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張飛は魔術師になりました 4

張飛とフィリアの関係やっぱり好きですね。というわけで『張飛は魔術師になりました』はこれで終わり、次回は『お嬢様の優雅な毎日は事件と共に』に移ります。では本編です!

 結局の所で俺がどうやってフィリアのご機嫌を取ったのかと言うと餌で釣る手法を取った。有体に言えば……近くでクレープを奢ってやることで手を打ち、彼女も機嫌を多少は取り戻してくれた。

 お嬢さんがおおよその説明をちゃんとしてくれたのも大きかったのだが、どうも俺とお嬢さんの仲を疑ったようで鋭い視線を送ってくる。

 お嬢さんとフィリアは二人でベンチに座りながらクレープを食べている。

「私クレープを初めて食べました。甘くて美味しいのですね」

「それについてはおおよそ同意してもいいんだけどな。フィリア………お前のクレープは奇抜だな。納豆って……」

 納豆のクレープを食べたいと思わんぞ。

「………おいしい」

「嘘つけ。絶対不味いぞ」

 俺はあの甘い食べ物を食べる気にはなかなかならない。それより買い物ついでに買ってしまったあの本がバレないかどうかの方が気がかりだ。

 フィリアは先ほどからチラチラと俺が買い物したはずの袋の方を見ており、中には今日のカレーの具材が入っているが、その奥にばれないように紙袋が入っているのだ。

 その奥にはこの世界に来てある意味ハマってしまった『本』が入っている。

 あれだけはバレるわけにはいかない。

 なんとしても話題を逸らす必要がある。

「今日はカレーだぞ!フォリアカレー好きだよな!?」

「………フィリア。今日はお魚の気分。それより……この紙袋」

「!?フィリア。なら今日はシーフードカレーにしてやる!これならお魚が入っているぞ」

「それより………この紙袋は…」

 いよいよ見つけ出したその紙袋を取り出しゆっくりと中身を外へと取り出す。俺は力づくでも取り戻そうとするがフィリアはそれを素早く回避、中見を完全に外に出してしまう。

 その本には半裸の女が映された………エロ本だった。

「隠してください!!お願いしますフィリア様!」

 俺は恥を捨て去りひたすら頭を下げた。

 とにかくそのエロ本が問題になる前に隠してほしい、なんてしているとお嬢さんの方はその本をマジマジと見つめているじゃないか。

「それは……お父様が見ていた………確かエロ本とかいう」

 お父さん!!何をしてるんだよ娘の前で!娘の前でエロ本を見るとかどんな度胸の表れだよ!どんな変態だよ!こいつが家から出てきたのは正解だったはずだ。

 俺は特に隠してほしいという気持ちを精一杯伝えると、フォリアは仕方なさそうに紙袋の中へと入れてくれる。

 内心ホッとなでおろし、周囲もエロ本までは見えなかったらしく、俺が土下座をいているというシーンだけで済んだ。

 しかし、フィリアの不機嫌は留まるところを知らず更に高まっていく。

「おじさんは………こんな風なムチムチボディの方が好みなの!?」

「なんてことを大声で言うんだフィリア!というか誰からそんなことを聞いたんだ!?」

「おじさんは私みたいな体には興味ないの!?」

「止めなさい!!こんな人前で!」

「あ………あの、私……」

 照れるお嬢さんと怒るフィリア、それの二人を前に俺はどうしたらいいのかという気持ちでアタフタしていると後ろから俺に声をかけてくる人物がいた。

 肩を叩かれ俺が振り返ると婦警さんが俺に向かって疑いの目を向けている。

「ちょっと………あちらで話を聞かせてくれるかしら?」

 俺は婦警さんに連れていかれて職務質問なんてことは絶対にしたくない。俺は必死になってその場で説明し、フィリアを説得しつつ納得してもらうのに一時間もかかってしまった。

 婦警さんは「公共の場で不埒な行為をしないように」と注意を受け、俺はとにかく平謝りをして帰ってもらった。

 正直ドッと疲れが押し寄せる。

 こんな事なら家で大人しくしておけばよかった。

 俺はベンチに座りながら大きなため息が出てしまった。


 家に帰るのにさほど時間はかからなかった。

 お嬢さんは家の前に立つと古臭い喫茶店兼アパートの『ファンシーキャット』を見上げる。

「悪いな古臭い建物で。これでも中身はリフォームしてあるから多少はましなんだがな。我慢してくれよ」

「いいえ!そんな素敵な建物だと思います」

 フィリアが横開きのドアのカギを開き中へと入っていくと俺もその後に続いた。フィリアは最初の一歩を踏み出すのに三十秒ほどかけると勇気を振り絞ったかのように顔を上げ、笑顔で中へと入ってくる。

「今日からよろしくお願いします!」


 カレーを食べ終え、風呂にも入りお嬢さんにも仕事の概要を教えてやると時刻はすっかり夜の10時を回ろうとしていた。

 俺としては今からがお楽しみの時間なわけだが、今日購入したエロ本を紙袋から取り出す。

 この世界に来て一番驚いたのは本だったりする。

 特にこんな本があろうとは思わなかった。

「結構粘った甲斐があったな。一時間もかかって選んだからな」

 なんて言いながらエロ本を開こうと両手の指に力を込め、今開こうとしたところで後ろからの視線に気が付いてしまった。

 エロ本を隠しながら振り返るとそこには再び不機嫌そうなフィリアがのぞき込んでいた。

「ど、どうした?もう寝る時間だろ?明日は学校だろう?」

「………それ読むの?」

 そうまっすぐと尋ねられると俺としては「うん」とは言えない。しかし、幼いボディに興味がありますなんて言えば変態性が高まりそうな気がする。

 そりゃあ。俺だって幼い人間に興味が無いなんて言えば嘘になるし、『ロリコン』なんて言われても否定はしない。しかし、俺はそれをおっぴろげに言いふらす趣味はねぇ。

 それにそりゃあ時にはナイスボディな人間に惹かれる日もある。

「買ったしな………そりゃあ読むさ」

「………だったら一緒に読む!」

「!?…………駄目だ!俺は認めねぇぞ!これは幼い人間が読むものじゃない」

 俺は必死に部屋に帰そうと努力するがフィリアの気持ちは堅いようで中々引かない。俺はどうしたらいい物かどうかと必死に思考したうえ、妥協案として今日は一緒に寝るという案で俺が折れた。

 一緒にベットに入り、フィリアと背中合わせで寝ているとフィリアが俺の背中に両手を当てるような気配を感じた。

「おじさんは私じゃダメ?私がおじさんの隣居る人間じゃダメなの?」

 フィリアの絞り出されるような小さな声を前に俺は黙ってしまう。

「希望を失った俺に新しい希望になってくれたのはお前だ………感謝している……だから…」

 振り返りフィリアに自分の気持ちを伝えようとするが………そこにはフィリアの素敵な寝顔があった。

 俺は拍子抜けする気持ちと共に少しだけ笑ってしまう。

 小さな声で起こさないような声を―――――、

「好きだぞ。でも、今は―――――」


次回はイリーナのお話となります。張飛をコミカルに描くのは結構簡単ではないのですが、フィリアが絡むと絶対面白くできる自信があるんです。では明日!

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