スライム魔法のメリット・デメリット
「それにしても、スライムの研究をしているとどんどん秘密が増えてくなぁ」
それだけ便利で価値があるということだし、どんな物でも使い方を誤れば危険だけど。
とか思っていたら、キリルエルが思い出したように、フェルノベリア様へ問いかけた。
「秘密といえば……フェルノベリア。お前、リョウマに話があるって言ってなかったか?」
「え、そうだったんですか?」
「ああ、先日、従魔術とスライムの同化能力を組み合わせた砂魔法を使っただろう。その件についていくつか言っておきたいことがあってな」
「セーレリプタの件の後始末があったとはいえ、付き合いの悪いこいつがこんな集まりに参加するなんて、かなり珍しいんだぜ?」
ええっ!? そんなに大事なお話があったのか!?
もっと早く言ってくれれば、スライムの話よりそっち優先したのに。
「気にすることはない。己が興味のある物事を探究し、学ぼうとする姿勢は好ましい。また自らの知り得た物事をまとめ、他者に伝える行為も学問の発展には重要なことだ」
「ありがとうございます」
で、あの魔法についての話ってなんだろう?
もしかしてーー
「最初に言っておくが、別にあの技法を使うなという話ではない。いくつかの注意点はあるが、むしろ積極的に使ってもらいたいと私は考えている。
先ほど、クフォも竜馬をこの世界に呼んだ理由について話していただろう。詳しい説明は控えさせてもらうが、あの技法をこちらで検証した結果、世界の魔力状況に好影響を与える可能性が出てきた」
「!?」
「むろん、間接的かつ僅かな効果だが……日本人は“塵も積もれば山”と言うのだったな。大きな問題を解決するには、そういった小さなことを積み重ねていく必要がある。僅かな差だからと馬鹿にはできん」
まさか、あの魔法にそんな効果があったとは。
個人レベルでは魔法を使う=魔力を消費する。
だが、世界的な広い視点では魔力が回復する?
「詳細が気になるならば、研究するがいい。これもスライムの性質が関わってこその結果だ」
「! そうなのですか」
そう答えると、フェルノベリア様は当然のように頷く。
どうやら彼は説明をしないというより、俺に研究の余地を残してくれているようだ。
スライム研究は俺の趣味であり、楽しくてやっていることだから、配慮してくれている。
また学問の神としても、なるべく自ら学び答えにたどり着くことを推奨しているのだろう。
「そして注意点だが、3つある。効果、特殊性、スライムへの影響だ。
効果についてはもう理解しているだろうが、あの技法で通常よりも強力かつ精密な魔法のコントロールが可能になる。転移者特有の豊富な魔力と多数のスライムの力を合わせれば将来的に、かつて世を震撼させた“災害魔法”と同等の効果を発揮できる可能性もある」
「災害魔法……初めて聞きましたが、名前からして物騒ですね」
「やっていることは普通の属性魔法の組み合わせでしかない。だが、それを使ったのが転移者、それも竜馬が親しくしている公爵家の先祖でな」
「あっ、もしかして魔法に特化していたという」
「そやつだ。あの者は地球の科学知識を組み合わせた強力な魔法を、時代が戦時だったこともあり、周囲に言われるがままに撃ちまくり、多大な被害を出していたからな。いつしか畏怖を込めてそう呼ばれるようになっていた。
同等の魔法使用については、常人は論外、転移者だとしても魔法特化でなければ再現は不可能と考えていた。しかし竜馬とスライムなら、今後の成長を加味すれば可能性があると判断した。
積極的に使ってくれると助かるが、時と場合、取り扱いには注意するように。先日のように建造物の解体をしていた時の規模の使用で十分だ」
「教えていただきありがとうございます」
フェルノベリア様は軽く頷いて、次の話に移る。
「次に特殊性。あの技法を使用するには魔法の腕前よりも、従魔術によるスライムとの意思疎通、また高いスライム適性が必要だということが判明した。これが十分でなければ効果は出ないどころか、暴走の可能性すらある。
高いスライム適性を持つ竜馬であれば苦もなく使えるだろうが、そうでない者には習得困難、相性が悪ければ不可能に近い。かなり人を選ぶ技法だ。この件に限った話ではないが、伝える相手はよく選べ」
「承知いたしました」
そして最後、個人的には一番気になる“スライムへの影響”だが、
「あの技法を使用すればするほど、スライムの同化スキルのレベルが上昇する。そしてレベルが10に達すると、そのスライムは同化対象と完全に一体化し、自然に還る」
