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ナンパなんてしてないでクエスト行ってこい!  作者: 星願大聖
火山エリアでの大激戦!
91/130

〜緊急クエスト・岩石魔神討伐〜

〜緊急クエスト・岩石魔神討伐〜

 

 みるくっくんさんは深紫外線を操って相手の細胞を破壊する。

 水魔法と障壁魔法を応用した簡易的な鏡やレンズを使って、作り出した深紫外線を相手に集中照射させるのだ。

 中級モンスターのはずの炎纏猪フラムサングリエは、私がくだらないことを考えている間に全身の皮膚が壊死したことにより討伐されていた。

 驚く私の顔を、したり顔で見上げるみるくっくんさん。

 

 「驚いたか女、我にとっては炎の装甲も、頑丈な皮膚も意味をなさん。 生きとし生けるもの全てが、我の前では裸も同然! クッハッハッハッハッ! 我を誉めることを許可しよう、クッハッハッハッハッ!」

 

 ドヤ顔で高らかに笑うみるくっくんさん、なんだか悔しいと思った私は反撃を試みる。

 

 「はっぽうさい!」

 「いっ? い? いんかん! ………オーマイガァァァァァ!」

 

 ふっ、急にしりとりを仕掛けられるとは思わなかったのだろう、動揺したみるくっくんさんは自滅した。

 

 

 ☆

 討伐した炎纏猪の回収を狼煙で依頼して馬車に戻る私たち。

 これでクルルちゃんの担当冒険者たちの能力も判明した。

 メモに三人の能力を分析してまとめ、思考を巡らせる。

 

 岩石魔神は一体どのような攻撃をしてくるのか、どんな能力を使うのか。

 まだ直接見ていないためなにも断定はできない。 しかし予想ならいくらでもできる、もしかしたらフェアエルデさんのように地形を変形できるかもしれない。

 全身が岩になっている、もしかしたら月光熊以上の硬さがあるかもしれない。

 可能性が許す限り、試行錯誤し続ける。

 

 もちろん私の想定など優に凌駕する可能性の方が高い、だがまさかの状況に陥った時思考停止しないように常にあらゆる可能性を模索し続ける。

 王都を出る前に購入したおとぎ話を読んでみたが、小さい子向けに作られた本のため全く参考にならなかった。

 戦闘シーンの描写は皆無で、簡単に説明すると………

 

 『勇者がエクスデュランダーを振るうと、斬撃が飛んでいきました。 斬撃で岩石魔神を二つに切りました。 勇者が悪い岩石魔神を倒しました、めでたしめでたし』まさにこんな感じ。

 

 なので全く参考にならなかった。

 あらかじめこのチームでできそうな戦闘法を何パターンも用意しておく。

 そうすればまさかの事態に陥っても対応できるし、相手の能力が想定外だった場合もおんなじだ。

 わかった能力をもとにすぐさま他の方法を考えるだけ。

 

 だから今この時間で、なにができてなにができないかを想定することが何よりも大切なのだ。

 私はメモと睨めっこし始める。

 火山エリアの拠点に到着するまでの間、真剣な表情の私を見てみんな気を使ったのだろうか?

 誰も話しかけてくることはなかった。

 

 

 ★

 炎纏猪を倒したみるくっくんが見張りに戻る。

 現在、セリナたちは火山エリアの拠点に向かう途中だ。

 モンスターも現れなくなってきたため、見張りに戻ったみるくっくんに興味深げな視線を送るパイナポ。

 

 「おい、みるくっくん!」

 「………なんだ若僧、我に話しかけるときは言葉尻に気おつけろ」

 

 嫌そうに口を開いたみるくっくんを見て、驚いたような表情をするパイナポ。

 

 「あっ、本当にしゃべった。 ってまぁ今はそんなことどうでもいい! おまえ、セリ嬢のことあんなに気に入ってんのに、なんでクルル嬢を担当にしたんだ? 別に悪いことじゃねぇと思うけど、単純に気になったんだ。 ……ん」

 

 不機嫌そうな目でパイナポを睨みつけるみるくっくん。 無理やり言葉尻に『ん』をつけたパイナポに不満全開らしい。

 

 「我があの女を気に入っているだと? 笑わせるな! あの女は他とは違う、ただ少し興味があるだけだ凡愚め!」

 

 ——————それを気に入ってるって言うと思うんだが?

