SS 嘘つきな兄妹
今日は四月一日。琉生と朱莉は、まだ五歳だ。
「おにぃ、私知ってる!今日は沢山嘘をついていい日!」
どこで覚えたのか、朱莉がドヤ顔で、僕の部屋までわざわざ言いに来た。
こういう時は褒めるととても喜ぶんだよな。
「そんな事まで知ってるのかー!朱莉はすごい、偉い子だよ!」
五歳ではあるが、小学四年生程度の知能のある琉生は優しいお兄ちゃんだった。
琉生の予想は的中し、朱莉はこの上ない満足そうな表情で、「ふん!」と鼻を鳴らしている。
「実はあかりはおにぃの事が嫌いー」
嘘でも言ってはいけない事。しかしこの時の朱莉は良い、悪い判断が出来ず、言ってしまった。
もちろん琉生はそれが嘘だと言うことに気づいている。しかし一泡吹かせてやりたいと思ってしまうのだった。
「朱莉?大事な話をするね。今日は嘘をついてもいい日だ。でもね、朱莉が何回も嘘をつくと僕が死んじゃうんだよ。……いてて、体が苦しい」
あとから思えば下手な芝居だった。だが、朱莉を騙すには十分だった。
「だめ、おにぃ死んじゃ嫌……!」
うるうると目の端に涙を浮かべ、朱莉は琉生の胸に飛び込む。
琉生は顔の前にある頭を、ぽんぽんと軽く叩いて言う。
「それじゃあ嘘はだめだよ、分かったかな?」
「うん、分かった。嘘、つかない。あかり、おにぃの事大好き!」
見事に作戦を成功させた琉生は、心の中でニヤリと嫌らしい笑みを浮かべる。
その日の夜、琉生は渾身のウザ顔を浮かべて言った。
「今日言った、朱莉が嘘をつくと僕が死んじゃうのは嘘だよ。僕の勝ちー!」
体全体使って煽る琉生に、朱莉は悔しくて大声を上げて泣く。
すぐに両親が駆けつけ、仲直りをするが、朱莉は「おにぃよりも賢くなるの!」と心に決めるのだった。
「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!
していただいたらモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!
ぜひよろしくお願いします!