「……それはスライムが死ぬ、ということですか?」
「我々から見れば否、だが人間から見れば死だろう。従魔との別れになることも否定はしない」
正直、これまでで一番重い。
強大な力を得る代わりに、スライムの寿命を削る、といったところか。
これまでの内容は、まだ人目を避けたり、周囲への被害に気をつければよかった。
神々が問題視する世界の魔力状況が、僅かでも改善に向かうというなら、密かに使いまくるつもりでいた。
しかし……
「積極的に使って欲しい、とは言ったが、強制はしない。使用の判断は任せる」
「ありがとうございます」
世界と俺1人の感情+スライムの命であれば、世界の方が圧倒的に重要なはず。
神という立場なら強制もできるだろうに、俺の意思を尊重してくださるのは本当に助かる。
スライムの寿命を縮めるということに少なからず驚き、強制しないフェルノベリア様には感謝していると、
「?」
なんだか、他の神々の視線がおかしい。
呆れたような視線とジト目で、俺とフェルノベリア様の間を行ったり来たりしている。
「どうした?」
「いや、竜馬が納得してるならいいんだけどさ、フェルノベリアはもう少しちゃんと説明しろよ」
「情報を出し渋ったせいで、変に空気が重くなったじゃねぇか」
「説明を省いた意図は分かりますし、竜馬君も分かってくれているみたいですが、ねぇ?」
「竜馬君は寛容だねぇ。許された僕が言うのもなんだけど、もう少し詳しく教えろとか、食い下がってもいいだろうに」
キリルエルとテクン、さらに普段仲の悪そうなウィリエリスとセーレリプタの意見が合っている。
「竜馬君、フェルノベリアの言葉に嘘はない。しかし、数回あの魔法を使っただけでスライムが死ぬわけではない。じゃから、そこまで深刻になる必要はないんじゃよ」
「そうそう。魔力の問題は私達が対処すべきことだし、嫌なら使わない、で全然構わないんだから」
「何よりも、あの魔法を使った時、使った後のスライムの状態はどうだったか覚えてる?」
ガイン、ルルティア、クフォの言葉を受けて考えてみる。
……そういえば、あの魔法はそもそも遊びのつもりだった。
スライム達も楽しんでいたのか、元気になっていたような気がする。
「スライムにいい影響もある、と?」
「うん。少なくともあの魔法がスライムに苦痛を与えることはないよ。フェルノベリアからもそう聞いたし」
それを聞いて本人(神)を見ると、無表情で分かりにくいが、本当に少しだけ、気まずそうに頷いた。
「詳しく説明すれば、竜馬君の研究という楽しみを奪うことに繋がる。それは分かるが、いささか悪い部分だけを抜き出しすぎじゃろう」
そうなのか……なら、ひとまずこの問題は置いておこう。
あの魔法の使用は緊急時や必要に応じて、スライムの同化スキルの様子を見ながら。
そしてスライムの研究を続けて、いつかフェルノベリア様が伏せている内容を解明する。
何十年かかるか分からないが……
漠然としているが、方針を皆に伝えると、
「そのくらいの気持ちでやっていくのがいいべ。竜馬にはまだまだ時間がある」
というグリンプ様の言葉に皆も同意し、この話は終わりになった。
しかし、
「フェルノベリアが、ぷっ、くくく」
隣から聞こえてくる、楽しそうな笑い声。
対して、名前を挙げられた方は不機嫌そうに問う。
「セーレリプタ、何が言いたい」
「いやぁ、フェルノベリアがそんな配慮するところなんて初めて見たからね。それに、竜馬君に呼ばれる時、別に様付けじゃなくたっていいと思うくらいに気に入ってるのに、言い出せないみたいだしぃ。人間はこういうのを日本では“ツンデレ”っていうのかなぁ? って」
「なんだそれは、私は与えられた力を使うだけでなく、積極的に学び、研究しようという姿勢を評価しているのだ。それは別に竜馬に限ったことではない。それこそ先の話に出ていた災害魔法を扱った転移者も、魔法の使い方はともかくとして、災害魔法は相応の努力と工夫をしていた。その点は純粋に評価をして――」
「男のツンデレは需要がないと聞くよぉ?」
「――聞け! 勝手に決め付けて話を進めるな!」
そんな叫びを、セーレリプタは笑ってスルー。
「まぁ、フェルノベリアに限った話じゃないけど、竜馬君に対する対応を見ていると、新鮮だなぁ~って思うよ。皆、いつもと微妙に違うんだもの」
その答えには思うところがあったようで、セーレリプタ以外の皆が言葉に詰まる。
どういうことなのか? 何があったのか? そもそも聞いていいのだろうか?
