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ババ抜き勝負の行方(第4回・勇者様の場合)

 いきなり始まった早朝の一番勝負。

 種目はババ抜き一本!

 最終的にババになった人が、一抜けした人の一日奴隷をすることになって…?


 参加者はお馴染み、リアンカちゃんと魔王兄妹、勇者様。

 それからセンさんとサイさんの六人で。

 はてさて、駆け引き交じりのババ勝負。

 その行方は果たして…?


   一日奴隷と、ご主人様。(勇者様編)



  ~ご主人様になったのが、勇者様の場合~ 


 スタートダッシュが功を奏したか、それともやはり普段は顔を出さない幸運補正の効果なのか…!

 なんとリアンカとまぁちゃんの油断できないW悪戯っ子に挟まれて、辛くも一抜け勝利という快挙を達成した勇者様!

 こんな時にばっかり仕事しやがって幸運の女神…。

 魔性の魅惑王と悪魔と天使を同居させた村娘にかき氷の如くがりがりごりごり削られた精神力が、報われる展開はやってくるのだろうか!?


「一抜け、か………俺は果たして、本当に幸運だったんだろうか」


 自分の勝ち星も良運と断定できない勇者様。

 そんな君に、なんか幸あれ☆



《奴隷その1 センさんの場合》


 奴隷を前にして勇者様は。


「………なんだか、お前が残るような気がしていた」


 …と言った。

 それに応えてセンさんは、


「言ってろ。だが言葉はいらない、本当は。そうだろ?」

「ああ、そうだな…」


 今の彼らに、きっと言葉は無用。

 互いに滅茶苦茶な環境の中。

 埋没するように騒動に巻き込まれ、振り回され。

 気付いてみれば、再会してから一月が過ぎようとしている。

 なのに今まで二人は、一度も剣を交わすこともなく。

 それはきっと、試合の中で出会った彼らにしてみれば、不自然なことで。


 その不自然を、正すように。


「俺が勇者になり、城を飛び出してから、どれだけ強くなったか…その身に刻むようにして、測ってもらおうか」

「言ってろ。お前こそ、自分がどれだけ強くなったのか俺と戦うことで測りてぇだけだろ」


 二人の間に、本当は言葉なんていらない。

 何故なら二人とも、その望むところはただ一つ。


「だが、な……俺だって強くなったんだよ。あんま舐めてかかると痛い目見るぜ?」

「それは、正直楽しみだ…。以前との違い、互いに測り合おうか」


 そう、その手に握るモノ。

 ただ、剣一つを使って。


 いざ、尋常に――


  → YOU WIN! 勇者様

     開始五分で、勇者様が圧勝した。



《奴隷その2 サイさんの場合》


 どうしようか。

 はっきり言って、勇者様は悩んでいた。

 一日奴隷、一日ご主人様とはいっても…

 正直、『彼』を目の前にして、やってほしいことが欠片も浮かばない。


「勇者殿下?」

「あー…と、その…君の得意分野とか、できることとか」

「そうですね…」

 

 何もしてほしいことが思い浮かばないので、ひとまず出来ることを聞いてみる。

 すると、騎士の筈の男は思いもよらぬことを言うのである。


「戦うことは勿論ですが、実家が布地屋なんで…服飾、裁縫、布製品の融通…そういったことならお任せあれ。あとは貴金属の鑑定なんかも出来ますが」

「君は本当に騎士なのか?」


 思わず訊ねてしまう、特技の充実ぶり。

 そこまで出来ると断言しておいて、何故服飾業界に入らなかったのか…

 気にはなったが、個人的な事情に口を出すほど勇者様は野暮な男ではなかった。

 だが、サイさんの特技を聞いて、思いついたことがある。


「それじゃあ、その得意な裁縫技術を使って、一つ頼みを聞いてもらえるだろうか…」

「なんなりと?」


 この方が、財力と権威を持ち合わせ、手に入らぬもの等ないだろう方が何を頼むのかと。

 そこはかとなくわくわくして待つサイさんに、勇者様は言った。


「普段の世話になっている村長夫妻に贈り物をしたいんだが…材料費や手数料は出す。仕事に見合った報酬は出すから、二人に似合う服を仕立ててもらえないか?」

「それ、手数料やら何やらまで出してもらったら奴隷じゃないですよ。まあ、出してもらえるのならいただきますが」


  → 兵士Cの針と糸がいい仕事をした!



《奴隷その3 せっちゃんの場合》


 はりきりせっちゃん!

