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懐かしい味

本日、5話同時更新。

この話は1話目です。

 ピオロさんの家に泊めて貰う事になった俺は、サイオンジ商会の香辛料屋に案内された。どうやら彼の家も店と繋がっているらしい。


「おいでやす。って、なんや、おとんやん」

「なんやは無いやろ、なんやは。それにワイだけや無くてリョウマもおるで」

「お邪魔します」

「リョウマはん、客室の用意はできとります、遠慮せんでゆっくり寛いで下さい」


 昼と同じくミヤビさんが店番をしていた。


 しかし俺がお世話になる事をもう知ってるのか? さっき決まった事なのに。


「家に泊まると思うとったんやけど、間違いやった?」

「いえ、お言葉に甘えさせて頂きます。ただ、先程決めた事でしたので」

「客室の用意は何時誰が来てもええ様に、日頃から整えてますさかい。それにおとんの事やから、家に泊めようとすると思てたんよ」

「なるほど、ありがとうございます」

「かめへんて、ほな、案内しよか?」

「よろしくお願いします」


 ピオロさんは仕事に戻るそうで、俺はミヤビさんについて客間へ。


「自分の家と思うて気楽にしたって下さい」


 案内された部屋は1人部屋としては広く、高級過ぎない家具が揃えられた暖かい雰囲気の部屋だった。


「夕食はサイオンジ商会の名に恥じん様に、美味しいもん出すから期待しといてや」

「ありがとうございます。楽しみにしています」


 そう言うと、ミヤビさんは俺の答えに満足したように頷いた。


「ほな、うちはこれで。夕飯までゆっくりしとってな」


 彼女は静かに部屋を出ていく。


 ……一人残されると夕飯が気になってきた。何だろう?


 ……何にせよ、昨夜の保存食みたいな物ではないだろう。肉かな? それとも魚か? でもこの国では魚料理があまりない。内陸部の国だから海が無く、必然的に手に入る魚は川魚か干物が多くなる。新鮮な魚介類は高いか、そもそも手に入らない。


 例外として幾つかの湖の傍にある街。例えばシクムとか、漁業が行われている所は魚料理の方が多いらしいけど。


 でも魚介と言ったらやっぱり和食だ。こっちに来てから食べられてないなぁ……転移者が多いならある程度広まってるかと思ったけど、ギムルでは見当たらなかった。ピオロさんに醤油や味噌が無いか聞いてみるか? 食品を扱ってるならどこかで似たような物なら手に入るかもしれない。


 しばらく料理について考えながら体を休めたり、瞑想で時間をつぶしたりしていたら、使用人の男性に呼ばれた。夕飯ができたそうだ。




「来よったな、リョウマ。その席座りや」


 部屋の中にはピオロさんとミヤビさん、そして狐人族の女性が既に席についている。顔立ちがミヤビさんと似ているから、おそらくピオロさんの奥さんだろう。美人だなぁ……


「失礼します」

「そう固くならんでええで。もう気づいとると思うけど、リョウマの左に居るんがミヤビの母親でワイのカミさん。クラナや」

「クラナ・サイオンジどす、よろしゅうお頼申します」

「リョウマ・タケバヤシです。こちらこそよろしくお願いします」

「お噂は聞いてます。将来有望な方やって」

「いえいえ、運が良かっただけですよ。それに周りの方々に恵まれて、その助けがありましたから。僕はただ優秀な方を雇って任せているだけですよ」


 いやホントに。皆さんが居なかったら支店を出すどころか店を持てていたかも怪しい。


 色んな人と出会って、助けて貰ってやっていけてるんだからな。


「そのお歳でそれが心から言えるんやったら十分優秀と思いますえ?」

「せやで。若いモンが急に成功すると、調子に乗って周りが見えへんくなったり自分で何でもできる思うようになったりする奴がでてくるしな?」

「お客と従業員、商売は人が居て成り立つ物。周りへの感謝を忘れて、ないがしろにするようになったら商人としてお仕舞いどす。そうなったらよっぽど才能あるかあくどい手でも使わなやっていけまへん。そこんとこ、きちんと分かっとるリョウマはんは十分優秀と思います」


 そんなもんかね?


