〜女王蜘蛛討伐・反則級の冒険者たち〜
〜女王蜘蛛討伐・反則級の冒険者たち〜
凪燕は女王蜘蛛の糸に三種類の性質があると仮定した。
彼はこの三種類の糸を鋼糸、粘糸、操糸と命名している。
鋼糸はその名の通りかなり硬い、両断蟷螂の鎌ほどではないがかなり切れ味もいい。 その上細すぎて視認ができないのが厄介だ。
射出速度は約百六十キロで直線上に飛んでくるが、糸であるため避けたまま放置するとワイヤートラップのようになってしまい、こちらの動きが制限される。 その上あらかじめ糸を張り巡らせていれば一歩足を踏み入れただけでミンチになってしまう死の領域が完成してしまうだろう。
焼き払うのが最善手だ。
粘糸は白く、かなり太いため視認はできる。 繭を形成しているのもこの糸で間違い無いだろう。
それに射出速度も約六十キロとそんなに速くはない。 彼らなら余裕で回避できるが、恐ろしいのはその粘着性だ。
柔らかすぎるため断ち切ることが困難、生半可な斬撃では剣に糸がついてしまい切ることはできない。
朧三日月並みの抜刀術や相当鋭利な刃物でないと斬ることはできないだろう。
すでに王消寅がかまいたちを放って切ろうとしたが、失敗に終わっている。 これも燃やすしかないが、大きさ次第では燃やしきれずその場に残ってしまう。
先ほど大岩を吹き飛ばしたり、砕かれた岩を器用に操作して流星群に変えた技はこの粘糸をたくみに使って繰り出していた。
鋼糸の切れ味も脅威的だが、この粘糸をトラップに混ぜられていれば動きを制限されてしまいかねない。 この状況で少しでも動きを制限されれば、苦しい思いをするのはこちら側だ。
三つ目、操糸。
これは死体を操る際に使う糸だと仮定されている。
おそらく体内に侵入させることができるほど細い糸で、これを魔力経路や神経に張り巡らせて死体を操っている。
「たぶんあのモンスターの狩りは、粘糸に引っかかって動けなくなったモンスターに操糸を絡ませる。 そうすれば中級モンスターくらいなら生きたまま獲物の体を乗っ取れるんだろうね? 中級モンスターたちは割と自由に動いてたけど、上級モンスターからは知性を感じなかった。 上級モンスターはほぼ全員死体になってたところを見ると、操糸を使えば心臓を直接止めたりすることもできるんだろう。 つまり粘糸を防ぐ手段がない僕たちがあの糸に捕まったらおしまいだ」
「んなもん」「燃やせばいいだろう?」
「馬鹿かい君たち? 体の一部に粘糸がついた時点で、燃やしたら僕たちの体も一緒に燃えるだろう、火傷して痛いし何回もそんなことしてたら体がもたない」
それもそうかと納得しながら斬撃を飛ばし続ける閻魔鴉と極楽鳶。
四人は現在、先ほどよりも倍の量が降り注ぐ岩の流星群に襲われている。 巨大な岩を王消寅の圧力砲で粉砕したまでは良かったが、岩は三つ以上放り投げられていたため降り注ぐ岩の弾丸は必然的に倍以上になっている。
凪燕は不思議な白色光の光線や壁で防ぎ、王消寅は突風やかまいたちで粉々にしているが、このままでは魔力が切れてしまう。
四人の進行速度は先ほどと比べると半分以下にまで失速しており、繭まで約八十メーターの地点で足止めを食らってしまっている。
「あんなにいっぱい」「どこから岩を投げてんだよ!」
「おそらく近場の岩壁を鋼糸でスライスして、それを粘糸に貼り付けて飛ばしてるんだろうね。 ほら見てごらん、あいつの後ろにあったクレーターの壁面、めっちゃ抉れてるだろ?」
「そんな流暢に」「見てる暇ねえわ!」
炎の斬撃を連射しながら叫ぶ双子。 凪燕がいう通り、女王蜘蛛の背後にそり立っていた壁面は歪な形になっている。
