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ババ抜き勝負の行方(第3回・せっちゃんの場合)

 いきなり始まった早朝の一番勝負。

 種目はババ抜き一本!

 最終的にババになった人が、一抜けした人の一日奴隷をすることになって…?


 参加者はお馴染み、リアンカちゃんと魔王兄妹、勇者様。

 それからセンさんとサイさんの六人で。

 はてさて、駆け引き交じりのババ勝負。

 その行方は果た


   一日奴隷と、ご主人様。(せっちゃん編)



  ~ご主人様になったのが、せっちゃん場合~ 


 度重なる天然攻撃と偶然では済まないような幸運の連鎖連発!

 ある意味、無敵のせっちゃんは今日も今日とて快進撃!

 次点と大きな差をつけて、やってやりました一等賞!

 余裕で一抜け達成した彼女は、一体何を望む…?



《奴隷その1 センさんの場合》


 互いに今まで全く交流のなかった相手。

 初対面に近い美少女を前に、センさんはまっすぐ見られてたじろいだ。

 眼力を緩めることなく、じぃっと見上げるせっちゃん。

 せっちゃんせっちゃん、口開いてるよ!

 閉じて閉じて!


「決めましたのー!」


 唐突な、その宣言。

 いきなり何を決めたのかと、センさんの肩が一瞬びくつく。

 しかし次の瞬間にはそんな自分にハッとして、苦笑を浮かべて自らに言い聞かせた。

 落ち着け、相手は綺麗な顔をしていても、ただの女の子だ…と。

 わがままボディ愛好者のセンさんにとって、せっちゃん(貧)は恋愛対象外だった。


 動揺を押し隠すセンさんの内面には、気付くことなく。

 せっちゃんは無邪気に宣言一つ。


「せっちゃんのお友達(ペット)と遊んでほしいんですの」

「は? お友達? ………ペット?」

「はいですの。みんな良い子ですのよ? でも中々新しいお友達が増えませんの…みんな、寂しがってますのー………だから、お友達になって遊んでほしいんですの」


 うるっと潤んだ艶々のお目々が、じぃぃっとセンさんを見上げてくる。

 小さい子のお願いを無碍にできないのは、孤児院職員の宿命だ。

 なのでセンさんは頷いた。

 うっかり頷いた。

 部屋の隅で、勇者様が遠い目をしていることにも気付きはしないで。


「よし、任せろ。今日は一日たっぷりもふけも共と遊んでやるよ!」


 ………まさかその言葉を、開始一分で後悔する羽目になろうとは。


  → センさんは粘液まみれになった!



《奴隷その2 サイさんの場合》


 初めて出会った姫と騎士。

 しかしそこにロマンスは生まれない。


 開口一番! 先手必勝!

