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保険医のナンパ(?)体験談(※性別反転パロ)

 こちら、「女教師達のナンパ体験談(※性別反転パロ)」に入れようと思っていてうっかり入れそびれていたネタです。

 時系列はそっちの話の直後に当たります。




 学生達は一様に机に向き合う平日午後の昼下がり。

 互いのナンパ体験談で盛り上がる(?)五人の教職員たち……。

 話の弾む中で、「そうそう」と手を打ったのは理事長のまぁちゃんだった。

「ラン先生、ちょっと聞いて驚けや。梨杏の奴な、学生時代に二日で女の子二千人捕まえたことあんだぜ」

「え、拉致誘拐? 梨杏先生が……?」

「ちょっ、止めてよまぁちゃん。恥ずかしい。あれ、ナンパなんかじゃないって知ってる癖に。それにあれは僕一人で達成した記録、って訳じゃないし……」

「梨杏先生がナンパ……? えっと理事長、具体的に想像できないんですが」

「だから、ラン先生! あれはナンパじゃないってば。まぁちゃんってば適当なこと言って……」

「……どういうことだ?」

 首を傾げるラン先生の前、気恥ずかしそうに僅かに目元を種に染めて。

 この場で唯一の男子である梨杏先生は、ほんのり困ったように目線を泳がせた。

 ガツガツした肉食男子と違い、身勝手な欲任せの行動が想像できない青年養護教諭の姿に、ラン先生はますます想像できないとより首を傾けさせる。

 そんなALTラン先生の様子に、梨杏先生は苦笑を浮かべた。

「……本当に、ナンパじゃないんですよ。学生時代、先輩の頼みでさ。ボランティアでイベントでの呼び込みに参加した時の事なんだ。僕と、同期の男子が十六人ばかりいたかな」

 言いながら、梨杏先生は遠い眼差しをする。

 あの暑い夏の日を思い出すように。

「初日は最悪だったよー。イベント会場の一画にブースがあったんだけど全然人が集まらなくって。みんな、イベントに浮かれて夢中だったからね」

 会場にブースがあっただけでイベントそのものとは関わりのない梨杏君達が必死に呼びかけても、みんな素通りするだけだった。

 わざわざ足を止める者はほんの僅かで、改善しないとと思うのに打開策が見つからなくて。

 やがて心折れた梨杏君達の呼びかける声も、次第に力を失っていった。

 ――そして、一日目の終わりに。

 梨杏君達は「このままじゃいけない」と強く焦燥感を持ったらしい。

 話を持ってきた先輩には、後輩みんなが厚く世話になっていた。

 だからこそ、彼らは思ったのだ。

 ……絶対に、このボランティアを成功させたいと。

「そこでね? まずは服装で統一感を持たせることにしたんだ」

 梨杏先生は、そう語る。

 イベント初日、彼らの服装はみんなてんでバラバラ、Tシャツとかだったし。

 そこをきっちり見た目から揃えることで、自分達の存在を印象付けようと思ったのだ。

「へえ……お揃いのTシャツ、とか?」

 イベントで服装を揃えると言えばこれか、と問うラン先生。

 それに対して梨杏先生は緩く首を振って答えた。


「ううん、Tシャツじゃなくって。黒のフォーマルスーツ」


 梨杏先生は、たった一言でラン先生の想像力を病院送りにした。(比喩表現)

 少なくとも、そうしてしまうだけの衝撃を受けた。

「ネクタイは赤系統で揃えてねー。小道具で黒いグラサン胸ポケに差してさ」

「え? イベント会場で……?」

「うん。イベント会場で」

 こっくり頷いて肯定する梨杏先生に、ラン先生はちょっと固まった。

 イベント、ボランティア、呼び込み……。

 その言葉に連想するのは青空の元に広がる賑やかで明るい空気。青春。

 そこにフォーマルスーツ(黒)に赤ネクタイの集団が乱入だー☆

 ラン先生がさっきまで思い浮かべていた光景が、心なしか斜めに傾いた方向へと走り始める。

 十六人の大学生(男)が、ボランティアでいったい何やっているのかと。

「全身それぞれ思い思いにビシッ★と決めてきてねー? 小物類はシルバー系で統一してぇー。無軌道な呼び込みの声かけは一切止めて、ブースの前を通る女の子たちをじっと見つめて目ぇ合わせるところから始めてさ」