 

 とは思ったが気を使って特にツッコミはいれず、続きを促すパイナポ。

 

 「その小さき脳みそで想像してみよ凡愚め………。 我が仮にあの女を担当に選んだとする。 するとどうだ? 我があの女に気があると思われるではないか? そんなわけない、そんなわけないのだが勘違いされたら困るのだ」

 

 普段からは想像もつかないようなペースでペラペラと喋り出すみるくっくん。

 パイナポはすでに呆れた顔で話を聞いていた。

 

 「だから我はあの女と仲が良さそうな受付嬢を調査したのだ! あの女と仲がいいと言うのなら見所はあると思ってな! そこで選んだのがあのお団子女だったわけだ。 奇妙な楽器を持ってる女と迷ったがな」

 「なぁ、お前もしかしてセリ嬢に気があんのか?」

 

 耳をほじくりながら適当に聞き流し、何も考えずに口を開いてしまったパイナポ。

 しかしみるくっくんの頬が真っ赤に染まり、パイナポは『しくじった!』と言いたげに顔をしかめた。

 

 「なっ! 何を馬鹿なことを! 我はあんな女に気など………! 違う! 間違えた! 『気があんのか』………『か』『か』、『か』だな! ええっと———カニチャーハン! オーマイガァァァァァ!」

 

 勝手に慌て始め、勝手に自滅して頭を抱えるみるくっくん。

 パイナポはため息をつきながら頭をポリポリと掻いた。

 

 「おっ、おい落ち着けみるくっくん! とりあえず落ち着こうな……ん!」

 

 パイナポは上手く言葉尻を『ん』にできなかったため、半ば無理やり『ん』をつけたのだが、好機とばかりにみるくっくんは咳払いしてゆっくり深呼吸を始める。

 その後、校長先生のように長ったらしい話を始めてしまったみるくっくんの話を、うつろな目で聞いていたパイナポは、心の中でこう願った。

 

 ———頼む、なんでもいいから今すぐモンスター現れてくれ。

 

 しかし、パイナポの祈りもむなしく、拠点に到着するまでみるくっくんの話は途切れることがなかった。

 

 

 ☆

 日が暮れて辺りが暗くなり始めた頃、火山エリアの拠点についた私たちは小休憩を挟んでいた。

 なぜかパイナポがかなり疲れ切った目をしている。 なんでだろう?

 とりあえずこれから戦闘になるであろうから、今のうちにゆっくり休んでもらおう。

 

 私はみんなが休んでいる間に火山エリアの拠点で監視をしている岩ランクに岩石魔神のことを聞いて回り、大体の場所に目星がついた私は拠点の外から遠見の水晶板で覗いてみる。 しかし、日が暮れているせいで何も見えない。

 だからと言ってこのまま放置するのは危険と判断した私はすぐに出発しようとした。

 

 どんなモンスターかを見るだけでも対策はいくらでも思いつく。

 おそらくクルルちゃんも同じことを考えていたのだろう。

 私の提案に有無を言わさず賛同してくれた。

 

 約三十分の休憩を挟み、目星をつけていた地点に向かうと岩石魔神はすぐに見つかった。

 なんせ、岩石魔神の体躯は巨大すぎた。

 二足歩行という事もあり、火山龍よりも大きく見える。

 

 全長は火山龍の半分程度だろうが、体長五百メーターを超える巨体が立っているのだ。

 転生する前に牛久の大仏を見たことがあるが、あれよりも気持ちでかく感じる。 近くに行けばもっとデカく感じるだろう。

 

 圧倒的存在感。

 しかし岩石魔神はその場から動こうとしてない、たったまま微動だにしていなかったのだ。

 