「別に構わないよぉ。竜馬君だって無関係じゃない、っていうかぁ、竜馬君の影響だろうからねぇ」
俺の影響? と聞き返すと、セーレリプタはうつぶせの状態のまま、首だけをこちらに向けてニヤリと笑う。
「聞いてないかい? 普通、ここに生きた人間は来れないって。それは転移者でも同じことで、通常は教会で修行した一握りの人間が得る“神託”スキルが唯一の交信手段。それも僕らの声を聞くことができるだけだって」
それはだいぶ前に聞いた。
俺はちょっと変わっている事が多い転移者の中でも、特に変わった転移者だと。
「そう、君は“ボク達に呼ばれなければいけない”という条件があるとはいえ、魂の状態でここに来て、直接言葉を交わすことができる。そんな存在は、この世界にはこれまでいなかった。だからね、ボクも含めて皆、こういう風に人と会話する経験は少ないのさ。
もっと言うと、ボク達神々の間では会話も必要ない。やろうと思えば離れた相手に、直接情報やイメージを送れるからね。さっきのフェルノベリアと竜馬君みたいに“伝え方”でお互いの認識に齟齬が生まれることは少ないのさ。
ちなみに神託は基本的に神から人へ言葉を授けるだけだからね、会話にはならないよ」
「なるほど……じゃあ、あれか? さっきちょっと話題にした、ガイン達から最初に貰った情報も」
「うん、神と人の認識のズレもあっただろうけど、伝え方にも問題があったと思うね。ボク達にとって当たり前のことでも、竜馬君には前提が全く分からない状態だろう?
そういうことを色々気にしながら、コミュニケーションをとろうとしてる皆の様子が、これまで見てきた皆の様子と違うからさぁ、見てて本当に面白くて」
そんなことを言って笑っているが、セーレリプタはどうなのか。
「ボク? 多少は普段と違うところがあるかもしれないけどぉ……ボクは常に平等さ。人間にも神にも等しく、遠慮とか配慮とかすると思う?」
「無駄なことを聞いた気分だ」
こいつが遠慮とか、しないだろう。
そんな思いを肯定するように、皆一斉に頷いた。
「それでも仲良くしようって気持ちはあるのにぃ、酷いなぁ」
「分かった、分かったから絡みつくな、重……くもないのか」
むしろ軽い。異常に軽い。鬱陶しいけど。
「セーレリプタに指摘されると微妙に嫌じゃが、確かに普段の我々と違うところはあったかもしれんの」
「そうですね。考えてみれば、こうして頻繁に私達が集まるようになったのも、竜馬君が来たからでしょう。今回のように9柱も集まるなんて、いつ以来かしら?」
「まだこの世界が生まれた頃は、集まることもあったけど」
「世界が小さかったのもあるわよね。それがどんどん広がって、発展もして」
「必要な情報は送りあえるから、だんだんとバラバラに行動するようになったしな」
「集まるとしても、必要な時に必要な奴にだけ声をかけりゃ十分だからな」
「自己を省みれば、必要性の有無で面会の是非を決めていた部分はあるな」
「会うにしても、こうして何か飲みながら話すなんてことも無くなったべ」
神々が、しみじみと頷いている。
テレワークが発展して、本当に人と会う必要が無くなって長い、という感じなのだろうか?