 キリリ☆と顔を作った若い青年(スーツ姿)達が、無言で見つめて来るイベント会場の一画……それはイベント会場の一画にはそぐわない異様な光景ではないのだろうか……。

 事細かに、何をやったのか梨杏先生は教えてくれる。

 しかし詳細を語れば語るほどに、何かがおかしいとラン先生の指が自身のこめかみを撫でた。

 頭痛ですか、ラン先生。

 既にこの話を知っている他の三人はニヤニヤ笑ってラン先生の様子を観察している。

 ラン先生は、なんとも言えない顔をしていた。

 動揺する同僚に構わず、梨杏先生は常と変わらぬにっこり笑顔でトドメをさした。

「それで女の子と目が合ったら、キメ顔で一言!


 ――献血お願いします。と 」


「……って献血かぁぁああああ!! 全然予想が追いつかないというか、その変な集団が献血求めてきても怪しいだけじゃないかと思うのは私だけですか、ねぇえええ!?」

 そして梨杏先生の言葉に、ラン先生が噴火した。

 若さが暴走したのか、迷走したのか。

 初日の呼びかけが不発に終わった男子学生たちは、大学の同期でも見栄えの良い男共に誘いをかけ、二日目以降をリベンジとした。初日は六人だったものがイベント二日目、三日目に引きずり込んだ人員を加えて十六名になっていたというのだから無駄なやる気と行動力がどれ程のモノであったか窺い知れるというもの。

 学生であっても暇ではなかろうにそれだけの人数が集まったというのだから、みんな面白がっていたのかもしれない。

「同期の中でも特にモテる奴を前列に配置してねー? キリッとした顔で立たせてたお陰で、女の子が釣れる釣れるー★」

「梨杏先生……」

 ちなみに献血終了後、特に顔の良い野郎どもは女の子に番号を聞かれまくるという事態が発生したらしい。そのせいで一時列が滞ったりもしたが調子に乗った野郎の一人が人数整理を始めて事なきを得た。

 その後、男子たちは暫く合コンのセッティングに困らなかったという。

「ちなみに僕は二軍だったヨ!」 

「それは、そんなに嬉しそうに言うことなのか……?」

「梨杏君、真面目なスーツはあまり似合わなさそうだもんね」

「もうちょっと身長が高ければビシッと決まったかな、とは思うかなー」

 梨杏先生も、顔立ちはそこそこ整っている。

 しかし普段の格好からして少し一般的な趣味とは外れている為、なんとなくフォーマルな格好が想像できないというか……しっくりこないかもと思う、同僚たちなのであった。


 そんな梨杏先生の、本日の格好。

 銀色のラインが入った開襟シャツに、黒のスラックス。

 胸ポケットから垂れる、銀色の懐中時計まではまだ良かろう。

 コケシとマトリョーシカのマスコットが胸ポケからチラ見えしてるのも、まだ良いとして。

 だが羽織っているカーディガンは紺色のレース編み(花モチーフ)で、更に胸元には小ぶりなコサージュまで付いているという……何処からどう見ても女物にしか見えない代物(しかし男物サイズ)で。

 それだけでは飽き足らず、肩に付く程ではないが少し長めの髪を本日は邪魔にならないよう編み込んでとめていて。……髪を結んでいるのは黄色い細めのリボンと、小さいオレンジ色の花飾りという不思議。

 女装趣味がある訳ではないが、その日の気分と好みとノリで、時々不思議な小物を身に着けている。それが梨杏先生の日常である。しかもそれが妙に似合うのだから始末に負えない。

 ちなみに白衣は保健室や医療行為中のみ着用している為、食堂では着ていない。




 献血ネタが出てきますが、設定は適当です。

 実際の献血云々とは一切の関わりがない架空の出来事なので、現実と異なる点には目を瞑っていただけますと幸いです。


 ちなみに梨杏先生、イベントとか思いっきりはっちゃけるというか……イロモノ全開の格好で参加したりするくらい行事好きです。文化祭の度に目立つ格好をしているので、密かに名物化していたり?

 この学園に雇用された年の新歓(飲み会)では、歓迎される側であるにも関わらず牡丹柄の黒いロングチャイナドレスで隠し芸を披露したとか。(人体切断マジック)

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