 「アレが、岩石魔神デスカ? 動いてマセンネ! もしかしてハリボテだったりするんデスカ?」

 「ハリボテだったら嬉しいですが、まずないでしょう。 あんなところにハリボテ作るバカはいませんよ?」

 

 私の返答に「オーウ! ナイスジョーク!」などと言いながら親指を立ててくるふらすこさん。

 ここにくる間にチラッと聞いたが、彼は先ほどの戦闘では猛毒怪鳥ポワゾンデゥールの毒を使ったらしい。

 初めて聞いたが猛毒怪鳥の毒は可燃性でよく燃えるとか………………

 

 他にも角雷馬コルシュトネールの素材を使った雷攻撃、氷帝鯱エンペラルグラスの宝石を用いた瞬間凍結装置。

 現在発見されているモンスターの中で最速を誇る暗殺豹アッサンレオールの筋肉を改造して高速で動くためのブーツもあるらしい。

 

 上級モンスターの素材以外にも鋼鉄兵器アシルジュエの核を使ったレーザーや、両断蟷螂コプマットの鎌、百足武者ミルパルメットの装甲など、あげればキリがない。

 彼が持つ巨大なキャリーケースはまさに武器の宝物庫だ。

 彼がいれば攻撃範囲も幅広くなり、かなり強い。

 少し危険ではあるのだが、素材の使い方は逐一相談したいところだ。

 

 姿を確認して数分間様子を見たが、岩石魔神は一向に動く気配がない。

 こうなると予測できるのは大きく分けて三つだ。

 

 「動かない理由としては、動くための魔力を温存しているのか。 何かの法則で動く仕掛けなのか。 そもそも動けないのか。 この三つですかね? ただし三つ目の可能性は考えないでください。 私たちはあくまであいつを討伐しにきてるんですから」

 

 クルルちゃんたちは感心したように大きく頷いている。

 

 「それを確認する方法ももう考えてあるんだろ? 指示をくれ。 キャステリーゼ二世もワクワクしているぞ?」

 

 ぺんぺんさんが出番を察して進み出る。

 

 「さすがぺんぺんさんですね、話が早くて助かります。 五百メーター地点まで近づいたら遠距離攻撃を仕掛けて見てください。 最低でも岩を砕く程度の火力でお願いします」

 「ソレナラ! ワタァシノ鋼鉄兵器の核を使ったレーザーが最適デェース! 任せてくだサァーイ!」

 

 自信満々に胸を張るふらすこさんを見て、ぺんぺんさんは肩を窄めながら一歩引いた。

 その後、道中モンスターに襲われることなくスムーズに約五百メーター地点まで接近した。

 ふらすこさんは巨大なキャリーケースを広げてモンスターの素材を漁り出す。

 中にはたくさんの素材がびっしりと詰められており、かなり重そうだ。

 

 「セリナサァン? ワタァシは、風魔法を使って最低限持ち物を軽くしてマァス! あまり役には立たないかも知れないですガ、参考にしてくだサァイ!」

 

 なるほど、あくまで素材の力を生かすために魔法も使っているようだ。

 彼は魔法も接近戦も苦手だと言うことだったので、かなり理にかなった魔法の使い方だ。

 かなり頭のキレる冒険者なのだろう。

 

 ふらすこさんはキャリーケースから鋼鉄兵器の核と角雷馬の角を取り出した。

 私は首を傾げながらふらすこさんの隣に移動する。

 

 「角雷馬の角は何に使うんです?」

 「鋼鉄兵器の核は雷魔法に反応してレーザーを発射しマァス! このレーザーは金剛獅子の外皮以外は溶かせるので素材の加工に便利デェス! シカシィ、私は雷魔法を使えないので半永久発電装置でもある各雷馬の角を使いマァス! この角に魔力を流せバ、流した魔力を電気に変えてくれるのデェス!」

 

 ものすごくいい情報を聞いた。

 角雷馬の角にそんな便利な特性があるとは知らなかった、これは総魔力量が少ないぬらぬらさんやぴりからさんが応用すれば飛躍的に強くなること間違いなしだ。

 ふらすこさんは鋼鉄兵器の核を岩石魔神に向け、角雷馬の角をちょんとつける。

 するとオレンジ色のレーザーが岩石魔神へ一直線に飛んでいく。

 

