勇者様こにゃんこ物語 ~にゃんこたちの何でもない、いちにち~
ま、また、書いてしまいました…もう終わったと、そのつもりだったんですが!
今回は「こにゃんこ物語」から少し経った頃、でもまだ3匹とも子猫の時期になります。
それぞれちょっと成長していたり、退化していたりします。
今日もおひさまはさんさん、ぽかぽか!
とってものんびりしちゃって、ふんわりしちゃって、何だか気分はうっきうき。
みどりのはらっぱをぴゅーって風が吹き渡って、なんだかうずうずしちゃう。
おどるはっぱは、なんであんなに素敵なのかな?
お昼寝したらとっても気持ちよさそう!
でも躍るはっぱも気になる!
うぅ、どうしよっかなぁ…
悩んでいたら、ちょいちょい、ぽすぽすって。
しっぽに、にくきゅーの感触。
「みー」
「あ、せっちゃんだ!」
ふりかえったら、せっちゃんが私の尻尾をぽすぽすしてたの。
黒いあんよで、てちてち。てちてち。
「み!」
「うん、いっしょにあそびにいこー!」
まだうまく喋れないせっちゃんだけど、言いたいことはちゃんと目を見たらわかるよ!
せっかく遊びに誘ってくれたんだもん。
お昼寝も、ぽかぽかのはらっぱも良いけど、いまはバイバイ!
「みぃみぃ!」
「うん、勇者様もさそっちゃお! みんないっしょが楽しいもんね」
「みー!」
私はちいちゃな黒にゃんこ…せっちゃんを誘って走り出しちゃう。
目指す先は丘の上。
そこではこにゃんこ仲間の勇者様が、毎日『しゅぎょう』をやってるんだよ。
正直、なにやってんのかよくわかんないけど!
今の太陽の位置からして、丘の上にいるのは間違いないと思うの。
まだ上手に走れないせっちゃんが途中で何回かころりんって転んじゃった。
ついでに私もころりん!
うぅ…いまでもたまに、足がもつれちゃうんだよね。
けど、体重軽いからノーダメージ! どんなに転んだってへっちゃらだよ!
「ゆーぅしゃーさまぁ! あそぼー」
「みーい!」
「うにゃぁぁああああああああああああああっ!?」
あ。
うっかり勢いで巻き込んじゃった!
勇者様に突撃かましてどーん!
私とせっちゃんは、勇者様ごと丘からすってんころりん!
ごろごろごろ~って転げ落ちちゃったよ。
私達の回転は、はらっぱに置かれたイス?(ベンチ)にぶつかってやっと止まりました。
勇者様は丁度イスの足で頭ぶつけちゃって痛い痛いしてるみたい。
頭を抱えて蹲る勇者様を、私とせっちゃんは二人でてちてち。
「勇者様ごめんね…リアンカちゃん、しっぱいしっぱい!」
「みー、みぃみい、み!」
「う、うぅ………もう、二匹とも~…いきなり何なんだよ」
「勇者様、あそぼ!」
「み!」
「まだ今日の修行ノルマがおわってないから、ダメ!」
「え~!」
「みい?」
めって私のおでこをツンする勇者様。
でもでも、勇者様の『しゅぎょう』って、アレだよね!
「にゃんこパンチ左右それぞれ木に一日200回ずつって、楽しいの?」
私だったら、絶対に途中で飽きちゃうよ!
にくきゅーだって痛くなっちゃう。
勇者様は、本当に何が楽しくってそんなことをするのかな?
「いや、修行って楽しみのためにするもんじゃないんだけど…」
「楽しくないならしなくっても良いよね!」
「みい!」
「ダメだよ、修行して俺は強くなるんだ…!」
「強くなりたいの? なんで? まぁちゃんに挑むのー…?」
この界隈の野良で強くなりたいって言ったら、大体のとこ理由はそれだと思うんだけど。
ボスねこまぁちゃんに、ちょっとやそっとのパンチで勝てると思ってるのかな?
「そんな無謀な大望抱いて自殺する気はないよー!?」
「大丈夫! まぁちゃんだってトドメは刺さないから。たぶん!」
「なんて信頼性のないお言葉!」
「しんらいせー? 来世? え、勇者様死んじゃうの…?」
「え。ちょっとまって、勘違いして目を潤ませるの止めて! ボスさんにしめられる!」
「にゃあー…勇者様が死んじゃうよぉー!」
「今この瞬間に俺の寿命縮めてるのキミだからね!?」
うわぁぁぁああああん!
せっかく、せっかくお友達になれたのに…!
勇者様が死んじゃうなんて嫌だよぉ………っ
けっきょく、このあと私も取り乱しちゃって。
勇者様が私をなだめようって、おろおろ、うろうろ、あわあわ。
最終的に私の毛並みを舐めて整えたり、ぽんぽんって頭を撫でたり。
いっしょにおろおろせっちゃんも私を心配しちゃって。
なんだか遊ぶどころじゃなくなっちゃったんだけど、たまにはこんな日もあるよね!
まだまだ私もせっちゃんも、勇者様もちっちゃいんだもん!
こんな日もあるある!
そんなぽかぽかな、晴れ晴れなお日様の日。
泣きつかれてねちゃった私と。
おろおろするうちに私を枕にねちゃったせっちゃんと。
困り果てた末にねちゃった私にほっとして、いっしょに丸くなってねちゃった勇者様の。
こんなそんなでいつもと代わりばえのしない、平和な一日。
なんだかんだで、こんな出来事も楽しくって。
また明日もなにか楽しいことがあるかなぁ?
何も無くっても、きっとお友達と一緒にいられるだけで楽しいよね!
また明日も明後日も、みんなで遊びたいな。
そんなちょっと先の未来を楽しみに。
今はとりあえず、眠気に負けてねむねむ…おやすみなさい!
り「勇者様ー。それで結局、なんで強くなりたいの?」
ゆ「強くなったら…なれたら、鈴木家に帰っても大丈夫な気がするんだ。
俺は、ママさんやお姉さんたちに負けない強さがほしい………!!」
り「無理じゃないかな」
ゆ「慈悲も無くずばっとひとこと!?」




