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お嬢様の優雅な毎日は事件と共に 1

今回の新作は短めに終わらせるつもりですのでどうかよろしくお願いします。

 イリーナ・フォン・アウルレーゼの毎日は優雅である。

 彼女の朝はメイドや執事が起こしに来るところから始まり、着替えや洗顔などを手伝ってもらう。その後朝食を食べメイドや執事の運転で学校へと向かう。学校でもSPなどの警護が常に付き添い、お堅い監視の下友人すらまともにできない毎日だった。

 ある時、彼女はそんな毎日が普通では無いのだという事に気が付いてしまった。

 特に特別な事が起きたわけじゃない。

 しいて言うなら成長と同時に普通に気が付いてしまったのだ。

 じぶんの毎日がどれだけ異常と共にあるのかと、同時にそれがこの国の政策でもあるという事にも気が付いた。

 しかし、あくまでも自分は第二王女。国政を継ぐことは無く、あくまでも外へと旅立っていく身、なのにもかかわらず父親はこの国から出ていくことを許しはしない。

 なぜなのか、なんてことをふと考え父親に尋ねたが、どこか言いにくそうにしていることはハッキリと覚えている。

 何故言いにくそうにしているのかなんてことを当時の彼女は全く考えることもしなかった。

 父親の反対を押し切って彼女は『エーテルライト』へと住むことになった。

 ファンシーキャットで住む条件は喫茶店で働くことである。

 勿論働く以上は給料も発生し、宿代もその内から支払うというのが契約。宿代は学生言う事で二万。電気代やガス水道代も込みで二万は彼女にはこれがかなり好待遇だという事があまりよく分かっていなかった。

 学校に通う毎日の中、彼女はあまり学校で友達が出来ずにいた。

 それもそうだろう。彼女はSPや家柄もあって友達をと言う者を作ったことが無く、そんな機会なんて訪れなかった。

 だからだろう。どうやれば友達ができるのか、どうやって話せばいいのかなんてよく分からなかった。

 そんな一週間が過ぎ去り、最初の土曜日。ファンシーキャットはある理由からお休みになった。彼女は急にもらった休暇を前に困惑してしまう。

 一人で過ごすことがよく分からない。

 友達もいないから『一緒に遊ぼう』と誘う人間も誘ってくれる人もいない。

 朝一番から張飛とフィリアの奇妙なやり取りを物珍しい目で見ながら彼女は心底困っていた。

 張飛がバイクでどこかへ去っていく姿を見ながらフィリア共々玄関前で困り果てていた。

「ねぇ。もしかして……暇?」

 フィリアからそう尋ねられるとイリーナとしては反論すらない。もじもじと両指を弄りながら困り顔になる。

「私も暇………一緒に遊ぼう」

「いいのですか?」

「………?うん。この辺り案内する」

 そう言って彼女の手に惹かれながら玄関から移動して行く。


 エーテルライトの変わった街並みにもイリーナはすっかり馴染み、行きかう人々と出店で人を呼び込む店員の活気を前にして彼女は周囲へと目移りしてしまう。

「そう言えば………張飛様は別のお仕事とは何なのでしょうか?土曜日とはお客様が良く来る日ではありませんか?」

 イリーナはよくは分からないが、自分達に任せないのは忙しいからだとわかっているとして、店を今日一日閉めるとなると話は別になる。

「多分だけど……魔術協会から緊急の仕事だと思う。おじさんが店を閉めるのは大概そういう時だから。もう少しだけ人数が増えればおじさんが休んでも店を回せるんだけど、私やイリーナだけじゃ回せないから」

 どこか寂しげなフィリアと共に市場の中へと入っていく。

 市場では更に活気にあふれる店ばかりが建ち並び、イリーナは周囲の店に目移りがどうしても行ってしまう。

 見たことも無い果物から珍しい本などの娯楽道具などまで様々な物が揃っており、イリーナはアクセサリーの前で立ち止まって覗き込んでしまう。

 綺麗だと思い値段を見ると0が5個ほど並んでいる。

「買えませんね。綺麗だと思ったのですが………」

 張飛からもらっている今日のお小遣い代金はきっちり二千丁度である。これぐらいなら昼食代金ぐらいになるだろうという推測である。

「私も無理。これ帰るのおじさんぐらい」

 諦めて散策へと出る中、イリーナはどうしても気になったことを尋ねた。

「張飛様はもしかして転生者なのですか?」

「そうだよ。知らなかった?」

「はい。もしかしたらなんて思っていたのですが、私の周りにはいなくて、お父様はそう言う事をあまり教えてくれませんでしたし……」

 イリーナは今に思えば父がどうして教えてくれなかったのかよく分からない。

「言いづらかったんじゃないかな?転生者は結構残酷な結果になるって聞いたことあるし、おじさんも最初の数年間は荒れ果てて、今にも自殺しそうだったってお祖母ちゃんがいつも言ってた」

「そう………なのですか?張飛様にもそんな日々があったのですね。ですが、どうやって今のようになられたのでしょうか?」

「さあ?おじさん教えてくれないし」

 なんて言いながらフィリアは甘い匂いを前に歩く速度を速めてその店の前まで歩いていく。

 アイスキャンディーを売る出店の前で二人は品定めをするように視線を左右に動かす。

 イチゴやサイダーなどの定番の品から、一風変わった品までが建ち並ぶ。イリーナはイチゴ、フィリアはメロンソーダを選んで近くのベンチで座って落ち着く。

「そうでした。転生者が残酷な結果になると言っていましたが……どうしてなのですか?それになぜお父様は私に言いづらかったと思ったのですか?」

 フィリアは言いにくそうにアイスを舐めていつと仕方なさそうに口を開いた。

「転生者が生まれ変わる条件は………前世の後悔や願いを諦める事だからね。死ぬと自覚した時、自分がしてしまった悪行の数だけ後悔する。そして、決して叶わない夢や希望を諦め、この世界でセカンドライフを送る事。だからこそ、転生者は転生する際にその現実に中々耐えられないって聞いたよ」

 イリーナは張飛の顔を思い出す。

 野蛮そうな顔。虎のような髭やガタイのいい体つき。どこかの武人を思わせるような佇まいだが、そんな男が悪行を重ねて後悔しているというのだろうかっと。

「張飛様が悪行を?信じられません」

「それについてはおじさんが自分で言ってたよ。後悔はしてるってさ。もうしないってそう言ってた。自分は短期で血の気が多く多くの人を殺したんだって。だからお祖母ちゃんに出会ってからは「もうしない」って約束してた」

 イリーナは先日フィリアが試合をした張飛を怒っていた理由が分かった。

 たとえどんな理由があったとしても戦ってほしくなかったのだろう。

「本当はおじさんに戦いに言って欲しくない。でも、おじさんは私を守る為なら時に約束を守ろうとするから………」

 イリーナはいいなと思う。

 そんな素敵な関係になってみたい。

 お互いに大切に思えるような関係に…………。


イリーナのお話が続いていく形になります。では明日!

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