魔術師と喫茶店はセカンドライフを楽しんでいます! 4
最終決戦です!
張飛の首筋にジャック・ザ・リッパーの鋭いナイフの刃が襲い掛かってくるが、張飛はその攻撃をギリギリで回避しつつ体を捻ってカウンターを浴びせる。
ジャック・ザ・リッパーは攻撃を空間交換で回避しつつ、ナイフを死角から張飛目掛けて飛ばしワイヤーで退路を塞ぎにかかる。
張飛は矛でナイフを上手く弾き、同時にジャック・ザ・リッパーの居場所を見付ける為に神経を研ぎ澄まさせる。
二階の端っこからナイフが飛んでくる姿を見つけ出した張飛、瓦礫や本棚を足場にして上まで飛んでいく。
「コソコソ攻撃するだけか!?」
「フフフ。殺人鬼なのでね………」
張飛の背中にナイフが飛んでくると、張飛は後ろ目掛けて矛を振り回すがジャック・ザ・リッパージャック・ザ・リッパーは其処にはいなかった。
「やっぱり無暗に攻撃を仕掛けているだけのようね」
ジャック・ザ・リッパーは張飛の背中から声が掛かってくるが、張飛は後ろ目掛けて矛による攻撃を仕掛けるのだが、ジャック・ザ・リッパーは其処にはいない。
「矛の使い方がうまいのは前世の記憶が影響を与えているからだね。私は『影』貴方と違い前世の記憶が存在している分有利に戦えるのよ。もう分かっているでしょう?あなたはもう………転生者じゃない」
ジャック・ザ・リッパーは残忍な笑い方をしつつ、同時に握るナイフを包丁に切り替えつつ近くにある本棚の本を一つだけ取り出す。
ほんの一ページを開きながらそっと姿を現す。
張飛の遥か後方に姿を現し、その本の一ページに包丁を突き刺す。
「初めて人を殺した時のあの快感は忘れられないわ。それに警察は私が殺したと全く疑わなかった。確信した。あいつらは私が死体をバラバラにしてしまったなんて全く疑わなかった」
「どうして………女性だけを殺した?」
「男性は最悪力まかせに抵抗するから、その分女性………特に売春婦は夜な夜な徘徊することが多くて。その上仕事終わりは特に殺しやすかった」
彼女は更にほんの一ページを切り取り、それを包丁でみじん切りにしてしまう。
その残虐な表情は張飛すらもひるませるほどの力を持っていた。
「最初はただ殺しただけ、でも少しずつ目立ちたくなってね。予告してみたり、内臓を引きずり出してみたりしたわ」
「………最低」
フィリアは零れ出す言葉をきちんと聞いていたジャック・ザ・リッパーはその残忍な微笑みを向ける。
イリーナは気絶しているアマリーを抱きしめ『影』に睨みをきかせる。
「いいわね。私を前にしてそんな風な睨み方をした人間は一人もいなかったわ。殺す瞬間もそんな表情をして頂戴ね。そうすれば………新しい殺し方を思いつくというものだわ」
「させると思うか!?」
張飛はジャック・ザ・リッパー目掛けて跳躍し一気に矛を振り下ろすが、ジャック・ザ・リッパーはまるで天性の才能のように見ないで攻撃をよけた。
「危機管理は高いのよ。これでも私は捕まることなく生き抜いた。人の足音だけじゃない、私は近づいてくる存在が私にはまるで分かる。しかも、そんな風に遅い攻撃は見ないでも避けられるわ」
ジャック・ザ・リッパーが握りしめる包丁を張飛の脳天目掛けて振り下ろす。
張飛はその攻撃を体を捻って回避し、ジャック・ザ・リッパーの右腕を強く握りしめて背負い投げの要領で床に叩きつける。
体を捻って足元から着地するジャック・ザ・リッパー、張飛は矛をジャック・ザ・リッパーの右足を切り裂くつもりで振り回す。
包丁を右手に左手にナイフを握りしめ、包丁で矛の攻撃を捌きながらナイフで張飛の左足に突き刺す。
張飛の左足から血が出るが、張飛はその右手を強くつかんで矛を短く握りしめ、ジャック・ザ・リッパーの左わき腹に突き刺す。
深々と突き刺さった矛の刃先、大量の血を流しながら膝をついてしまうジャック・ザ・リッパー。
