ババ抜き、ば・ば・ば
こちら、昨年の夏に活動報告に乗せたブツになります。
元は小林が見た夢から発展しているので、色々齟齬もあります。
舞台場面は、「ここは人類最前線5」の深夜の酒盛り翌朝。
アディオンさんとサルファの姿が見えませんが、恐らく存在を忘れられているものと思われます。つまり、奴等は不参加です。
それは、皆がどんちゃんと呑み騒いだ翌朝。
宴会会場となり、ごろ寝会場となった勇者様の部屋に黒髪の天使が舞い降りた。
…と思ったら、違った。
今日も可愛いせっちゃんだった。
「あに様、あに様、おっきしてなのー!」
「ううぅん…せっちゃん、あと五時間……」
「寝過ぎですの!」
ゆさゆさ、ゆさゆさ
ゆさゆさゆさゆさ
ゆっさゆっさゆさゆさゆさゆっさゆさ
せっちゃんは酒瓶抱えてだらしなく眠る兄を、バターを作る勢いで揺さぶった。
「せ、せっちゃん………酔う酔う、酔うから」
「お酒に強いあに様が、酔うなんてありえませんの!」
「いや、酒に(そっち)じゃねーよ…! あに様、バターになっちまうからな!?」
「あに様ばたー! ゴルフバック取ってきましょうなの?」
「そっちでもねーよ!?」
思わずツッコミを入れる魔王の声に、二日酔いの頭を抱えながらも寝ていられなくなった面々がのっそりと身を起こす。
リス君は不機嫌を隠さない顔で、隣に転がっていたもぉちゃんを蹴り起こした。
「おい、起きろ」
「う~…? トリス、まだ朝はえぇよぉ」
「さっさと起きろ。ここにいたら巻き込まれるぞ」
「あ?」
怪訝な顔で目を開ける相方に、リス君はくいっと顎で部屋の一角をさす。
そこには兄をバターにしようとしているせっちゃんが。
「……………」
「どう見ても、暇そうだろ」
「よし。遊ぼうって誘われないうちに帰るか」
「ああ」
「…あ、センも起こさねーと」
「いや、これも村の洗礼だろう」
「え、置いてくの?」
「身代わり羊は置いておかないとな」
寝ている間に、うっかり生贄にされてしまったセンチェス・カルダモン(24)。
薄情な彼の身元引受人トリストは、魔王妹の目に留まる前に窓から脱走した。
それに引き続き、豹の獣人も。
こうして室内には、魔王兄妹とリアンカ。
それから未だに寝ている部屋主の勇者様。
友達に見捨てられたセンさんと、低血圧のサイさんが残された。
そんな面々を前に、魔王妹が満面笑顔で言い出した。
「トランプ、いたしましょうなの! ババ抜き、ば・ば・ば!」
にこにこ笑顔の超絶美少女、せっちゃんに逆らえる者などなく。
彼らは起き抜けに脈絡なくも唐突に、ババ抜き大会の開催を聞いた。
まだ意識も半覚醒状態の中、強制的に巻き込まれていく。
だけどそのババ抜きは、ただのババ抜きではなかった。
欠伸をかみ殺しながら、リアンカが思いつきでこう言ったからだ。
「それじゃ、ババになった人が一抜けした人の一日奴隷ってことで」
顔を見合わせる、参加者の面々。
絶対にご主人様にはしたくない者、数名。
何を言い出すか、得体の知れない未知数の相手も、数名。
自分の悲惨な運のなさを噛み締める者も、数名。
絶対に体が持たないと、思ったり思わなかったり。
そんな一日は御免だと、思ったり思わなかったり。
絶対に負けられない戦いが、始まろうとしていた。
勝負の行方については、活動報告にあったものと同じものを今後順次投稿する予定です。




