表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/93

新たなる竜の生まれた日

この前、活動報告でアンケートをとりました。

その1位になったのが、

 ・とある女魔王の鬱 続編

 ・ここは人類最前線メンバー 幼少期編

この二つのどちらを先にしようかと考えていましたが、

今日はこどもの日ということで、幼少期編を先に書かせていただきます♪


 内容は、タイトルで察する方もいらっしゃるかもしれませんが。

 子竜ちゃんたちの誕生話になります☆


訂正を一つ:

 うっかり最近、子竜たちの幼いイメージで話を書いていました。

 しかし設定を確認してみると、子竜たちの実年齢12歳。

 本編のほうで何箇所か、実年齢と齟齬の生じている部分があるかもしれません。

 今後は正式に12歳設定で書き進めますが、過去の分はどうかご容赦下さい。

 それは、12年前のことだった。

 当時、ハテノ村の村長さんには小さな女の子がひとり。

 

 リアンカ・アルディークちゃん 5才。


 特技:状態異常無効の、ちょっとお転婆な女の子。

 悪戯が少々度を越していることが玉に瑕だった。

 

 そんな彼女の専ら共犯者となる少年は、お隣さんの男の子。

 魔王城の嫡子、魔王子バトゥーリくん(通称まぁちゃん) 9才である。

 

 加えてこの頃、二人の後をカルガモの雛のように飽きず追いかける女の子がいる。

 まぁちゃんの実妹、セトゥーラちゃん(通称せっちゃん) 3才。

 この3人は、元気が有り余っているのか何なのか。

 1年前からまぁちゃんに仕え始めたリーヴィル少年を振り回しても、無邪気に笑うだけ。

 全く悪びれることなく、うろちょろしている。

 だけど、時として。

 年長者に当たるまぁちゃんもまた、振り回される側になることがあるのである。


 これは、そんなエピソードのひとつ。


 子竜達の、誕生にまつわる思い出。


 



  【新たなる竜の生まれた日】







 それは、よく晴れ渡った空に大きな白い雲が君臨していた日のこと。

 3人の子供達は、お目付けりっちゃんの目を掻い潜ってハイキングに来ていた。

 既に、村を出てから越えた山は8つ目である。

 

 吹雪く山、密林の山、灼熱の山、落石地獄。

 魔境の山々は表情豊かに、何でもありだ。

 山を越えるごとに環境・生態系ががらりと変わることもよくあることで。

 子供達は子供とは思えない胆力と体力を有しているとしか思えない。

 ハイキングの目的地はもう、直ぐそこ。

 疲れ果てて眠ってしまったお嬢様達を背に負って、まぁちゃんはすたすたと歩いている。

 その歩調は、ハイキングに出てから少しも歩調を変えることなく。

 一定の速度は、決して緩まない。

 だけど子供達は疲れ果てている。

 おんぶ紐で背に固定した妹は、ひよひよと寝息を立てて安眠中。

 腕でしっかり固定して、胸に抱えた従妹は良い夢見ながら熟睡中だ。

 腕に余裕がない今。

 まぁちゃんは持参したお弁当を頭の上に乗せ、悠々と山々を踏破していた。

 そして辿り着いたのは、風光明媚にして緑豊かなとある山。

 天を支える巨人が姿を変えたものと言い伝えられる、とても高くて魔力に満ちた山である。

 この山の中腹には、この季節、とても甘美な果実の実る森があった。

 子供達の目的は、年に一度のお楽しみ。

 季節限定の、そのとっても果汁豊かで美味な果物の採集及び摘み食いであった。

 ちなみにこんな遠方へ遠出することについて、子供達のご両親sは……


『え? 果物を採りに? まあまあ、あの山まで?』

『ちょっと遠くないか…?』

『でも行くのよね? まぁちゃんがついているなら安心よ。

どうせ行くのなら丁度良いから、沢山とってきてちょうだい。お土産に期待しているから』


 …と、宣ったのがリアンカちゃんのご両親。

 