神々の力と地球の科学技術を一緒にしてはいけないかもしれないが。
「いや、実際それに近い状態じゃよ。ただ我々の場合は数百年、下手をすれば数千年単位で会わないこともある。特に1柱、本当に姿を見せんから、最後にいつ会ったか分からんような奴もおるし……こうして互いに会う機会が増えたこと、そのきっかけになってくれた竜馬君には、ちょっと感謝じゃな」
「何かしたつもりはないけど、それならよかった」
皆、穏やかに笑っているので、俺としても嬉しい。
「他に話しておくべきことはあったかな……」
スライムの話なら正直、まだまだ語れるのだけれど、
「何か、こう、さっきみたいな重要な話は」
「流石にあの魔法みたいな注意はそうそうないだよ。
農業の話なら言いたいことはまだまだあるけど、いっぺんに言っても対応できなきゃしょうがない。まずはさっき話した分だけしっかり身につけてからがいい。ってことでオラからはもう何もないけど……」
と、グリンプ様が他の皆を見ていくと、
「誰もいないならボクから話そうかなぁ」
と、隣から声が上がる。
「……とりあえず聞こうか」
「そう警戒しないでよ。これから話すことは、キリルエルとも話していたことなんだから」
「アタシと? おい、何の話だよセーレリプタ」
「竜馬君はもっと直感を磨くべきだって話。したでしょ?」
「直感? そういえばそんな話もしたな、例の罰で特訓してる合間に。休憩の時間稼ぎかと思ってたぜ」
どうやら本当に、事前にそういう話があったようだ。
それにしても、直感とは?
「ほら、竜馬って理屈っぽい方だろ?」
「ん、まぁ、そうかも? 自分ではよくわからないけど」
「別にそれが悪いわけじゃないぜ。ただ、何事も時と場合によるってことさ。
例えば他人に何かを伝える時には、ちゃんと理屈があって、筋道の通る説明が必要だろう。
でも、場合によっては理屈であれこれ考えるよりも、まず動くことの方が大切な時もある」
キリルエルの言葉に納得しつつ、さらに話を聞くと、
もちろん個人の向き不向きもあるし、バランスも大事。
ただ、今の俺は理屈であれこれ考える方に偏っているという。
しかし、
「竜馬は本来感覚派、それこそ直感とかひらめきに優れるタイプだろう、ってことでセーレリプタと意見が一致したんだ」
「そうなのか?」
「うん。竜馬君が理屈っぽくなったのは、前世の環境の影響かな?
こっちでは熟練者の経験とか感覚に頼る部分も多くある。でも、地球は科学が発達している分、データだとか根拠の方が重要でしょ?
そういう世界で生きるにあたって、論理的思考を意識せざるを得なかった。特に竜馬君は他人とのコミュニケーションに苦手意識を持っていたみたいだから、余計に気にしたというか、努力もしたんだろう。
ただ、その反面、本来の長所を最大限に活かせなくなっているのさ」
「……と言われても」
いまいちピンとこない。
「竜馬君はこの前、失敗したって言ってたでしょ?」
「ああ、町中の雰囲気だったり、会議場の空気が前世の会社に似ている気がして、ちょっと暴走したけど」
「そこだよ。仮に竜馬君が正しくその“感覚”を扱えていたら、そんな風に1人で突っ走ったりすることもなかったんじゃないかな?」
「あれが? だってあれ、なんとなく嫌な感じがするってだけで」
「根拠がないって?」
セーレリプタはうつぶせの状態から起き上がり、わざとらしく“わかってないなぁ”的なジェスチャーをしてきた。
きっと反応したら負けだろう。冷静に。
「分かってないから、説明早く」
「仕方ないなぁ……直感とか感覚だと、抽象的で分かりにくいかもしれない。けど、ボクは別に適当なことを言って煙に巻こうとか、そういうことを考えてるわけじゃない。“人間は学ぶ”ってことさ。尤も人間に限らず、生き物なら大体そうだろうけど。
たとえば犬が1匹、飼い主が1人いたとして、その飼い主は理由なく、毎日のように犬を棒で叩きます。さて、犬は飼い主に対してどんな反応をするようになるでしょうか?」
飼い主を恐れる、逃げる、または逆に敵意を見せたり、反抗するようになる……大体そんなところだろう。少なくとも好意的な反応は返ってこなくなるだろう。
「それはどうして?」
「そりゃ、殴られれば痛いし、怪我だってするかもしれない。犬だってそんなの嫌だろう」