フェアエルデの能力によって抉れた半円のクレーターは、女王蜘蛛の背後だけギザギザになってしまっていた。
拳大の岩の弾丸が勢いを増し始め、凪燕と王消寅は顔を引き攣らせながら忙しなく迎撃を続けていると……
「凪燕お兄さん、王消寅お兄さん! 今からおれんちゃんが辺り一帯を更地にしてくれるので、なんとかしてお空に逃げてください!」
拡声器に流れて少女の可愛らしい声が響く。 まるで小学生の作文発表会のような声色で物騒なワードが飛び交い、二人は一瞬だけあっけに取られてしまう。
「は? ちょ? え? おれんちゃんって……」
「おらんげだ やばいやばい 早くよれ!」
珍しく取り乱す二人。 王消寅に関してはなんとか冷静を保っているのか、五七五の言葉選びはかろうじで成立はしていた。
二人の慌てた様子を感じ取り、双子は斬撃を飛ばしながら首を傾げる。
「今なんか」「聞こえなかったか?」
「いいから早く王消寅に近寄れ! 死ぬぞ君たち!」
「凪燕 とりあえず岩を なんとかしろ」
「無茶振りすぎないかな? ボクに頼めばなんでもできると思ったら大間違いだよ?」
凪燕と王消寅があたふたと怒鳴り合う中、少女の可愛らしい声でカウントダウンが始まる。
「ごー——よん——」
「あーーー! 早く! 早く早く! 王消寅! オウケストラァァァァァ!」
「飛ぶからな 舌を噛むなよ きおつけろ」
王消寅が全員に指揮棒を向けると、足元に強力な突風が発生する。 凪燕は慌てて白色に輝く謎の物質で四人を覆った。 空高くに四人が吹き飛ばされた瞬間……
「絶望の波」
毒々しい甘橙色の波がクレーター上部から押し寄せてくる。 高さ二メーター弱の波はなんの躊躇もなくクレーター内を満たしていき、やがて先ほどまで四人が戦闘していた場所も無慈悲に飲み込んでいく。
甘橙色の波に触れた岩や糸はじゅうじゅうと音を立てながら溶けて消え、やがて波は巨大な繭の底を浸し始めた。
遥か上空に吹き飛ばされた双子や凪燕たちはその光景を目の当たりにし、青ざめながら悲鳴をあげる。
「なんじゃありゃ!」「兄、半端ないよあれ!」
「うわ、えげつないなあの子! 俺たちが脱出できてなかったら今頃骨すら残らない状況だよ?」
「ぅおちょっとま! まま前前前! 双子君!」
王消寅はあわあわしながら繭の方向を指差している。 こんな状況でも流暢に川柳形式の話し方は変わっていなかった。
大騒ぎしながら繭を指差す王消寅の慌てようを見て、双子は迷わず炎の斬撃を飛ばした。
「空に逃げても鋼糸で攻撃してきやがんのか! あいつほんとしぶといなぁ。 つーか、今の波でも溶けてなかったのかよ」
「おい王消寅」「緊急の時くらい普通にしゃべれ!」
咄嗟に斬撃を飛ばしたものの、意図がわからなければ全員切り刻まれていただろう。 双子は高所から落下しながら王消寅へ文句を言い始める。
「仕方ない こういう時は たまにある」
「「あってたまるかー!」」
王消寅はほっと胸を撫で下ろすと指揮棒を振る。 すると真っ逆さまに落下していた四人をふわりと風が包み込み、落下速度が急激に低下する。
重力に逆らいながら四人は波が発生した場所へとゆらゆら滑空していく。 その間も双子は繭に向けて斬撃を放ち続け、鋼糸による攻撃を防ぎ続けていた。
「よくもやってくれたなおらんげちゃん! 危うく死ぬところだったじゃないか!」
「あはははは! 凪燕お兄さんはこんな簡単に死なないもん!」
「こらっ、おれんちゃん! まずはごめんなさいでしょ!」
「うふふ、ごめんなさぁい!」
