表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
290/385

レミリーとの時間(後編)

本日、4話同時投稿。

この話は2話目です。

 

「間違いじゃなかったみたいね」


 穏やかだった心臓の動きが、一瞬にして激しくなる。密着状態だったために、レミリーさんにも伝わっているだろう。もしかすると最初からそのつもりで、こんなに密着していたのだろうか? ただカマをかけているだけという可能性は……


「心配しなくても、別に貴方をどうにかしようとは考えてないわ。今のは確認しただけで、ほぼ確信していたもの。実は私、過去の神の子について色々と調べていた時期があってね」


 そう前置きして、彼女はどこを見て判断したかを挙げ始めた。


「しっかりと疑い始めたのは、シーバーちゃんとの試合の後。ハイドを使った私に気づいた時から気になってはいたけど、子供にしては強すぎることが1つめ。ここまでの道中で結構魔法を使っていたのに魔力が切れる様子がないことから、魔力量が常人よりはるかに多いと推察できたことが2つめ。

 あとは、道中で見せてくれた保存食などの商品ね。神の子は何かしらの優れた知識を持っていたり、新しいものを作ったりすることが多いらしいから、これが3つめ。さらに4つめの理由としては、崖下のアンデッドを一掃する際に火薬の話をしたこと。なんでか知らないけど、神の子って火薬やら銃を扱いたがる傾向があるみたいね。

 ちなみにそんな過去の神の子らしき人物の中には、ショットガンとかいう小さな弾を広範囲にばら撒く銃を使っていた人物の話もあるんだけど……リョウマちゃん、さっきの競争で使った最後の魔法、“ライトショット”って言ってたわよね? あの時、改造していたライトボールの飛び方もその話と合致するし、あの魔法はショットガンをイメージしたんじゃない?

 ついでに、マサハル王の話をしていた時の反応がおかしかった気がしたの。うまく言えないけど、自分の事みたいに真剣に考えているように見えたんだけど、どうかしら?」


 ああ、これは本当に確信している。ショットガンのことも概要は知っていたようだし、かなり詳しい情報を持っているのだろう。心拍も合わせて、もう誤魔化せる状況ではなさそうだ……こうなったら、開き直ろう。


 神の子の存在は御伽噺に近いものとはいえ、実在したとされている。だったら、自重せずに冒険者活動を続ければ、いつかは関連を疑われただろう。それが今だっただけのことだ。


「正解です。でも、最後の反応はそんなに変でしたか?」

「普通の人ならあなたの能力に目をつけても、即座に神の子と結びつけて考えることはないと思うわ。私は知識があったし、疑っていたから分かったけどね。

 ちなみに、言わないだけでシーバーちゃん達も察してると思うわよ。さっき話した調査は、エリアちゃんの存在がきっかけになった噂だからね……ほら、彼女も魔力が多いでしょ? マサハル王の子孫でもあるから、一時期“彼女は神の子なんじゃないか?”っていう話が広まったの」

「ああ……あまり踏み込んで聞いてはいませんが、昔に事故を起こしたとか」

「噂自体はその前からあったわ。でも、その件で一気に広まった感じね。それで流石に無視できなくなって、過去の文献を調べることになったの。だから公爵家は調査の関係者だし、シーバーちゃんも調査に参加していたから、同等の知識があるはず」

「そうでしたか」

「念のために言っておくけど、ジャミール公爵家も貴方の意思を無視して都合のいいように使うつもりはないはずよ。他の貴族も……人によるけど、神の子だと分かっていれば、悪い扱いはされないと思う」


 おや? 今更、公爵家の皆さんを疑うつもりはないし、信頼している。しかし、他の貴族にも一目置かれるのだろうか? 気になったので、詳しく聞いてみると、


「神の子は総じて、何かしらの桁外れの才能、あるいは大きな力を持っている。これは確定事項とされているわ。うまく部下として取り込む事ができれば、大きな利益を生んでくれるでしょうね。

 でも、なまじ大きな力を持っているからこそ、機嫌を損ねて逃亡されてしまったり、最悪の場合は敵対関係になって、大惨事を引き起こしたという話もあるの。大きな力はあくまでも力でしかなく、いい方向にも悪い方向にも作用する、ということよ。