「その通り。犬だって殴られれば痛いということを学習するし、棒や飼い主が自分に痛みや怪我を与える存在だということを学習するということ。
そして苦痛を学習した犬は竜馬君が言ったように、苦痛を与える存在から離れる、または排除を試みるか。どちらにしても苦痛、いや、身に迫る危機を回避するために行動する。これは能力というよりも、本能。生物が持っていて当然の“自己防衛本能”さ。
あとは、技術者だって長い経験とその中で培った感覚は大事でしょ? テクン」
「まぁ、そうだな。一流の鍛冶職人は、炉の温度、火の色、金属を熱する時間はもちろん、その日の気温や湿度まで把握して微調整する。意識するしないに関係なく、体で覚えた感覚ってのは馬鹿にできないもんだ」
「そして竜馬君は、前世の記憶と経験を引き継いでいる。ここまで言えば、もう分かるでしょ?」
そこまで言うと、セーレリプタは再びテーブルに突っ伏してしまう。
言われてみれば、あの時の俺はさっきの話の犬と同じだ。
危機を感じて、俺は原因の排除に動いた。
体で覚えた感覚は馬鹿にできないというテクンの言葉も理解できる。
「セーレリプタ……」
「ん~?」
「お前、そんな人をよく見ているタイプだったのか……」
「え、そこ!? 今の話で気にするポイントがそこなの!? ボク神だよ!?」
こちらに向けられたドヤ顔が一瞬で崩れた。
「いや、だってさ? この前の件で、もっと傍若無人なイメージだったから。正直、驚きの方が強い」
「ええぇ」
「でも、言ってる意味は理解できたと思う」
「ならいいや……悪い思い出や恐怖も1つの”経験”。それが自らを縛り、苦しめるなら“トラウマ”と人は呼ぶのだろうけど、上手く使いこなせば強力な武器にもなり得る。
だから竜馬君はもっと直観力や感覚を磨くといいよ。暴走したとはいえ、状況を感じ取れたんだし、君に向いてると思うから」
「分かった。心がけてみる」
と言ったところで、周囲が輝き始めた。
「おや、丁度時間が来たようじゃの」
「そうか、時間制限があったの忘れてた。でも、今回はいつもより話せたな」
「今回は9柱がかりで呼んだからね」
「竜馬がここに滞在できる時間は、呼ぶ側である我々の数に比例するようだ」
「私達が集まるいい機会にもなりますし、これからは時々こうして集まるようにしましょうか?」
皆がそんな話になっている一方、
「ところで竜馬君、今日はこれからすぐに帰るのぉ?」
セーレリプタが急に質問をしてきた
「教会に戻ってからの事か? そうすると思う、今日はもう予定もないから、帰って例の魔法とスライムの関係でも……あ」
「何かあった?」
「いや、予定はないけど、ちょっと“子供の家”に寄っていこうかと」
「子供の家ってあれだよね? 竜馬君が建て直した」
「そうそう、あの家に住んでる子供達に、簡単な仕事を頼んでるんだよ。大丈夫とは思うけど、ちょっと様子見に」
「ふーん、いいんじゃないかな」
「?」
自分で聞いてきたくせに、あまり興味のなさそうな反応。
いや、違うか? 興味がないというよりも、
「……今年が終わる3日前の夜」
「は?」
「1人で廃坑にいると、迷いが晴れるかもよ」
「それは――」
周囲の輝きが強くなり、帰還の時が訪れた。
「じゃ! またねー」
「おっと、時間か」
「また今度な!」
率先して声を上げたセーレリプタに続いて、皆が俺を見送る。
俺はあっという間に光に呑まれ――
「!」
気づくと、いつもの教会の礼拝堂に戻っていた。
「……はぁ……」
“今年が終わる3日前の夜、1人で廃坑にいると迷いが晴れるかも”
セーレリプタは皆に気づかれないように、俺にメッセージを伝える隙を窺っていたようだ。
迷いとは何のことか、あいつの狙いは何なのか。
分からない事が多いが、とりあえず1つだけ分かる。
セーレリプタはまた何か企んでいるのだろう……なんというか、懲りない奴だ。
「帰ろう」
そう思って席を立ち、教会を出ようとしたところ、
「タケバヤシさん、すみません。ちょっとお時間よろしいでしょうか?」
「あ、はい。大丈夫ですよ。どうされました?」
「実は今度ご協力いただく炊き出しの件で」
教会のシスターに呼び止められ、ちょっとした相談を受けるのだった。