きゃっきゃうふふと笑いながら、全く反省した様子も見せずにペコリと頭を下げるおらんげ。 その様子を見て凪燕はやれやれと手のひらを返していた。
「にしても参ったよ。 あんな面倒な能力を使われたら近づけもしない」
「さっきみたいに空を飛んで近づけば良かったんじゃないか?」
「馬鹿かいラオホーク。 アレやっちゃうと王消寅が迎撃に加われなくなるし、空なんかに逃げれば格好の標的だ。 大岩飛ばされた時点で手数が足らなくなってジ・エンドさ」
ラオホークはそれもそうかと首元を覆っていたマフラーをいじり始める。
「ようよう凪燕、お前のカリスマ性に免じて提案だアイデア生産者! いっその事地面の下から奇襲を仕掛ける、そんで戦況をひっくり返すってのはどうだい?」
「君なんか流暢にリズム取れるようになったよね? もしかしてセリナちゃんのお手本聞いて速攻で覚えちゃった感じ? 相変わらず頭の良さを無駄遣いしてるよね」
「んなことどうでもいいからはい返事!」
「はいはい、ぶっちゃけいうと君の案は超名案だよ。 じゃあ正面から突っ込んで揺動するグループと工作班に別れようか」
凪燕は疲れた様子でとぼとぼと歩き出す。
「何勝手に仕切ってんのよクソガキ」
「そうカッカしないでよ姉さん。 ああちなみに君はおらんげが作った液体も操作できたりする?」
「まあ、液体である以上私に操作できないわけないでしょ?」
「うーわ何それ、君たち組んだら最強じゃん」
若干引いたような顔で華嘉亜天火とおらんげを交互に見る凪燕。 すると話を聞いていたシャエムー・グードゥが元気よく手を上げる。
「でしたら、ゼンマイファミリーは不死身に近いので、揺動に最適かと!」
「確かにそうですけど、操作権を奪われたりしないんですか?」
「ご安心くださいませくりんこん様! あたしのゼンマイファミリーはあたし以外に操作はまず不可能かと思います! 彼らの設計図が頭に入ってるのはあたしだけですから!」
くりんこんの問いかけに対し、自信満々に答えるシャエムー・グードゥ。
「となると分担は決まったな」
「あたしはこちらに残ってゼンマイファミリーを指揮しますので、正面から突撃するのは凪燕様、王消寅様、華嘉亜天火様、おらんげ様、それに閻魔鴉様と極楽鳶様ですね!」
「こちらはあたしと先輩。 シャエムー・グードゥさん、あとはあっぽれさんとラオホークさんですね!」
シャエムー・グードゥとくりんこんによってそれぞれの役割が説明される。
「よーしそれじゃー行ってみようか? って、おれが出しゃばると姉さんが怒るからね、突撃の合図はどうぞ?」
「あんたってやつは、つくづくムカつく男よね」
凪燕に促され、華嘉亜天火はむすっとした顔で凪燕を睨みつけた。
「じゃあ間をとってこのおれが! いくぜ挑戦者! 全員突撃だ! 目標はあいつの呼吸停止だ!」
「「なんでお前に仕切られなきゃなんないんだよ!(のよ)」」
両サイドから凪燕と華嘉亜天火によって拳骨を落とされ、涙目で『の』の字を書き始めるフェアエルデだった。
☆
濃い煙がクレーター内を満たしていく。 視界が悪く、視認できるのは五メーター先がやっとだ。
ラオホークによる煙幕、これで女王蜘蛛はこちらが何をしようとしてるのか把握するのは難しくなるだろう。
そんな中、クレーター内を満たしていた甘橙色の液体が突然隆起する。 隆起した甘橙色の液体は竜のように姿を変え、クレーター中央に未だ設置されていた巨大な繭に襲いかかった。
先ほどまで地面に直置きされていた真っ白な繭は、クレーターの淵に真っ白な太い糸を伸ばし、甘橙色の液体に触れないよう宙吊りになっている状況。