 レーザーは胸のやや左に直撃した。

 貫通するまでは行かなかったが、岩が溶けているのが遠目でもわかる。

 だが次の瞬間、岩石魔神の顔の辺りで真っ赤な光が二つ点灯する。

 不気味に光る赤い光がこちらを向いて、岩石魔神は大きく体を捻ってこちらを向いた。

 

 「岩石魔神が動いたわ!」

 

 クルルちゃんが驚いて声を上げる。

 私はすぐ、全員に移動開始するよう声をかけ、馬車を後ろに下がらせた。

 

 「あのデカさならこの距離はすぐに詰められんぞ!」

 

 臨戦体制に入った夢時雨さんから声をかけられる。

 

 「前衛冒険者は五百メーター地点をキープして散開! 中、後衛は馬車を守りながら離れてください! 攻撃をしたふらすこさんはターゲットにされている可能性があります、念のためパイナポは彼について馬車や私たちから大きく離れて布陣!」

 

 冒険者たちは有無を言わず私の指示どりに素早く動く、クルルちゃんは馬車と共にこの場から離れた。

 もし岩石魔神が機械的に動くなら、次の動きは迎撃になる。 しかし生き物だった場合は警戒しながらこちらの動きを伺うはずだ。

 

 後者の場合は生き物のためみるくっくんさんの深紫外線が有効、前者なら鋼鉄兵器に近い体質なため鏡を使ったサポートに回ってもらう方針となる。

 岩石魔神はその大きさのせいか、ゆっくりと動いている。

 

 一歩動くのに二〜三秒はかかっている、この速さならここにいる全員が対応できる。

 そしてゆっくりとこちらに向きを変えた岩石魔神は大きな腕を後ろに振りかぶった。

 攻撃がくる、岩石魔神は機械的な迎撃を選んだ!

 

 すぐさまみるくっくんさんに視線を送ると、『わかっている』と言わんばかりに小さく頷いてふらすこさんの方に駆け出した。

 

 「攻撃モーションは遅え! 緩急つけてる可能性あっから油断すんなよ!」

 「分かってマァス! 暗殺豹ブーツは装着済みデェス!」

 

 ふらすこさんはパイナポと走りながら連携をとっている。

 岩石魔神の向いた方角的にターゲットは恐らくふらすこさん。

 パイナポはそれを分かったようで背中に背負った大剣を抜く。

 

 「パイナポサァン! その剣はなんの素材デスカ?」

 「こりゃ普通に取れる山間エリアの鉱石だ、俺の剣はいろんな鋼を混ぜて作らせた鍛造製だからぶった斬るより叩き切るって感じだぞ!」

 

 パイナポとふらすこさんが装備のことを詳しく話し合っている、恐らく何か作戦があるのだろう。

 

 「フムフム、両断蟷螂の刃は使ったことありますカ?」

 「あるぞ! けどありゃすぐ折れちまうから作り置きとかすんのが面倒だったんだ!」

 

 パイナポの返事を聞いたふらすこさんが、すぐにキャリーケースを漁り始めた。

 

 「こっち使ってみて下サァイ! この剣なら折れずらいし使いやすいはずデェス! 鋼鉄兵器の装甲で両断蟷螂の折れやすい刃を守ってマァス! くれぐれも、切る時は基本に忠実にお願いしマァス! この件で叩き切るのハ、_N__G_デェス!」

 

 武器屋かふらすこさんは! とか思っていたが、パイナポはふらすこさんが渡した剣を興味深げに受け取った。

 握りを確認しながらニヤリと口角を上げる。

 

 「軽ぃーし持ちやすい。 こりゃ上等な剣だな。 ありがたく借りんぜ!」

 

 そう言いながら自分が持っていた大剣を勢いよく岩石魔神にぶん投げる。

 投げられた大剣は脇の下に刺さった、しかし岩石魔神は気にすることなくゆっくりと体を捻り、硬直した。

 全員が息を呑んで岩石魔神の出方を伺う。

 