 “神の子”と呼ばれている通り、その存在は神々によって遣わされた存在とも言われているし、神の子を粗末に扱って怒らせたとしたら、教会も黙ってないでしょう。国に被害を与える可能性と合わせたら、家の取り潰しや処刑も覚悟しなきゃならないわね」


 いくら強い力があっても、コントロールできなければ危なくて仕方がない。無理を言って脅威になられるより、優遇して大人しくしていてもらったほうがいい、という考え方なのだろう。理屈としては理解できるけれど……正直、まだ疑問が残る。


「お言葉を返すようで恐縮ですが、国が個人の顔色を窺うなんて、信じがたいです」

「確かに、国や貴族には体面というものがあるけど、本当なのよ」


 ここで、レミリーさんは1つの例を挙げた。


 それはこのリフォール王国に、かつて現れた1人の男の話。彼は疲れを知らぬ鉄の馬に乗り、恐るべき速さで国中を巡っていたと言われている。また、空間魔法と思しき能力を持ち、大量の物資や荷物の運搬が可能。その力と鉄の馬に目をつけた当時の王は、その力を国のために使う様に命じた。


 しかし、彼は自由を望み、その命令を頑なに断り続けた。職や自由を奪うと脅しても、彼は一向に首を縦に振らない。そして、とうとうしびれをきらした王が兵を動かした結果……兵はなぎ倒され、追っ手は鉄の馬に追いつけず、彼は悠々と逃げ去ることに成功。


 その後の彼は盗賊に身を落として、国中の貴族の屋敷や馬車への襲撃と強奪を繰り返す。鉄の馬の速さは逃走のみならず、襲撃においても非常に厄介で、彼の動向はまさに神出鬼没。次第に男に仲間が増えていき、やがて国軍にも手に負えなくなる。


 止める者がいなければ、盗賊行為は更に活発化する一方。他国に魔の手が伸びるまで、そう長い時間はかからなかったという。また、彼が率いる盗賊団は逃げる際に必ず、リフォール王国から来た事実やその経緯を含め、“生きるため、そして抗議活動としての盗賊行為だ”と喧伝し続けたそうだ。


 世間の不満の矛先は、次第に全ての原因を作った国王に向き、国の内外を問わずに非難の声や陰謀論が飛び交うようになる。こうして、他国との関係は徐々に険悪になり、当時の国王の権威は失墜。王位を弟に奪われ、元国王は処刑された……という話だ。


「それでひとまず他国からの追及は落ち着いたそうだけれど、わだかまりは残ったそうよ。国王の処刑に加えて、その神の子が捕まれば良かったのだけれど、結局捕まえられず、盗まれた財宝も行方知れずとなると」

「解決とはいきませんよね」

「そういうこと。これはただの一例で、同じように国が揺らいだ話が他にいくつもあるの。だから、国としては極力、神の子とは敵対したくないのよ。いい関係になれないとしても、不干渉ならまだお互いに、穏やかに過ごせるから。

 尤も、いつの時代もお馬鹿さんはいるし、そもそも神の子と信じてもらえなかった結果、最悪の事態になった例もあるから注意は必要だけどね。前例がいくつもあるから、そういう対応を心がけようという話になるわけだし」

「……一応、理解はしました。でもそれなら、レミリーさんはなぜ僕にその話を?」


 レミリーさんが、自分の過去を話してくれたのは、俺のためだろう。でも、俺が神の子だと気づいている、と明かす必要はないはずだ。


「神の子と知られた途端に暴れるような子だったら私も話さなかったわ。でも、リョウマちゃんなら話は聞いてくれると思ったの。それなら言ってしまった方が話しやすいでしょ?」

「信頼してくれてありがとうございます」


 神の子への対応の話が本当なら、万が一があれば人生が終わるだろうに……思い切りと面倒見のいい人だ。


 そう思っていると、レミリーさんはさらに爆弾を落としてきた。


「いいのよ、こっちの都合もあるんだから。リョウマちゃんが神の子だと、エリアスちゃんが気づいてるなんて、私が気づかないふりをしながら説明できるはずないもの」

「は?」


 その名前は、つい先日も聞いた。思わず振り向きそうになって、頭に感じた柔らかさに気づいて動けなくなる。


「……念のために確認しますが、国王陛下ですよね?」

「そうよ。エリアスちゃんも例の調査に参加、っていうか、調査すると決めて指示を出したのがあの子なのよ。それにあの子は王族であり、過去の神の子の子孫だからね……王家所有で一般には閲覧が許されない書物もあるみたいだし、私達の知らない情報を持っている可能性が高いわ」