宙吊りになっていた巨大な繭からまた真っ白な糸が背後の壁面に飛ぶと、巨大な大岩が甘橙色の液体で作られた竜に飛んでいく。
すると、濃い煙を切り裂き、巨大な大岩に白色の光が飛んでいく。 白色の光は岩に入り込むように消えていくと、岩の内部から爆散し、巨大な岩はいとも容易く崩壊した。
例に従って崩壊した岩は真っ白な糸によって落下せずに留まるが、クレーター下部を覆っていた甘橙色の液体が泡のように無数に浮き上がると、崩壊した岩たちをじゅうじゅうと溶かし始める。
「えげつないな」「あの液体!」
「ふふ! 双子のお兄さんたち、あなたたちの炎もすっごく素敵だよ!」
王消寅の風の力で揺動隊は全員宙に浮いていた。 煙のせいで視界が悪いのだが、凪燕が展開するあらゆる種類の探知魔法がどこからどういった物質が近づいているのかを丸裸にしている。
攻撃の手数が華嘉亜天火とおらげのおかげで増えたため、王消寅は移動に専念することが可能になった。
ラオホークの煙幕のせいで視認できるのは五メーター先までだが、凪燕の探知魔法によって作り出された半透明な魔力の板に映されたマップを全員が共有することで、周囲の状況は目で見るよりもはっきりと冒険者たちに筒抜けになっている。
ゼンマイファミリーは現在、ゼンマイの状態に収納されており、凪燕が保管している。
王消寅が移動に専念する代わりに大岩の対処を凪燕と華嘉亜天火、おらんげが担当し、正面から飛んでくる鋼糸の対策は双子が専念する。 繭内部に侵入し次第凪燕がゼンマイファミリーを解放する手立てとなっている。
華嘉亜天火が操るのはおらんげが作り出した強酸性の液体。 この液体に触れた物質は問答無用で溶けていく。
双子が鋼糸を焼く勢いに勝る速度で、大岩だけでなく周囲から飛んでくる鋼糸も華嘉亜天火の液体操作でまかなえてしまうという無敵状態。
おらんげを肩車した状態で滑空していた王消寅は、その光景を見て鼻で笑うしかない。
「なんだこれ 今までの苦労 どうなった?」
「おい王消寅」「今俺たちが」「思ってること」「言ってもいいか?」
「かまわない 多分おれも 同じだよ」
「「最初についてきてくれたのが、凪燕じゃなくて華嘉亜天火さんだったらな〜」」
双子が同時に口にした瞬間、凪燕は引き攣り顔で眉を歪める。
「生意気なこと言うじゃないか。 まあ、ぐうの音も出ないから今回は見逃してあげよう」
凪燕の悔しそうな顔を横目に、水塊に踏ん反り返ったまま浮いていた華嘉亜天火は満足げな表情で
「そこの双子? あなたたち意外といいこと言うじゃない」
などとお褒めの言葉が飛んだ。
「けどさー。 こんなこと言ったら負け惜しみみたいでカッコ悪いけどさー。 今姉さんが無敵に近いのはおらんげちゃんのおかげだろ? ってことはめっちゃ強いのはおらんげちゃんじゃないか! そこんとこどうなのさ!」
「ぐ、うるさいわねクソガキ!」
ジリジリと火花を散らしながら睨み合う凪燕と華嘉亜天火。 その様子を見ておらんげは嬉しそうにキャッキャと笑っている。
「そんなことより」「お二人さん」「そろそろ繭に」「着きそうだぜ?」
余裕綽々で喧嘩しているうちに、女王蜘蛛はあらゆる方法を使って揺動隊を止めようとしていたが、なんでも溶かしてしまう強酸性の水で糸どころか大岩すら溶かされてしまっていた。
もはや手の打ち用がないため、揺動隊はスラスラとクレーター内を進んでしまっている。
「相手が悪かったわね。 この果ての荒野には反則級の冒険者が大量にいるのよ? その冒険者が大量に集まって手を組んでしまったら、もはや何者にも負けないじゃない」
