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この世界に私はいますか?

張飛エピソード二話目です。

 張飛は王都でフィリアが訪れるのを待っていたわけだが、現れたフィリアはまだ見ぬ世界への期待と周囲に広がる未知なる存在へのワクワク感に目を輝かせていた。

 駅前の大広場の噴水は少なくともエーテルライトでは見られない様な大理石の彫刻で作られており、色とりどりのタイルなどで地面も装飾されていて、視界に鮮やかな色合いが心をときめかせるには十分だった。

 フィリアの幼い体躯か広場を駆けずり回っており、それをエーフィーとイリーナが追いかけながら落ち着かせようとしている。

 張飛は少し離れた所でその様子を見守っており、人が増えつつある公園の中でふとしたことがきっかけでフィリア達を見失ってしまう。

 焦って周囲を見回すといつの間にか人通りが急激に増えていっている事に気が付いた。

 そんな中張飛の目の前にやせ細ったような少年が立っていた。

 ボロ布のような上下の服を着て、明らかに王都のイメージを落としかねないような服装だが、周囲の人々はまるでそこに少年などいないようにふるまっている。

「ここは王都であるようで王都ではない場所。ここに君の大切にしている人がいるよ。探してみてよ。逃げるのも探すのも君の自由さ」

「お前は誰だ!?誰の差し金でこんなことをしている?」

「僕の意思で僕自身の目的の為さ。強いて言うなら面白そうな人を見付けたからね。僕を楽しませてね」

「待てよ!お前!」

 張飛が手を伸ばすと一人のスーツ姿の男性が少年と張飛の間に入り込み、一瞬で姿を消した。

 周囲を見回しても先ほどと同じ広場が広がっているだけで、特に変わり映えの無い場所と言うだけしか分からない。

『ちなみにここは特別な空間だよ。すぐに人も消えるからね。逃げる時は後ろにある黄色いドアから帰りなよ』

 後ろを振り返ると確かに木でできた黄色いカラーリングのドアが異彩を放っており、同時に人通りが消えている。

『この広場のどこかに三つの扉があるから探してみなよ。その奥に三人がいるよ。でも、気を付けてね。そのドアの先には三人が一番襲らる存在が敵として立ちはだかるよ』

「てめぇ!まるでゲームみたいに!!」

『ゲームだよ。僕から見てもこれはゲーム。人の命を懸けたゲームだよ』

「命を使うゲーム何て存在してたまるかよ!」

 沈黙が流れ、薄っぺらい笑いが聞えてくると彼は確信を持ったような声を発する。

『人の命をまるでゲームのように殺してきたあなたがそれを言うのかな?』

 張飛は黙りこくってしまう。

 自分の心の奥に引っ掛かるような刺が浮き彫りになり、その場で立ち止まる事しかできない。

 声が聞えなくなり、それでも少しの間歩き出すことが出来なかったのは事実で、張飛は心のかなで「あいつ……俺の事を知ってんのか?」と呟く。

「昔聞いた。『闇』……生前の誰かの後悔や怒りなどに反応して現れることがある姿で、場合によっては本人に似る可能性が高い。こいつも『闇』なのか?でも、俺はあんな奴会った事が………」

 しかし、ゲームのようにではないが、張飛はかつて人の命を簡単に奪ってきた。

 イライラすれば簡単に殺していたし、劉備から何度となく注意を受けた。

 そう言う意味では張飛は自分が死んだのも当たり前の事のように思える。

 しかし、何故そんなことをあんなガキは知っているのか。

「同時に見たことあるような気がするんだよな」

 どこかで見たことがあるような気がし、記憶の奥を探り出すが今は別に集中すべきことがあると意識を無理矢理切り替える。

 まずはドアを探し出さないとなと小さく呟きながら広場を探し出す。


 取り敢えず見つからない。

 十分ほどかけて外周をグルっと回ってみたが、少なくとも建物のドアを全部調べてみたが、どれも鍵がかかっていて開く気配がしない。

「この広場にあるんだよな?」

 そう思うと同時にどこまで端なのかが分からないと思い裏路地の奥へと入ろうと細い道を進むと、突然道が途切れてしまう。

「おかしいな。前に来た時はまだ先があったはずだが?特別な空間だから途切れてんのか?」

 と思い振り返ると先ほどまで存在していた広場が無くなり、王城前のメインストリートが広がっていた。

「そう言う事か………めんどくさいな」

 と思いつつメインストリートに出ると同じように人が全くいないのに、出店などには人がいるような痕跡が残っている。

 張飛は左右を見ると王城前に大きなドアが見えてきた。

 明らかにこの王都のイメージとは全く違う木製で出来た大きな城門。色は鮮やかな赤色と古ぼけた傷が目立つようなデザインをしている。

「王城前という事は……イリーナあたりか?」

 そう思い王城前のドアにゆっくりと手を掛けるとドアは勝手に開いて置き眩い光が視界を埋め尽くし、同時に引きずり込まれるような感覚が訪れた。


 王城に入ったことが無いから何とも言えないが、大理石のような色合いの大広間と大きなシャンデリアが周囲の壁や綺麗な絵が描かれている床が光って見える。

 イリーナぽい五歳ぐらいの少女が歩いて大広間を横断していると、一番奥の両開きのドアから若くスーツ姿の男性が歩いて出てくる。

 国王なのだろうと思いながらも張飛は動くことなく事の成り行きを見守っている。

「お父様!遊んでください!」

「イリーナ。父さんは忙しいからメイドたちと遊んでいなさい」

 そっけない行動にイリーナ自身は俯きながら歩き去っていこうとしている。

 自分ではどうしようもない後ろ姿ではあるが、声をかけるべきか、それともこのまま無視をするべきかと思考する。

 しかし、ここで無視をすれば後悔しそうな気がした張飛はそのまま声をかける為に駆け寄っていく。すると、近衛兵のような人物に止められてしまった。

 目の前にこれ以上は行くなと言わんばかりに槍で妨害してくる。

「君は娘の何かね?何故娘にこだわる?」

 後ろを振り返ると若い国王は睨みつけるような視線を感じるが、そんな視線で怯えるような張飛ではない。

「アンタこそどうして娘に優しく接してやらない?」

「君には関係ない話さ。忙しい中で私に声をかける方がおかしいだろ?」

「子供ってのはそう言うもんだろ?相手をしてほしくて仕方がないはずだ」

「君もそうなんじゃないのかな?」

「はぁ?どういう意味だ?」

「君だって「忙しい」やら「後で」なんて言いながら彼女を遠ざけているんじゃないのか?」

 フィリアの事を指しているのだと考えてしまい、同時にどうしてそんなことを知っているのかと動揺してしまう。

「仕方ないだろ!?あいつを危険な目に遭わせるわけにはいかねぇ!」

「なら………見せて見なさい!この私にな」

 そう言いながら長く重そうな一品の両刃直剣を取り出し張飛の方に向け、張飛も矛を作り出して目の前にいる国王に向ける。

 精神的な動揺が未だに収まらず、まともに戦うには少しだけ心許ない。

 気持ちを引き締めたくても、先ほどから襲い掛かってくる情報を前に処理しきれない。

「切り替えろ………切り替えるんだ。今は目の前の状況にきちんと適応して見せろ!」

(駄目だ。切り替えられねぇよ。何だよ……あいつは何を知っているんだ?なんでこんな気持ちになるんだよ)

 張飛は静かに少年の罠の中へと歩いていった。


完結までそこまでありませんがどうか最後までよろしくお願いします。

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