「………まさか攻撃を受ける前提で体を動かすなってね。予想外だったよ。でも………私を殺せばあっちも消えるあんたは分かっているはずだよ」
「影と表は表裏一体。どちらかだけを生かす手段は少ない………でも方法が無いわけじゃねぇ」
「………?」
「それでこの空間だ。ここはこの街の魔力の噴出口になっている。ここでならお前をどうにかすることが出来る。だから致命傷だけは避けた」
張飛は掴んだ腕を決して話さないように死ながら矛を一旦手放し、右腕を強くジャック・ザ・リッパーの腹に当てる。
張飛がこの空間限定で使う事が出来る魔術。
「『封印』の魔術。ファンシーキャットの歴代マスターがマスターを継承する場合のみ使いこなすことが出来る特別な魔術。
この街は転生者に対する対策がいくつかされている。
「この喫茶店はその一つというわけだ。ただの喫茶店じゃない。魔術式………第二魔術口特別術式『封印』」
張飛を中心に魔術式が床一面に広がり、様々な模様と読めない様な文字で埋め尽くされていき、その魔術式がジャック・ザ・リッパーの体に向かって集まっていく。
「これは!?」
「昨日の話は嘘だ。この場所に俺の有利にさせる効果何て存在しない。しいて言うならここなら邪魔にならないことと、お前を封じることが出来る事ぐらいだ」
「ではお前は私の正体に気が付いて」
「それこそまさかだ。偶然だよ。でも、結果から見ればお前を封印できるんだからな」
もがき苦しみながら逃げようとするジャック・ザ・リッパー、魔術式が少しずつ体を包み込み少しずつ淡い光を放ち始める。
フィリア達も追いつくように近くに近づいてくるが、イリーナと共に目を覚ましたアマリーが近づいてくる。
「いい気味でしょ?お前を利用して殺して回ればいいと思っていた。でも、王妃と国王は城とそこにいる姫君を使って私を実質封印した。殺せばいいのに、姫君に懐かれていたあなたを殺す事は姫君を傷つけることにもつながる。だから城の中に封じ込めた。今度はこんな古臭い喫茶店に封じ込めるだなんて」
「ただ封じ込めるだけじゃない。ここから出さないようにするだけだ。お前の寿命が尽きるその瞬間までここで過ごすんだ」
魔術式が体中に包み込むとそのままジャック・ザ・リッパーの体を一冊の本に変えてしまった。
「封印完了」
張飛は本をそのまま本棚に収め直す。
フィリアは思いっきり張飛にしがみ付き、張飛は疲れ果てながらその場に座りこんだ。
「オジサン!オジサン!!」
「もう………大丈夫だからな」
イリーナはアマリーの腕の中で大粒の涙を流したまま抱きしめている。
「申し訳ありません。お嬢様………私は……」
「いいの。私こそごめんなさい。あなたの事を何も知らないで………勝手な事をして。その所為であなたを苦しめて」
「いいのです。もう知ってしまったでしょ?私は前世で多くの人を殺しました。殺したかったから。殺していると楽しかったからです」
アマリーは表情を歪ませ、イリーナを突き放そうとする。しかし、イリーナも話されまいとギュッと抱きしめる。
「殺していくうちにドンドン楽しくなっていきました。次第に残忍な方法や、どれだけ相手に狂気性を見せることが出来るのか楽しくなりました。新聞でその記事を見る度に今度は誰を殺そう?とか、どうすればもっと目立てるのか、そんなことを考えるようになりました」
アマリーは自供するように語る表情はかつての連続殺人鬼には見えない表情だった。悲しみと苦しみに満ち溢れ、同時に一筋の涙を流し始める。
「殺して………それを楽しんでいるうちに止められなくなりました。いや………やめようとも思わなくなりました。でも、それを楽しみ始めたんです」
「そんな事どうでもいいわ。私もこれからあなたを支えるから………一緒に側にいて欲しい」
「お嬢様………」
張飛とフィリアは抱きしめ合いながら元の空間へと帰還していった。
どうでしたか?明日が最終話!では明日の七時お会いしましょう!




