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モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~  作者: くまたに
二章・波乱万丈の夏休み

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第27話 冷姫とかき氷

「うわぁ〜っ!!」


 琉生の隣で唯は、目をキラキラと輝かせながら、綺麗に並んだ屋台を眺めている。


「うわっ……」


 対して琉生は、自分の知っている屋台の混み具合と似ても似つかない光景に、顔を青くしている。


「琉生くん琉生くん!何から食べる!?」


(確か唯さんは甘いものが好きだったはず)


「かき氷行っとくか?」


「かき氷!?うんうん、それがいい!行くぞー!」


 琉生の記憶は正しかった。唯は更に目を輝かせ、今にもレーザービームが出てきそうなくらいだ。


「ブルーハワイとレモン味をください」


 かき氷屋を見つけると、唯の欲しい味を聞いてからまとめて言った。

 唯はかき氷の削られる様子を、瞬きもせずに眺めている。そんな様子に琉生は苦笑しつつ、朱莉のお陰でこんなにも可愛い唯さんを見れたよ、と思った。


「いただきまーす!──っめたい!頭キーンってする!」


 唯はブルーハワイ味のかき氷を勢いよく口に含み、頭を抑えている。そんな姿でも華があり周囲の目を引いている。


「ねえねえ、大体のかき氷のシロップって、色と匂いが違うだけで、味は同じなの知ってた?」


「初めて聞いた。正直信じられない……」


「だよね〜。確かめてみよっか!」


 そう言って唯はかき氷を一口分掬い、琉生の顔の前まで運ぶ。


「え?」


「ん」


「え?」


「ん!」


 明らかにあ〜んの状態。これじゃ関節キスだ。琉生は戸惑うが家を出る少し前のことを思い出す。


 ◆


「おにぃ花火大会に行く前に大事な話」


「どうした?」


 いつもと違って真面目な顔の朱莉。


「女の子に恥をかかせたらダメだよ」


「うん。分かってるよ……ん?」


 琉生は想像もしなかったことを言われ、少し驚く。そして、うんうん、と頷き妹の成長を身近に感じたのだった。


 ◆


 あの時は軽く流していたが、今ならわかる。このあ〜んを拒絶したら、唯は恥をかき琉生は嫌われてしまうということを。


「いただ、きます……」


出来るだけかき氷の乗ったスプーンに、唇が触れないように気をつけて食べてみる。そして間を開けず、自分のレモン味のかき氷を一口。


「……」


「どう?同じ味でしょ!?」


「よく分からない」


「そうか〜。じゃあ次は私だね!」


そして「私にあ〜んしろ」と言わんばかりに、上目遣いで琉生の顔を覗いている。

これは反則級だ。下手すれば死人が出る。

あざといが可愛すぎるので合格だ。


「どうぞ」


レモン味のかき氷の乗ったスプーンを唯の顔の前まで運ぶ。すると、かぷっ、という効果音が付きそうなくらいに可愛らしく口に入れる。

目が幸せそうで、近くで見ている琉生までもが幸せになる。


「うんうん。これは──」


味わうためか閉じていた瞼をパッと開き、唯は言う。


「──全くわからない!」


なんとなく予想のついた答えだったが、琉生は先程のあ~んでそれどころではなかった。


(唯さんはさっきから顔色一つ変えない……。これは友達だからか?異性として見られていないのか?)


琉生は微かに心配になる。別に異性としても見られていなくても、友達ならいいはず。それなのにムズムズと胸がざわつくのは何故なのか。琉生は解き明かす児との出来ない謎に直面し眉間に皺を寄せる。

しかし目の前で楽しそうに次に行く屋台を考えている唯を見ると、「そんなことはまた後でだ」と思い、琉生も同じように次に行く屋台を考えるのだった。

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