「言えてるね さっきまでとは もう違う 俺たちはもう 止められないさ」
王消寅が華嘉亜天火の言葉に続くと、おらんげは肩にかけていたゴシック調の日傘を繭に向けた。
「いっくよー。 絶望の噴水」
日傘から強酸性の液体が勢いよく噴射される。 直前で何重にも編まれた鋼糸が噴射された液体を防ごうと折り重なったが、まるで障子を破るような勢いで液体が繭に噴射されていく。
繭からはじゅうじゅうと焼けるような音が響き、とうとう繭に大きな穴が開いた。
「いよいよだな!」「どんなモンスターなんだ?」
繭の中は巨大なドームのようになっており、全面真っ白な糸で構成されている。
「言うまでもないけど、あの白い糸全部粘糸だから、触っちゃダメだよ?」
「はーい!」
元気よく返事するおらんげ。 繭の中には縦横無尽に白い糸がぶら下げられており、中には異様な光景が広がっていた。
「何よあれ。 洗濯物感覚で大量の鋼鉄兵器がぶら下げられてるじゃない」
華嘉亜天火が顔を引き攣らせる。 縦横無尽にぶら下げられていた白い糸には鋼鉄兵器がぎゅうぎゅうに貼り付けられており、一同が繭の中に視線を送った瞬間鋼鉄兵器の瞳部分が淡く光る。
目算でも数百隊に及ぶ鋼鉄兵器。 その全てが同時にレーザー光線を放ってくる。
「きゃあ! 流石に物質じゃないと溶かせないよ!」
「退きなさい!」
華嘉亜天火が手をかざすと、咄嗟に作り出した水鏡が全員を包む。 水鏡によって数百を超えるレーザーが反射され、繭の中を眩い光が包み込んだ。
しかし、浮かない表情の嘉華亜天火は安心したように息を吐く。
「流石に数百のレーザーを反射させるってなると、表面の水温が上がって無理があったわね」
「そんなことだろうと思ってさー、僕が表面温度が熱くなりすぎないように調整してあげたんだー! うまく反射できてよかったねー」
わざとらしくごまをするような口調で華嘉亜天火に迫っていく凪燕。 すると華嘉亜天火は苛立たしげに息をはく。
「まあ一応、今はお礼を言ってあげてもいいわよ?」
「あらあら〜? 素直じゃないねー姉さん!」
青筋を浮かべている華嘉亜天火だったが、双子の炎の斬撃とおらんげが放つ強酸性の噴水がぶら下がってる糸を切断していく。
「喧嘩してねーで手伝え!」「二撃目くるぞ!」
「流石に連射されるとジリ貧ね」
「せめて足場さえあれば王消寅の窒素でガードできそうなんだけど」
「凪燕お兄さん、障壁魔法で足場作れないの?」
「おらんげちゃん、それ名案だね!」
凪燕はポンと手を打って双子に目配せする。
「君たちは着地する場所に上手に障壁魔法貼れたりする?」
「ちょっと無理」「そんな器用な真似できない」
「じゃあ君たちは俺と一緒に来てね」
わかってましたとばかりに小馬鹿にしたような笑みを向けてくる凪燕に、不貞腐れた表情を向ける双子。
しかしそうこうしている間に二撃目のレーザーが大量に放たれる。 迎撃のために繭の内部に入り込んだ冒険者たちは同時に散開した。
王消寅は個人でふわりと宙を舞い、おらんげを水塊に乗せた華嘉亜天火もレーザーをかわすため、水塊から水鉄砲のようなものを噴射して忙しなく動き回る。 凪燕は両脇に双子を担ぎ、ホイホイとけんけんぱのようなステップで繭の中を動き回る。
するとレーザーが一旦止み、とうとう繭中央にいた目標を視認することができた。
「やっとご対面かしら? 女性型の蜘蛛。 女王蜘蛛とか命名されてたわね?」
ニヤリと口角を上げながら、華嘉亜天火は繭中央に鎮座する女王蜘蛛を睨みつけた。