 次の瞬間、先ほどとは比べ物にならない速さで拳を振り下ろした。

 しかし速すぎるわけではない、時速換算だと八十キロ程度だろう。

 城のような大きな拳が、空気を裂きながらパイナポたちに向かって行く。

 

 「動きがおっせぇ! けどこりゃ距離とって避けるしかねぇな! 範囲がデカすぎるし、あの図体だもん威力もやべーだろ? 受け止めるなんてゼッテー無理だ」

 「そうですネェ、ワタァシ的には思ったより早いデェス!」

 

 二人は余裕の表情でダッシュして拳を避けたが、岩石魔神のパンチは予想を上回る威力だった。

 直撃は免れたはずが、強力な風圧が発生して二人は大きく吹き飛ばされる。

 凄まじい威力に唖然とする冒険者たち。

 しかし夢時雨さんとパイシュさんは同時に岩石魔神の足元に駆け出した。

 

 「おい酔っ払い女! 半分壊せ、残り半分は俺がやる!」

 「はぁ〜〜〜? さっきまれやさひぃゆめしうれくんだったのにぃ〜。 きゅ〜に口調変わったったの〜?」

 

 二人はものすごい速さで岩石魔神の足元に移動して全力で攻撃を仕掛ける。

 すると岩石魔神の片足が大きく抉れ、バランスを崩した。

 

 「はっ! そんなデケェ図体なら、足一本壊しゃ〜バランス崩して倒れんだろ! 余裕だぜ!」

 

 ニヤリを笑う夢時雨さん、しかし岩石魔神の抉れた足は、周囲の岩を吸い込むように引きつけてあっという間に再生してしまった。

 

 「はぁ? さいせ〜したったけろ〜。 あんなんあり〜?」

 

 顔を顰めるパイシュさん、そして岩石魔神は体から巨大な岩を複数切り離して体の周囲に浮遊させた。

 一つ一つの岩がかなり大きい、あれを同時に発射されたら流石に動きが早い二人でもかわしきれない!

 念力猿(プシコキネージュ)のように大岩を弾丸のような速さで射出する能力もあるのだろうか? そうなると非常にまずい。

 

 「即効退避してください!」

 

 私は拡声器に怒鳴りかけたが遅かった。

 二階建ての家と同じくらいの大岩が、流星群のように二人に降り注ぐ。 飛ばすというよりは落下させているのだが、どちらにせよタチが悪い。

 青ざめる夢時雨さんとパイシュさん。 しかし夢時雨さんとパイシュさんに迫った岩が次々とオレンジの光線によって破壊されていく。

 

 「みるくっくんサァン! あなたがコッチ来ていてよかったデェス!」

 「すいみんぐ」

 

 ふらすこさんが大量の鋼鉄兵器の核に角雷馬の角を押しつけ、発射されたレーザーをみるくっくんさんが障壁魔法と水魔法を応用した鏡で上手く反射させている。

 反射されたレーザーが次々と大岩を切り裂いていく。

 真っ二つになって勢いを失った岩が二人に降り注ぐが、二人はただ落ちてくるだけの岩を各々砕きながら岩石魔神から離れた。

 

 「助かっらよお二人さ〜ん!」

 

 グッと親指を向けるパイシュさん。

 みるくっくんさんは鼻を鳴らしながら腕を組んだ。

 果たして今の一言は奇跡的に『ん』で終わったのか、それとも意図的なのか。 それを知るのはパイシュさんただ一人、なーんてね。

 

 「だから言葉尻に気おつけろと散々言っただろう。 凡愚め」

 

 照れ隠しなのか、そっぽを向きながらぼそりとつぶやくみるくっくんさんにふらすこさんが呆れたような顔を向けた。

 

 「セリナ! 一旦下がりましょう! あの岩の流星群はかなり厄介だわ!」

 

 馬車の方から声をかけてくるクルルちゃんの言葉にゆっくりと頷きながら私は冒険者たちに撤退の指示を出した。

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