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廃坑での作業

本日、5話同時投稿。

この話は2話目です。

 廃鉱山に到着するなりクリーナーを除いたスライムを総動員して坑道の見回りを済ませた俺は、鉱山で最も高い位置にある坑道を整備して、宣言通り作業場に変えた。


 といっても元から広めの坑道に土魔法で単純な構造の作業台を量産しただけなので、たいして難しい作業はない。


 布を伸ばした両端までの距離にレンガを積み、台の角に溝を掘る。

 その溝に合う大きさの棒を用意して固定。

 棒にスティッキースライムの粘着液で布の両端を貼り付ける。

 この繰り返しを45回やっただけ。


 後は固定された布にスティッキースライムに指示を出し、粘着液を塗ってもらえば良い。

 気をつけるべきは作業中の虫や魔獣くらい。いずれここに扉か何かを取り付けるかな……?


 改装を考えつつ、スティッキーに指示を出す。













 しばらく様子を見ているが、台はちゃんと機能している。スライムも勤勉。


 そうなると、俺がすることがない。店なら事務仕事もいくらかあるのに……


 手持ち無沙汰になったのでトレーニングを行うことにする。












 三時間後


 一通り格闘術の訓練や瞑想なども行ったが、まだ完全に布は乾かない。


 だから自分だけでなくスライム達にも訓練をさせることにする。


 先日、棒術や槍術を覚えたのを思い出した。


 せっかくなので外の木を錬金術で乾燥。サークルソーとポリッシュで加工して大量の棒とたんぽ槍を作る。これで棒術と槍術の訓練をさせよう。

















 ……スライム達の訓練も一段落してしまった。しかし布はもう少し乾かす必要がありそうだ。材料の布が水分を吸ってたりするんだろうか? ここまで大きな布で試したのは初めてだしな……



 再び手持ち無沙汰になった俺は、なんとなく自分のステータスボードを眺める。


 ……お、魔力回復速度上昇のレベルが1つ上がって3になってる。店作りにかなり魔法を使ったからか? それに従魔術、錬金術、風魔法、雷魔法のレベルも1つずつ上がっている。これも結構使ったからな……あ、そういえばお嬢様が俺の作った人形を見たいとか言っていたな、今作るか? 材料はそこらの土で良いし、作るものは適当に……


「『クリエイト・ブロック』『ロック』『ブレイクロック』」


 石材と簡単な道具を用意。ブレイクロックで芯になる大まかに形作り……


「『プレイングクレイ』」


 粘土状に変えた土をフィギュア用のパテとして使う。芯の上に盛ってから道具で細部を整えて……そういえば石灰が残ってたな。着色前のコーティングに使おう。



 『ライト』の光に照らされた坑道で一人。必要に応じて魔法も使いながら、当たりさわりの無い人形を作って時間を潰す。



 ……だけのつもりだったが。


「よし! ……だいぶ作ったな」


 気づけば人形に囲まれていた。


「今何時だ? ………………げっ!」


 日暮れが近い!


 慌てて人形と乾いた布を回収して帰る。


 ……魔力を使いすぎたようで少々苦しい。しかし日暮れまでに戻るには急ぐしかない。……廃坑内で熱中する作業はやめよう。ただでさえ時間を忘れやすいのに、尚更時間の経過が分からなくなる。


 反省しながらも刻一刻と日は沈み、町に着くまで走りながら空間魔法の連続使用を余儀なくされた。




















「疲れた……」



 なんとか日が暮れきる前に宿に到着。

 少し休んだ後、報告のためお嬢様達の部屋を訪ねると、アローネさんが案内してくれた。


「いらっしゃい、リョウマさん」

「リョウマ君が自分から僕たちの部屋に来るのは珍しいね。何かあったのかい?」

「大したことではありませんが、まず仕事の話から」


 セルジュさんとの取引について説明する。


「今日は45反の防水布の生産に成功し、既にセルジュさんのお店に納品済みです。まだ余裕がありますので、明日から生産量を徐々に増やして、何処まで出来るか試してみます」

「そうか、防水布の生産量に問題はなさそうだね。他には?」

「この前お嬢様が見たがっていた人形を、布の乾燥を待つ間に作りました」

「本当ですの? 見せて下さいまし!」


 そう言って俺はアイテムボックスから数種類の人形を出す。


「これですね」


 まずは木材と石材の違いはあるが、前の世界では土産物として有名な木彫りの熊。こちらの世界でも通用するようデザインに手を加え、ガナの森で狩っていたブラックベアーに変更してあるが。


「ほう、ブラックべアーの置物じゃな。魚を獲っている躍動感があるのぅ」


「こちらは小さくて可愛らしいですわ!」


 そっちはケイブバットやケイブマンティス、スモールラット等の魔獣をボトルキャップフィギュア風にしたミニチュア魔獣人形。


「あとはこれです。一番僕が作っていた人形ですね」


 次に取り出したのは普通の人型のフィギュアだ。ただし、題材が思い浮かばなかったのでモデルが公爵家の4人に、セバスさんとメイドさん2人である。


「これ、僕だね」

「こっちは私よ」

「私も居ますわ!」

「儂やセバス、アローネとリリアンも居るのぅ」

「とても精巧な人形ですな……神像作りで知っておりましたが、やはりリョウマ様の技術は素晴らしい」


 目の前で喜ばれるとちょっと新鮮で嬉しい。前世じゃ深田くらいしか喜ばなかったけど。


 そういえば死ぬ前、深田にフィギュア頼まれてなかったっけ……あれ? どうだった?


 ……まあいいか。


「モデルが居なかったので勝手に作ってしまいましたが、お気に召していただけたなら光栄です」

「リョウマさん、これ、いただけませんか?」

「気に入って貰えたなら好きなだけどうぞ」

「ありがとうございます!」


 ここまで喜んで貰えると作った甲斐があるな、また何か作ってみるか……


「また何か、機会があったら作りますよ」

「よろしくお願いしますわ」


 俺はその後暫くラインハルトさん達と雑談してから部屋に戻る。部屋に戻る際にセバスさんが人形の代金を支払うと言って中金貨10枚を提示してきたが、額が多すぎたので一度は断った。


 時間つぶしになったし、材料も安いし、何よりこんな物で中金貨10枚とか貰えない! 最終的に元の5分の1、中金貨2枚を受け取る事になったが良いのか?


 そう考えていると、セバスさんにこう言われた。


「自分の石像を屋敷や街に置きたがる貴族は割と多いのです。そういった方の依頼で石像作りをすれば、この程度の金額では端金と思うほどの報酬が貰えますよ。リョウマ様の腕ならば依頼人に困ることは無いでしょう」


 マジで!?


 その言葉が衝撃的で、部屋に戻ると明日は布の乾燥を待つ間に何を作ろうか、ボーッと考えているうちに眠っていた。

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― 新着の感想 ―
主人公の技術料金に対する考え方が甘すぎるのがなんかひっかかります。モノづくりだって原価は安いものからそこから加工&芸術性で数倍の値段のものになるものは現代にもあるのにな。
どんだけにんぎょう作りがとくいやねん!!!!!!!!!
今のところ絶好調過ぎないか?
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