『あ? ハイキング?』

『子供達は今日も仲良しだねぇ。うん、良い事じゃない?』

『山の天気は変わりやすいし、気ぃつけて行ってこいよ』


 …と、宣ったのがまぁちゃんとせっちゃんのご両親のお言葉で。

 とても、幼い子供の親の言葉ではない。

 一番下の子は3才だというのに、無情すぎる。

 そもそも、この超物騒過激地帯魔境。

 弱肉強食の地に置いて、そんなにやすやすと子供の遠出を許していいのか。

 普通は誰か、守役をつけるのが普通だろう。

 いや、むしろ遠出を許可すること自体がおかしいといえる。

 しかしそこで駄目と言わないあたりが、彼らの親たる由縁なのか。

 彼らのような親の子だからこそ、このような子供に育ったのだろうか。

 ………いや、きっと性格や行動原理は持って生まれた資質に違いない。

 だが、そんな子供達の親も、普通じゃなかったのだろう。

 

 こんな時、本来であれば付くはずの守役。

 それにあたるのが、りっちゃんことリーヴィルだったはずだが…


『はあ!? 果物一つの為に、あんなとこまで!? 許可できません!

殿下はもとより、姫殿下だって従妹君だってこんなに幼いのに何を言い出すんですか!』


 …と、とっても常識的に反対を述べてくれた。

 そんな彼はまぁちゃんとこんな会話を経て、


『いや、リーヴィルに許可もらうつもりはねーし。それでついてくんの? こないの?』

『話を聞いていましたか、殿下!? 当然、行く行かない以前に行かせません!!』

『チッ……仕方ねーな』

 

 現在。

 おかげで現在の彼は、簀巻き状態で掃除用具入れの中である。

 可能な限りの早期発見を口先だけで望んでやりつつ、子供達は魔王城を後にした。

 ちなみに簀巻きの犯人は、当然のごとくまぁちゃん(9さい)であった。



「ほーら、ちびども! 目的地だぞ♪」

 

 お子様達は、甘いものも美味しいものも大好きで。

 当然ながら、果物もとっても美味しく幾つだっていただける年齢である。

 まぁちゃんもご多分にもれず、沢山の果物を前にうきうきしていた。

 目的地について起こしてもらったリアンカ達も、同様で。

「きゃぁ! たぁっくしゃん!」

「おやつー!」

 とっても喜び騒ぐ幼女達。

 今にも果物の実る木に飛びつきそうなちびっこ達の襟を掴んで引き止めたのは、まぁちゃん。

「ほらほら、先においしーいお弁当が先な! せっかく伯母さんが作ってくれたんだから」

 どう考えても見境なくセーブもせずに子供達は果物を食べるだろう。

 そうなると、お弁当後に回してはお弁当が食べきれない。

 そのことを踏まえて、まぁちゃんが先に弁当と宣言する。

 果物を少し惜しいと思いながら、ちみっこ達にも異論はない。

 お弁当はお弁当で美味しいし、充分に楽しみだった。

「おべんとーう!」

「おべんちょー!!」

 くるくる、くるくると喜び踊る子供達。

 その体力は、どう贔屓目に見ても無限大だ。

 もしくはまぁちゃんに歩くのを任せて寝ているうちに、回復したのか。

 山の湧き水で手を荒い、子供達はお弁当を広げてお昼タイム。


 実に、家を出てから4日目の昼ごはんであった。


 往路復路を考えて持たせられたお弁当も、もう半分が食い尽くされている。

 また狩でもするかと、食料の残りを計上しながらまぁちゃんは頭で算段を立てている。

 

 その、狩りの間。

 

