魔術師と喫茶店はセカンドライフを楽しんでいます! 2
二話目です。
イリーナはため息を吐き出しながら裏庭に入る。
草木の中に色のついた色付きの石が道を作るように並んでおり、一本の木が存在感を放っていて、その下を潜って古臭い倉庫が見えてくる。
古臭い倉庫のドアに付いている南京錠を手に掴み、張飛からもらった鍵を解除する。
倉庫の中に入っていく、薄暗く高く積み上げられたコーヒー豆の1つを両手で掴んで持ち上げようとする。
しかし、重すぎて中々持ち上げられない。
仕方ないので小さい袋を持って外に出るが、そこでフードで顔を隠したすらりとした人間がおり、隠れた両手には手袋が覗き込んでいる。
イリーナは驚きを隠せず尻餅をつきそうになるが、そこを何とか堪えて耐える。
裏庭に入ろうと思うと一回喫茶店の中に入る必要があるが、中に入ったのなら張飛が反応していてもおかしくはない。
しかし、ここに来るのなら張飛が一緒についてくるはずだしと考える。
怖くなり一歩後ろに下がるが、フードを着た人物は一歩前に詰め寄ってきて服の中からナイフを取り出す。
「まさか………アマリー?」
何も言わないフードの人物はナイフをイリーナに向けて刺そうとするが、イリーナは逃げる為に持っているコーヒー豆の袋を投げつけるが、喫茶店に逃げようとするがそれをフードの人物が邪魔をしてくる。
イリーナは倉庫の奥へと逃げていく。
倉庫はそこそこ広く迷路のような造りになっており、物陰など隠れる場所は多い。
そうしている間に倉庫の出入り口からドアを閉める音が聞えてきた。
イリーナは物陰からフードの人物を確認すると、ナイフを強く握りしめ鋭利な刃先をちらつかせる。
フードの人物は明かりをつけようとするが、古いからなのか明かりが付かない。
(どうやってここから逃げればいいのかな?出入り口から逃げられるでしょうか?)
なんて考え回り込みコソコソとフードの人物の動きに合わせ出入り口までたどり着くが、出入り口にはきっちり鍵が掛かっており外に出ていけそうにない。
そんな音が聞えたのか、フードの人物がナイフを思いっ切り振り回してくるが、そんなナイフの攻撃は空を切る。
イリーナは急いでその場から逃げ出していき、奥へと逃げだしていく。
列車は山脈地帯を超えていき、窓の奥では海が見えてきていた。
フィリアの祖母は窓の外の景色をそっと眺めながら奥の車両から戻ってきた張飛の影が持ってきた飲み物に手を出す。
「たく………俺様をこき使うなんてあんたぐらいだな」
「おやおや。あの事同じで私が拾ってやったのに」
張飛の影は心の中で「クソ」と呟くが、張飛の影がこの祖母と数年の付き合いであるが、それもこの祖母は張飛の影の面倒も観ていたためである。
「大体なんで俺がもう一人の俺の為に働かなくちゃいけなかったんだよ」
「仕方ないだろ?あの子が前世の想いを断つためには必要な事だったからね」
窓の外へと眺める祖母と対面に座る張飛の影。
「そもそもあそこに行く必要あったか?」
「あったよ。しかし……すっかりフィリアの尻に敷かれるようになったねぇ」
「そう思うなら止めたらどうなんだ?」
「いいや。あれが良いんだよ。しかし………少々心配な事件だねぇ」
「フン。ならあそこにいてやればいいだろうに」
「私達が出来ることはもうないからね。あとは本人達に任せるさ」
張飛の影が買ってきた緑茶を飲みながら窓の奥から見えてきた海に心躍る。
迷宮のような倉庫を逃げ回り、コーヒー豆が周囲に散乱していくがそんな状況下で出入り口まで追い詰められていく。
「や、止めてメアリー!元に戻ってください!」
「………くだらない」
ナイフを振り回し少しずつ近づいていき、イリーナは恐怖で涙を流してしまう。
(助けて……)
「助けてください!!」
振り下ろされるナイフを大きな墓音と共に倉庫の中に入ってくる張飛の矛が受け止めた。
張飛の視線とイリーナの涙目の視線が丁度合い、イリーナは安堵の息を漏らしながら思いっきり抱きしめてしまう。
「張飛様!張飛様!張飛様!!」
「大丈夫か?全く……心配させる」
張飛はイリーナを抱きしめながらそっとフードの人物を睨みつけ、フードの億からでもわかるほどに睨みを向けてくる。
張飛は矛を『拒絶』して片手に大剣を『創造』する。
張飛は地面に右手を付けて力を籠めると周囲の空間が歪み始め、歪みはイリーナを巻き込んでしまう。
実はその後ろに付いてきていたフィリアが付いてきており、同じように空間へと巻き込まれていく。
イリーナが倉庫に行ってから十分ほどが経過し、張飛は皿を洗いながら時間が掛かっているなぁというお思いで時計の方を見てしまう。
「遅いっすね。裏倉庫までそこまで時間かからないはずっスけど」
「嫌な予感がするな。お前達はここにいてくれ………俺は裏倉庫まで言ってイリーナを手伝ってくる」
張飛はエプロンを外して裏口まで歩いていく過程で倉庫から魔術式が書かれているグローブを持ち出す。
(最悪メリビット無しで仕掛けるしかないのか?全く………)
この喫茶店の歴代のマスターが仕掛けている特殊な魔術式、特別な空間を創造してありそちらに対象を引き寄せることが出来る。
裏世界とも呼ばれているその場所、張飛自身もそこで祖母から魔術を習得しており、祖母曰く『この街にいくつかある街の点』らしい。
龍脈などのようにこの街を流れる力の噴出場所であり、この場所は代々のマスターが管理しており、魔術の取得場所として非常に優れている。
だからこそ、戦う上では非常に優れている場所でもある。
張飛は裏倉庫まで石畳を歩いていき、後ろから実はフィリアが付いてきていることに気が付かなかった。
高い塔のような場所、中は崩れかけてきたような建物をしている。
木々で出来ている床、棚には食器が入っておりコーヒー豆などが周囲を漂っていた。
「イリーナはそこで隠れていろ………いいな?」
「ですが……!アマリーは私の責任で!」
「もう………遅いんだ。もう引き返せない場所まで来てしまっている。殺してやることしかできないんだ」
闇に堕ちた者は救う術など存在しない。
だから張飛は襲い掛かってくるジャック・ザ・リッパーから襲い掛かってくるナイフの攻撃を全て大剣で受け止め、攻撃が止んだタイミングで再び斬りかかっていく。
しかし、ジャック・ザ・リッパーはその攻撃を空間交換で距離を置いて回避する。
「イリーナ………お前がアマリーの事を大事にしていることは知っている。だからこそ、お前は見届ける権利があると俺は思っているよ」
「そ………それは、私は……!」
「お前はそこで見ているだけでいい。同じ転生者として俺が引導を渡してやる」
張飛が大剣を片手で持ち上げ、ジャック・ザ・リッパーは腰からワイヤーを取り出してナイフに縛り付ける。
お互いに睨みつけ合い、フィリアも物陰から覗き込む中重い一撃が襲い掛かる。
どうでしたか?では明日の七時にでも!




