・ソード)


【片手盾術 Lv.15】#追加(アーツ)

気絶殴打(スタンバッシュ) / 磁力盾(マグネットシールド)



 まず(ハヤブサ)斬りは敵に急接近しながら素早く一太刀を浴びせる、初の移動型の攻撃技だ。

 使い時を間違えれば敵の攻撃に自ら突っ込む事態になるが、先制攻撃を与えるにはうってつけの技だろう。


 次に幻の閃剣(ミラージュ・ソード)だが、相手のカウンター技に対し発動できれば、元の倍のダメージと一時的なスタン(気絶)を与える癖のある技だ。


 例とするなら俺が敵に攻撃を仕掛ける→敵が盾弾きによるカウンターを発動する→その攻撃は幻でした、こっちが本命だよ、気絶しなさい。という事になる。決まれば非常に強力だが、空振りすれば反撃が痛い。


 片手盾術では気絶殴打(スタンバッシュ)という盾で相手の頭部に殴打を与え、一時的にスタン(気絶)させる攻撃技と、磁力盾(マグネットシールド)という範囲内の敵を引き寄せる技が追加されていた。


 言うまでもなく、気絶殴打(スタンバッシュ)汎用性(はんようせい)は高い。流石に自分よりも高さのある敵には難しいが、俺と同等かそれ以下の体躯を持つ相手なら成功率は上がるはずだ。

 盾を攻撃にも活用できるのは戦略の幅が広がる。


 磁力盾(マグネットシールド)はケンヤのようなガチガチの盾役(タンク)なら強力だが、俺のような特殊な盾役(タンク)には使い辛い技だと言える。

 敵に囲まれて耐え抜ける耐久も無ければ、周囲の敵を一網打尽にする技も無い。


 まあ、俺には(・・・)だが……。


 続くダリアのステータスはこうなっている。



名前 ダリア

Lv 13

種族 中級魔族

筋力__32 (+3)

耐久__32 (+10)

敏捷__32

器用__32

魔力__104 (+49)


召喚者 ダイキ

親密度 33/100



 魔力を除いた他のステータスも決して低くはないのが驚異だろう。

 たとえ同レベル帯の魔法職に魔力抜きの物理ファイトを挑まれても、返り討ちにできそうな数値だ。


 突出した数値の魔力は既に150を突破し、ここに更に全てのステータスが+20される野生解放が加われば、凶悪の一言に尽きる。


 親密度も着々と上がっていて――実はこれが一番嬉しかったりする。



技能(スキル)


【火属性魔法 Lv.21】【闇属性魔法 Lv.17】【魔法強化 Lv.20】【魔力回復 Lv.19】【オーバーマジック Lv.10】【怒りの炎 Lv.3】



 やはり好んで使う火属性魔法をはじめ、上がり辛かったオーバーマジックも徐々に育ってきている。

 常に発動している怒りの炎は、俺がダメージを受けるたびにポイントが入っていると考えられるが、ダリアが無双すぎてあまり育っていないように思えた。



【火属性魔法】#追加(アーツ)

火炎の海(フレイムフィールド)


【闇属性魔法】#追加(アーツ)

闇の四重奏(ダークカルテット)



