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モブが公園で泣いていた少女にハンカチを渡したら、なぜか友達になりました~彼女の可愛いところを知っている男子はこの世で俺だけ~  作者: くまたに
一章・ハンカチを渡しただけなのに!?

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第10話 冷姫と勉強会

 お昼過ぎまでは晴れていたが、灰色の雲が少しずつ空の隙間を埋めていく。

 そんなことなど気にすることもなく、唯は今琉生の住むマンションの前で、建物を見上げている。


「で、でっか……!」


 想像よりも大きく高かったため、唯は目を見開き、開いた口が閉じなくなっていた。


 いけないいけない、時間を無駄にしちゃ駄目よ。


 首を横にぶんぶん振り、エントランスに足を進めた。


 セキュリティ対策がしっかりされていて鍵がないと中に入れないため、壁側に設置されていたインターフォンで、琉生の部屋番号の書かれたボタンを押した。


『伊織さん、今鍵を開ける』


 時間を空けずにインターフォン越しに琉生の声が聞こえる。

 すぐに目の前のガラスのドアがゆっくりと横へスライドする。


「……ありがと」


 唯はボソッと礼を言ってから、すたすたとエレベーターに向かう。

 そして中に入ったら二十二階のボタンを軽く押した。


 小さな機械音と共に身体が重く感じるが、十五秒ほどで楽になった。

 それは二十二階に着いたからだ。


 初めての男子の部屋……。


 唯は緊張を噛み締めながら、琉生の部屋のインターフォンを押した。

 すぐに中から僅かではあるが足音が聞こえてくる。


 その足音が近くなってくるのと比例して、胸の鼓動も早くなる。

 そんな事も知らない琉生はドアを開いて顔を出して言った。


「──ようこそ。 さ、入って入って」


「お、お邪魔します……!」


 なんの緊張もなく言う琉生の姿が、"準備万端"のように見えて唯の体はガチガチになる。

 それでも流石に人としての最低限の礼儀は弁えている唯は小声ではあるが挨拶をして部屋に入った。


 唯の思っていた普通のマンション(想像)と比べて琉生の住む部屋はとても広かった。 それに唯は内心ソワソワしつつも、狭かったら意識しちゃうから広くてよかったな、と思ったのだった。


 ──!?

 こ、これは……


「近衛くん、何か女の子の匂いしない?」


「え!?」


 き、聞いてしまった。 家入って一言目がそれなんてロマンチックの欠片もないし、普通に失礼すぎる……。

 ほんと私は何をやってるのぉ〜〜〜〜〜!!

 近衛くんだって、困った顔をしてるじゃない。 早く取り消さないと──


「この匂──」


「──ごめん! やっぱり今の言葉ナシで!」


「わ、わかった」


 琉生の言葉を遮って唯は先程の発言を無かったことにした。


「と、とりあえず勉強始めるか」


「そ、そうだね」


 二人の間には僅かにぎこちない空気が漂っていた。


 ★★★


 琉生の部屋の真ん中、折り畳みできる机の上で二人は数学の勉強をしていた。


「近衛くん、この問題はこれであってる?」


「ここは"たすきがけ"を使うと──」


 琉生の教え方が上手かったのか、むしゃくしゃしていた唯の表情が段々と明るくなっていく。


「ありがと、すごく分かりやすかったよ。 近衛くんはいつもどんな勉強法を使ってるの?」


「あ、あはは、それなんだが──」


 少し言いにくそうだが話す琉生の前で、唯の肩はぷるぷると小刻みに震えている。


「ノー勉で学年一位とか、ふざけているの!? その学力、私に全部ちょうだいぃぃ〜〜! 私も学年で五位以内に入りたいの!」


「な、なんかごめんなさい……」


 唯は今までの様子から想像出来ないくらい、声を出して琉生に訴えかけた。

 それにビビった琉生は身を少し引き、肩をすぼめる。


「でも仕方ないよね。 近衛くん、次のテスト勝負しよ?」


「いきなりだな。 別にいいけど」


「ふふふ。 私を本気にさせたことを後悔しなさい! 私が絶対に勝つんだからねっ」


 いつにも増して本気な顔をする唯に、琉生は内心怒りが納まったことに安心し、『絶対に負けない』と誓うのだった。


「俺は負けないぞ」


「ふーん! 努力をしないで私に勝てるなんて思わないでよね」


 そう言い捨てて、卓上にあるノートと睨めっこを始めた。


 ★★★


 勉強会が始まって約一時間が経過した。


 勉強の合間に窓から外の景色を見てみると、雨がざあざあと地面に叩きつけていた。


「これ私帰れるかな……」


「帰る時になっても降っていたら俺が家まで送って行くよ」


「ご飯作らないといけないでしょ、だから大丈夫。 私の住んでいるところはここから走って三分くらいだし」


「いや、少しくらい問題ないから」


「いえ、結構です」


「なんで敬語!?」


 琉生に迷惑をかけるわけにはいけない、と思い唯は頑なに断る。


 時間的にはまだ居ても良かったが、天候が悪化するとおもしろくないので、唯は勉強道具を鞄に詰め始めたその時──


「たっだいま〜っ!」


 玄関のドアが開く音と共に、少女の明るい声が響く。


 だ、誰なの……。


 その時、唯は体を強ばらせることしか出来なかったのだった。

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