「商人としての振る舞いなんて後々身に付くもんやで。今は丁寧に喋れるだけで上等や。ミヤビなんか普段の言葉遣いは全然丁寧やないで?」

「おとん! 何でそこでうちを引き合いに出すねん!」

「しゃあないやん、ちょうど良く引き合いに出しやすいのが居ったんやから」

「ミヤビ、無理せんで普通に喋った方がええよ」


 ああ、やっぱり無理してたのか?


「リョウマも気づいとったんちゃうか? ミヤビが無理して口調変えとるんに」

「少し位は。お客に対して普段と口調を変える事はおかしくないと思ったのでそれほど気にはしてませんでしたが」

「ほれ見てみ。会うたばかりのリョウマはんにもバレとるやん。ミヤビは付け焼刃で言葉遣いを変えられるような器用な子とちゃうよ」

「ごっつ悔しいわ……」


 何か落ち込み始めたな……そんなに悔しがる事か?


「すんまへんなぁ、うちの子の事は気にせんといて下さい」

「ミヤビはワイの真似してちっこい頃から商売に興味持って、自分から店手伝うてくれるんや。それは嬉しいんやけど、昔から客との交渉やらなんやら隅っこで見せとったらちっとばかし気ィ強くなってもうてなぁ、この前来た客に女らしない言われたらしいんや」

「別にうちは女らしい言われたいから直そう思ったんとちゃう。ただ……」

「ただ?」

「うちに女らしない言うたオッサンが気に入らんのや! これでしとやかに出来ひんかったら負けた気がすんねん!」


 そこかい! まぁ変に気にするよりは良いと思うけどな。


「要は、単なる娘の負けず嫌いです。リョウマはんは気にせんといて」

「それより今は飯や飯。今日は珍しい料理を用意したで」


 部屋の隅に立っていた使用人さんに手で合図を出すピオロさん。珍しい料理って何だろう?


「リョウマは料理上手いからな、味で驚かすんは用意が無いと難しそうや。せやから一風変わった料理を用意したで」

「リョウマはんのお口に合うとええんやけど」


 そこで運ばれてきた料理の匂いが俺の鼻に届く……これは!


「この匂い……味噌汁?」


 つい呟くと、ピオロさんは目を見開いてから落胆し、クラナさんは面白そうに笑っている。


「なんやリョウマ、味噌汁を知っとったんかい。驚かそう思うたんに、失敗したわ~」


 いえ、大成功です! めちゃくちゃ驚いてますよ!


「い、いえ、十分驚いてます。ピオロさん、味噌って手に入るんですか?」

「手に入るで。買う人少ないもんで大量には仕入れてへんけど、欲しいんか?」

「欲しいです! 是非!」

「ほんならそんな高いモンでもないし、少し分けたるわ。気に入ったら店に来て買うてや」

「はい、ありがとうございます!」

「ええって。それより味噌を知っとるなら醤油も知ってるんちゃう?」

「醤油もあるんですか!?」

「あるで」


 こうして食事の使用人さんがお膳を持ってきている間話した結果、俺は味噌、醤油、そして酢とみりんを分けて貰える事になった。


 この世界にこんなに調味料があったなんて! ピオロさんから聞いた話では一部のドラゴニュートが住む島で生産されているが、生産元の里では文化的に清貧を美徳としているため、料理は素材の味を活かした物が最も素晴らしいとしている。よってあまり利用法も多くないらしく、需要が無いのでなかなか流通もしない嗜好品となっているそうだ。なんて勿体無い。


「まずは食べようや、話は食べながらでもできるで」

「そうですね。では、いただきます」


 料理とともに運ばれてきた箸を手に取り、まずは米を一口。美味い! 3年ぶりの米だ!! こっちはパンが主食だった。それも嫌いじゃないけど、米は懐かしさがある。次は醤油のかかった焼き魚、そして味噌汁……美味い……地球の物と同じだ……


「懐かしいな……」

「何や? リョウマはん、ドラゴニュートの里にでも住んどったんか?」

「え? いえ、違いますよ」

「そうなん? リョウマはんの反応、長く里に帰ってへんドラゴニュートそのものなんやけど」

「そうなんですか?」

「せやなぁ、反応もそうやけどしっかり箸使こうとるし。この料理に付きもんやから置いといたはええけど、ドラゴニュートの客以外が使ったんあんまり見た事無いわ」

「リョウマはん、どこから来はったんどすか?」


 こんな時こそ、設定を……


「森の中の小さな村ですよ。祖母が昔何度か味噌汁を作ってくれた事がありまして、箸の使い方もその時に習いました。祖父母は元冒険者で世界を回っていたようなので、多分その時に知ったんだと思います。材料は木属性魔法でなんとかして」

「せやったんですか」


 誤魔化せたか?