 …そんな彼女を見た瞬間、何故か勇者様は回れ右をしたくなった。

 しかし回れ右は出来ない。

 何故なら背後では、まぁちゃんが筆舌に尽くし難いオーラを放っているから…。

 ここで回答を間違えたら、自分は死ぬ。

 それが分かっていて嬉しい者が、どこにいるというのだろう…。

 だが、勇者様に邪念はない。

 だから自分は大丈夫なはずだと言い聞かせるが、どうしても不安が募る。

 何が地雷になるか…ぼんやりわかっていても、魔境の住民の全てはやっぱり勇者様にも計り知れないものがあったから。


「勇者さん、勇者さん♪」

「なんだろうか、セツ姫…」

「今日は一日、せっちゃんは勇者様の奴隷ですの。お願い事なぁんでも聞きますの」

「姫………頼むから、発言内容は考えてくれ…」

「?」


 せっちゃんが喋った途端、背後から感じられる不穏な気配が確実に殺気レベルにまで高まった。

 自分という人間の人格も少なからず知っているだろうに、もう少し信用してもらえないんだろうか…勇者様は考える。

 こんな年端もいかない少女に無体を働くような人でなしに、勇者様はなったつもりがない。

 だがしかし、案じる心に理屈などないのだろう。

 じりじりと焙られるような、どす黒い炎のような気配。

 自分、死んだ。

 一瞬そう思ってしまった勇者様は、きっと間違っていない。


 不穏な気配と目に見えぬ戦いに疲弊しながら、勇者様は思った。

 ――俺…今日を生き延びたら、赤いチューリップを育てるんだ………

 


 残念ながら、初夏も近づく今の時期(作中時系列)にチューリップは時期外れだ。


「えーと………あ、そうだ」


 何とか非業の死を回避しようと脳の回転率もアップして。

 そうしてふと、思いつく。

 逃避したい一心から、勇者様は思いつきをそのまま喋っていた。


「実は故郷の母や祖母に何か土産を、と考えているんだが………魔境特産のお菓子なんかで、何かお薦めはあるかな。あったら紹介してほしいんだけど」

「魔境銘菓ですの?」

「ああ、そんな感じかな」

「きゃあ♪ おまかせくださいですのー!」


 せっちゃん、大喜び。

 どうやらその頼まれごとは、彼女のお気に召したらしい。


「実際に味を食べ比べて、勇者さんのかか様のお好みかどうか確かめた方が良いと思いますの」

「ああ、言われてみればそれもそうだよな。母上達の気にいるかどうか、自信を持って渡せるかどうかは自分で確認しないと…」


「それならお茶会ですのー!」


「えっ!?」


 お菓子の食べ比べ→お茶は必須→お茶会。

 そんな発想の変遷をたどり、せっちゃんの中でお茶会の開催が決定事項と化して。

 勇者様はリアンカちゃんとまぁちゃんがお茶会に乱入するまで、せっちゃんと二人きり。

 僅かながらも大層居心地の悪い思いを味わったのでした。


  → Let’s お茶会!



