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モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~  作者: くまたに
三章・クラスメイトの反応

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第34話 モブと罪悪感

 昼休みの屋上。昨晩の残りを適当に詰めた、弁当を食べ終えると、俺は唯さんにメッセージを送ることにした。


『如月さん、花火大会の話を皆に言わないかな?』


 送信ボタンを押すと、すぐに既読がつき、返信が返ってきた。


『今中庭に居るけれど、怖くて教室に帰れない』


 そして間を開けず、焦っている様子のパンダのスタンプが送られてきた。

 ただのスタンプだが、唯さんが使っているのを考えると、可愛いな、と思ってしまう。


『今はなんとも言えないから、様子を見ておこう。何か怪しい動きを見かけたら、直接話してみるよ』


 と送っておいてだが、俺はあまり人と話すのが苦手だ。上手く話すことが出来るだろうか──


「あれ〜?誰の話をしてるの?」


「うわっ!」


 背後から声をかけられ、俺は思わずベンチから勢いよく立ち上がってしまった。

 声の主は今メッセージで話していた、『如月咲』だった。


「そんなに驚いてどうしたの〜?」


 桃色の長い髪を揺らす彼女は、上目遣いで聞いてきた。

 うっ……、なんて破壊力。


「な、何も無いよ」


「(嘘つき。私に隠し事なんてしちゃダメ)」


「えっと……何か言った?」


「ううん、何も言ってないよ!」


 一瞬表情が曇ったように見えたのは、俺の気のせいのようだ。

 そんな事より、彼女にメッセージの内容を見られてしまった。早くこの場から離れたいが、何かいい口実が見つからない。


「私のことが、そこまで怖いの?」


 可愛らしく首を傾げて聞いてくるが、どこか寂しそう。

 それも無理は無いか。友達になってすぐの人に、疑われているんだ。俺だったら胸が締め付けられるように痛くなると思う。


「こ、怖いってわけじゃ……」


「なら何。私メッセージ見ちゃったんだよね」


 やはりか。名前も出してしまっているので、言い訳のしようが無い。


「別に怒って無いんだよ?友達にコソコソと言われているのが、少し寂しいの……」


 続けて言われてしまった。そう言われてしまっては、ぐうの音も出ない。


「私は誰にも言わないよ。だって近衛くんに言わないって約束したから!」


 真っ直ぐな視線を向けられ、急な罪悪感に見舞われる。

 そうだ、如月さんは四月からクラスをまとめる為に、切磋琢磨してくれた。嫌な感じの男子からは、面倒くさそうな仕事を押し付けられていが、一切愚痴を言わずに頑張っているところを見たことがある。

 そんな彼女が何のメリットも無いのに、人の嫌がることをするはずが無いじゃないか。


「俺、あまり人と話すのが得意じゃないんだ。だからいきなり友達が出来て、嬉しいと思ったけれど、それと同じくらいびっくりしたんだ。それで疑っちゃった。ごめんね」


 嘘は付いていない。……少し盛ったが。


「気にしないで。私も勝手にメッセージのやり取りを覗いちゃってごめんね!」


 少し強ばった表情で如月さんは言った。

 彼女は「気にしないで」とは言ってるものの、彼女自身は気にしてそうだ。何か償いを……


「悪いことをしてしまったんだ、何か奢らせてくれないか?」


「私は物でつられるほど軽い女じゃないよ?」


 しまった。却って嫌な思いをさせたか──?


「でも、お互いを知るにはいい機会かもしれないから、お言葉に甘えるよ!」


 彼女はパッと花が咲くように笑いながら言った。

 どうやら上手くいったようだ。


「じゃあ今日の帰り、生徒玄関で待ってるね!」


 そう言って足早に去っていった。


 俺は念の為財布を確認したが、余裕はある。大丈夫だな。

 正直あまり乗り気では無いが、自分の罪は自分で償わないといけないので、耐えるとしよう。


 俺は弁当を片手に、教室に向かって足を進めた。

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