 陛下は調査の発端となった懸念に対して、最終的に“神の子ではない”と判断したそうだ。


「魔力量は人並みはずれているけれど、他にそれらしき特徴が見られない。魔力量はマサハル王に連なる者であるが故のものだろう……っていうことなんだけど、ぶっちゃけ噂を完全に否定するには証拠が弱いし、私達も違うと言い切れる確証はなかった。

 国王がそう決めた以上、私達は従わないといけないし、エリアちゃんを守るためにはその方がよかったから、結局そういうことで終わらせたんだけど……おそらく、エリアスちゃんは私達の知らない情報、それも“相手が神の子か否かを判別する方法”を知っている可能性があるわ」


 筋は通っていると思う。少なくとも否定できる根拠はない。そもそも俺は国王陛下がどんな人かも知らないしな……それより気になるのは、陛下にも俺が神の子だと気づかれているのか否かだ。


 俺の傍にはつい先日まで国王陛下のスパイだった、ユーダムさんがいる。ラインハルトさんが話をつけてくれたそうで、彼はもう情報を流していない。しかし、昨年末の件は耳に入っているはずだ。


「そんなことも話していたから、私も言っておきたかったのよ。いきなりお城に呼び出されたら驚くでしょ?」

「……この話を聞いていなければ、余計に警戒しますね。邪推もするかもしれません」

「私から言えるのは、その時がきたら落ち着いて話を聞いてあげてちょうだい。エリアスちゃんも神の子と敵対したくはないだろうし、悪いようにはしないだろうから」

「分かりました」


 この件に関しては、今あれこれと考えても答えは出ないだろう。何か状況に変化があれば、ラインハルトさんに連絡して相談する。これでよし。


「でもそうなった場合を考えると、僕が神の子であることは伝えておいた方がいいですね」

「あら、教えていいの?」


 正直なところ、俺が神の子(転移者)であることだけなら、教えても問題はない。ただし、そうした過去の転移者は、後に不利益を被ることが多かったそうだ。


 信じて打ち明けた相手に、裏切られてしまった人。信じてもらえず、嘘つきや不届き者として孤立してしまった人。情報が広がりすぎてしまい、自由と共に大切な家族や仲間を失ってしまった人等々……幸せとはいえない結果に繋がっている。


 だから禁止はしないが、推奨もしない。話すのならば後悔のないように、慎重に相手を選びなさい。転生直後に貰った説明書には、そう書かれていた。


 公爵家の皆さんのことは信頼しているし、既に察してくれているなら、教えておいた方がもしもの時に動きやすくなるだろう。それに、


「……こう言ってはなんですけど、まだ会って数日のレミリーさんに知られてしまったので、公爵家の皆さんに隠し通す利点は特にないかと」

「それもそうね。現状で一番怪しいのは私だったわ」

「お世話になっていますし、信じますが、他人に広めないようにはお願いしますね」

「もちろんよ」


 いつもは飄々としている印象の人だけれど、その言葉には誠実さを感じた。


「さて、話したいことも話したし、いいかげんに寝ましょうか。交代までに少しは寝ておかないと、明日が辛いしお肌にも悪いわ」

「そうですね……おやすみなさい」


 今日は色々ありすぎて、疲れていたのだろう。途中は色々と驚かされたけれど、最終的にリラックスもできたようだ。それから心地良い眠気を感じるまでに、時間はかからなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
神の子だと気づいていながらドロップキックかまそうとする王様がヤバいw 正に破天荒
[一言] どこで、情報収集して、そう判断したんでしょう?ラインバッハと話し合った? 「いいのよ、こっちの都合もあるんだから。リョウマちゃんが神の子だと、エリアスちゃんが気づいてるなんて、私が気づかな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