勇者様こにゃんこ物語2 宿命の出会い編
今回はこにゃんこリアンカちゃんの視点です。
副題を「強かなもう一匹のこにゃんこ」にしようか迷いました。
☆ぜんかいのあらすじ☆
鈴木さんちに貰われてきた、こにゃんこ勇者様。
しかし鈴木家は5人中3人が好奇心旺盛で構いたがりの女という、絶望的な環境だった!
最早こにゃんこ勇者様の安息は、鈴木家長男勇大くんに委ねられた状況である。
「今日も無事に生き延びろよ」
「にゅあー(置いていかないでぇ)!」
小学生の長男がいない間、勇者様は家で一番うざいママさんと二人きり。
やがてママさんが勇者様を捕まえて撫で回そうと、強攻策に出る。
死ぬかも知れない。
危機感を覚えた勇者様は、自由と安息を求めて鈴木家を飛び出した!
ちょっと勇大くんが帰って来るまで、外に避難しておくくらいの気持ちだった。
そして、現在。
勇者様は、立派な迷子になっていた。
…というところで、今回のお話はじまるよ☆
~勇者様こにゃんこ物語2 宿命の出会い編~
「にぃ…」
今日も、朝の目覚めは清々しく!
おはようございます、たいようさん。
おはようございます、すずめさん美味しそうですね。
みなさま、こんにちは。リアンカです。
本日は猫で状況をお送りします♪
「にゃあーん」
「や、やあん…! こ、子猫ー!!」
わたしは、極上に甘ったるい声でご挨拶!
おはようございます、女子高生さん! ごはんください!
わたしは今日も元気に日課をこなします。
「か、可愛いー!」
「にぃ、なあぁん(なんか、くださーい)♪」
わたしはちょこんと、女子高生さんの足下におすわりです。
首をちょいっと傾げて、上目遣いに「にゃあにゃあ」鳴くよ!
甘えてぐいぐい頭を女子高生さんの手の平に擦りつけて、めいっぱいあぴーる!
「や、やだぁ可愛いよぅ…!」
あと、もう一押し。
うちのわるいど? わいるど? なんか前、誰かがそう言ってたけれど。
わたしの保護者さまが、いいました。
「にゃん!」
意味は、「将来の独り立ちを見越して、一日一食は自力で調達してくること!」です。
きょーいくほーしんってやつですね、わかります。
でも、わたしまだよちよち。
自力でスズメ一羽つかまえらんないよ。
だから、そこで考えました。
わたしが確実にエサを手に入れられる、武器は何だろう?
こたえ:生後半年に満たないこにゃんこの愛らしさ。
打算OK、なんとでも言うがいいです。
わたしはわたしの切実な胃袋じじょーを満足させるため、ためらいません!
だから今日も、わたしは朝から女子高生さんに愛想をふりまくのです。
狙い時、狙い目は朝の登校途中の女子高生です。
大人はさっさかしてますからね。
これが夕方とかだと、おうちにつれていかれちゃう危険性があります。
うっかり拾われちゃうんですよねー。
わたしは飼い猫になるつもりはないので、脱走にえらく手間取りました。
いっかいはまぁちゃんにお迎えにきてもらう羽目になったし。
なので、朝。
朝ならたいがいの人間は行き先、目的があって猫をつれてはいけません。
だから、朝をわたしは狙うのです。
「みゃあーん」
「もう、可愛い…! コレ食べる? ミルクは? ほしい?」
ふっ…今日もちょろいです。
パパさん、ママさん、リアンカを愛らしく産んでくれてありがとう!
姿も声も、ごはんを強請るにバッチリだよ!
今の姿なら、少なくとも成猫するまではエサに困らずに済みそうです。
なんか産まれて一週間くらいでどっかに行った遠い両親にあさからぬ感謝をささげ。
私は今日もちいさなからだに充分なごはんにありついています。
「みゃあ(ふぅ、まんぞくまんぞく!)」
今日の成果:女子高生さんのお弁当の半分。あと牛乳。
こんなもんかなぁ。
満腹のお腹にまんぞくです。
電柱のかげにかくれて、顔をあらいます。
「み?」
あ、らーらおねえちゃんだ!
みちの、むこう。
いつも可愛がってくれるおなじみの女子高生さんがかけてくるのが見えました。
わぁーい! あのおねえさん、だいすき!
距離感をわかっていて、構いすぎないところも魅力。
でもそれ以上に、猫が好きなんですよラーラお姉ちゃん。
それがもう、全身からにじんでいて。
わたしは、わたしを可愛がってすきすきしてくれる人も大好きです。
「ねこちゃん!」
「にゃあ!」
笑顔でわたしを見つけたラーラお姉ちゃんが、しゃがんでくれます。
こっちも笑顔になっちゃう、素敵なえがお。
なんかとろけそう。
わたしはよじよじと差し出されたラーラお姉ちゃんの手によじのぼります。
せーらーとかいう服のそでにしがみついて、上目遣いに見上げました。
「みぃ」
「か、かわい…!」
ほんと、とろけそう。
ラーラお姉ちゃんは私を慈愛たっぷりに愛でると、お土産をくれました。
お姉ちゃんはいつもわたしに何かくれます。
…べつに、大好きなのはモノに釣られてじゃありませんよ?
きのうは煮干しだった。
きょうはなんだろう?