 火属性魔法も闇属性魔法も、覚えた(アーツ)は一つずつか。


 火炎の海(フレイムフィールド)は文字通り火に包まれたフィールドを形成し、敵に継続ダメージと低確率で火傷を負わせる、チクチク系の技だ。

 ともあれ継続ダメージって結構軽視されがちだけど、これは戦闘が長引くほど効いてくる。


 ボス戦等の長丁場の際は是非とも絶やさぬように使ってもらいたい技だ。


 そして闇属性魔法、待望の範囲系技の闇の四重奏(ダークカルテット)。四箇所から立ち上がる闇の柱が絡み合って爆発を起こす火炎地獄(インフェルノ)と同系列の技だ。

 威力は黒の破壊核(ブラックコア)より少し劣るらしく、やはり消費MP量は多い。


 次の戦闘からは、相手の弱点属性を見極めて火炎地獄(インフェルノ)闇の四重奏(ダークカルテット)を使い分ける事が出来るな。


 なんにせよ、やはりレベルも上がれば(アーツ)も増えるわけで、ダリアの魔法は彼女に一任するとしても覚える事が多い。

 三色剣のように構えによって発動する技ではなく、相手の動きや技のタイミングを読んだ技が増えてきた。


 これから先、突っ込んで三色剣で勝利なんて一辺倒な戦略では進めないという事だな。


 ……なかなかに敷居の高いゲームだ。


 そんなこんなで新(アーツ)とステータスの確認は済んだし、残すはレベル上げだ。比較的に空いてる狩り場を選んで向かおう。


 ――明日のイベントを最大限に楽しむために。




 俺たちが狩り場に決めたのは植物公園だった。

 まず第一に虫も植物も火属性が弱点ではあるものの、植物の方が物理も魔法も防御が低かった。

 まあ経験値も相応に低いんだけど、効率良くレベルを上げる方法は既に考えてある。


 経験値に惹かれたか、プレイヤーの多くは虫の住処の方に向かったらしく、俺たちはしめたとばかりに植物公園に足を進めていく。


 植物公園は実に自然味あふれるフィールドで、森や川と調和した公園と言うに相応しい場所だった。


 ちらほらと見えるが、既に湧いている(ポップしている)モンスター達の姿もあり、そのどれもが根を足に見立てて自立する植物だ。

 足は速そうに見えないものの、何しろ数が多い。物量に押され、正に今、一つのパーティが飲み込まれていったのが見えてしまった。


 ――油断すれば強い個体よりも驚異になる。


 俺たちは比較的プレイヤーが少ない場所に移動し、付近に数体の植物型モンスターが湧いたのを確認して(アーツ)を発動した。


「『磁力盾(マグネットシールド)』」


 新しく覚えた技、磁力盾(マグネットシールド)。先の分析では俺にとって相性の悪い技だったものの、今回に関しては例外だ。


 カブト・シールドから伸びた銀色の線が付近の植物型モンスターに繋がり、植物モンスター達が俺の盾に引き寄せられるように押し寄せてくる。


 押し潰されかねない距離まで植物モンスターが来た瞬間、俺とダリア諸共、火炎の柱が轟々と包み込んだ。


 ダリアの強化された魔法で全くの無傷でいられるのか? という一抹(いちまつ)の不安はあったものの、例外なくパーティメンバー同士の攻撃は無効化されるようだ。


 ともあれ、火炎地獄(インフェルノ)の中心にいるのはなかなかスリリングだな。


「……って、やっぱ一撃は無理か」


 相手も俺たちより格上のレベルのモンスター。いくら弱点だとはいえ一撃で全滅するほどヤワではない。が、


「『野生解放』」


 間を置かずして発動した火炎地獄(インフェルノ)により、植物モンスター達はなすすべなく焼き消えた。


 同意の上とはいえ、制御が利かなくなっているダリアを見ると可哀想に思えて仕方ないが、本人は体力こそ消耗するもののケロっとしている。


「たくましいな」


 俺の前に立つ小さな相棒の頭を撫でながら、俺はひたすらに敵を集め、ダリアはひたすらに敵の殲滅に専念した。




 手持ちのMP回復薬も数える程に数を減らし、数時間もぶっ通しで戦闘をしていただけに、ダリアの消耗が激しい。


 敵を磁力盾(マグネットシールド)で引きつけるだけの俺に対し、野生解放の消耗に加え火炎地獄(インフェルノ)を連発するダリア。

 仕事の比重が偏っているのは、誰の目にも明らかだろう。


「ダリア……そろそろ町に戻ろう」


 野生解放を解き、息の上がったダリアと向き合う。ダリアは小さく頷き、よたよたと俺の背中を登ってきた。


 ――やはり少し無理させてしまったな。


 途中途中で野生解放を解き、何度か切り上げる(むね)を伝えてはいたものの、ダリアは『まだ大丈夫』と、続行を希望するように俺を睨む。


 内心、もう少しレベルを上げたいとは思っていたものの……もしも、俺の気持ちを汲んでいたのだとしたら、いい女房になれそうだ。


 小さな吐息と、一定のリズムで上下する体。俺の背中で眠りにつくダリアに小さくお礼を言いつつ、夜中にまで及ぶレベル上げは幕を閉じた。


 朝10時からはイベントが始まる。俺も、最大限楽しめるようにしっかり寝ておこう。

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