 何事か口にしようとしたせっちゃんに先じて、サイさんが口を開く。


「ゴシュジンサマはお人形にリボンとか付けるかな?」

「…? せっちゃんはせっちゃんですのよ? ゴシュジンサマではありませんの」

「そこは様式美で。でもご要望にはお答えして姫君?」

「あ、お人形ですの? くまちゃんやうさちゃんが大好きですの! リボンもよく付けますの」

「じゃあ此方のリボンなどはいかがでしょうか? この夏、グリムラントで流行している新色で…」

「ふ、ふわあぁ…っ! 奇麗なリボンですの!」

「姫君のくまたんは何色?」

「え、えぅ……いっぱい、いますの!」

「一般的な茶色い熊でも、色の濃淡ってありますよ。そう、濃い色ならこっちの薄い色もいいけど、クリーム色の地に赤でアクセントの入ったこれと、後は…」

「ふ、ふわぁ…!」


 せっちゃんの目が、きらきら☆と輝く。

 すっかり魅入られたお姫様と、服飾業界で育った騎士は、その日一日ぬいぐるみを相手にああでもない、こうでもないとリボン選びに時間を費やしていった…。

 結果的にせっちゃんも50本近いリボンを選んだので、互いに良い時間であったことでしょう。

 お買い上げ、ありがとうございます。


  → サイさんの神回避! 布地屋の本領発揮で営業に突入。



《奴隷その3 勇者様の場合》


 勇者様にとって一番行動の読めない、計り知れない相手。

 悪い意味ではないのだが、これに該当するのが実はせっちゃんで。

 そんな彼女を前に、何を言われたものかと困惑している。

 だけど今日のせっちゃんは、珍しく勇者様の予想の範疇ないに踏みとどまる行動に出た。


「勇者さん、せっちゃんのお友達(ペット)と遊んであげてほしいんですのー」

「……………そうか、わかった」


 そう言いながら、何故か彼は傍らに置いていた剣を手に取る。

 まるで、内に秘めた決意を現わすように。

 剣を握る手に、力が籠った。


「――覚悟は、決めた」


 その目は、今から女の子のペットと遊ぼうという目ではなかった。

 戦いを決意した、生きて帰る覚悟を決めた男――戦士の目であった。


 今、戦いのゴングが鳴る。


  → GO FIGHT!



《奴隷その4 まぁちゃんの場合》


「あに様ー」

「はいはい」

 

 勝者と敗者に分かれた途端、せっちゃんは上機嫌。

 るんるんと♪を飛ばしながら、実兄まぁちゃんにべったりだ。

 ごろごろと喉を鳴らす猫のように、ぐいぐいぐりぐりと抱きついて頭を擦りつける。

 そんな妹の頭を撫でこ撫でこと撫でながら、あに様はぬるくも優しい顔をしていた。


「あに様、せっちゃん一等賞ですの!」

「そーだな」

「あに様はせっちゃんの奴隷ですの!」

「…うん、間違っちゃいねぇよ? けどいきなりそう言われっと、一瞬どきっとするわー……うん、あに様物悲しくて泣いちまうからな?」


 確実に妹と従妹の育て方に失敗している過保護兄さんは、苦笑い。

 だけど怒らないところに、もう全てが出ている。

 傍観している者達の内の何人かは、思った。

 そういや平素から、このお兄さんは妹さんの奴隷みたいなもんだよなー……と。

 

「あに様、あに様! 肩車してほしぃですの」

「せっちゃん、そりゃはしたないからもー駄目だって言っただろ? 肩車は七歳まで!」

「でもでも! 今日はせっちゃん、あに様のご主人様ですの!」

「………あー…」

「あに様は奴隷ですの!」

「……………あぁ…」

「お願い、聞いて下さい……ですの…」

「あーっ!! もう、わかった! やりゃ良いんだろ? やりゃあ!?」

「きゃーあ♪」


 そう言いつつも、流石に肩車はアレかと思ったまぁちゃんは。

 自分の左肩の上にせっちゃんを座らせて、それで勘弁願おうと思った。

 …が


「きゃあ♪ 高いですのー! たかいたかーい!」


 全く気にしていない風で、せっちゃんは大喜び。

 そのまま彼女はこう言った。


「あに様! このまま魔境一周!」

「マジで!?」


  → 壮大な冒険が始まろうとしている…!



《奴隷その5 リアンカ嬢の場合》


「リャン姉さまぁ!」

「せっちゃん!」


 ひしっと抱きあう、麗しの(従)姉妹。

 きゅうっと抱きしめられる腕の中、せっちゃんはすりすりとリアンカちゃんに頬擦りを繰り返す。

 …胸の谷間にジャストフィットしていた。


「ちょ、せっちゃんくすぐったい(笑)」

「姉様って、抱き枕にしたらとっても気持ちよさそうですのー」

「一緒にお昼寝する?」

「うぅ………いいえ、しませんの。今日一日が勿体なくって、できませんのー」

「ふふ…じゃあ、せっちゃんは私にどんな命令をしてくれるのかな? 何でも言って、ゴシュジンサマ?」

「あぅー……じゃあ! じゃあ! 蹴鞠やりましょーなの!」

「………これはまた予想外に渋いところを突いて来たわね」

「最近、お勉強していた古文書に書いてありましたの。楽しそうでしたのー」

「うーん…私も名前くらいしか知らないよ?」

「大丈夫ですの! ちゃんと、ヨシュアンにやり方を聞いてきましたのよ?」

「何故そこで、まさかの画伯チョイス……あ、でも、ヨシュアンさんが変な捏造していても、それはそれで面白そうかもしれない………それに相手がせっちゃんなら、いくら画伯でも滅多なことは吹き込まないだろうし…いや、でも、せっちゃんが分かっていないことを見越して何か変なネタを仕込んでいたり………」


