第27話 冷姫とかき氷
「うわぁ〜っ!!」
琉生の隣で唯は、目をキラキラと輝かせながら、綺麗に並んだ屋台を眺めている。
「うわっ……」
対して琉生は、自分の知っている屋台の混み具合と似ても似つかない光景に、顔を青くしている。
「琉生くん琉生くん!何から食べる!?」
(確か唯さんは甘いものが好きだったはず)
「かき氷行っとくか?」
「かき氷!?うんうん、それがいい!行くぞー!」
琉生の記憶は正しかった。唯は更に目を輝かせ、今にもレーザービームが出てきそうなくらいだ。
「ブルーハワイとレモン味をください」
かき氷屋を見つけると、唯の欲しい味を聞いてからまとめて言った。
唯はかき氷の削られる様子を、瞬きもせずに眺めている。そんな様子に琉生は苦笑しつつ、朱莉のお陰でこんなにも可愛い唯さんを見れたよ、と思った。
「いただきまーす!──っめたい!頭キーンってする!」
唯はブルーハワイ味のかき氷を勢いよく口に含み、頭を抑えている。そんな姿でも華があり周囲の目を引いている。
「ねえねえ、大体のかき氷のシロップって、色と匂いが違うだけで、味は同じなの知ってた?」
「初めて聞いた。正直信じられない……」
「だよね〜。確かめてみよっか!」
そう言って唯はかき氷を一口分掬い、琉生の顔の前まで運ぶ。
「え?」
「ん」
「え?」
「ん!」
明らかにあ〜んの状態。これじゃ関節キスだ。琉生は戸惑うが家を出る少し前のことを思い出す。
◆
「おにぃ花火大会に行く前に大事な話」
「どうした?」
いつもと違って真面目な顔の朱莉。
「女の子に恥をかかせたらダメだよ」
「うん。分かってるよ……ん?」
琉生は想像もしなかったことを言われ、少し驚く。そして、うんうん、と頷き妹の成長を身近に感じたのだった。
◆
あの時は軽く流していたが、今ならわかる。このあ〜んを拒絶したら、唯は恥をかき琉生は嫌われてしまうということを。
「いただ、きます……」
出来るだけかき氷の乗ったスプーンに、唇が触れないように気をつけて食べてみる。そして間を開けず、自分のレモン味のかき氷を一口。
「……」
「どう?同じ味でしょ!?」
「よく分からない」
「そうか〜。じゃあ次は私だね!」
そして「私にあ〜んしろ」と言わんばかりに、上目遣いで琉生の顔を覗いている。
これは反則級だ。下手すれば死人が出る。
あざといが可愛すぎるので合格だ。
「どうぞ」
レモン味のかき氷の乗ったスプーンを唯の顔の前まで運ぶ。すると、かぷっ、という効果音が付きそうなくらいに可愛らしく口に入れる。
目が幸せそうで、近くで見ている琉生までもが幸せになる。
「うんうん。これは──」
味わうためか閉じていた瞼をパッと開き、唯は言う。
「──全くわからない!」
なんとなく予想のついた答えだったが、琉生は先程のあ~んでそれどころではなかった。
(唯さんはさっきから顔色一つ変えない……。これは友達だからか?異性として見られていないのか?)
琉生は微かに心配になる。別に異性としても見られていなくても、友達ならいいはず。それなのにムズムズと胸がざわつくのは何故なのか。琉生は解き明かす児との出来ない謎に直面し眉間に皺を寄せる。
しかし目の前で楽しそうに次に行く屋台を考えている唯を見ると、「そんなことはまた後でだ」と思い、琉生も同じように次に行く屋台を考えるのだった。
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