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お嬢様の優雅な毎日は事件と共に 3

少しずつですが事件が始まっていきます。

 張飛が魔術協会から出て言った所で大きなため息を吐き出し、一人寂しく歩く。

 自分の『影』と呼ばれる存在と向き合う事は出来ても消滅は出来ない。それを張飛はフィリアの祖母から教わった。下手に消滅させれば自らも消滅させかねない。

 向き合う事、妥協点を見つけ出すことが大事なのだと。

 張飛と影はお互いに争わないこと、影は問題を起こさないこと、張飛も影を襲わないことを絶対の約束として、影はこの街を去った。

 しかし、張飛は今でも疑ってしまう。

 それでは真の解決にならないとわかっていても。

 転生者は自らの影と向き合いどうするのかによって未来が変わるらしい。

 ある者は対消滅を、ある者はお互いに認めある者に、ある者は………お互いに利用する者になるらしい。

 実際張飛がしたことは妥協案を提示し、あ互いに頭が冷えるのを待つという選択肢だった。

 どこか幼く殺すことに躊躇いを持たなかった頃の自分、そんなものを見続ける事はどうしてもできなかった。

 フィリアを悲しませたくないし、今はこの世界に未練が多いので同じ選択をするつもりは無い。

 なんて思いながら喫茶店への帰路へつこうとしたときだった。

 常に足元へ視線を向けていたせいだろう。長い綺麗な銀色の髪の毛が見えた。

 張飛には見たことがあるのような髪なのでゆっくりを視線を動かすと、路地裏で倒れているフィリアが見えた張飛は驚きのあまり周囲に響き渡るような声を出してしまう。

「フィリア!?」

 フィリアを抱きしめるとその向こう側ではイリーナが同じように倒れており、そのさらに奥でもう一人の張飛が立ち尽くしている。

 張飛は怒りのあまり身を震わせ、もう一人は肩竦めるだけ。

「誤解するなよ?俺はこのお嬢さんから話を聞こうとしただけだ。お前と俺の話を既に知っていたようでな。俺の姿を見てすぐに『影』だと感じてな、精神的なショックで気を失っただけだ」

「そんなわけないだろ!この二人には転生者の『影』の話なんてしたこと無いんだぞ!?」

「実際知っていたわけだしな」

「嘘をつけ!また誰かを殺して楽しもうと!?」

「いや、それを調べに来ただけなんだけど?俺も今じゃ別の街で仕事をしているしな。お前に俺が犯人かもなんて疑いを掛けられても困る。このお嬢さんたちがどうも遺体発見現場を見ていたらしいのでな、お前のふりをして話を聞こうとしたところで………失敗したわけだ」

 嘘をついている風ではないと判断するべきか、嘘をついていると判断して切りかかるべきかどうかと睨み合っていると、フィリアの方がそっと視線を張飛へと向ける。

「おじさん?本物?」

「ああ。あっちが……偽物だ」

 フィリアは先ほど見た所に偽物を見てどこか本物に抱かれている安心感に包まれていた。

「フィリア……どこで『影』を知ったんだ?」

「さっき。おじさんと知らないおばさんが話してた」

 フィーとの話を聞かれたのだとすんでの所で気が付き、張飛は『影』の自分に謝るべきかどうかとふと考え込んでしまう。

「謝らなくてもいい。俺がお前の立場ならきっと疑う。まあ………いい加減ロリコンはどうかした方が良いがな」

「余計なお世話だ!」

 フィリアとイリーナをわきに寄せ休ませている間に張飛は『影』の話を聞くことにした。というか張飛としてはどこまで知っているのか、この二人が見た遺体というのはどんな遺体なのか聞く必要がある。

 しかし、『影』が出した条件はまず張飛が事件概要を詳細に話すこと、その上で自分の話も話すという条件だった。

 知っているかもしれないし、知らないかもしれない。

 どう判断するべきなのか。

 しかし、もしこの二人が遺体を見たという事は既に事件に関わっているという事でもある。

「分かった。ただし、話す以上は協力してもらうぞ」

 それが張飛が出せる条件だった。


 顔剥がす事件は『影』自身も聞いたことが無かったらしく、この街に来た理由も大したことは無いらしい。この国に本社を置く会社からある人物の監視を命じられたらしい。其の人物は特に危険人物らしく、下手をすれば事件を起こす可能性があるとのことだった。

「お前が所属している会社ってあやしい会社じゃないだろうな?」

「失礼なことを言うんじゃない。れっきとした由緒正しい会社だ。俺は其処の用心棒みたいなものだな」

「用心棒が危険な人間の監視をするのか?」

「今回は会社が受けた依頼でもある。前科を持っていて特に危険な思考をしていた。だが、ある理由から国王に報告もできない。勝手に動くしかないというわけだ」

「国王に報告できない?どういうことだ?それほどの危険人物なら………」

「それが俺がこの街に帰って来た理由だ………犯人の真の目的は其処にいるお嬢さんだ」

 未だ気絶したままのイリーナに視線をうつし、同時にフィリアが首を傾げてこちらを向く。

「どういうことか詳細を………」

「禁則事項だとしか言えん。しかし、お前は犯人の手がかりと少々問題を起こしているようだし、お前に協力してやることが単純な解決になるだろう」

 張飛にはある人物が脳裏を過る。

 先日張飛と試合をしたあのメイド、確か王族関係のメイドだという事は分かっていた。イリーナは王族である、そんな彼女の側付きをしているメイドがただのメイドなわけじゃないだろう。

「彼女が犯人だと?あのメイドが」

「そうとは言わん。しかし、関係者であることは分かっているんだ。しかも、お前と争ってから未だにこの街に居座っているのも事実だ」

「………直接の犯人では無いんだな?」

「それは違う。彼女はあくまでも関係者と言えば大体の犯人を絞る事が出来るだろう?」

「王族関係者………もしくはそれに連なる者?来てもらうぞ、魔術協会で詳しい話をしてもらうからな………その上で協力してもらう」


どうでしたか?ギャグを織り交ぜたいとは思っていますが、どうしてもシリアスになっていきますね。では明日です。

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