 葛藤と、疑念。

 しかし揺れに揺れるリアンカちゃんの心情は、かなりのところ「実行」に傾いている。

 基本的に面白そうなことが大好きだから。

 嘘まみれの懸念があっても、むしろそれが面白そうに思えてしまう。


「まずはヨシュアンさんが何て説明したのか教えてくれる?」

「はいですの! まずはスライムを用意して…」

「画伯ー!?」


 スライムは、蹴ってもきっと弾まない。

 蹴鞠にはならない。

 飛ぶ前に、きっとべちゃってなる。飛散する。

 そうは思いつつも、予想以上に画伯の創作が入っていそうなルール説明の出だしに好奇心によるときめきが湧いて仕方がない。


「スライム、蹴るの?」

「蹴るのは、鞠ですのよ?」


 至極当然といった顔のせっちゃん。

 流石にそこはそのままだったかと思いながら、ではスライムは何の為にいるのかと首を捻っていましたら。


「林檎の皮や薔薇の花弁と一緒に煮詰めたスライムの抽出液を絞って、粘着質なピンクの液体を作りますの。それで鞠を蹴り損った人にペインティングしていきますのよ?」

「そりゃ羽根つきだ!」

「予め水着に着替えておいて、全身塗りたくられて最終的にピンク面積の広かった方が負けですの」

「顔じゃなく、全身!」

「ペインティングには刷毛じゃなくて毛筆を使うように念押ししてましたのー」

「…なんだろう。画伯、素で間違えたの? それともわざと?」


 困惑しながらも、既にリアンカちゃんは「実際やってみる」の方向で気持ちが固まっていた。

 水着出さないとなぁと思いながら、実行の算段を脳内で整える。


 そんな彼女たちの、傍らで。


「ちょっくら俺、ヨシュアン絞めてくっから!」

「まぁ殿! まぁ殿!? 気持ちはわからなくもない。けど落ち着け! まぁ殿がそれで殴ったら死ぬ! 死ぬから!」


 今にも飛び出して行こうとするモーニングスター装備の魔王様を、勇者様が一所懸命に羽交い絞めにしていた。


  → ルールのおかしい蹴鞠大会開催…と、同時に魔王のヨシュアン狩り勃発。






 → 画伯。

 たまに思い出した頃に登場する人ですね。

 だって使い勝手良いんだもの。

 下種な内容は大概彼のせいにすれば上手くいきます。

 だってそれが画伯だもの。


 → サイさんの神回避。

 利と期に聡いのは商人の常…って違う、この人商人じゃなくって騎士でした(笑)

 でも人間にしてはナイスすぎる回避能力w

 明らかに魔境向けですね。きっと充実して生きていけますよ、この人。

 この十分の一でも、勇者様に備わっていればきっと「ここは人類最前線」は全然別物のお話になっていたことでしょう。


 → 次回は勇者様。

 そうですね。いじります。いじり倒しますよ。

 むしろ勇者様をいじらないでどうする…っ!!

 彼が哀れなことになるのは、もはやこのシリーズのお約束ですw


 → せっちゃんのペット

 彼女がナニをどれだけ飼育しているのか…それは計り知れなく、得体も知れず。

 多分魔王城の中でも表立って触れられることのない暗部のようなものでしょう。

 粘液分泌するのは、あれですね。

 ラッキーマウス(ミュータント)共の仕事です。 

 べたべたになるよ! 触手も生えてるよ!

 …センさん、がんば!

 (絶対、トラウマ級)


 そして勇者様。

 ああ、うん……明らかに、遊ぶ、ではなく戦ってますよね。

 その勝負の行方はわかりませんが、きっとナイスファイトの敢闘賞を送りたくなるような結果が待ち受けていたことでしょう。

 うん、勇者様も頑張って!


 → せっちゃんらしさ。

 せっちゃんは可愛い!(合言葉)

 しかし確かに、十五歳と考えると幼い彼女の言動。

 生来そういう性格なんでしょう。

 何しろ彼女の属性は、天然……

 もしかしたら私が天然という生物を誤解していて、変な方向にねじれているのかもしれませんが。



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