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モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~  作者: くまたに
三章・クラスメイトの反応

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第35話 モブと桃色の髪の友人

「かんぱ〜いっ!」


「か、かんぱい……」


 如月さんにはクレープなど、甘い物を奢るつもりでいたが彼女の希望でハンバーガーショップにやって来た。

 店に入ると、ポテトの揚げる香りが鼻腔をくすぐる。

 節約の為、何も食べないつもりでいたのだが、お腹は正直で、ぐ〜、と大きな音が鳴ったのでLサイズのポテトと、コーラを自分用に注文した。


「近衛くんは伊織さんの事が好きなの〜?」


「ぶッ!!」


 いきなりの質問に、飲んでいたコーラを吹き出しそうになったので必死にこらえる。

 俺が唯さんの事を……好き?

 そ、そんな事は……否定は出来ない。友達としては大好きだ。だが如月さんが聞いているのは、恋愛感情でどうかという事だろう。俺はどう思っているんだ──?


「……ごめん。分からない」


「えー」


 そんなジト目で見られても、分からないものは分からないんだよ。

 如月さんはつまらなさそうな声を出したかと思えば、続けて口を開いた。


「ならさ、伊織さんとの馴れ初めを教えてよ」


 馴れ初め?残念だったな。俺達は親友ではあるが、恋人じゃないんだ。

 俺のようなモブが唯さんと釣り合うわけないじゃないか。


「あのな……俺と唯さんは親友であって、恋人じゃ無いんだよ」


「分かったよ。なら2人はどうやって知り合ったの?正直伊織さんは私も話しかけづらいなって思ってたんだよ。教えてくれない……?」


「少しならいいよ」


「やったぁ!ありがとう!」


 そんなに嬉しいものか?如月さんはニコッと笑っているが、俺には彼女の考えている事が分からない。

 しかし教える事に同意したので、色々と隠しながら話した。


 公園でたまたま出会った事。

 俺が話しかけて、唯さんに初めて認識された事。

 少し嘘をついたが、大きくは離れていないので良しとしよう。


「なるほどね〜。少し引っかかるところはあったけれど、いいか。教えてくれてありがとね!」


「おう」


 今更ながら、どうして俺と唯さんの事を聞いたんだ。

 恋愛関係と勘違いして、面白そうだと思ったからかな。

 ええい、自分で考えていても答えは出ない。さっさと聞いてしまえ。


「どうして気になるんだ?」


「そりゃ、面白そうだと思ったからだよ〜」


「そっか」


 面白そう、ね……

 それは本当かな。


「せっかくなんだし、違う話をしようよ」


 違う話?──と言っても俺達、まだお互いの事をあまり知らないから話続かなさそう。

 いいや、お互いの事を知る為に違う話をするのか。


「分かった。そうしよう」


「なら私から問題です。私達が初めて出会ったのはいつでしょう」


 何言ってんだ。そんなん決まってるだろ。


「高校に入学してから」


「ぶっぶ〜。違いま〜す」


 声だけを聞いてみればいつも通りの明るい声だが、表情は大事なものが抜け落ちたかのような感じだ。

 話の流れ的に、俺達は高校入学以前に出会っていた。しかし俺はすっかり忘れている。それにガッカリしていると言ったところだろう。


「ごめん。過去を思い返してみても思い出せないや」


「あ、あはは……さっきの問題の答えは、近衛くんので正解。高校に入学してからで〜す」


 そう言う彼女の目は暗く、どこを見ているのか分からない。

 今言った答えも、適当に考えた嘘だろう。

 正直過去に如月さんと会った事なんて無い気がする。しかしあの表情を見てしまったら、罪悪感で夜も眠れなさそうだ。

 俺が答えの事を聞こうと思ったその時──


「じゃ、私は帰るね」


 彼女は残り1つだったポテトを口に放り込むと、プレートにゴミを乗せて立ち上がりながら言った。

 そして分別スペースでゴミを分別すると、そのまま店から消えていった。


 1人残された俺は、なんとも言えない気持ちで彼女が出ていったドアを眺めていた。

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