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モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~  作者: くまたに
三章・クラスメイトの反応

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第33話 冷姫と新学期

一人称に変更しました。

 夏休みが明けたというのにも関わらず、未だに真夏日が続いている。

 新学期に見る生徒達の顔は、どれも気怠さを帯びている。

 鏡を見れば、俺も同じような表情だと思うが、昨年までとは比べ物にならないくらいマシだろう。


 教室に入ると、終わっていない課題を前に、机に突っ伏している生徒が散在している。

 一週間に一回は唯さんを含めて勉強会をしたので、割と早いうちに片付けることが出来た。


 唯さんはもう登校していて、自分の机の上で今日習う範囲を予習している。

 夏休み中に会った時と比べると、氷を纏ったような雰囲気を醸し出している。

 男子達は遠くから、届かない所にある絶景を眺めているように佇んでいる。


「おはよ、唯さん」


 返されないのを覚悟に、挨拶をしてみた。すると──


「おはよう!」


 パッと花が咲くように表情が明るくなり、挨拶を返してくれた。

 嬉しい、人生初の友達と「おはよう」を言い合える日が来るなんて……!

 毎日挨拶出来るように頑張ろうかな。(以前話さないように決めたのは忘れている)


 クラスメイトからは羨望の眼差しを向けられているが、プールに花火大会を唯さんや朱莉と行き、沢山人目に着きすぎたせいか全く気にならない。

 むしろ俺をモブ呼ばわりしてきた彼らに、ドヤってやりたい気分だ。


「──ねえ近衛くん。ちょっと話があるのだけど、いいかな?」


 席に着いて少し経った時だった。

 クラスメイトの女子から声をかけられた。名前は確か……


「こうして話すのは初めてだよね。私は如月咲(きさらぎさき)、よろしくね」


 愛らしい笑みを浮かべる如月さんは、男女共に隔たりなく話すことの出来る、クラスのまとめ役のような人──というかクラス委員だ。


「よ、よろしく。えっと話っていうのは……」


「七月末にあった花火大会に、伊織さんと一緒に居た?」


「……ブッ!」


 俺の予想を遥かに超えた事を言われ、ついつい吹き出しそうになってしまった。


「あ、えっと、なんかごめんね?私、七月末の花火大会に行ってて、キラキラと綺麗な男女の二人組を見つけたの。片方は伊織さんってすぐに分かったの。でももう片方……男の子の方が誰だか分からなくて、もしかして近衛くんなのかな〜って思って、聞いたの」


 そういう事か。果たして言っていいのか?

 唯さんは間違いなく聞こえていると思うが、どうしたらいいのかを聞くと、如月さんの中での推測が確信に変わってしまう。


「そうだよ」


 俺が答えに悩んでいると、横から矢が飛んでくるように言葉が飛んできた。唯さんがフォローしてくれたのだ。


「やっぱりそうだったんだね!」


「出来れば他言は……」


「分かってる──」


 彼女の顔には嘘は見当たらない。言いふらしたりはしなさそうだが、怖くないと言えば嘘になる。


「──夏休み前から、仲がいいはずなのにどうしてわざと話さないようにしてるのかなって疑問に思ってたんだ〜」


 楽しそうにそう言っているが、俺達としては目から鱗だ。まさかバレていただなんて……

 さすがクラス委員だな。もう考えるだけ無駄だと思い、俺は心の中で如月さんを褒めることにした。さすれば少しは気が楽になるからだ。


「二人共、良かったら私と友達になろうよ〜」


「いいぞ」


 せっかく言ってくれたんだ、ここで断って彼女の思いを無下にする訳には行かないからな。


「私もいいよ……」


 隣から細々と悲しい声が聞こえる。

 唯さん、何か嫌なことでもあったのかな?

 無理に聞くのは申し訳ないので、俺は心の中で留めておくことにした。


 こうして、俺に人生で二人目の友達が出来たのだった。

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