《奴隷その4 まぁちゃんの場合》


「願いは何だ、ご主人様」

「まぁ殿、それじゃランプの魔神だ」


 思わず1ツッコミ。

 でも仕方ないと勇者様は思った。

 だってまぁちゃんは、とってもツッコミどころが満載で。


 一日奴隷となるや否や、何故か一旦着替えに戻ったまぁちゃん。

 そんな彼の、今の姿は…


 上半身は、裸で。

 素肌の上に金や銀の首環、腕輪、指輪とじゃらじゃら。

 頭にはターバンを巻いて、大粒ルビーのブローチと羽飾りで留められている。

 下半身は緩い素材のそれっぽいパンツ。

 腰帯はターバンと色を合わせた品で、また宝石がじゃらじゃら付いている。

 足元は裸足だが、足輪やら何やらをつけているので総合的に見て大変華やかだ。


 まぁちゃんは、完全になりきっていた。


「おるぁ、いいからとっとと願い事を口にしな」

「まぁ殿、口調。●クザみたいだ」

「ばーか。今の俺は奴隷だよ」

「こんな偉そうな奴隷、見たことない!」

「いいから願い事言えってんだよ、この野郎。この勇者」

「『勇者』が罵り言葉に聞こえる…」


 しかしこうなると、何か願い事をしないとまぁちゃんも納得しない。

 それが分かっているからこそ、勇者様の顔は引き攣っていた。

 とにかく何か願うかと、ゆっくり頭を巡らせる。

 だがそんな時間も無駄とばかりに、当のまぁちゃんがガンガン急かしてくるので。

 勇者様は困惑気味に、何とか願いを捻りだした。


「それじゃ、村長夫人に庭の草むしりを頼まれているんだ。それを手伝ってもら…」

「チッ…クソつまんねぇ」

「願いを言って悪態つかれた! 急かしておいて、なんだこの仕打ち!」

「もっとこう、さあ…人類の欲望みてぇな薄汚ぇ望みはねーのかよ。金とか豪邸とか女とか酒池肉林とか不老不死とか」

「……………。まぁ殿、冷静に考えて俺がそれを望むと思うのか?」


 勇者様 →実家:城。生まれ持った身分:世継の王子。

 実家のレベル:人間国家一の大国を統べる名門王家。

 所有している固定財産で一番大きいもの:領地(公爵領)。

 性犯罪巻き込まれ率:同年齢の人間の平均600倍。


「そんな身の上で、この上何を望めと…?」

 

 強いて言えば、平穏くらいしかない。


「「…………………」」


「あー………そーだな。一緒に釣りでもすっか?」

「あ、ああ…うん」

「…っと、そうだ。『勇者』とは釣りすんなって家訓で言われてんだった。やっぱ狩りにしよーぜ?」

「否やはないが……相変わらず、変な家訓だ」

「ほっとけよ」


「ちなみにまぁ殿」

「んだよ」

「俺が先程のような欲塗れな願いを何か口にしたとして…どう叶えるつもりだったんだ?」

「あー? 金なら金塊抱かせて、豪邸なら建てて、女はホムンクルス作らせて、酒池肉林なら東の方にそんな感じの池があっから連れてって放置。んで、不老不死なら魔改造してたな」

「良かった…っ! 良かった、物質的に満たされていて! 変な願い事しなくて、本当に良かった!!」


  → 結局この日は二人で猪や鹿を追いかけた。



《奴隷その5 リアンカ嬢の場合》


「願いはなぁに? ご・しゅ・じ・ん・さ…っま☆」


 準備をしてくると言って、リアンカちゃんは一度自室に戻って。

 再び戻ってきたその姿を目にして、勇者様は茫然自失。

 目を点にして、意識を飛ばしかけた。


「なっ………なんだ、その格好ぉぉおおおっ!?」

「勇者様、かお真っ赤♪」

「だ・か・ら! その格好なにって聞いてるんだ!」


 答えろというのならば、お答えしましょう!

 誰憚る問題でもないと、リアンカちゃんは得意げにお答えした。


「ミニスカ猫耳メイドですが」


 大きな三毛猫のお耳と、花弁みたいなスカートから伸びるふわふわの尻尾。

 首元で、ちりん♪と。

 大きな赤い首輪に付けられた、金色の鈴が揺れて可愛い音を鳴らした。

 しかし、その全貌は可愛いというより……うん、男の欲望。


 ちなみに靴下はガーターベルトです。


 全力で動揺する勇者様。

 普段から胸元は開いている方なのに、今日のリアンカちゃんは一味違う。

 より大きく、ガバリと胸元が開いていた。

 真っ白くて柔らかい部位が、上半分を人目に曝していた。

 メイドなのにエプロンは申し分程度のアクセサリ化していて、本来の用途を果たしていない。

 だけどエプロンの端に縫い付けられた、肉球の刺繍がいい味を出していた。

 そして、やはりポイントの高い足!

 健康的に肉のついた太腿が、余裕で半分は出てしまっている。

 すらりと長い足が、真っ白な薄い靴下に包まれていて…


「まぁ殿!? まぁあああ殿ぉおおおっ!!」

「落ち着け、ほら深呼吸」

「しっし、し、深呼吸…っ?」

「そうそう、ほら、ひっひふー」

「それはお産の時の呼吸法だろう!? あまりにベタすぎる!」

「おお、こういう時でもツッコミにゃ冷静なのな」


 取り乱す勇者様の両肩を握る、まぁちゃん。

 他の男…欲望漲る狼野郎が相手だったら、この時点でまぁちゃんが抹殺に走っていたことだろう。

 それと同時に、リアンカちゃんにこのような卑猥な衣装を提供した馬鹿(多分画伯)を血祭に上げに疾走していたはずだ。

 しかし今はその何をおいても面白すぎる。


 勇者様が、あまりにも顔を真っ赤にして狼狽えるので。


 取り乱す勇者様を見て、完全にまぁちゃんの行動基準メーターは場の面白さに便乗する方へ傾いていた。

 それに、他の男はともかく勇者様であればこんな可愛く卑猥なリアンカちゃんを見ても、狼野郎になったりはしないだろうという男としては悲しい程の信頼豊かな評価を下していて。

