表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~  作者: くまたに
二章・波乱万丈の夏休み

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/36

第21話 冷姫とプール帰り

「楽しかったな」


「そうね」


 プールから帰る道中。電車の横並びの席に座り、二人は今日起きた出来事を思い出す。

 三人は左から唯、琉生ときて朱莉の順で座っている。朱莉は琉生の肩にもたれかかり寝息を立てて寝ている。


 一日。という短い間だったが、二人の胸の中には満足感が溢れ出す。それほど高密度な時間を過ごせたということだろう。


「絡まれた時に助けてくれてありがとね」


「……。あ、どういたしまして」


 琉生は「絡まれた時?」と、唯の話についていけなかったが、すぐにあの時の情景と共に思い出す。


 唯さんの水着姿を見て頭がおかしくなったり。周りからの視線がたくさん集まったり。更には不良に絡まれたりと本当に忙しかったな。

 それでも楽しかった。今まで人と関われなかったから、今日唯さんとプールに来ることが出来て嬉しかったな。


 と、琉生は思い出をかみしめる。その顔は優しく微笑んでいる。

 それから二人は車窓の外に流れる景色を眺めながら、他愛のない話をする。


 会話が途切れた時。唯は景色をじっと見つめながら言う。


「私達の降りる駅まであと何駅くらいだっけ?」


「あと四駅だったはずだよ」


「じゃああと少しでお別れね……」


 唯は少し寂しそうに言うが、寂しいのは唯だけでは無い。琉生も寂しいのだ。

 可能なら夕食も一緒に食べたいところだ。しかし夜遅くまで唯の自由を奪うわけにはいかない。


 琉生は唯と過ごせる時間(いま)を大切にし、もう少し他愛のない話を続けるのだった。


 ◆


「朱莉ー?朱莉さーん、起きてますかー」


「……」


 琉生の肩で寝入っている朱莉はピクリとも動かず、未だに寝息を立てている。

 その様子を見て唯はくすくすと笑っている。


 三人の降りる駅が少し先に見えてきた時。琉生は軽くため息を着き、朱莉にデコピンをする。

 普通のデコピンではない。近衛家流デコピンだ。


「──っ痛いよぉ……!」


 朱莉はようやく目を覚まし、目の端に涙を浮かべながら自分の額を押さえる。


「あ。起きた」


 真面目な顔で言う琉生に、朱莉は「それだけ!?」と突っ込むがスルーされてしまうのだった。



 三人は電車を降り、駅を出た時には既に夜の帳が下りており、周囲はネオンの明かりに照らされている。

 琉生達の住むマンションは、駅と唯の住むマンションの間にあるため、途中まで一緒に帰ることにした。


「この頃暑いね〜」


「そうだね。地球温暖化の影響だね」


 琉生を挟むようにして唯と朱莉は話している。

 遠くには琉生達の住むマンションが見えてくる。


「おにぃ、暗いから唯ちゃんを家まで送ってあげて」


 マンションの麓まで来た時。朱莉はウインクをしながら言う。

 その言葉を聞いて唯は「大丈夫だよ」と言うが、琉生は唯の住むマンションの方へ足を進めた。

 後ろからは唯が慌てて琉生の後を追う音が聞こえてくる。


「疲れてるはずなのにありがとね」


「大丈夫だ。俺は楽しい時間が長くなったと思ってるから」


 表情を変えずそんなことを言う琉生に、唯は少し顔を赤くする。

 二人の間に流れる空気が熱くなったその時。空からポツポツと雨の雫が降り始める。

 初めは弱かったが次第に強くなり、周りの景色が見えなくなるくらいに雨が降り注いだ。


 二人は急いでマンションに向かうが、服が水分を含み少しずつ動きにくくなる。

 やっとの思いでマンションに着いた時には、服からはポタポタと水滴が垂れる羽目に。


 琉生は「この天気の中を帰らないといけないのか」と少し憂鬱な気持ちとなる。


「じゃあ俺は帰るよ。今日は楽しかったよ」


 そう言って走り去ろうとする琉生の手が、唯に強く握られる。


「待って!せっかくだから少しだけ私の部屋に寄ってかない?」


「えっ……!?」


 琉生は驚きのあまりつい唯の方へ振り向いてしまうのだった。

「面白い!」「続き読みたい!」など思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!


していただいたらモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかもしれません!


ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