保健室の主さま(*性別反転パロ)
ちょっと設定が皆様に受け入れていただけるか不安でしたが…
活動報告にいただいたコメントを見る限り、断固拒否という方はいなさそうだったので敢行することにしましたw
ふわりと香るのは、趣味で育てたハーブのもの。
その薫香の中を鋭く貫くのは、身に染み付いた消毒薬の臭い。
「せ、せんせー! ベルツ先生が倒れちゃったー!!」
「え、また?」
くるりと振り返った先に、女子生徒三名に担がれた華やかな女性の姿。
この国では目立つ、天然の蜂蜜色をした髪が肩を覆って女性が誰かを訴える。
くたりと垂れた腕が、女性に意識がないことを示していた。
だからこそより一層、女生徒たちは慌てているのだけれど…
「ラン先生のことは後はこっちで引き受けるから。ほら、みんなは授業に行って?」
「り、梨杏先生、ベルツ先生だいじょーぶ…?」
「大丈夫、大丈夫。いつものことだし」
「え゛」
おかしそうに、どこか悪戯な笑みで。
くすくすと笑う、赤毛の青年。
――僕は有村 梨杏。
いわゆる、保健室の先生。
白衣に赤毛がトレードマーク。
彼はソファに放置されたALTの先生を持ち上げた。
「ランせんせー、ベッドに運ぶよー?」
「う、うぅ…ベッドは、ベッドはだめ…っ」
「あのさぁ、僕が保健室で女の子襲うような外道に見える?」
「………うー…」
「というか、起きたんなら自分で立とうよ。僕、腕力強くないんだから」
「すまない。世話をかけた」
「ううん。それよりラン先生、今日はどうしたの? またふざけた男子に抱きつかれた? それとも職員室の誰かにお尻でも触られちゃった?」
「職員室で男子生徒に、背後からヒザカックン?を喰らって崩れ落ちたら、倒れた先に石油ストーブが…」
「わあ、最近の男の子って勇気あるー。職員室で凄いね! でも予想とちょっと違ったや」
「毎回毎回、男性関連のトラブルで運ばれてくるとは思わないでくれ…」
「でも今日も、ある意味男性関連のトラブルじゃない?」
「……………」
「先生の、ただでやられまいという姿勢は立派だよ? でもね、毎回襲ってきた男を反射的に返り討ちにした挙句、結果の惨状にめまいを感じてバタンきゅーってどうかと思う」
「わ、私だって! 私だってどうにかしたいと…っ」
「その割に、毎日3回くらい来てない? 倒された野郎諸共」
「こ…この身体が! 身体が勝手に相手に被害を!」
「呪われた条件反射だね。可哀想に…同情するよ、パブロフ」
「パブロフなんて呼ばないでくれ…! あとそれ、正確にはパブロフの犬だから!」
「でもラン先生、毎回相打ちだったら、その内取り返しのつかない事態に…」
「や、やめてー!」
………うん、今日もとっても賑やかだね。
静かであるべき保健室なのに。
顔を青褪めさせる金髪美女を見下ろしながら、何となくのほほんと。
日常茶飯事になりかけた掛け合いに和みそうになりながら、保険医は思った。
この先生、いつか傷害罪で捕まるんじゃないかな…と。
でも捕まっても、この美女ぶりならどう見てもラン先生の方が被害者だよね、と。
結果的に相手の方が悪いことになって、ラン先生なら直ぐに解放されそうだ。
なんだ、じゃあ問題ないじゃないか…と。
学園の理事長からラン先生の世話役に任じられているはずの青年は、一人頷く。
自分が矯正するべき、相手の悪癖(相打ちぐせ)を理解していながら。
自分に被害を及ばないことを悟っているためか、どこまでも悠長に笑った。
「大丈夫! 最悪の事態にはラン先生の一人や二人、理事長やその下僕さん達が鮮やかな手腕で保護してくれるよ。相手の社会的地位と風評被害の加減は保証しないけどね!」
「そ、それ駄目じゃないかーっ!!」
個人的な事情に、ラン先生は頭を抱えていたけれど。
二人だけの保健室。
二人しかいない保健室は、今日も平穏だった。
活動報告にコメントを下さった皆様、有難うございました!
性別が女になった途端、中身は特に変わっていないのに急遽勇者様への心配と不安を訴える意見が複数寄せられましたが…
女版勇者様は、いままでの経験で身体に条件反射が摩り込まれ、男性に危機感を感じたら身体が勝手に動いて反撃する仕様です。
まぁちゃんの学園の方々はそんな勇者様の所業を笑って許して受け入れていますが、うっかり悪くない人に暴力を振るってしまったり過剰防衛をしてしまうと、そんな暴力的な自分への失望からめまい→保健室で心のケア(???)という日々のようです。
学園にはまぁちゃん(女)とりっちゃん(女)の教育が行き届いているので、性犯罪者はいません。
いたとしても、多分まぁちゃんなら完璧に守りきるんじゃないかなw
そしてリアンカくん(男)は「ほら、僕は治療担当だし」とかいって救急箱片手にまぁちゃんの背中に隠れてそう(爆)
活動報告にあった他の疑問にもお答えすると…
ロロイ → 鬼の風紀委員。学生を取り締まったり不良をのしたりして怪我をする度、リアンカちゃんに治療してもらうためにいそいそと保健室通い。幼い頃から憧れのお兄さん(笑)だったらしい。
ナシェレットさん → 学校の校門のところにある彫像。何となく面構えが気に入らないまぁちゃんによって、近々他のオブジェと交換予定。
画伯の副業 → 夏と冬には某巨大イベントに出没するらしい。友人の歌い手さんに管理サイトを委託してネットでも販売中。あとエロい何かを描いてるって!
勇者様の故郷組 → 性質の悪いストーカーの足留め兼勇者様の情報流出を防ぐため、故郷で頑張っているらしい。というか追っ手を警戒した勇者様が連絡を絶っているので、彼らも勇者様の所在を知らないという恐ろしい事態。
心配のあまり胃が荒れて、アディオンさんは入院した。
レオングリスは中学校でリアル逆ハーを形成し、薔薇色の学園生活を満喫中。おそろしいことに全員「おともだち(下僕)」らしい。
王様は勇者様の実家でメイド長をしている。ヴィクトリアンな女王の扮装で。




