第24話 兄思いの妹とその協力者(前編)
三人でプールに行った日の翌日。
夏休み中だが、いつも通り7時までにベッドから降りる。
《《今日も》》部活は休みだ。
朱莉は少し残っている眠気を吹き飛ばすため、洗面所で顔に冷水をぶっかける。
「──っは!」
目がぱっちりと開く。
いつもなら朱莉が起きる頃には、朝食を作るために琉生は起きている。しかし今日は朝食を作っているどころか、部屋から出てきていない。
昨日はプールに行っていたから疲れているのだろう。と察し、朱莉はリビングでテレビを見ることにした。
ふと時計を見てみると、短い針は『8』を指している。
「えっ!?もう八時じゃん」
朱莉は横に寝転がっていたソファーから飛び起き、琉生の部屋に向かって声を張って言う。
「おにぃー、もう八時だよー!!」
「……」
反応はない。
遅起きは健康に良くないので、朱莉は琉生の部屋へ突撃する。
ベッドの上で横たわる琉生の顔は真っ赤だった。どうやら熱を出したらしい。
朱莉は一応「お薬手帳見させてもらうからね」と言って部屋を出た。
「どうしよう……」
朱莉は思わず口に出してしまう。なぜなら朱莉は料理音痴だからである。
以前祖父から送られてきた高級な肉を半生で食卓に出し、琉生が腹痛で苦しむことになったくらいだ。
考えるだけじゃ何も変わらない。ということで朱莉は食品棚を開く。
あるものはカップ麺。……焼きそばの。
「こ、こんなん簡単に決まってる……!」
自信をつけるために、あえて口に出す。
朱莉はカップ焼きそばの側面に表記されている作り方を見て、順調に手順を踏んでゆく。
「あと少し!」
しっかりと《《熱湯を流し込んですぐにソースをかけた》》。
スマホのタイマーアプリで三分計る。
テレビを見ていたら時間はあっという間に過ぎた。スマホが、ピピピ、と間抜けな音を鳴らしている。
朱莉は湯切り口を開き、シンクで水気を切る。
その瞬間、湯気と共にソースの食欲をそそる香りがする。完成だ。
朱莉はコップに緑茶を注ぎ、食卓に着く。
「いただきます」
そう言い、朱莉は一口焼きそばを頬張る。
その味は……。
「……うす」
そう。味がほとんどしないのだ。
その原因は、遡ること約三分前。朱莉は熱湯と一緒にソースを入れたからだ。
やはり朱莉は料理音痴だった。
朱莉は今更ながら琉生の大切さに気づき、目の端に涙を浮かべながら残りの焼きそばを食べたのだった。
◆
夏休みの宿題に取り掛かっていると、目の前に置かれているスマホがメッセージを受信した。
視線を向けると、メッセージの送り主は唯だった。
『今から家に行っていい?』
『いいよ!』
朱莉がそう返すと、すぐにインターホンが鳴った。
どうやら唯はエントランスでメッセージを打っていたようだ。
唯は部屋に来てまず初めに「琉生くんは?」と言った。
朱莉は心の中で腹を抱えて笑っているが、表には出さない。
「おにぃは熱で寝込んでるよー」
「……絶対私のせいだ」
「そんなことないよ!」
「違うの!私を送ってくれたから風邪ひいたんだよ」
朱莉は言葉に詰まる。そんなことない、とでも言えば良かったかもしれないが、それでは唯が一人で追い詰めてしまう。
「朱莉ちゃん。私、《《こっそり》》琉生くんの看病していい?」
「えっ!?」
いきなり過ぎて困惑する。しかし面白そうだ。
朱莉は好奇心に負け、二つ返事で了承した。
こうして唯と朱莉による、『琉生の看病大作戦』が幕を開ける。
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