 目を離した間に、お嬢さん達が何をやらかすか、分かっていたら…


 そうしたら決して、まぁちゃんは狩りになんて行かなかっただろうに。




 お弁当を食べた後は、念願の果物採集。

 たっぷりと実りは豊かで、子供三人がいくら食べ過ぎようとも採り尽せないほど。

 充分な実り。

 ちびっこ達もしばらくは夢中になって果物を貪るに違いない。

 子供達だって、新鮮なこの果物が食べられるのは今の時期だけだと知っている。

 きっと一年分を食いだめするつもりで、一心不乱に食べるだろう。

 そして食べ飽きる前に満腹になるはずだ。

 子供達の行動パターン的に、満腹になったら昼寝するだろうなと。

 まぁちゃんはそう判断して、狩りの用意を整えた。

 とはいっても、準備するのは毛皮を剥いだり血抜きをする為に必要なナイフ一本。

 自身も楽しみにしていた果物を一つ二つもいで食べると、新たな食料調達に出かける。

 何しろ食べ盛りの子供達のことである。

 気がけて余裕のある時に食料調達しておかなければ、とても胃が持たない。

 何よりもソレは、許容量の小さなちびっ子達よりも切実に、まぁちゃんが。

 だからこそ彼は、獲物を探して地を駆ける。

 餌の豊富なこの山のこと。

 獲物は直ぐに見つかるだろうと思ったし、事実直ぐに見つかった。

 だけど沢山見つけてしまったから、ついつい狩りに熱中してしまう。

 不運なのは、まぁちゃんに子供達を案じる要素がなかったことだ。

 子供達には絶対的強者(まぁちゃん)の隠さぬ気配と魔力が染み付いていた。

 魔境に棲む魔獣や魔物が、避けて通る気配であり、魔力である。

 まぁちゃんが意図して移した気配と魔力。

 それがある限り、子供達が無防備に襲われることはない。

 それに念には念を入れていた。

 妹も従妹も、今は果物に夢中だ。

 だから果物の実る森一帯に、凶悪な獣が入れないように結界を張っていたのである。

 それはまぁちゃんが無用と思わない限り、永遠にだって張っていられる効力があった。

 まぁちゃんは本気である。

 本気で、残してきたちみっ子二人組みを案じている。

 しかし腹を空かせて泣かせない為にも、保護者様はご飯を取ってこなければならない。

 その過程で夢中になるあたりは、所詮まぁちゃんもお子様だったのだが………


 まぁちゃんの誤算は、小さい二人組みの行動を予測してしまったこと。

 そして予測どおりになるだろうと、高をくくってしまったこと。


 その結果どおりに子供が動く保障など、どこにもない。



 そして、案の定。

 まぁちゃんの知らない間に。

 果物をよく食べたお嬢さん二人は、食休みの腹ごなしもかねて。


 まぁちゃんが、知らぬ間に。


 森の周辺へと、探検に出かけてしまっていたのである。


 まぁちゃんに、森から出るなといわれていたことも忘れて。



 更に、最悪の事実が一つ。

 まぁちゃんも知ってはいたが、うっかりと注意を払っていなかった事実。


 この山の裏には、真竜の里【竜の谷】があったのである。

 


 真竜は賢く、道理をわきまえた種族だ。

 皆が皆、理性的。

 知恵を持つ竜の最高峰。

 そんな彼らだからこそ、まぁちゃんは油断していた。

 リアンカとせっちゃんは、見るものが見ればすぐに素性が知れる。

 賢い真竜の一族であれば、一目瞭然。

 その身に纏った気配だけでも、まぁちゃんの庇護下と知れる。

 そのリアンカとせっちゃんを相手に、手荒な真似はするまいと。

 まかり間違っても、魔王城に喧嘩を売るような真似はするまいと。

 そう思って、まぁちゃんはすっかり油断してしまっていたのだ。

 

 真実警戒するべきは真竜の方ではなく、彼の庇護下にあるちびっ子共であったのに。

 油断のならない子供達の行動力に、高をくくり。

 魔王子様は、うっかり子供達のやんちゃぶりを忘れていたのである。




 今日中に最後まで書ききれる自信がなかったので、きりのよいところで一度区切ります。

 続きは今夜か明日にでも書き………きれればいいなぁと思っています。




ちなみにアンケートの集計結果

 1位 とある女魔王の鬱 / ここは人類最前線メンバー幼少期編

 2位 はじめてのおつかい / サポートコーナー 再起編

 3位 性別反転パロディ

 4位 魔法少女ネタ / 聖メリー学園 / 童話パロディ

 5位 学園パロディ / 勇者様がタイムスリップする話

 6位 季節イベント / はじめての処方箋 / 精神入れ替わり

     / 神々から見た勇者様


 ……というような結果となりました。

 時間が出来次第、順次消化していこうと思っています。

 時間がかかるかもしれませんが、気長にお待ちください☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