「ところで、リョウマは明日からどないするん? 店の従業員が来るんは3日後位やろ?」

「それまでは家具作りや修行を兼ねての冒険者活動をしようと思います」


 そこでクラナさんが聞いてきた。


「あら、リョウマはん冒険者もやってはるん?」

「はい。今では店と冒険者、どちらが本業なのか分からなくなっていますが」

「ランクは今何処なん?」

「今はEランクですね」

「Eなん? 歳、うちの1個下やろ?」

「2ヶ月ほど前になったばかりですが」

「その歳でEなら十分やって。一度は討伐依頼も経験してるんやろ?」


 その後は俺の鉱山での討伐依頼の事を話したり、この街の事を聞く。


 この街は転移者であるサイオンジ商会の創始者が中心となって作られた商業のための街だそうで、この街に古くからある店の店主や従業員、その他レナフの町で生まれ育った人の中にも関西弁風の喋り方をする人達がそれなりにいるそうだ。ちなみにクラナさんもこの街が生まれ故郷らしい。


 言葉に関しては態々広めた訳ではないと思うが、自然に転移者の名残が出ていると思うとそれはそれで何とも言えない不思議な感じがする。俺も後世に何かを残したりするんだろうか?


「他に何か、聞きたい事はあるか?」

「でしたら、ギルドですね。あんな大きい建物は初めて見たので」

「そらそうや。東西南北で入口ちゃうけど、あの中には商業ギルド、冒険者ギルド、職人ギルド、ドラグーンギルドの4つが入っとんねん」


 ドラグーンギルド? 初めて聞くギルドだな?


 そう思って聞くとミヤビさんが説明してくれた。



「昔はテイマーギルドで人と荷物載せて飛べる魔獣持っとる従魔術師の集まりやったらしいけど、それが空港が完成した頃に独立した空運業のギルドやね。テイマーギルドは魔獣使こうて、狩りでも戦いでも何でもやるみたいやけど、ドラグーンギルドの従魔術師は荷物と人の空輸、その警護が専門の集団や。

 魔獣に荷物や人載せて空飛ばせるんは、中々難しいらしいねん。せやからドラグーンギルドは専門の人材を育てたりしとる。あと独立したっちゅうてもテイマーギルドとの繋がりはあるらしいで? 初めて人載せて飛べる魔獣と契約した従魔術師は一度ドラグーンギルドで講習を受けるように言われるって聞いたな」

「そんなギルドがあるんですか……」


 分かりきっていた事だが、俺もまだまだ知らない事が多いな。


「いろんな物の素材集めを担当する冒険者ギルド。集められた素材から商品を作る職人を取りまとめる職人ギルド。作られた商品や素材を取り扱う商人ギルド。遠方の街との物資の輸送を担当するドラグーンギルド。こうして4つのギルドが手ぇ取り合ってこの街は発展して行っとるんやで。それと言うのも、うちのご先祖様の努力のおかげや」


 胸を張るミヤビさん。ピオロさんもそうだったが、空港やこの街、そして先祖の転移者は彼らの誇りらしいな。


 俺は街の話を聞き、久しぶりの和食に舌鼓をうちながらそう感じていた。




 その後部屋に戻るとすることもなく、クリーナースライム浴をして早めに休む。


 明日はどうするか……そんな事を考えているうちに夕食の満足感と移動の疲労による眠気が襲って来た。耐える事もできるが、あまり意味はない。考えるのは明日にしよう……時間もあるしな……

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マンガUP!で違和感あったから原作見に来たんですが、原作からおかしな事になってるんですね。 関西弁と京都弁と標準語を中途半端に混ぜて使ってる理由はなにか有るんですか?めちゃくちゃ違和感があって気持ち悪…
[気になる点] 話の進行がダラダラしすぎ 読んでて鬱憤がたまる 作者は一度、家族を襲撃されたらいいと思うよ。 そして自分の稼ぎからは多いとは言えない賠償金をもらう。 交通事故ですら納得できない人が多い…
[一言] こっちに来てから食べられてないなぁ ↓ こっちに来てから食べてないなぁ
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