わくわく、わくわく。
期待で、わたしの声もより一層あまくなっちゃう。
ラーラお姉ちゃんは弛んだ顔でわたしの喉をくすぐり、くすぐり。
わあ、ごろごろいっちゃうよぅ…!
ひとしきりたわむれた後、ラーラお姉ちゃんはお土産をくれました。
そのまま私をやさしく下ろすと、今日も顔を青ざめさせます。
「ち、遅刻しちゃう!」
今日も昨日とおなじ言葉を口にして、ラーラお姉ちゃんは走っていきます。
がっこう?というところに行くらしいよ。
でもそんな顔を青くするような場所なら、行かなきゃいいのに。
わたしは戦利品のはしっこをくわえて、ずりずり引き摺りながらそう思いました。
おおきくて、やわらかくて、ふんわり良い匂いの「くりぃむぱん」!
これ、だいすき♪
いま、たべちゃおうかな?
でもお腹いっぱい…。
だけど食べなかったら、誰かに獲られる…。
どうしよう?
悩みながらも、こたえはひとつ!
ずばり!
お腹が空くまでどっかに隠しとおせば良いのです!
わたしは【いつもの場所】に隠すべく、溜まり場にしている公園にむかいました。
余計なちょっかいをかけてくるバカが、今日はいませんよーに!
そのまま公園に着いて。
わたしはくりぃむぱんを、わたしだけの隠し場所にかくしました。
でも、しんぱい。
誰かにたべられちゃわないかな…しんぱい。
だから、お腹が空くまでここで待とうと思いました。
そのまま、待っている間にうとうとして…
きづいたら、寝ちゃってた。
寝る子はそだーつ! だからわたしは惰眠をむさぼるのです!
ぐうぐう………。
「にゃぅ…?」
目が、さめちゃった…。
だって、なんか聞こえてくるんだもん…。
うるさいわけじゃないよ?
うるさいわけじゃ、ないんだけど………なんだろう?
なんか、耳に付くというか。気になるというか。
とにかく、なんだか放っておけない声がします。
わたしは、気になって、気になって……。
ちょっと、怖い気もしたけど。
でも、こうきしん。
わたしは自分の隠れていた木の洞から、すたたん♪と地面に着地して。
きょろり。
きょろり、きょろきょろ。
きょろ…?
あ、みつけた! あのこだ!
わたしは公園のはしっこ、滑り台そばのどんぐりの木の下で。
わたしの耳にひっついて仕方がなかった声の主を発見しました。
「にぃー…(なんで、泣いているの)?」
その子は、泣いていました。
木の下で、すんすんって。
かなしいことがあったって、全身で。
ちいさくうずくまって、顔をかくして泣いていました。
「みぃ、みぃ………」
たぶん、わたしよりもちょっと年上。
でもきっと、わたしとおんなじで、今年うまれの子。
わたしよりおっきいのに、わたしより泣き虫なの?
なにがそんなにかなしいの? つらいの?
わたしは、その子が気になって、気になって。
しんぱいで、しんぱいで。
とことこ、とことこ。
ノラにあるまじき、だけど。
なんの警戒もせずに、気づいたら近づいていました。
「にゃあん(どうしたの? どうして、ないてるの?)」
「にぁ…(だれ…?)」
ちからなく、よわよわしく。
泣きつかれ、腫らしたおめめで。
それでも見上げてきたのは、鮮やかなロイヤルブルー。
泣きつかれて、よわっていた男の子。
わたしを見上げる目も、すがるようで。かなしそうで。
とてもとても、印象につよく残りました。
誰の記憶にも、鮮やかに姿を残す麗しき美猫。
これが、私と勇者様の初遭遇。
記念すべき、最初の出会いでした。
この後、勇者様の過酷な野良修行が始まる…!
ラーラお姉ちゃん
現代名:黒野羊 羅愛良 ←たぶん両親は元ヤン。
内気で人見知りな近所の女子高生。でもとっても優しくて動物好き。
秘かに野郎共の人気はあるが、自分に自信がないのでモテる自覚がない。
いつも親友や幼馴染みにくっついていて、その背中に隠れている。
アルビレオ
現世名:白鳥 レオ ラーラお姉ちゃんの幼馴染み。
明るく快活な高校生。多分、バスケかサッカーかバレー部のエース。
見た目と運動スペックと分け隔て無い性格で人気が高い。
敢えて空気読まない所はあるけど、イジメの抑止を無意識に行うタイプ。
B
現世名:備中 鈴我 定番転校生。
生真面目で誠実な人柄の高校生。レオとは仲が悪い。
今学期からの転校生で、ノリは悪いが皆の注目の的(ラブコメ的な意味で)。
転校初日の朝「遅刻遅刻!」と食パンくわえて走っていたところ、曲がり角でラーラお姉ちゃんと正面衝突
→ラッキースケベ発生。
→いつもは気弱なラーラお姉ちゃんがビンタを繰り出し、そのまま逃亡。
→30分後、教室で「転校生の備中君だ。みな、仲良くする様に」
→5分後、ラーラお姉ちゃんの隣の席に転校生着席。
という、いつの少女漫画!?みたいな定番ベタを狂いなく達成した。
それ以来、クラス内で緊迫のトライアングル☆ラブが発生しているらしい。




