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聖女になりたい訳ではありませんが【書籍化・コミカライズ】  作者: 咲倉 未来
第1部:聖女候補生編(前編)

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29.仕事の報酬(2)

本日23時に最終話の更新があります!

 アーサーがダニエルの部屋を訪れると、騒いでいた銀とエリオットが途端に黙って席を立つ。


「二人とも急に黙ってどうしたの?」


 リリィが尋ねても二人は答えず、ダニエルの腕を引っ張り背中を押して隣の書庫へと連れて行こうとしている。


「ちょっと、銀君もエリオット君も引っ張ったり押したりして、どうしたんだい?」


 その問いかけに、二人は真顔で「「番だから」」と返した。


「ツガイって何だい?」


 番を知らないと言われ、銀もエリオットも戦慄する。

 説明するから隣の部屋に行こうと、グイグイダニエルを引っ張って消えていった。

 今からダニエルは、少年たちに番の講義を受けることになるのだ。


 人の世にはないルールのため、アーサーもリリィも番の意味は知らないが、向こうに混ざれる雰囲気でもなかったので二人は残る。

 アーサーがリリィの隣に移動して、頬に手を添えると顔色や瞳孔を確認した。


「正直、眠っているというより死んでいるように見えたから、心配した」


 二日間泥のように眠ったのでそう見えても仕方なかった。

 そういえば魔力枯渇で倒れると、死んでいるようにしか見えないとエマに何度も言われていたのだった。


「二日程度なら、日数としては少ない方ですから大丈夫です!」


 リリィとしては安心させたい一心で出た言葉だったが、アーサーには逆効果だった。

 まるで倒れ慣れているかのような発言が気に入らない。


「もう、あのようなことはしないと約束してくれ」


「え」


「リリィ?」


「う、はい。気を付けます」


 なんだか母のエマと似たようなことを言ってくるなと、少し後ろに下がる。


「リリィ、これからのことを相談したいのだが」


 これからのこと、とは何だろうか。リリィは全く想像がつかない相談事に耳を傾けた。


 アーサーの話はこうだ――不浄の霧が元で発生した魔物はまだ完全に駆逐できていない。周辺地域への討伐をしたいのだが、ノグレー樹海やプラータ山脈といった他種族の領地に対して討伐をするなら、事前に仕切をいれる必要がある。


「つまり銀やエリオットを通じて、彼らの国や村と交流したいということでしょうか?」


「ああ、それと獣人族との薬草の取り引きも成功させたい。それに折角縁のできた竜人族とも取り引きできるものがあると面白いな。あと守護壁プロテクト・ウォールだが、私が魔法を掛けてドラゴンの炎に包まれた負荷で壊れた。それで叔父上と相談して、もっと別のものを考えたいとも思っている。それから――」


 アーサーの話は、大きなものから小さなものまで様々で、どれもがやった方が良いことと、やらないといけない事ばかりだった。


「叔父上は喜んで協力してくれるが、リリィも俺に協力してくれないだろうか」


 銀とエリオットが絡むなら、リリィも参加した方が良いだろう。


「わかりました。でも、期限を決めさせてください」


「期限?」


「いつまでも永遠にお手伝いするわけにはいきませんから」


 リリィは、東の砦に行き両親を助ける目標を諦めたわけではない。

 あらかた片付いたなら聖女候補生を卒業して、ついでに東の砦の仕事を貰えると嬉しいということを、アーサーに伝えた。


「そんな話か。俺もいずれ行くことになるだろうから、その時にリリィも一緒に行けばいい」


「!」


 アーサーの提案は予想外だったが、当初リリィは偉い人に行って来いといわせようとしていたので、ある意味目論見通りの結果となった。正式に東の砦に行ける、多分一番正攻法のルートが手のひらにコロリと落ちて来た。


 リリィの心は即座に決まる。


「はい! 私、アーサー殿下の下で引き続き働きますね!」


(ついでに将来仕事になるようなスキルを身に着けて、人生安泰コースを狙おう! 私、あったまいー!!)


 リリィの宣言にアーサーが口元をほころばせながら、ありがとうと感謝を述べる。

 その笑顔が国宝級に珍しいことをリリィは知らない。


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