 結果、止めない。

 むしろ熱暴走の加速を煽る気満々で。


 それをリアンカちゃんもまた、全力で面白がっているのだろう。

 勇者様の見えないところで、してやったりとばかりに笑っている。

 ぐ、と立てられた親指は、見事なサムズアップ。

 それにまぁちゃんもニヤリと魔王スマイルを返しながら。

 二人はアイコンタクトのみで、今日のおちょくりメニューの算段を冷静に組み立てていた。


  → リアンカ嬢(ミニスカ猫耳メイドver.)による強制ご奉仕(笑)

     二時間くらいで勇者様は逆上せて、鼻血を吹いてぶっ倒れた。





 → まぁちゃんの猫耳執事(没)

 リアンカちゃんと被るから、没にしちゃったw

 お望みの方が複数いれば、いつかどこかで出します。

 魔神姿:上半身が白くてきっと眩しいことでしょう。

 まぁちゃんは肌が白いけど、貧弱ななまっちろさじゃなくて、そういう『肌色』という感じ。

 耐性のない人が見ると、どうしたって動揺するような透明感有る美肌です。

 素肌に宝石類とか、物凄くエロいと思うのは私だけでしょうか。

 まあ、それが最も似合うのは肉感的な傾城の美女さまですが。


 → 不憫様

 もはや彼が悲惨な目に遭うのはお約束ですね。ご愁傷様です。


 → センさん

 台詞やら何やらだけ見ると、壮大なバトル展開が待ち受けていそうな雰囲気。

 しかしながら、開始五分で彼は『雑巾(廃棄)』に進化しました…。


 → サイさん

 彼は何故騎士をやっているのか、疑問も高まりますね。

 答えは単純明快 長 男 じ ゃ な か っ た からです。

 兄さんが家の布地屋を継ぐのですが、より才覚のあった弟という身分で疎まれるので、さっさと家を出て自活できる職を求め、兵役に参加→みるみる出世!

 こうして彼は騎士になりました。


 → リアンカちゃん

 私としては、彼女の乳はD~Eくらいかなぁと思っています。

 真っ白ぷるるんしてそうですね。

 勇者様だって、顔を赤くしているあたり嫌いじゃないと思います。

 免疫がなくて、照れと羞恥と自己嫌悪が先に立つだけで。うん、免疫ないから。

 ……彼の女難遍歴で、免疫がないというのも凄いですね。

 きっと側近集ががっちりきっちりガードしてきたお陰でしょう(笑)

 しかしこんないい目を見て、「かわいそうに…」という反応になる男キャラも凄いですね。

 性癖:ノーマルなのに。


 → せっちゃんは可愛い!(合言葉)

 今回は今までで一番平穏なお願いでしたね。

 せっちゃんは他意なく反応に困るお菓子の数々を進めてきそうで、きっと対応に困りますけど。

 本人に悪気はないのが、一番厄介です。


 → 全力いじり

 いま、ここで!

 あの2人が、全力いじりに走らずして、どうしろというのでしょうw

 それ以外の選択肢が、残念ながら見つかりませんでしたww

 まじめな奴隷やったら、何の動きもなくて面白くないじゃないですか。

 だって命令する側が、勇者様なんですもの。


 → 赤いチューリップ

 なんだかとても平和で和みそうな花は…と考えたらこうなりました。

 イメージは、TVの放送事故のときに流れる「しばらくお待ちください」な画面光景。

 あと、勇者様でも育てられそうな簡単な花は何かと考えたらこうなりました。

 勇者様、時々物凄く不器用ですからね。

 特に、庶民的な経験に左右される活動では。


 → ミニスカ猫耳メイド

 お望みならがんばって描きますが、結果はあまり期待しないでください(苦笑)

 視覚の暴力ですか、暴力ですね。

 絶対に画伯の差し金でしょう。奴の暗躍が透けて見えます。

 リアンカちゃんはネタの為なら、時として手段を選びませんよね…。

 体張ってますね、物凄く。

 それを見た村長さん→ 手に持っていたコップを落とす。パリーン

 それから勇者様に何のつもりか、無表情で問い詰めると思います。

 冷静な口調で、小一時間どころか五時間くらい。



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